狩人が異世界なろうする話   作:Leiren

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カンスト周回済みの狩人が異世界でなろうする話。
ただ主は1周目すらクリアしていません。(月の魔物で留まりながら、地底にひたすら潜ってる)
なので、異世界難易度は1周目として、狩人はあの悪夢を数えきれないほどの周回している最強上位者狩人君です。


プロローグ

 俺は狩人。名前はとうに忘れ、人はハンターとも呼ぶ。ある日に謎の老人に青ざめた血を輸血され、それから地獄のような悪夢にうなされることになった。

 血に酔った人間共に、荒れ狂う獣に、得体の知れない上位者に、死腐臭漂う呪われた地下遺跡に。

 

 もううんざりでも、俺もまた血に酔い、何度死んでも夢だったかのように無限に目覚める。最早出会う者、見た者は全て我が敵であり、殺して、殺され続けた。

 最後には月に巣食う魔物を殺したことで、自らも上位者となり、悪夢を無理やり終わらせる。

 

 もう普通の人間に戻れないことなんて承知の上。いや、既に人間ではなくなった。人間だった時の感性も記憶も感覚も失った。

 俺にはこれ以上失うものなんて無い。

 

 上位者となり、人形にあやされ、そして……。

 

 夢から覚めた……と思いきや。そこは俺が知らない真っ白な空間だった。手足の感覚はある。身体を触ればその感触もある。夢だけど夢では無い。しかし悪夢では無いことも確か。

 ただ白く、殺風景ではあるものの、まるで母の腹の中のように包み込まれる感覚で、俺は不思議にも安心しきっていた。

 

 しばらくすると目の前に自ら発光する人の姿があった。それは若い女性で、真っ白な修道服のような。人間の感性で言えば“可愛い”と捉えられる物と言えるだろう。

 しかし顔はどこか幼かった。恐らく二〇代を下回る。彼女は自らを女神と称した。

 

「ようこそ。狩人様? ここは神界。あなたは上位者……? となり、悪……夢? から無事目覚めたようです……?」

 

 まるでそこに台本でもあるのだろうか。言葉の節々に疑問を持ちながら俺にそれを伝える。あの悪夢を知らず、上位者の存在も知らない。

 神と名乗るには知識不足と見える。まぁ、全ての神が全知という訳でもないか。

 

「な!? 失礼ですわね! 私はれきとした女神です。貴方が他とはあまりにも特殊な例すぎるのが悪いんですわ。

 地球でも無いし、日本でも無いし……ましてや外国人ですら無い。異界の人間……? いや、貴方からは人間の魂が………。っ!?」

 

 彼女は頬を膨らませて怒る。しかしすぐに俺の何かを見れば顔面蒼白にして狼狽え始める。どうしたものかと首を傾げていると、かなり慌てた様子を見せながらも、俺に対する態度が急変する。

 

「あわわわわ! 貴方、人間ですら無いじゃないですか! 怨霊という怨霊の魂が混ざり合って……血も無数の種類が混ざって白くドロドロ……。ひいぃっ! 化け物が転生してくるなんて聞いてませんわよぉ! 彼の処置は先輩方にお任せしなくては……!」

 

 俺が化け物か……神の視点ですらもそう見えてしまうとは。救いなんて最後まで無いものなのだな。同時に先程まで感じていた安らぎは消え、この真っ白な空間にも血に香りが漂ってきた。

 やはりこの感覚こそが俺に一番似合っている。この香りこそが、俺を“普通”にしてくれる。

 

「駄目だ……先輩はみんな仕事中! あーもう! そこの狩人とか変な人! 今すぐ異世界転生の手続きをするから私の質問に素直に答えなさい! って……さっきより醜いオーラが強くなってるじゃない!」

 

 息は荒く、はやく獣を狩りたいという衝動をなんとか抑えつつ、ふと聞こえた女神の声に耳を傾ける。

 

「貴方はこれから異世界に転生します。貴方の前世の罪状を見ると……言うまでもありませんが人と生き物を数えきれないほど殺していますね!! 貴方の転生先は人間であっても地獄のどん底の人生から始まるでしょう!

 しかし! とても遺憾ではありますが、女神はそんな貴方に最低限の慈悲を与えなくてはなりません! 貴方が欲しいものをなんでも一つだけ叶えましょう!」

 

 これから目覚める先もまた悪夢とでも言うのだろうか。全く、どうやら俺の地獄はまだまだ終わらないようだ。

 それに、叶えてほしいことを一つだけ。どんなことでも、か。

 

 ならば選択は一つ。これしか無い。

 俺の脳に瞳を。名伏しがたい啓蒙を俺にくれ。それで発狂しても構わない。アレがなくちゃやってられん。馬鹿には何も見えやしないのだから。

 

「ひぃいっ! 化け物はどこまで行っても化け物なんですね! それは麻薬かなにかかしら? えーっと……。“思考を高次元へ至らせるための狂人の頭蓋”? いやいやいや! んもう! どうにでもなれー!」

 

 女神は俺の手の中に手の平サイズの人の頭蓋を出した。濃厚な叡智が詰まっていそうな、非常に強いオーラを放つ頭蓋を俺は片手で握り潰す。

 その瞬間だった。人が獣になる姿、青白いぶよぶよ、脳に寄生する胎児、人骨の集合体、そして耳元に常に囁く赤子の鳴き声。

 

 悪夢の中で体験した多くの地獄の記憶が一斉に覚醒し、啓蒙がこれほどまでに無いほどに上がる。正に甘美であると同時に狂気の沙汰ではない走馬灯に、俺は発狂する。

 全身の穴という穴から大量の血を吹き出し、恍惚に浸る。あぁ、この感覚だよ。安らぎなんてものは当に忘れていたというのに。

 

「ちょちょちょ大丈夫なの!? 転生させる前にこの場で死んでもらっちゃ困るんですけど!」

 

 俺は太腿の付け根に輸血袋に注射針が付いた物を突き刺してから、平然とした表情で大丈夫であることを伝える。

 

「えええぇ……。まぁ、無事ならそれでいいわ。それではこれから貴方を異世界に転生させます。転生先は地獄のどん底。精々壊れないように頑張ることね。じゃ、いってらっしゃ〜い」

 

 そう言うと俺の視界はだんだんとフェードアウトしていき、完全に見えなくなるまでに女神は大きなゴミを漸く片付けられたとでも言っているような。満面の笑顔で俺を見送っていた。

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