俺達は宿屋でアネスから話を聞いた後、幹部達に連絡をした。少し用があるので席を外す、という内容だ。
彼女からその集団の根城の大体の場所を聞き、転移する。ここからは歩きで捜索……と思ったのだが、その古城がやけに目立っていたので簡単に見つける事が出来た。空からでも良かったが、飛んでる所を見られたら困るからね。
「あそこか」
「はい。もう少し進めば、見張りがいる筈です」
「分かった。シン、間違っても殺すなよ?」
「分かっている」
だがその瞬間、アネスの額に向かって何処からか矢が飛んできた。シンがそれを平然とキャッチしたが……って、それも中々おかしいな。どんな反射神経してればそんな事が出来るんだ?流石、世紀末を生き抜いた男だと思った。
「もう既に敵の射程距離内か……」
「……仕方無い。空から城に入ろう」
「出来るのか?」
「あぁ。掴まってろよ!」
俺は二人を抱え、翼膜を出現させ大地を蹴る。その勢いで浮上し、一気に外壁に飛び移り、窓を破壊して中に侵入した。
「ふぅ……って、アネス大丈夫か?」
「怖かったです……あの人は、この奥の部屋にいる筈です。ついてきてください」
視界の先には、長い廊下の奥に見える扉。その前まで辿り着いた俺達は、ゆっくりと扉を開けた。
「なっ……」
中にいた男がこちらを見つめている。黒髪で蒼眼。大体シンと同い年か年下くらいの見た目だった。
「……アネス!どういう事だ!」
「あー、自己紹介するよ。俺はリムル=テンペスト。まぁ一応、魔王をやらせて貰っている」
「魔王……いや、今は貴様よりも気になる事がある……」
男はシンを指さした。
「南斗孤鷲拳……殉星のシンだな?」
「ほう、まさか貴様も……」
「俺は
「南斗蛇牙拳?」
「聞いた事がある。一体一の戦闘に特化した流派だったか」
「そうだ。しかしその魔王はともかく、何故お前がここに居る?」
「……この女に助けを求められたからだ。しかし古くからの友をも殺そうとするとは」
「魔物と共に生きるなどと、戯言を吐いたのだ!俺は断じてそんな事は許さん」
ザガロはキッパリと言い切った。凄いな、俺の部下達の堪忍袋をスパスパ切り裂けそうな感じだ。多分誰がついてきてもキレてただろう。
「確かにお前は魔物を恨んでるかもしれない。だが、全てがそんな残忍な訳じゃ無いんだ。ここはアネスの為にも、考え直してくれないか?故郷の生き残りなんだろ?」
「……あぁ、そうだ。確かにアネスはたった一人の生き残りだ。……だが!もしもそれを許せば、きっとこの集団は崩壊する……それは絶対に避けねばなら無い!人間だけで生きていく、それが俺の夢だ!!それを邪魔するのなら、例えアネスだろうと許さん!!」
「……リムル、こいつは俺が相手をする」
「何!?」
「俺は貴様の気持ちなど何一つ分からん。だがな……かつての俺を見ているようで堪らん」
「例え六聖拳といえど、容赦はせんぞーッ!」
ザガロがシンに飛び蹴りを放つ。それを余裕で回避し、裏に回った。俺はアネスを下がらせ、二人の戦いを見る事にした。南斗聖拳同士の戦いなんて貴重って言うレベルじゃ無いからな。
「ちぃ、ちょこまかと!」
「どうした、早く当ててみろ!」
ザガロの連撃を交わし続けるシン。流石は六聖拳と言った所か。対するザガロは余裕が無く、焦っている。
「舐めるな、
どうやら南斗蛇牙拳は孤鷲拳と同じく、突きを得意とする流派のようだ。ザガロの突き手がシンに迫るが、バックステップで回避する。
「そう来ると思ったぞ!」
「ほう……」
だがザガロは踏み込んだ右足を大きく前に倒し、体ごと上から振り下ろす形でシンの腿を軽く抉った。まるで、地を這い敵を強襲する蛇のように。
「なる程、蛇牙拳とはよく言った物だ」
「その余裕、いつまで保っていられるか試して見ろ!
ザガロはその勢いのまま地面に両手を付け、腕を使って空中に跳躍。そして一回転し、シンの頭めがけて踵落としを繰り出した。
「中々の連携だ……しかし!高度がちと高すぎたな!
シンも跳び上がり、ザガロを迎え撃つかのように真下から脚を突き出した。二人の技が空中で交錯し、やがて二人共着地する。シンはザガロを見たまま、無言で立っている。
「……」
「何だ、向かって……ぐおぉッ!?」
「そんな技だったのか……」
ザガロが一歩踏み出そうとした時、あいつの両肘、両膝が避けて血が吹き出始めた。これが獄屠「拳」の由来って訳か。……案外セコいな。
「リムル、貴様何か良からぬ事を考えたのではあるまいな」
「ま、まさかな」
「よそ見とは……舐められたものよ!」
ザガロはシンに向かって走り出し、高く跳び、両足を突き出す。
「苦し紛れの技か……」
シンはその両足を難なく両手で受け止める。しかし、ザガロは笑みを浮かべた。
「かかったな!」
「何!?」
ザガロは両足を大きく開き、今度は逆にシンが無防備となった。その体に、ザガロの突き手が迫る。
「奥義、
「……グフッ……」
「シン!」
シンの両肩に突き刺さった手を、ザガロはゆっくりと引き抜く。両足からシンの手が離れ、ザガロは地面に降り立った。
奥義は某波紋使いを参考にさせて頂きました。
次回、最終話です。