空を駆るネクストになりたくて!   作:うろ底のトースター

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バカがレイブンじゃなくてレイヴンだ二度と間違えるなクソが!(自虐

もう間違えません、多分




愚痴を聞かせるために私を呼ぶな

王都ブシン流。ブシン流から派生したそれは、他と比べて実践的な剣術である、らしい。

 

どうだかな、私に言わせればまだ無駄が多い。奴も同じことを言うだろう。そして、その無駄が多い剣術をさらに無駄を足して振るっているのが、この学園の生徒たちだ。

 

まぁ、一部を除いてだが。

 

アレクシア王女の剣。姉のアイリス王女の『天才の剣』に対して『凡人の剣』と呼ばれている彼女の剣は、どこが見覚えがあった。

 

シャドウだ。バカみたいな理想を体現した剣。彼女はまさにその卵だ。

 

余程、姉に追いつきたかったのだろう。こうして打ち合っていると、必死の努力が見えてくる。だが悲しいかな。理想の剣故に手本を見れていない。シャドウの剣を見れば相当伸びるだろう。

 

「貴女の剣、やっぱり不思議ね」

 

ふむ、打ち合いながら話すのは嫌いなのだが、特別に許すとしよう。

 

「不思議、とは?」

 

「間違いなくいい剣なのに、こうして相対していると隙が多く見える。まるでもう一つの剣があるみたい」

 

「気のせいでは?」

 

「誤魔化すつもり?私だってだんだん分かるようになってきたのよ。隙を突こうと動けば痛手を負うのはこっちでしょう」

 

そこまで見えているか。素晴らしいな。

 

「一撃一撃が繊細で重い。これが二振り・・・貴女実は相当強いんじゃ」

 

「ふふ、アレクシア様にそんなにお褒めいただけるなんて。これ以上褒めたら私、天狗になってしまうかも知れません」

 

「天狗?」

 

「失礼。地元の言葉です。傲慢になってしまうという意味です」

 

「そう。いつか行ってみたいわね、貴女の地元」

 

ちなみにだが、一部と呼ばれる同学年の上澄みの中でも、アレクシアと満足に打ち合える生徒は私だけだ。つまりこの剣は、私が育てることができる。

 

刈り取るのが今から楽しみだな。

 

さて、彼女が私に対して素で接しているのは、私の努力の結果だ、と思う。教団を探るなら奴らの求めているものに近づくのが一番手っ取り早い。今回の場合は王族の血だ。

 

そこで、アレクシアと親しくなるために、こう、いろいろした。人付き合いが得意というわけでもないのでかなり苦労したが、彼女が欠点で人を見るタイプでよかった。彼女曰く、私は剣以外では欠点だらけらしい。

 

思うところはあるが、親しくなれただけいいか。

 

今のところ、学園内でアレクシアの周りに怪しい人物はいない。当たり前と言えば当たり前だが、少しの隙も見せないのが臆病者の教団らしい。

 

が、臆病者故に拠点の位置は予想がつく。広く複雑な構造の下水道だ。とはいえ確定ではなく、教団幹部クラスと遭遇するリスクもあるため調査は控えさせている。始めるのは七陰クラスを動かすだけの証拠を得てからだ。

 

王女の機嫌取りに教団の捜索。大変だが、予想外の楽しみもある。ただストレスの溜まる学園生活というわけでもなさそうだ。

 

「貴女、最近よく笑うようになったわね」

 

「そうですか?前々から笑っていたと思いますが」

 

「確かにしてたわね、愛想笑い」

 

「あら、バレてました?」

 

「私にはね。でも、今の笑顔は心の底からって感じがした。何かいいことでもあったの?」

 

「アレクシア様のお陰で学生生活が楽しくて仕方ないのです」

 

「そう、感謝しなさいよ」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

む、そっぽを向いてしまった。素直に感謝したのだが、何か怒らせるようなことをしただろうか。

 

「かわいい・・・」

 

「何かおっしゃいましたか?」

 

「え!?いや、なんでもないわ!」

 

この慌て様、なんかあるな。まあいい。追及しても答えんだろうからな。

 

「そ、そう!私このあと予定があるのよね!」

 

「そうなのですね。それではまた明日」

 

「ええ、また明日ね」

 

 

 

「はぁ、何よ、意識してる私がバカみたいじゃない」

 

 


 

 

私、アレクシア・ミドガルには友達がいる。そいつは、最近できた友達だ。

 

ルナ・オルレア。田舎貴族の一人娘で、特待生の中でも1位2位を争うほど優秀な生徒。

 

最初の印象は、弱気な子だった。私は容姿でも人柄でもなく、欠点で人を視る。その子は欠点だらけで、周りに流されながら、それを隠そうとしたり、逆に堂々と告白したりしていた。

 

無駄にいい容姿と入学時の成績の高さから随分と群がられていて、少し憐れに思った。気の弱そうなあの子にとっては大変だろうな〜とも思った。

 

それが覆ったのは、最初の王都ブシン流の実技。

 

彼女の剣は、歪なのに美しかった。緻密なのに強引で、隙だらけなのに無駄がない。きっと、あの場で彼女の剣の全てを理解した者はいないだろう。

 

あのゼノンでさえ、どこかおかしいがどこがおかしいのか分からない、と匙を投げていた。

 

この剣は昔からの悪癖だ、と彼女は困ったように笑った。

 

その日から、私の相手は彼女に決まった。

 

打ち合って分かったことがある。彼女の剣は、『天才の剣』であり『凡人の剣』でもある、ということだ。それを理解できたとき、私は混乱した。

 

今すぐ『凡人の剣』を捨てれば、彼女はもっと伸びる。間違いない。なのにどうしても捨てきれない、そんな剣。

 

なぜ、どうして。

 

私は荒ぶる感情をそのまま彼女にぶつけた。返ってきたのは、空を切ったような手応えだった。それは間違いなく、私が思い描いた理想の『凡人の剣』、その一端だった。

 

「ある人に出会うまで、私は敗北を知りませんでした」

 

彼女は語った。

 

「その人は、私に圧倒的な敗北を刻みつけました。とても悔しかったです。私は、その人に勝ちたいと強く思いました」

 

「私は何度も挑みました。でもその度に私は負けました」

 

「私は理解しました。この人には、私程度の才では勝てないと」

 

「だから私は、その人の剣を観て盗むことにしたんです」

 

それが、『凡人の剣』だった。

 

「なので、その剣を嫌わないであげてください。それはいつか、大輪の花を咲かせる強さの種です」

 

気の弱い子、憐れな子、流されやすい子。そんな印象だったのに、私はその子の内に、曲げられない強い芯を視た。

 

「私は、『凡人の剣』に勝ちます。そのために、アレクシア様、貴女の剣を盗ませてください」

 

「王族にそんなこと頼むの貴女だけよ。私が相手じゃなかったら首を刎ねられていたかも」

 

「それじゃあ」

 

「ええ、これからもよろしくね。貴女の剣、私も盗ませてもらうわ」

 

私はまだ、私の剣が嫌いだ。あの日無様に敗北した、情けない私の剣が嫌いだ。それでも、この子と打ち合っているときだけは、好きになれるような気がした。

 

こうして私は、初めて本音で話せる友達を得た。

 

友達になって、日々を一緒に過ごすことが多くなった。それで分かったことがある。

 

ルナは、剣以外はずぼらだ。休日に街へ繰り出そうとすれば出掛ける服がないといい、ならと服屋に連れていけばオシャレが何か分からないと言う。まぁ、着せ替え人形みたいで楽しかったけど。

 

ご飯も食べられればいいといった様子で、部屋も住めればいいとでもいうように殺風景。これは年頃の乙女がしていい生活ではない。

 

私はこの子に教育を施すことを決めた。

 

数週間に渡る奮闘の末、私の企てた計画は成就し、ルナはようやっと年相応の乙女らしくなった。

 

そして、あの子に告白する輩も増えた・・・。

 

これはまずい。あの子なら勢いで変な奴からの告白を受け入れかねない。いや別にあの子が誰と付き合おうと私に関係、いや!ある!全然ある!あの子が変な奴とお付き合いなんて私が認めないわ!そばで守ってあげないと!そう、友達!友達だからね!うん、他意なんてこれっぽっちもないんだから!決して誰かに盗られたくないとか、そんな感情はない!うん!ないのよ!というかあの子もあの子よ!何よ素直にありがとうございますって!ちょっと首を傾げてにこにこしながら言っちゃって!良かったわね私の意思が強くて!危うく人目もはばからずに抱き締めるところだったわ!

 

ハァ・・・ハァ・・・。

 

はぁ〜〜もう、最近の私は変だわ。あの子のこと考えると顔が熱くなる。

 

姉様と比べないで、ただのアレクシアを見てくれることが、私の剣を肯定されることが、こんなに嬉しいなんて。

 

あの子の剣を知るのは私だけでいいし、あの子には私だけを見ていてほしい。我ながら幼稚な独占欲だわ。バカみたい。

 

こんなのが私の初恋なんて。ほんっと、バカみたい。

 

 

 

「ア、ア、ア・・・・・・アレクシアおうにょ」

 

顔に登った熱が下っていくのは早かった。男子からの呼び出し。今まで何度もあったのだから、もうなんの用なのかは検討がつく。

 

「ぼ、ぼ、僕と」

 

ただ、タイミングが悪かったわね。初恋の相手と今しがたまた明日って言い合ってきたところに告白なんて。腹立たしいわ。二度と私の前に現れないようこっぴどく罵倒してやろうかしら。

 

あ、そうだ。昨日ルナが言ってたわね。

 

『ゼノン先生との婚約が嫌なら、仮の恋人を得るのはどうでしょうか。それで彼が動じるかは分かりませんが、気休め程度にはなるかと思います』

 

試してみるのも手ね。

 

「付き合ってくぁさぃ・・・・・・?」

 

「よろしくお願いします」

 

「ん?君、今なんて?」

 

「ですから・・・・・・よろしくお願いします」

 

 


 

 

「僕はラブコメの主人公になりたいんじゃなくてモブAになりたいの!なのにさ!おかしくない!?」

 

「愚痴を聞かせるために私を呼ぶな」

 

こいつ、懲りずにまた私を呼び出した。入学初日のあれはいい。アルファからの報告があったからだ。今回は、それはない。つまりこいつは純粋に愚痴りたくて私を呼んだわけだ。

 

こんな奴がトップで大丈夫かシャドウガーデン。いや、大丈夫か。実質的なトップはアルファだ。なら組織は回る。

 

しかし、話を聞くと確かに謎だ。何故アレクシアはあんな明らかフラれに来ましたって告白をOKしたんだ?それも田舎貴族の息子を。騎士団からの期待が集まるクレアの弟だからか?それとも別の要因がある?

 

考えうるのは・・・あのとき適当に言ったアドバイスか?

 

扱いやすい田舎貴族。当て馬にするには心もとないがゼノンを剥がしたあとは簡単に捨てれる。

 

なるほど確かに都合いい。

 

いやしかしさすがにそんな人道に反することは・・・しそうだな、彼女なら。

 

触らぬシャドウに祟なし。知らないふりをしておこう。

 

「それで、どうするつもりだ?」

 

「どうするもこうするも、どうにか別れるよ。とりあえず呆れさせる方針で行く予定」

 

「お前ならすぐに別れることができるだろうな」

 

私のアドバイスが原因でなければだが。

 

「応援してるよ」

 

「それはどうも」

 

ああ、ちょうどいい。一つ頼みごとをしておこう。

 

「恋人になったんだ、いつか剣を打ち合うこともあるだろう」

 

「かもね。それがどうかしたの?」

 

「いや、『凡人の剣』の手本を見せてやってほしいと思ってな」

 

「伸びるんだ」

 

「確実にな。もしかすればお前に届くかもしれんぞ」

 

「へー、楽しみだね。考えておくよ」

 

「そうしてくれ」

 

その日は、それで帰った。

 

 

 

奴らの関係は2週間続いた。どうやらアレクシアは、本当にゼノンへの当て馬としてシドと仮の恋人関係を築いたらしい。さすがに申し訳ない気持ちになった。いやしかし奴も大概だ。なんせ罰ゲームで告白したらしいからな。

 

それがバレた上に金まで支払われて、仕方なく恋人関係を続けていたようである。

 

しかしなぜ2週間で別れてしまったのか。ゼノンが諦めているようには見えないし、もしや本当に付き合い切れなくなったか?

 

と、考えながら教室へ向かっていたのだが、今日の学園はなんだか騒がしい。そういえば、いつもなら今頃私の肩を叩いて挨拶してくるだろうアレクシアがいない。

 

・・・なるほど攫われたか。とすると、容疑者には元恋人のシドが挙がりそうだな。他に誰が挙がるかは知らんが、どうせ容疑者から適当に選んで処刑。結局アレクシアの居場所は分からず仕舞い。と言ったところか。

 

は?アレクシアと最後に会ったのがシドで、騎士団に容疑者として連れていかれた?それ以外に容疑者なし?

 

思ってたより深刻かもな。果てには拷問される可能性もある・・・。奴が拷問を受ける、か。だんだん愉快な気分になってきたな。外出禁止令は出てるが、警備はざるだ。抜け出してちょっと覗きに行くか。

 

嘘だろあいつ、拷問されて楽しそうにしているぞ。なんなんだお前は。モブらしいことができるからそんなに嬉しいのか。本当に同じ人間か。

 

・・・帰ろう。続きはアルファが引き継いでくれるようだしな。

 

いや、やはり下水道の調査をしよう。疲れるが、全容くらいは大雑把にでも把握しておかなければ。

 

教団幹部と戦い、ついでにアレクシアを救うためにも、な。






ご乱心アレクシア様長文書きたくて仕方がなかった。だから書いた。


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