「にひひ……」
「…………」
「うぅん……」
「ふふっ……」
「うぅ……えっと……あぅ……」
とあるアパートの一室、その居間にて五人の男女が小さな卓袱台を囲むように座っていた。
その五人の年齢及び容姿は様々で、中には幼子すらも混ざっている。
一見すれば親子のようにもみえるが、彼らの雰囲気を鑑みるとおそらくは違うだろう。
まず一人目は、この状況を見て面白そうに笑顔を浮かべている少年だ。
全体的に翠色の多い衣服を身に着け、二つのおさげをこめかみから垂らしており、その髪は毛先にいくにつれ碧色に染まっていた。
そんな彼は、全員が思い思いの表情をしているのを見て楽しそうに笑っている。
続いて二人目は、顎に手を当て目を閉じて考え込む、この中では最年長かと思われる長身の男性。
茶色を基調とした丈の長いコートのような衣服を身に纏う彼は、一房の髪を後頭部から垂らしており、その毛先は前述した少年と同じように、毛先にいくにつれ琥珀色に変わっていた。
考え込んでいる姿すら様になりそうな彼は、おそらくこの状況に対して自分なりの回答を探しているのだろう。
三人目は、二人目の男性と同じほどの身長をしている和服を着た女性である。
袖先にいくにつれて本紫色になっていく藤色を基調とした着物を優雅に着込み、豊かな紫の髪を織り込んで纏めている彼女の毛先も、まるで染めているかのように色が変わっている。
そんな彼女は、卓袱台を囲っている者達の姿を眺めた後、自身の手や服装を何度も見ては頭を抱えていた。
四人目は、この中で一番余裕のありそうな表情をしている少女だ。
彼女は白い生地の装飾が凝られた衣服を纏い、シロツメクサのように美しい白髪を髪飾りで纏め、サイドテールにしている。
もちろん毛先は他のものと同じように染められているかのように変わっていて、彼女の場合は若草色へと変じている。
そんな少女は、この状況に心の底から嬉しさを感じているかのように、まるで花のような笑みを浮かべていた。
最後の五人目は、おそらくこの五人の中では一番余裕がないであろうシルクハットをかぶった少女。
黒を基調としたまるで中世の演劇の登場人物が着ているかのような衣服を着こみ、美しい白髪にところどころ薄い青のメッシュが入っており、その姿はまるで精巧な人形のようだ。
そして前述したとおりに、この少女はまるで居心地が悪いのかいまだこの状況になれていないのかそわそわと落ち着かない様子である。
そんな大きな共通点を持っていないであろう五人が、とあるアパートの一室にすし詰めになって集まっていた。
あまりにも長く感じる沈黙の時間が経ち、おおよそ数分の時間が過ぎた頃、一人が口を開いて話しだす。
「……皆、この状況については理解しているか?」
「っ……え、ええ。ある程度は……」
話しだしたのは、先程まで目を閉じて考え込んでいた長身の男性。
琥珀色に輝く神々しい目で四人を見つめ、問いを投げかける。
「この状況について理解しているか」そんなありふれているようで中々言う機会のない言葉。
その中に含まれている意図は、ある種の核心を持って紡がれていた。
あまりの気迫に思わず息をのんだ紫髪の女性は、一瞬言葉を詰まらせながらもその質問に是として応える。
「僕もある程度は理解してるよ~」
「ええ、
「うえっ!? あ、あぁもちろん! 僕も理解しているとも!」
他の三人も各々男性の質問に是として応えていく。
その様子を見て、満足そうに頷いた男性は話しだした。
「まず、俺達は
「それを知っているということは……やはり、貴方もですか?」
「あぁ。自身の詳細に関しては一切明かさない不審な存在だったが、まぁこれも死ぬ寸前の余興だと思って軽く受け流していた。それがこのような形になるとは思ってもいなかったがな……」
「そうだね~。まさか自分を神だって本気で名乗る酔狂なやつがいるってどことなーく考えてたけど本当の神様みたいなやつに出会うのって初めてだな~」
「あら、
「あ、あんな存在が神だって!? ぼ、僕は、あまり、信じたくないぞ! ……で、でも、今があるのはその人のおかげだし……」
"死に至る"……"とある存在"……"神"……まるで空想のような言葉がただでさえ浮世離れした雰囲気を纏う彼らの口から発せられる。
一人はそれを変わらない事実だと認め一つの情報として処理し、一人は受け入れがたいながらもそれはそれとして割り切り、一人は愉快な出来事だと受け入れ、一人はその見た目にそぐわず確固とした意思で肯定を返し、一人は半ば受け入れられないと思いながらも不安そうに思考の渦にはまっていた。
「まさか本当に"
「えぇ、これが死の間際に見ている走馬灯の延長線上ではないのは確かですね……」
「うへ~、僕、本当に一度死んじゃったんだ~」
「んー、
「あ、あぁ……本当に死んじゃったのか……うっ……」
男性の放った"転生"という言葉に、それぞれ反応こそ違うものの納得はしているようだ。
――『
それは、肉体が生物学的な死を迎えた後には、非物質的な中核部――いわゆる『魂』については違った形態や肉体を得て新しい生活を送るという、哲学的、宗教的な概念のこと。
昨今では創作などでよく使われる要素になったものの、いまだその実態というものはつかめていない非現実的な事象である。
そんな言葉が男性の口から発せられ、なおかつ受け取り方こそ違うものの皆自覚はしているようだった。
これらの要素により、彼らは俗に言うところの"転生者"なのである。
「……一先ず転生してしまったものは仕方がないですね。あの存在も、私達を転生させるのはただのお節介だ、と言っていましたし……これからどうしていきましょうか……」
「ど、どうするって言われたって……」
「どうするったって、まずは自己紹介からじゃないの~?」
「賛成ね!
「ふっふっふ……それならまずは僕からだね♪」
大きくため息をついた紫髪の女性は、一先ずこの憂鬱な気分を変えるためにこれからのことを考えはじめる。
それに対し、先程からオドオドとした様子の少女の様子を知ってか知らずか、少年が次の話題である「自己紹介」を提示し、嬉しそうに幼子が賛成した。
それならばと真っ先に自己紹介を始めたのは少年だ。
「僕の名前は"ウェンティ"。お酒とリンゴと自由と詩が大好きな吟遊詩人さ♪」
「よろしくねウェンティ!
「自己紹介も初めてなのかい? それでは一曲――」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってくれないかい!?」
「あららら? どうしたのかい? あ、それとも先に自己紹介がしたいのかな?」
「自己紹介はあとでするよ! そ、それよりもその名前は
「あー、そういうことか……」
"ウェンティ"と名乗る少年はどこからか竪琴を取り出し、弦を指先でなれたように弾いていく。
その姿はまさしく童話に登場しそうな吟遊詩人だが、どこかおちゃらけた様子も相まってうさん臭さがある。
そんな彼の手を握りながら笑顔を浮かべる幼子は"ナヒーダ"と名乗った。
まるで全てが嬉しいかのように花のような笑顔を浮かべる彼女の様子に気を良くしたウェンティが一曲奏でようとすると、慌てたように貴族服の少女が止めに入る。
"この体達の名前"と深みのある言葉を使う少女に、今気づいたと言わんばかりに頬を掻きながらウェンティは呟いた。
その言葉が聞こえたのか、彼らのやり取りを見守っていた二人もとあることを呟く。
「"鍾離"……ふむ、やはりか……」
「"雷電影"……なるほど……」
「お、そっちの二人は気づいたみたいだね」
「な、何に気づいたんだい!?」
「……君も自分の名前を言ってみると良い。それでわかるはずだ」
「え? 僕の名前は"フリーナ・ドゥ・フォンテーヌ"……え……」
まるで自分が言った言葉が信じられないと言わんばかりに口元を抑える自分を"フリーナ"と名乗った少女。
その顔はみるみる青ざめていき、ある事実へと考えが至ったのか思わず座り込んでしまった。
「も、もしかして僕は……!?」
「あぁ。あの存在が言っていた通りなら、俺達は
「……あ、あはっ、あはははは……」
その事実を噛みしめた……噛みしめてしまったフリーナは、まるで壊れた人形のように笑いだし……
「きゅぅ……」
ついには気絶して倒れこんでしまった。
――これは、ありふれていない転生者……それも、ある世界では『神』と呼ばれる存在の姿と力を与えられた五人が、世界最強になる物語である。
※人物紹介※
・ウェンティ
オープンワールドRPG『原神』に登場する吟遊詩人……の肉体と名前を与えられた転生者。
経験以外はほぼウェンティな飲兵衛詩人。転生したことをめっちゃ楽しんでいる。
「あらら、気絶しちゃったよこの子。どうするの?」
・鍾離
同じく『原神』に登場する『往生堂』の客卿……の肉体と名前を与えられた転生者。
上と同じくほぼ鍾離な人という何気にすごい人物。自身達が転生させられた理由を考えている。
「ふむ、こういう時はまず横にして安静にさせるべきだな」
・雷電影
同じく『原神』に登場する稲妻幕府の将軍…の肉体と名前を与えられた転生者。
こっちもほぼ同じく肉体の元となった人物と経験以外同じ人。鍾離に次いでしっかりしている。
「ええ、押し入れから枕を取ってきます」
・ナヒーダ
同じく『原神』に登場する草の国の神……の肉体と名前を与えられた転生者。
こちらも肉体の元となった存在と似た精神性をしている。幼い見た目に反してしっかりと物事を捉えている。それはそれとしてものすごく楽しんでいる。
「ふふっ、驚きすぎて疲れちゃったのね」
・フリーナ
同じく『原神』に登場する水の国の神…の肉体と名前を与えられた転生者。
多分この中では一番元の肉体の人物と似ているようで似ていない精神性をしている。あまりの情報量の暴力に気絶した。
「う……うぅ……」
※後書き※
とりあえず思いついた一話を投稿してみました。
更新は不定期ですがやる気が上がれば更新したいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
それでは皆様また次回~