今日は魔国連邦の開国祭当日。闘技場建設に新たにハートも加わってくれて、スムーズに建設が進んだ甲斐もあって、先程無事に武闘会の開会挨拶を終える事が出来た。
俺も席に座り、試合を観戦する事にした。隣にはミョルマイルやシンがいる。ハートには悪いが、あいつは外回りを担当している。
「凄い熱気だな……」
「一大イベントだからな。これだけの規模は無かったらしいし」
「あの、そちらの方は……?」
「紹介がまだだったか。こいつはシン。俺の友人さ」
「よろしく頼む」
「え、えぇ。ミョルマイルと申します。シン殿、よろしく頼みますぞ」
幹部達だけじゃなく、他の人にもシンを紹介しておくべきだったか。まぁそれは後の事。今は観戦に集中するとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
バトルロワイヤルの予選が終わり、本選第一試合。ベニマルがゴズールを圧倒して終了となった。……だめだな、安易に名を与えたら。あんなのが量産されるのは阻止しなくてはならない。ま、これに関してはあいつの自業自得だけどね。
「あの牛頭、油断しすぎたな」
「あぁ。今後から名を与えるのは自重した方がいいな、これ」
「リムル、少し席を外す。ハートの様子を見てこよう」
「おう」
シンが立ち上がり、観客席を後にした。
シンは闘技場から出て、ハートがいる検問所に向かった。今は武闘会の真っ最中だが、外の売店で買い物を楽しむ者も多くいた。辺りを見渡すと、老若男女問わず笑顔を浮かべている。
「活気が溢れているな。流石は魔国連邦、と言った所か……」
色々な店や品物を見ていたシン。だが、その視線は唐突に止まった。その先にいたのは、一人の女性。買い物をする訳でも無く、辺りを見渡している。その顔は何かを探るような表情をしていた。
だが、それよりも。シンは彼女に衝撃を覚えた。
「ユ……ユリア……」
かつて彼がたった一人愛した女性、ユリアに。瓜二つという訳では無いが、雰囲気や見た目はかなり似ていた。じっと彼女を見つめていたシンだが、彼女と目が合う。すると、近付かれ、声をかけられた。
「あの……私に何か用で?」
「……いや、済まない……どうやら人違いだったようだ」
「そうでしたか。あなたも開国祭に?」
「……あぁ。この街は美しい。活気と笑顔に溢れている」
「ですね。魔物と人間がこうして互いに笑い合っているのは、初めて見ました」
「他では違うのか」
「えぇ。私の生まれ育った村では、魔物は危険な存在と言い伝えられて来ました。私自身もそう思っていたのですが、ここは違いますね」
「……」
静かに微笑む彼女を、シンはじっと見ていた。ハートの所に行く事も忘れ、その暖かい笑顔を見つめていた。
「私、アネスと申します。あの、良ければこれを……」
「これは、水晶?」
「はい。連絡用の水晶です。もし、また話す時が来れば……お願いです。どうか持っていてくれませんか?」
「……分かった。とっておこう」
「ありがとうございます。……そのお名前を伺っても……」
「俺はシンと言う」
「ではシンさん、またいつか……」
アネスは、人混みを掻き分けて遠くに消えて行った。シンは彼女が見えなくなるまで見続け、やっと本来の目的を思い出し、ハートの所に向かった。
「ハート、そちらはどうだ?」
「順調です。無礼な者にはお引き取り頂いていますがねぇ」
ハートが立つ小屋の奥には、何人かの男が積み重なって伸びていた。ハートらしいな、と思い、しばらくここで様子を見る事にした。
「……ハートよ」
「何でしょう」
「ケンシロウはまだ生きているだろうか」
「恐らく。ですが如何にケンシロウといえど聖帝や拳王には敵いませんよ」
「いや、分からんぞ」(奴の事だ。……あの男なら、ユリアを任せても良い)
そう思いながら、ハートの検問作業を眺める。皆あの巨体に驚いているが、問題無く検問を終えて入国していく。
しばらくした後。そろそろリムルの元に戻ろうとして検問所を出た。そして、彼女から通信が入ったのはその時だった。
めっちゃ間を開けたのに短めで申し訳ありません。
後一、二話くらいで完結となります。