最強の落ちこぼれ王女イザベラ   作:ソロモンは燃えている

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3 魔物の正体

 

 

 

「ずいぶんな言いようだねぇ、カステルモール」

 

 先程まで自分の後ろに控えて忠義者面していた男の本音に苦笑していた。

 

「イザベラ様に対してなんと不敬な言いよう。

 お許しいただければ、すぐに粛清に向かいます」

 

 カステルモールと入れ替わるように現れて、イザベラの後ろに控えている男が怒りを滲ませる声で粛清の許可を求める。

 

「まぁ、待て。

 お前の忠誠は嬉しく思うが、今はオルレアン公派を泳がせておけと陛下に言われているからな」

 

「しかし!」

 

「散り散りになって逃げられると面倒だ。

 出来れば一度で片付けたいんだよ」

 

「わかりました。

 その時には必ず私をお使いください」

 

「ああ、存分に働いてもらうよ。

 何、それほど待たせることはないさ」

 

 男はガリアにおいて伯爵の地位にあり、イザベラに絶対の忠誠を誓っている。

 だが、それは王女と言う地位に対してではない。

 男の目は、イザベラの手にある小さな杖に向けられていた。

 

 遠く離れた場所にいるカステルモール達の会話を盗聴している魔法。

 その魔法の正体を知っているからこそ畏怖を感じずにはいられない。

 

 恐ろしいお方だ。

 このお方を敵に回すとは、オルレアン公派も愚かだな。

 

 男がこれほど恐れる魔法の正体、それは水のドット魔法ウォーター・ウィップ。

 水をムチの形にして操るだけの魔法だった。

 無数に枝分かれした水のムチは、視認が困難なほど細く圧縮されている。

 それらが王宮中に張り巡らされているのだ。

 高圧縮された水は鉄板すら容易く切り裂くことが出来る。

 ほとんど目に見えないほど圧縮された水のムチは、触れるだけで人体を切り裂けるほどの鋭さを持っていた。

 もはやムチではなく、水の糸と言うべき魔法へと昇華している。

 これこそがジョゼフ王の命を狙った暗殺者をバラバラに切り裂いた魔物の正体だった。

 

 この魔法は攻撃のみではなく、諜報にも使える。

 熟達したメイジは、自分の属性に対する感覚が鋭くなる。

 王宮中に張り巡らされた水の糸が周辺の空気中の水分の動きを感知して、まるで糸電話のように主人へと情報を届けるのだ。

 

 

「しかし、7号への命令はあれで良かったのですか?

 高難易度の任務を与えて、任務中に死なせるのが目的だと思っていましたが」

 

 タバサに与えられた任務は、正直なんでこちらに回したと思われる任務ばかりだった。

 

 貴族のバカ息子(引きこもり)を更生させる。

 

 イカサマを行なっている裏カジノの摘発

 

 前者は、息子の教育くらい自分でしろと言いたい。

 とても裏の組織に依頼するような内容ではない。

 後者も普通に憲兵や表の騎士団に任せればいい任務だ。

 

「オルレアン公派の貴族達がシャルロットに手を汚させたくないと手を回した結果だね。

 ちなみにシャルロットに殺すことが目的の任務を回そうとする圧力も消えてる。

 陛下の標的はシャルロットから私に変わったみたいなのよ」

 

「標的にされましたか」

 

「叔父様を殺したことでお父様は壊れてしまった。

 叔父様のように全力で戦っても勝てるか分からない相手と死力を尽くした戦いの末に喉笛を噛みちぎられたいなんて、趣味の悪い自殺ね。

 強くなれば私を見てくれると期待してたけど、まさかこんな形(殺し合う相手)で見られるなんてね」

 

「噛みちぎるおつもりで?」

 

「まさか、今まで見向きもしなかったくせに強くなったと見たら自殺の手伝いをさせようなんて虫が良すぎるわ!

 王としてこき使って、どうにもならなくなったら何処かの離宮にでも閉じ込めて退屈な余生を送らせてやる」

 

「お優しいですね」

 

 父親を死なせたくないと願うイザベラの言葉を聞き、男の目には畏怖とは違う温かなものが浮かぶ。

 

「そんなんじゃないわよ!

 王としては優秀だから、死なせるには惜しいだけだからね!」

 

「承知しております。

 しかし、陛下からいっそ殺してやろうかと思わせるために無茶な任務が回されているのでしょう?」

 

「ええ、次の任務はとんでもなく無茶だから、この案件をさっさと片付けてしまいたいわ」

 

 そう言って机の上に放り投げた指令書には『サビエラ村に現れた吸血鬼を討伐せよ』と書かれていた。

 

「なるほど、この案件なら私がお役に立てますね。

 お供させていただきます」

 

「そうだね、お前なら間違いないだろう。

 期待してるよ」

 

「お任せください」

 

 イザベラも北花壇騎士として任務に出発するのだった。

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