「...祥子?」
その姿を見たのは、ジャケット撮影の帰り、無気力にお疲れさまでしたとスタジオを出た時だった。
記憶と同じ色の髪、2つに縛ったシルエットは幼い頃よりだいぶ伸びているが、それでも見てくれは一緒。
「祥っ...?」
しかし、声を掛けるのは躊躇われた。
隣によく似た少女を見たからだ。
「姉妹...?でも、そんな話は一回も...」
しかし、いま目に映る景色は本物である。
故、祥子に姉妹がいるのは事実である。
「もしかして...」
実家があった孤島に来ていた時も、入れ替わっていたりしたのだろうか。
「...やめよ」
あまりにも過ぎた邪推、考えない方が良いに決まっている。
今見たことは考えないことにして、踵を返して帰路に着く。
「...あら、初華?」
後ろから声をかけられて、思わず足が止まる。
振り返ると、安堵したような顔の祥子がいる。
「やっぱり初華だった、久しぶり」
「祥、子...うん、久しぶり」
「...だれ?」
祥子と一緒にいる少女は、私を見てもピンと来てない。
勝手に安堵して、少し笑みが浮かぶ。
「睦は会ったことないよね、三角初華、私の...友達?」
「何で疑問形なの?傷つくよ?」
「あぁいやその...ごめんなさい」
まともに謝られてしまうと、ちょっと揶揄った自分が申し訳なくなって、「いいよ、冗談」と返す。
「睦...ちゃんで良いのかな、初めまして」
「初めまして...あれ、もしかしてSumimiの...?」
「...うん、知ってるんだね」
歯切れが悪くなってしまったのは、この際見逃してほしい。
祥子に見つけてもらうために、頑張っただけだから。
「それより、二人はどこか行こうとしてた?」
曇った表情を悟られないように話題を変える。
「あぁ...その、これから音楽スタジオに...」
「音楽スタジオ...?」
祥子は確かに音楽をやっていたという話は聞く。
だけど、今姉妹で、スタジオに?
何を怪しいと思ったか分からないのに、頭の中で疑問符が浮かぶ。
「私、祥子とバンドするの」
「え、バンド?」
「睦!...まぁ、隠さなくてもいずれバレたことだし、話しちゃう方がいいかもね」
どうやら、祥子はバンドを組むために遠くに行ったようだった。
でも、メンバーの収集率はそこそこ...らしい。
「睦ちゃんはギター担当なの?」
「うん。祥子の隣でギターを弾けるのは私だけだから」
「...そっか」
見つけてもらうために始めた付け焼刃のギターじゃ、親族には勝てない。
誰よりも、祥子が求める音が奏でられるんだから。
「じゃあ、そろそろ帰るね。バンド、頑張って」
その場にいたくなくて、少し強引に帰ろうとする。
「...初華!」
大きめの声で呼ばれ、足を止められた。
「...っ、なに...?」
「...今度、音合わせしない?」
そう言いながら笑った彼女の顔には、曇りなんかなくて。
「...うん、もちろん」
そう返した顔は、きっと自分の中で一番笑えてるんだろうと、勝手に思った。
1stライブは今日だよ
ようこそ。AveMujicaの世界へ――