令嬢の護衛、何故か美女達に迫られている件 作:究極の闇に焼かれた男
これから語られるのは誰よりも魔法を愛しながら魔法に愛されなかった王女と、誰よりも持っていながら何も持っていない令嬢による魔法革命の物語…………では無く。
そんな令嬢の護衛を務める青年が主である天才令嬢と、希代の奇天烈王女に振り回されながら様々な事件に巻き込まれていく物語であり、気がついたら美女達に包囲されていた物語である。
──────────
パレッティア王国に存在する王立学院は現在、卒業生達の為のパーティーが開かれていた。
この学院では様々な地位に着いている貴族の子息や息女、それに将来有望な平民が通っており、この国の将来を担う若者達の育成を行い人材の発掘にも貢献している場所だ。
そんな学院にマゼンタ公爵家の少女、『ユフィリア・マゼンタ』と従者兼護衛の少年も通っていた。
そのユフィリアの従者兼護衛である少年、『レオン・ハルトディーレ』は様々な意味で有名だった。
曰く、得体の知れない存在。
曰く、武芸の才はあっても魔法の才能が無い半端者である。
曰く、公爵家に取り入った卑しい男。
そんな根も葉もない話が貴族間で広がっていた。
その事にユフィリアは断固として否定したが、それでも殆どの貴族は未だにそう言っているらしい。
そんな噂の中心人物である件の青年ことレオンは現在、主であるユフィリアと話していた。
「お嬢様、気分が優れないようですが如何なさいましたか?」
「…いえ、大丈夫です。 そう言うレオンは大丈夫ですか?」
「自分ですか?」
「ええ。 あなたはこういう場所は苦手の筈でしょう? だから無理をしていないかなと思いまして…」
その言葉にレオンは少し考える素振りを見せる。
「そうですね……確かに苦手ではあります。 ですが、お嬢様のお傍を離れる訳には行きません。それに……」
「それに?」
「お嬢様と一緒なら、特に問題ありませんので」
「そう…ですか……///」
その言葉にユフィリアは頬が熱くなるのを感じたが、直ぐに気持ちを切り替える事にした。
なんと言っても彼女はパレッティア王国の第一王子──『アルガルド・ボナ・パレッティア』の婚約者であり、この国の次期王妃だからだ。
しかし、そんなユフィリアには最近ある悩みがあった。
その悩みと言うのが件の婚約者である第一王子、アルガルドの事である。
アルガルドはユフィリアとの婚約関係があるにも関わらず、最近はとある男爵令嬢と一緒に行動しているのだ。 その男爵令嬢こと『レイニ・シアン』は平民から貴族になったと言う珍しい人物で、ユフィリアと同い歳の少女である。
ユフィリアはその事でアルガルドと話そうとするも、彼はそれを一蹴する所か逆にユフィリアを責めるように言ってくる始末である。 故に彼女は件のシアン男爵令嬢にその事で優しく伝える事で留めていた。
しかし、彼女の頑張りはこの後に起きる出来事で全て水泡と化してしまうのだった。
──────────
従者を連れて歩くユフィリアは周囲にいる他の貴族の子息・息女から様々な視線を向けられていた。
中には彼女とアルガルドの不仲を疑う者や、彼女を悪く言うような言葉も囁かれていた。
そんな時だった、ユフィリアに視線を向けていた筈の貴族達が突然騒がしくなり始めたのだ。
ユフィリアはそれに釣られる形である一点へと視線を向けると、ユフィリアの視界に信じ難い光景が映った。
そこにはドレスを纏ったシアン男爵令嬢の手を引きながら会場入りを果たしたアルガルドと、その後ろに続くようにして名だたる貴族の子息達が居たのだ。
アルガルドは他の貴族に挨拶を交わし始めると一瞬だけユフィリアと視線が合った次の瞬間、アルガルドはこの場に居る全員に聞こえる様に声を張り上げながら口を開いた。
「私はこの場を以て宣言する。 私はユフィリア・マゼンタとの婚約を破棄すると!」
その言葉に一瞬の沈黙が包み、そして周囲の貴族達が言葉の意味を理解した直後、周りは騒然となりはじめた。
ユフィリアも例外では無く、驚愕の色で顔を染めながら恐る恐るアルガルドに問い掛けていた。
「………アルガルド様。何故、婚約の破棄を?」
決して震える声を出さない様にゆっくりと彼女がそう聞くとアルガルドは底冷えする様な眼差しで答え始めた。
「貴様は我が婚約者に相応しくないと判断した。 貴様がレイニ・シアンへ行った数々の非道の数々、よもや言い逃れはすまい!」
その言葉にユフィリアは困惑を覚えた。
告げられた内容に身に覚えの無い言葉にも関わず、そう宣言するアルガルドにユフィリアは思わず反論していた。
「非道の数々、と言われても心当たりがございません。 それにアルガルド様、この話は陛下に了承を頂いているのですか?」
「父上には後で承諾を頂く」
「何故、親が定めた婚約をあなたの一存で解消などと……!ご自分が何をなさっているのか理解されてるのですか!?」
ユフィリアがそう言うもアルガルドは耳を貸さないどころか状況は悪くなる一方で、ユフィリアは徐々に追い詰められていった。
そしてあろう事か他の名だたる貴族までもがそれに便乗する始末で、アルガルドはユフィリアにシアン男爵令嬢への謝罪を要求して来た。
誰もがその光景を止めるどころか楽しむかのように傍観の姿勢を取るばかりで、ユフィリアは万事休すかと思われた時だった。
「…アルガルド様、一つ質問なのですがよろしいですか?」
そう発言したのはユフィリアの護衛を務めるレオンだった。
その言葉にアルガルドと他の貴族達は眉間に皺を寄せながら視線を向ける。
「…良いだろう、申してみろ!」
「では────シアン男爵令嬢への非道の数々と仰いましたが、具体的にはどのような事をしたと言うのですか?」
「それは口にする事も恐れることだ」
「具体的には?」
「それは……」
「おや? もしや知らない筈では無いでしょう。 ここまでの事態を引き起こしたのですから流石に一つや二つは御座いますでしょう?」
「……」
「なら代わりにシアン男爵令嬢に答えてもらいましょうか。 シアン男爵令嬢、アルガルド様の仰っていることは全て本当でございますか?」
「そ、そのっ‥「レイニへの尋問は許さん!」っ!?」
シアン男爵令嬢にレオンが質問し彼女が答えようとすると、それを遮るようにアルガルドが声を上げる。
「おかしいですね? 自分はシアン男爵令嬢に質問をしたのであって、王子が代わりに答えろとは仰っておりませんが?」
「だとしても、レイニに対しての尋問は許さんぞレオン!」
「アルガルド王子、自分は事の真相を知る為にもシアン男爵令嬢からも話を聞くべきだと思いましたが、それの何が悪いのでしょうか?」
「貴様ッ! アルガルド王子に向かってなんという口の利き方を‥「それの何がおかしいのでしょうか? 事の真相を明かすにはこの一件に関わっているであろう彼女の証言も必要だと思われるのですが、それのどこが悪いと仰るのですか?」…くっ!?」
レオンの言葉に眼鏡を掛けた少年、モーリッツは黙る事しかできなかった。
「……嗚呼、なるほど。 そういう事ですか」
レオンは何かに納得した様にして呟いた次の瞬間、
「アルガルド王子と他の皆様方は我が主を嘘で貶めようとした挙句、シアン男爵令嬢を都合のいいように利用しているのですね。 それなら納得ですね。 そうすればユフィリア様を傷付けても罪悪感は感じ無いと────っ、それがこの国の未来を担う筈の貴族のすることなのか大馬鹿野郎ッ!!」
レオンは目を強く見開くとともにその場で叫んでいた。
その叫びに周りは絶句した、相手は曲がりなりにもこの国の次期国王である人物だ。 その様な発言をしてタダで済むはずがないのは周知の事実だった。
「何だと貴様ッ!!」
「事実でしょうが! 明らかに証拠不十分ですし、被害者への質問を許さないなんて幾ら何でも可笑しいでしょうが! それにシアン男爵令嬢を見てください。 彼女凄く泣きそうな顔をしているでしょうが。 王子の発言が嘘だって彼女の顔を見れば流石にわかるでしょうが!! それに何ですか、お嬢様が非道の数々をしてきたって、あの虫も殺せない性格のお嬢様がそんな事したらそれを見たグランツ様が泡を吹いて倒れるに決まってるでしょうが! それだったら、アニスフィア王女が離宮を跡形もなく吹っ飛ばす方がまだ信憑性が高いわ!!」
怒涛の勢いによる反論の数々にアルガルド達は引き気味に黙り込んでいた。
それを見ていたユフィリアもその光景に唖然とた表情を浮かべていた。
それは周りの貴族も例外では無いようで、「確かに」や「その方が信じられるな」と、言い出し始める。(一応、彼女は王女なのにこの言われようなのは日頃の行いの結果である)
レオンが言い終え息も絶え絶えにしている時だった。
何処からか誰かの悲鳴が聞こえてきた。
それにレオンが気付き窓に視線を向けた次の瞬間、窓を突き破りながら1人の少女がレオン目掛けて突っ込んで来た。
「なっ!? おい、バカ、こっちくっ……グホォっ!!」
レオンを巻き込む形で窓を突き破り会場内に飛び込んできた金髪と翡翠色の瞳をした少女は、彼の上に乗る形で痛がる素振りを見せつつ口を開く。
「痛った〜!? まさか墜落するなんて思わなかったよ。 でも怪我がなくて良かった〜‥「…全然……良くない…からな」っ!?れ、レオン!!」
少女はレオンを下敷きにしている事に気づくと、慌てて立ち上がるると即座に謝っていた。
「ご、ごめん!? レオン、怪我は無い……?」
「アニス……お前、これで何度目だ……」
「そ、その〜……アッハハハ」
アニスと呼ばれた少女は何を言おうパレッティア王国の第一王女にして稀代の奇天烈王女として知られる人物、『アニスフィア・ウィン・パレッティア』その人だった。
その光景を見ていた周りは唖然とする中、そのやり取りを目の当たりにしたユフィリアは心の奥底でこう思った。
(レオンが楽しそうな表情をしてる。 何故でしょう……心が凄くザワついてる気がする)
微かに芽生えたその気持ちの名を彼女はまだ知らなかった。
次回は本格的にアニスが参戦します。
感想やこんな話が見てみたいと言うのがあったら是非コメントをください。
ではまた、次回をお楽しみに!