狩人が異世界なろうする話   作:Leiren

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 意識を覚醒させる。しかし目の前は真っ暗で、どうしてか力もだいぶ弱っているような感覚。背中から伝わるのはとでも冷たくぬかるんだ土の感触。どうやら俺は地面に寝そべっているようだ。

 だが、瞼を閉じているのは分かっているはずなのに、いくら力を込めても開けられる気がしか無い。

 

 しばらく俺はそのまま身体を休めていると、突然腹部から伝わる激痛と怒号が俺の視界を強制的に開かせた。

 

「サボってんじゃねぇよ雑魚!! 早く起きろクソ野郎! 誰のおかげで生きながらえさせてもらってんのか忘れたか!?」

 

 完全に目を覚ますとそこは、殺風景ではあるものの土と岩が視界のずっと先まで広がり、所々に山が見える鉱山だった。

 俺より他に多くの人間が両手でツルハシやスコップを握り込み、土を掘り、岩を砕いているのが見て分かる。そして俺の目の前にはいまだにブチ切れる男の顔。

 

「寝ている暇があるなら働け! 疲れる暇があるなら働け! 生きたいなら働け!! お前らにはそれしかねぇんだよ……。ほら、テメェもぼーっとしてないで働けえぇ!」

 

 男は地面に座る俺の顔面に向けて膝蹴りをかましてきた。顔面の骨が全部砕ける感覚がする。だがもうこんな痛みには慣れた。

 大量の鼻血を垂れ流しながら、片手に持っていたスコップを杖にして体を立ち上がらせる。

 

 血が赤い……。鼻を勢いよく啜り、奥に溜まった血の塊を飲み込む。そうすれば新鮮な血の香りが鼻を突き抜けていき、とても良い気分になる。

 その瞬間、弱りきっていた力が急激に戻る感覚が全身に伝わる。

 

「ふん、良い表情しやがって……ついに頭もおかしくなっちまったか? じゃ、次はねぇぞ。次はお前が目覚める前に殺して……やる?」

 

 男はさっきから何を言ってるのだろうか。まるで人間の声をしていない。俺の耳には苦し紛れに吐く断末魔にしか聞こえない。

 気付けば俺は男の首筋にスコップの刃を突き刺していた。そして深々と突き刺さるスコップを捻り回し、首の骨が砕けていく音を聞きながら、勢いよく引き抜く。

 

「あ゛あ゛ッ……!?」

 

 大量の血を流して男は死んでしまった。人間はこうも簡単に死んでしまうのだな。

 するとその直後、周囲から次々と非難の声が上がる。

 

「や、やりやがった……」

 

「コイツ、やりやがった!」

 

「何してんだよお前ェ! こんなことしたらみんな道連れだぁ!」

 

「最悪だ、最悪だ最悪だ! まだ俺は死にたくねえってのに……!」

 

 全く耳障りだな。人の声というものはこんなにも騒がしかったか? 赤子の鳴き声の方が幾分かマシだ。

 さて、彼らが何を嘆いているのか知らないが、まだ殺し足りない。コイツは俺の目の前で瞳孔が開ききったフリをしている。

 

 "人間が首の骨を断っただけで死ぬわけが無い"だろう。別にコイツに恨みは無いが、次に俺が殺されると分かっているならば、徹底的に殺した方が良い。後で目覚めてもらっては困るからな。

 だから俺はスコップで何度も男を突き刺す。何度も、何度も。人の原型が無くなるまで。

 

「止めろおおおおおぉ!!」

 

 あぁ、本当に耳障りだ。こんなにも苛立ちを覚えるのは久しぶりだ。これ以上喚くなら周りのいる奴らも全員殺してやろうか。

 

「ひぃいっ!?」

 

 どうやら殺気が伝わってくれたようで。まったく。俺はこんな所で油を売っている暇は無い。いや、特にやることも思いつかないが、命令されて素直に従うほどに、俺は腐っていない。

 人の死血じゃまだ足りない。転生前の感覚を取り戻すためにもう少し血を得なくては。

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