「うーむ……」
俺は画面の前で唸った。あいつ、まさか真正面からブラックスパイダーを突き破るとは……。
「なんと豪快な……」
ベニマルを始めとして、みんなも驚いている。そりゃそうだ。人間がランクBの魔物を素手で一撃とか前例が無さすぎる。
『リムルよ、俺にこんな物を寄越したのは失敗だったな!』
「リムル様に対してなんと不敬な!リムル様、このシオンがあの愚か者を……」
「や、流石にまずいって!これはあいつの実力を甘く見てた俺の責任だ。段階的に強さを上げていこう」
「あ、実験は止めないんですね……」
「お人が悪い……」
ベニマルとハクロウが呆れている。シンには一杯奢ってやれば良いだろう。
「いやー、お疲れ様!じゃあ続きも宜しく!」
「おい貴様、さっさと帰せ!」
「蘇生の腕輪があるだろ?」
「くっ……ええいやってやるわ!さっさと次を出せ!」
シンも了承してくれたし、次はランクB+の
六体もいるし、さっきみたいな事にはならないだろう。
……と思っていた時期が俺にもありました。
シンは開始早々オーガロード達を見て、攻撃を引き付けながら後退していき、六体がほぼ一直線に並んだタイミングで反撃開始。五人衆を突き手の連撃で粉々に引き裂き、オーガロードに至っては首元を一撃で貫かれて絶命させられた。時間にして約五分。
「う~~~む……」
「あんなに一瞬で……」
「リムル様」
みんなが悩む中、ハクロウが声を上げた。
「どうか、儂にやらせて頂けませぬか」
「いえ、ここは私が!」
「シオンかハクロウかぁ、ハクロウで!」
「リムル様!?」
「まぁ、ハクロウなら分かってるだろ?」
「えぇ、分かっておりますとも」
シンはただの人間。それにキレたシオンをぶつけたら何が起こるか、分からないハクロウじゃ無い。きっと手加減してくれる筈だ。ハクロウをシンの元に送り出す。
「む……確か、ハクロウと言ったな」
「如何にも。儂にも異界の拳法を披露してくれると嬉しいのだがの」
「謙遜するな。お前は今までとは格が違う」
「そうか、いらんか。では行かせて貰おう」
その瞬間、ハクロウは一瞬で距離を詰めた。シンも後ろに飛び退く。
「流石に避けるか」
「やはり速い……」
シンの胸元から血が垂れる。浅く斬りつけられたようだ。
「どうした、来ないか」
「……!」
「やっとやる気になったか」
シンの端整な顔が歪んだ。恐らく、あれがあいつの本性なのだろう。執念深い野心家と言った所か。
「よかろう、南斗孤鷲拳の切れ味、とくと見せてやるわーッ!」
今度はシンが攻める。突き手や回し蹴りを繰り出し、ハクロウに反撃の隙を与える事無く距離を詰めて言った。
ハクロウの得物は刀。リーチなら刀が上だが、至近距離での戦闘ならシンが有利だ。ハクロウとしても粘鋼糸を破る南斗聖拳と刀をかち合わせるのは避けたいだろうし。
「隙が無いの……しかし!」
攻撃を避け続けるハクロウだったが、大きく間合いを離した。そして上段から刀を振り下ろす。
「そんな斬撃、俺に止められないとでも思ったか!」
「おいおい、ハクロウの一撃を……」
だが、シンはそれを片手で受け止めた。親指と人差し指と中指の三本でしっかりと受け止められている。力もシンの方が上だ。
……ん?
「なぁ、なんか……シンからオーラが出てないか?」
《解。個体名:シンがユニークスキル『
ここに来てユニークスキル!?……いや、恐らく強敵と戦った事でシンの本性が目覚めたのだろう。あのオーラがスキル発動の証か。
シンのオーラは更に大きくなる。
「ハクロウ、俺とお前には決定的な違いがある」
「ほう」
「それは……欲望、執念だ。お前は確かに強い。だが、その穏便さが仇となったな!」
シンは刀を掴んだまま、ハクロウの首元に拳を突き出した。ハクロウはなんとか刀を抜き、間一髪で回避する。
「ふぅ、危なかったわい」
「後一歩だったがな」
その首筋からは血が垂れる。本当に間一髪だったのだろう。
「なる程、執念か……ならば、儂も気合を入れるとするかのう」
「お前が強くなればなる程、俺の執念も燃え盛る。これで仕留めてやる!!」
ハクロウは「気闘法」によるオーラを、シンは「執念者」によるオーラを。それぞれのが大きくなってゆき、輝きを増す。間合いは互いに充分。
先に仕掛けたのは、シンの方だった。ゆっくりと近付きながら構えをとり、溜めた力を一気に開放する。
「
今までとは比べ物にならない程の、高速の連撃。二十を優に超える残像を作り出す必殺の拳が、ハクロウに襲いかかった。
「執念、か」
「…………何!?」
たった一言。それだけで、シンの猛勢は終わりを告げた。ハクロウがシンの拳を捕らえ、腕を掴んだ。
「馬鹿な……」
「確かにお主の執念は凄まじい物だ。だが、会得して間もない力に負ける程落ちぶれてはおらん。そしてまずは、年上への敬意から学ぶが良い」
ハクロウは手を離し、一閃。
「誇るが良い、若造……いや、シン。人間が、儂に傷を追わせたのだからな」
「クッ……」
シンの体から血が噴き出し、地面に倒れ込む。そして、光の粒子となり消えて行った。……あ、そうだった、これ蘇生の腕輪の性能テストだったんだ!
今更思い出していると、ハクロウが地面にうずくまった。
「……ハクロウ!」
急いで側に駆け寄る。
「シンにはあのように言いましたが、儂も人の事を言えませんな」
服が裂け、無数の傷が出来ている。痛々しいが、「儂もまだまだですわい」と笑っていた。傷を治療して、外で待っているであろうシンの元に帰る事にした。
「なんて文句を言われるかな」
そんな事を考えながら、俺は外に戻った。
シンのユニークスキル。相手との力量差が大きい程自身の力が上がる。そして、勝利への欲望を増幅させ、敵への恐れを無くさせる力を持つ。
ちょっと強引だったけど許して