《アーミヤの手記、降臨から三か月》
明らかに、町全体に動揺が広がっているのが見て取れます。防衛線が圧迫されるにつれて、町の中にも恐魚の声やイシャームラの声が聞こえてくるようになったからでしょう。ケルシー先生も、ドクターも、必死にこの都市を守るために努力していますが、もう、ここが落ちるのも時間の問題でしょう。
私たちは、鉱石病を治療することを目的として今まで動いてきましたが、まさかその終点が、「海」に負ける結末になるとは思いませんでした。少し、残念と言えば残念です。ですが、これも一つの世界の結末、受け入れるしかないみたいです。
ロドス。明日への箱舟。私の家であり、私の居場所は、最後まで皆の希望であれたでしょうか。願わくば、もしこの地から人類が消え去っても、ロドスが歩んだ道のりが残り続けると嬉しいです。
ドクター。貴方はきっと、イシャームラに求められています。スカジさんの人間性の部分が、貴方を求めているのかもしれませんね。それでも私は、貴方を海の怪物たちには渡したくない。
イシャームラも、既にスカジさんではありません、彼女はもう死んだんです。アビサルハンターのグレイディーアさんも、スペクターさんも、イシャームラに殺されてしまいました。スカジさんなら、寂しがり屋で仲間思いなスカジなら、そんなことは出来ないでしょう。
だから私は、貴方を守ります。この身が朽ち果てて恐魚の餌となるその瞬間まで、私はドクターを守り続けます。
もし、私が居なくなった後、イシャームラが貴方を思い出し、スカジさんが蘇ったくれた時は……。
スカジさんを、許してあげてくださいね。それが出来るのはドクター、貴方だけですから。
《ケルシーの手記、降臨から三か月》
私の見立てでは、この都市は後一ヵ月もしないうちに落ちる。至極当然だろう、この都市自体張りぼてのものであり、長く耐えられるとは思っていなかった。三か月持っただけいい方だろう。ドクターや他オペレーターの活躍におかげで、ここまで持ちこたえられたのだから。
この三か月、私の人生の中で最も考え続けた日々のように思う。
しかし、海の怪物たちに対抗できるような策を講じることは何一つできなかった。つまり、私にはもう、何もできない。本当に不甲斐ないことだ。
ドクター。君との因縁も、鉱石病を完治できる病に変えることも、何一つとして解決できないまま、こうして終わりを迎えることになるのは非常に残念だ。
君はもしかしたら、私たちが朽ちてなお、この大地に立っているかもしれない。君はイシャームラに求められている様だからな。
私たちが居なくなった後、君一人で立ち向かえとも、テラの人類を再び創生しろとも言わない。ただ考え続け、再び世界に人類が発生した時のための手がかりを残して置いて欲しい。
探究を続け、記録を残す。君の得意分野のはずだ。つまりだな……。
生きてくれ、どうか生き延びてくれ、ドクター。