コードギアス 魔王の剣   作:ボートマン

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「それで、どうするんだ?“ルルーシュ”?」

 

とあるトレーラーの中で灰色髪の少年“カイル・ラインハルト”は、一緒にいる黒髪の少年“ルルーシュ・ランペルージ”に尋ねる。

 

「どうしようもないな。このトレーラーは多分昔の地下鉄を走っている」

 

「へぇーよくわかったな」

 

「この暗さと路面状況ならそれぐらいすぐにわかる」

 

「いやいや、それがわかるのはお前ぐらいだよ」

 

普通は暗さと路面の状況だけで何処を走っているのかわかる人はいない。

 

「どうしてこうなったのかね……」

 

「俺が知るか」

 

この二人の少年がどうしてトレーラーの中にいるのか。

 

それは友人であるリヴァルの頼みで受けた貴族との賭けチェスの代打ち。

 

代打ちするのはルルーシュでカイルはその付き添い兼運転手。

 

勝負の結果はルルーシュの圧勝だった。

 

そして、バイクでアッシュフォード学園に帰る途中、後ろを走るトレーラーが事故を起こした。

 

ルルーシュとカイルは助けようとトレーラーに駆け寄った。

 

ところがトレーラーが急に走り出して偶然に乗り込んでしまったのだ。

 

「まさかテロリストの車だったとはね」

 

カイルとルルーシュが助けようとしたトレーラーはテロリストの物だったのだ。

 

「全くこの状況でよくそんな風にいられるんだ?」

 

「じたばたしても仕方ないだろ。それに……うぉっと!?」

 

「事故か?それとも……」

 

車体が大きく揺れ、荷台が開き始める。

 

「とりあえずはこれで外に出られるな」

 

「ああ。早くここを出るぞ」

 

「わかって……危ない!」

 

外から飛び蹴りしてくる姿が見えたカイルは、ルルーシュを押し飛ばす。

 

そして、片腕で向かってくる飛び蹴りを受け止める。

 

「っ!いってえ~!」

 

痛みをこらえ、倒れないように踏ん張る。

 

「カイル!」

 

カイルと飛び蹴りしてきたブリタニア兵は互いに距離を取る。

 

「これ以上殺すのはやめるんだ!」

 

「何?」

 

「しかも毒ガスを使って何て!」

 

「待て待て何の話だ!」

 

毒ガスと聞いた二人は話がみえなかった

 

「とぼけるな!」

 

「ふざけるな!大体その毒ガスだってブリタニアが作ったんだろ?」

 

「どうせろくでもないことに使うために作ったんだろうが!」

 

だが、聞く耳を持たないブリタニア兵に二人は我慢の限界だった。

 

「お前たちは……」

 

「殺すなだと?だったら、ブリタニアをぶっ壊せ!」

 

ルルーシュは目の前のブリタニア兵に溜まりに溜まった思いを吐き出す。

 

「ルルーシュ……カイル……」

 

「どうして俺達の名前を?」

 

二人の疑問に対し、ブリタニア兵はヘルメットを外してその疑問に答える。

 

「僕だよ。スザクだ」

 

ヘルメットを外してスザクと名乗った少年に、二人はまさかの再会に動揺する。

 

「お前、まさかブリタニアの軍人になったのか?」

 

「君たちは?もしかして、これ?」

 

「違う、巻き込まれただけだ!」

 

「それはいくらなんでも怒るぞ」

 

スザクの疑うよな言葉に二人は否定する。

 

そこへカプセルから光が漏れると、機械音と共に開き始める。

 

スザクは咄嗟に自分のマスクをルルーシュに装着させて床に倒れこむ。

 

カイルは袖で口と鼻を庇い同じように床に倒れる。

 

カプセルが完全に開ききり、三人の目に映ったのは鮮やかな緑色の髪をした拘束着の少女だった。

 

「毒ガス、じゃない?」

 

「この子は……?」

 

一瞬少女と目が合ったが、少女は倒れこんでしまいそのまま気絶してしまった。

 

「おい!大丈夫か?」

 

カイルは少女に駆け寄り、声をかけるが反応がない。

 

「答えろ、スザク。まさか、この子が毒ガスとでもいうつもりか?」

 

「しかし、ブリーフィングでは確かに毒ガスだと」

 

「おいおい、こんな可愛い子が毒ガスとかありえないだろ」

 

三人は少女の拘束着の拘束を外しながら状況を確認していると、眩い光が3人を照らし出す。

 

「このサルが!名誉ブリタニア人にそこまでの許可を与えた覚えはない!」

 

「しかし、自分は毒ガスと聞いていたのですが……」

 

「貴様に質問する権利はない」

 

「最悪だな」

 

「ああ、まずいな」

 

おそらくこの少女は目の前の部隊の主人にとっては、誰にも知られてはいけない存在なのだろう。

 

「だが、目標を発見した功績を評価し君に慈悲を与えよう」

 

指揮官の手には拳銃が握られていた。

 

「枢木一等兵に命じる。これでテロリスト共を射殺しろ」

 

そう言いながら指揮官はスザクに拳銃を差し出す。

 

「待ってください!彼らは巻き込まれただけの民間人です!」

 

「貴様、これは命令だ!お前はブリタニアに忠誠を誓ったのだろう?」

 

「それは……」

 

カイルとルルーシュにとって最悪の事態になってしまった。

 

二人はどうにかこの場を乗り切る方法を探す。

 

そんな中スザクは指揮官に向き直る。

 

「自分には……できません」

 

「何?」

 

「自分には民間人を……彼らを撃つようなことは」

 

そう言ってスザクは命令を拒否しこちらに振り向く。

 

「では……死ね」

 

指揮官はスザクに拳銃の銃口を向ける。

 

パンっと乾いた音が地下鉄内に響き渡る。

 

「スザク!」

 

「貴様!」

 

撃たれたスザクは倒れ、指揮官はカイルとルルーシュを見る。

 

「見たところただの学生のようだが、残念だったな。女を捕獲したのち、学生どもを殺せ」

 

「「「イエス、マイロード」」」

 

無慈悲に告げられる死刑宣告。

 

カイルはルルーシュと少女を守るように前に出る。

 

「(せめてルルーシュ達だけもでも逃がさないと)」

 

その身を盾にしてでも守ろうと決意した瞬間、トレーラーの運転席が突如爆発する。

 

「(今だ!)こっちだ!」

 

カイルは少女を抱きかかえ、ルルーシュと共にその場を後にする。

 

 

 

 

 

どうにか追手から逃げ延びたが、ルルーシュは自分の身に襲い掛かった理不尽に苛ついていた。

 

「何なんだお前は!」

 

そして、その苛立ちが限界にきたルルーシュの怒りの矛先はカイトが抱きかかえる少女に向く。

 

「お前のせいではスザクは!それにこの騒ぎもお前のせいなんだろ!」

 

口の拘束は外されているが、少女は何も答えない。

 

無感情な瞳でただルルーシュを見つめるだけだった。

 

「落ちつけって言うのも難しいかもしれないが、冷静になるんだルルーシュ」

 

「冷静になれだと?カイル、お前はスザクが撃たれて何も感じないのか!」

 

何とも思ってなさそうなカイルにルルーシュは掴みかかる。

 

「……ルルーシュ、俺だってあいつらが許せねえよ。今でもぶっ飛ばしに戻りたいよ。だけどな、俺達はここで死ぬわけにはいかないんだ」

 

怒りで肩が震えるカイルの姿にルルーシュは落ち着きを取り戻す。

 

「……すまない、少し取り乱していた」

 

「気にしてない。それよりいそいでここから離れよう」

 

先程から聞こえる爆発音や揺れから、外も絶対に安全とはいい難い。

 

そして、地下道を進むと外に出る階段を見つける。

 

「ここで待っていてくれ」

 

カイは少女に段差に座らせると、姿勢を低くして外の様子を確認する。

 

「どうだ?」

 

ルルーシュも姿勢を低くして外の様子をカイルに尋ねる。

 

「……あまりよくないな」

 

出口には先程の指揮官たちがいた。

 

しかし、カイルには別のものが目についた。

 

それはここに逃げようとした日本人達の死体だった。

 

死体は老若男女問わず、中には子供の死体もあった。

 

「(こいつら……!)]

 

たった一人の少女のために虐殺を行う指揮官たちにカイルは怒りがこみ上がっていた。

 

そんな時場違いな電子音が倉庫内に響き渡る。

 

そして、二人は逃げる暇もなく壁際に追い詰められ、少女は兵士に確保されてしまった。

 

「ふん!テロリストに相応しいロケーションだな」

 

「(やばい、このままじゃ………)」

 

最悪の事態にカイルはルルーシュを庇うように前に出る。

 

「学生にしてはよくやったよ。流石はブリタニア人というべきかな?」

 

「こっちとしてはあんたらと一緒にしてほしくないな」

 

カイルはそう言ってほくそ笑む。

 

「負け犬の遠吠えというやつか?どれだけ吠えようがお前たちの未来は今終わる」

 

指揮官は拳銃の銃口をこちらに突きつけ、引き金を引いた。

 

「殺すな!」

 

そこへ先程まで何もしゃべらなかった少女はカイルとルルーシュを庇うように前に出る。

 

銃弾は少女の眉間に命中し、二人の目の前で倒れた。

 

「おい!」

 

「そんな……!」

 

ルルーシュとカイルは少女に駆け寄るも、少女は眉間を撃たれ生きていない。

 

「ふん!こちらとしては生きて捕獲したかったが、上にはこう報告しよう。“我々親衛隊はテロリストのアジトを見つけ、これを殲滅。しかし、人質はテロリストの手によって嬲り殺しにあっていた”と、どうかね学生君?」

 

指揮官のふざけた言葉にカイルは顔を上げ、指揮官を睨みつける。

 

「ふざけるな、何が嬲り殺しだ!そんなことがよくいえるな!」

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

指揮官はカイルの言葉をどうでも良さそうに聞き、銃口をカイルに突きつける。

 

「ふっ………なあ?ブリタニアを憎むブリタニア人はどう生きればいいんだ?」

 

「貴様、主義者か!」

 

カイに向けていた銃口をルルーシュに突きつけるが、指揮官は何故か引き金を引かなかった。

 

「ルルーシュ?」

 

幼馴染の放つ異様な雰囲気にカイルは戸惑っていた。

 

「どうした、撃たないのか?相手はただの学生だぞ?それとも気づいたか?撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだと!」

 

左目を手で覆っていたルルーシュはその手を外す。

 

その時、ルルーシュの左目に紅い鳥のような紋章が見えた瞬間。

 

(見るな!)

 

頭の中に先程撃たれた少女の声が響き、カイルは咄嗟に目を閉じた。

 

「“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”が命じる!貴様たちは………死ね!」

 

目を閉じたカイルは理解できなかった。

 

この状況でルルーシュが言い放った言葉。

 

そんな言葉に何の意味があると、誰もが疑問に思うだろう。

 

「ふふふっ………イエス!ユア、ハイネス!」

 

指揮官と部下たちは自身の首筋に拳銃の銃口を突き付ける。

 

誰もがその行動に疑問を抱くことなく一斉に引き金を引いた。

 

そして、目を開いたカイルが見たのは血を流して倒れる指揮官たちだった。

 

「ルルーシュ……」

 

カイルは呆然とルルーシュを見ることしかできなかった。

 

この日、二人の少年の運命は大きく変わり始めた。

 

 


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