空を駆るネクストになりたくて!   作:うろ底のトースター

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難産です・・・。
僕ァずっと日常書いててぇよ。
向いてねぇよ戦闘。
向いてなさすぎてもはや最弱を冠してるよ。


バカ、アホ、マヌケ、カス

私は私の剣が嫌いだ。

 

姉と比べられる剣が嫌いだ。無様に負けた剣が嫌いだ。それでも捨てられないこの剣が嫌いだ。

 

私は、凡人の剣が嫌いだ。

 

『その剣を嫌わないであげてください』

 

レナ、貴女は言っていたわね。この剣はいずれ大輪の花になるって。

 

貴女の見た花は、あの剣なのね。

 

ギンッと、眼前で銀と漆黒が交差する。一方は膨大な魔力の込められた強力な剣。ゼノン・グリフィが振るうその剣は、今見ると随分と()()()()だった。

 

対してもう一方は、柔らかな剣。魔力もさほど込められておらず、速さがあるわけでもない。しかし、それでもゼノンの剣を捌いていた。

 

焦りがあったのだろうが、それでも力の差は歴然だった。銀が柔らかに流される。勢いのままバランスの崩れたゼノンの身体を、シャドウの剣の柄が打ち抜いた。

 

「ガッ!?」

 

倒れずに踏みとどまったのは、彼のプライドが許さなかったからだろうか。

 

「見誤ったか。想定以上に弱い」

 

「くっ!」

 

再度ゼノンが剣を振り、またもすり抜けるように逸れていった。水を斬るような感覚、薄い手応え。私はそれを知っている。いつか見たルナの凡人の剣。

 

貴女の勝てなかった相手は、もしかしてシャドウなの?

 

「よく、見ているな」

 

「・・・ええ、貴女に言われたもの」

 

「かつて私も奴から学んだ身だ。尤も、ほぼほぼ見て覚えたのだが」

 

「それ学んだって言えるの?」

 

「知らん。だがそうだな、このまま見ているだけではつまらんか」

 

奴が弱すぎるばかりになと、アンジェは付け加えた。

 

「大半の魔剣士は魔力の使い方が拙い。ただ放出して、剣に込めて斬る、それで戦えてると思っているんだ」

 

「違うの?」

 

「目の前に答えがあるだろう」

 

「うおぉぉぉぉあぁぁぁぁぁ!!」

 

会話を切り裂くように轟いた叫び。もう何度目かも分からない突撃を、ゼノンはまた繰り返していた。

 

「魔力に焦点を当てて見ていろ」

 

「これは・・・」

 

可視化できるほど荒れ狂う魔力に対して、シャドウの魔力は非常に少ない。いっそか弱いと言ってしまえるほどだ。

 

でも。

 

「一瞬だけ、跳ね上がってる?それも一部だけ?」

 

「正解だ。いい目をしているな。『使う魔力は最小、集中させて一気に解放』。回避も攻撃も、防御も同じだ」

 

「当たる瞬間に、当たる場所に魔力を集めて、解き放つ。これなら相手より魔力が少なくても防げる」

 

「そうだ。しかしあくまでそれは()()()()()()()()()()()()()

 

「防がざる、を得なかった?」

 

「奴に習って言うなら、いわばそれはレッスン1。そしてレッスン2は」

 

アンジェが、不敵に笑う。

 

「『間合いを掴めば力も速さも要らない』」

 

その瞬間、私は信じられないものを見た。

 

「『魔力さえも』な」

 

剣の側面に手が添えられ、軽く押していた。それだけで、ゼノンの全力の剣の軌道が逸れた。

 

「は?」

 

魔力に注視していたから分かった。その技術の異常性が。

 

「力も、魔力も、込められてない・・・?」

 

「正解だ」

 

卓越を超えて超越、こんなことって・・・。

 

「有り得ない!」

 

悲鳴のような声だった。

 

「貴様、何者だ!それだけの強さでありながら、何故正体を隠す!?」

 

「我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者。我らはただそれだけのためにある」

 

「シャドウガーデン・・・?教団とか、一体何なの・・・?」

 

「歴史の闇を牛耳る臆病者の集まり、それがディアボロス教団だ。私たちはこの教団と戦っている。戦いになったことは数える程度だがな」

 

「なら、シャドウガーデンは正義の立場にあるの?」

 

「奴が言っただろう。我々は教団を狩る、それだけの存在だ」

 

「私たちが教団に下れば、敵だと?」

 

「勿論だ。例え相手が無垢の民でも貧困に苦しむ子供でも、私は狩る」

 

「そんな・・・」

 

尋常じゃない覚悟だと分かる。正義感なんかじゃない、きっと憎しみだ。彼女にそんな覚悟を決めさせるほどの憎しみ。

 

「そうならんようにするのがお前たち国をまとめる者共の役目だろう。励めよ」

 

「言われなくても」

 

私にできるのは、彼女のような人間を二度と作らないこと。そのためには教団を知らないといけない。

 

けどまずは、この戦いを見届けないと。

 

「貴様が本気だと言うなら、私もそれに応えようじゃないか!」

 

焦り顔から一転し、自信を持ってゼノンが取り出したのは、赤い錠剤。乱暴に口に放り込んだそれを、ガリッと音を鳴らしながら噛み砕いた。

 

「チッ、結局それか」

 

途端にアンジェが不機嫌になる。

 

「あれは、何?」

 

「詳しくは知らん。が、魔力を増幅し、多少の再生能力を与えるものだ」

 

聞くだけなら厄介な代物だ。しかし、彼女が不機嫌になったのはもっと別な理由があるように思える。まるで玩具を奪われたかのような、そんな様子だ。

 

「あいつは誇りを捨てた。借り物の力に頼ったのだ。技術が足りないから力押し。単調でバカバカしいいっそ哀れな思考だ。イノシシと変わらん。そんなもので勝てるほど目の前の男は甘くないと何故分からん。バカ、アホ、マヌケ、カス」

 

「急に語彙がなくなった」

 

多少期待してただけに反動で凄いヘイトが向けられてる。上半身の筋肉が異常に隆起するという変貌を遂げたゼノンが、平時なら怖いはずなのに全然怖くない。

 

「それだけで飽き足らず最強を名乗ると・・・?あいつどこまで私の神経を逆撫ですれば気が済むんだ?殺すぞ」

 

「ついに脅しまでしだした」

 

案外子供っぽい人だなと思った。

 

戦闘が佳境に差し掛かる。錠剤を噛み砕いたゼノンの最強宣言にシャドウが憤り、我武者羅に振るわれる剣をかいくぐって拳や蹴りを食らわせていた。

 

圧倒的だ。強くなっても、もっと根本にある絶対的な差がゼノンに重くのしかかっているように思えた。

 

「何をちんたらやっているのだ!不愉快だ!さっさと殺せ!」

 

「もう少し落ち着いたほうがいいと思うわ」

 

さすがにキレすぎではないだろうか。

 

「いいだろう」

 

いいんだ。

 

「今ここに、真の最強を見せて仕舞いとしてやる」

 

「演出家め。アレをやる気か」

 

不愉快そうな台詞に対して、彼女はどこか喜んでいるように見えた。

 

アレとは何か、それを問うより先に戦場が大きく変化する。シャドウを中心に、紫の光が広がり、四方を区切った。さながらそれは檻のように、ゼノンを覆っていた。

 

「これは、これが、魔力なの・・・?」

 

「巻き込むことはないとは思うが、離れるなよ」

 

アンジェが私を庇うように立った。

 

「かつて、核に挑んだ男がいた。

 

男は身体を鍛え、精神を鍛え、技を鍛えた。

 

だが、それでも届かぬ高みがあった。

 

しかし、僕は諦めるわけにはいかなかった。

 

だから修行を重ねた果て、ひとつ、答えにたどり着いた・・・。

 

核で蒸発しないためには、

 

自分が核になればいい!!」

 

何を言っているかは分からない。けれどそれが、尋常ではない覚悟がそこにあることだけは分かった。

 

「この狂人がぁ!」

 

「馬鹿が、まだお前の剣が届くと思ってるのか」

 

ゼノンの振った剣がシャドウに触れると、粉々になって散った。

 

「折れたな」

 

諦めたように膝をついたゼノンを見て、彼女が言った。

 

「真の最強をその身に刻め。これぞ我が最強」

 

 

 

「アイ」

 

 

 

「アム」

 

 

 

「アトミック・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何があったのかなんて分からない。ただ強烈な光が一帯を飲み込み、削り、吹き飛ばしていた。暗い下水道に月明かりが差し込み、目の前に続いていた道が消えていた、と言えばその規模が伝わるだろうか。

 

「派手に吹き飛ばしたな」

 

彼女はまだそばにいて、満足そうに腕を組んでいた。私はその言葉で、この光景はシャドウが作り上げたものなのだと再認識することになった。

 

「さて、全て終わったようだからな。私も帰ることにする」

 

お前の姉に見つかっても面倒だと、肩を竦めた。そして振り返って、優しげに目を細めて言った。

 

「お前は、強くなれよ。そしてきっと、私と並んでくれ」

 

確かな期待の込もった言葉だった。

 

背負った黒い筒が動く。展開し、さながら小さな羽のような形に変化したそれに、激しい魔力が注がれていった。

 

「いずれまた」

 

筒から光が溢れ出す。その光に目が眩み、再び前を向くと、そこには彼女も、連れていた悪魔憑きだった少女もいなかった。

 

これで終わりだと、そう思った。疲れがあった。安堵があった。しかし、祭りの後のような寂しさもあった。

 

けれど今はそんなことよりも、剣が振りたい。

 

私は、足元に転がる剣を拾うと、月明かりに向かって型を振るった。

 

少しずつ前へ、あの理想に近付けるように。

 

 


 

 

例の事件が収束した次の朝、呼び鈴を連打する友人にうんざりしながら私は外に出た。わざとらしく寝癖を立て、今しがた起きましたと演出するのは忘れない。

 

焦ったように、興奮したように手を握ったそいつは、アレクシア様が見つかったと大喜びではしゃいでいた。私は安堵して涙を流す演技をした。

 

そのまま見舞いに行くことになった。こいつはバカなんだと私は納得した。せめて寝癖を直す時間とかないのか。というか朝早く行って迷惑になるとか考えないのか。そういう配慮はお前の中に存在しないのか。

 

そう思っていたが、検査入院をしている病院を訪れると意外にもすんなり通された。いいんだ。

 

アレクシアは、ベットから上半身だけを起こして私たちを出迎えた。私はまた泣く演技をした。涙腺に魔力で働きかけポロポロと涙を流すのに必死になっていたら、アレクシアもまた泣いていた。2人で抱き合ってわんわんと泣いた。何だこの時間は。

 

泣き疲れてアレクシアは眠った。私も疲れたのでさっさと帰って寝た。そして思いっきり遅刻した。何故あれだけの大穴ができているのに登校しなければいけないのか不思議である。

 

数日経って、入院期間を終えたアレクシアが登校を再開した。あんなことがあっても彼女は変わらず、普通の毎日を送っている。強い女だ。

 

だが変わったことがある。剣術の実技に以前にも増して意欲的に臨んでいることだ。目指す剣の完成体を見たからだろう、今まで以上に伸びが凄まじい。私が楽しめるようになるのも近そうだ。

 

しかし悪いこともある。アレクシアとの距離がとてつもなく近付いたのだ。腕を組むのは当たり前、食事も常に私の隣、わざわざ椅子を動かしてできるだけ近くに来る。休日も頻繁に誘われるようになった。最近できた百貨店モドキがお気に入りらしく、腕を引いて連れて行かれては着せ替え人形にされている。

 

そういえばあの店、ガンマのか。今度会いに行こう。近頃現れ始めた偽シャドウガーデンのこともあるしな。ガンマなら何か知ってるだろう。

 

きっとまた一波乱起こる。今度は楽しめるといいがな。




(寝癖を直す時間も惜しんで私の元に来てくれたのね・・・!好き・・・!)とか思ってる怪我人アレクシア。

そういえば原作6巻読んだんですけどね、シャドウのせいで殺人鬼が生まれてニコニコしてました。好きだよそういうのもっとちょうだい。
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