「……ちィ……」
シンは舌打ちしながら立ち上がった。それを見て、ザガロは驚いた様子を見せた。
「俺の四点抉斬牙突を……」
「……貴様の奥義の切れ味、中々の物だ……しかし!俺が奴に受けた拳に……『北斗の拳』に比べれば!足元にも及ばんわぁーッ!!」
一気に距離を詰めるシン。今度はザガロが防戦一方となった。なんとかシンの拳を避けているが、少しずつ傷が入っていく。だがシンの方もかなりの出血だ。俺は手を出さないように言われているので、黙って見ておく。本当に危なくなったら出よう。
「何故だ、何故そんな傷で動ける!」
「……何故だかは、俺にもよく分からん。しかし……俺は一度堕ちた身。その力を誰かの為に使えるなら……そう思うと、自然と力が湧いてくる気がするのだ」
「誰かの為だと……」
「貴様の根底にあるのは『憎悪』。結局は自分の気を晴らす為に拳を振るっている。それでは俺には敵わんぞ」
「……貴様ァーッ!ならば俺の奥義、破ってみろーッ!!」
再び、ザガロが跳ぶ。今度は先ほどのようなゆっくりとした跳躍ではなく、相手に食らいつくかのように鋭い軌道を描きシンに迫った。
「四点抉斬牙突!!」
その時、シンの全身を赤いオーラが包んだ。同時に屈み、力を貯める。
「俺の奥義を喰らわせてやろう」
「……まさか!」
「南斗孤鷲拳奥義!
「ぐあっ……」
その力を一気に解放し、真上に跳んだ。その蹴りは見事にザガロの胴体を捉え、その体に深く、長い傷を作っていく。シンが着地した時には、ザガロの体は真っ赤に染まっていた。
「ザガロ……!」
アネスがザガロの元に駆け寄る。しかし、その体は痛々しく避けており、既に虫の息だった。
「リムル!」
「なんだ?」
「こいつに、回復薬か何かをかけてくれ。お前の事だ、何本か持っているのだろう」
「なんで分かるんだよ。ほれ」
俺は言われた通りにザガロの体を治療する。すると傷はみるみる塞がっていき、その体に活力が戻って来た。うっすらと目を開けたザガロが、シンに向かって尋ねる。
「……何故だ?」
「お前が闘う事により、傷付き、悲しむ者がいる。これからはアネスの側にいてやれ。…………そして何よりも、俺のようになって欲しく無い。俺のような、愚か者にはな……」
「シン……」
「さらばだ、蛇牙の男ザガロよ……その牙を、友の為に使うがいい」
「……あぁ」
シンは背を向けて、扉に向かい歩き出した。俺も二人を一瞥してから、後についていく。やがて古城を出て、俺達が出て来た門の前まで戻って来た。
「……俺には、あの位の事しか出来ない。だが、それでいいのだ」
「あぁ。それで十分だよ、シン」
「そうか……」
その夜。部屋の窓から見た南天の星が、俺には一段と輝いて見えた。
短い間でしたが、沢山のご拝読ありがとうございました!