背伸びした奴が本物に分からされる話   作:パレード

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《戦闘シオン君の時系列》

1戦目:2個目のジムバッジ取得直後
2戦目:4個目のジムバッジ取得直後
3戦目:6個目のジムバッジ取得、レジェンドルートクリア、スターダストストリートクリア後にコライドン・ミライドンと出会った砂浜で戦闘開始
4戦目:エンディング後、再戦不可



バトル後に2度と会えなくなる系トレーナー

 

 砂浜での一件から2週間が経った。

 

 その間俺はいつも通り学校に通い、放課後になると全ての時間をポケモンの修行に費やした。

 

 最初こそとりあえずでやっていたが、続けている内に段々楽しくなって今では日々の楽しみになっている。

 

 振り返れば、今までバトルを純粋に楽しもうと思った事は無かった気がする。

 

 周りを見返す、そして陽キャになる。その為の手段でしかなかった。そんな考えで指示を出していたポケモン達に今更ながら申し訳ない気持ちが湧いてきた。

 

「……もうこんな時間か」

 

 スマホロトムのアラームが鳴り、修行を終える。

 

 ポケモン達をボールに戻し洞窟から出ようとすると誰かの足音が洞窟内に反響する。

 

 この2週間人間が来るなんて事無かったし、だからこそこの場所を選んだんだが、まぁ後1週間だし今後もこの場所を使おう。

 

「こんな所にいたのか。随分探したぜ」

「……お前は」

 

 唐突に声をかけられ一瞬ビクッとしたが、相手が知り合いだったので一安心。

 

 これでもかと反ったリーゼントに膝小僧丸出しの短パンの男。ネルケだ。アオイからの紹介で知り合った、まぁ友達だ。

 

「久しぶりだな。あん時は助けてくれてありがとうな」

「あの時………あぁ、転校の件か」

 

 そう。何を隠そうこの男、校長先生と深い仲で事前に話を通してくれたおかげで転校の話がスムーズに進んだ。

 

 恐らく、クラベル校長先生とは飲み仲間かなんかだと思う。

 

「急に転校したいって言われた時は驚いたぞ」

「俺にも事情があんだよ。お前には分かんねぇと思うが」

 

 今思えば、俺は中二病だったのかもしれない。世間的にはおじさんなネルケには分からないだろう。

 

「実際、今までで一番手応えを感じてるんだ」

「以前の自分に未練は無いのか?」

「…お前もそう言うのか?」

 

 ずっと長い悪夢を見ていた気分だった。夢に執着するあまりに本当の自分に蓋をして、無理に取り繕って、それに意識の大半を持っていかれていた。

 

 それが無くなった今、世界が輝いて見えるのだ。食べ物もちゃんと味がするし、ポケモンバトルの楽しさに気付けた。

 

 今では前の俺に戻るなんて考えられない位だ。

 

 なのに皆、口をそろえて言いやがる。

 

 前の方が良かっただの、元に戻ってだの。胸糞悪い事言いやがって。思い出したらイライラしてきた。

 

「昔に戻るなんて有り得ねぇよ。俺は今が一番楽しいんだ。ポケモンが段々強くなっていく感覚、最高なんだよ」

「シオンくん……」

 

 まぁでも、転校までの1週間我慢すればいい。

 

「ゴホン!アオイとはどうなんだ」

「なんで今アオイ?」

 

 言われてみれば、ここ2週間顔も合わせてない。いやこんな洞窟にいれば当然の事だが。

 

 ………いやコイツはどうしてここを知ってんの?まいいか。

 

「あれだ。何かやり残した事とか」

「やり残した事か………」

 

 少しだけ考える。

 

 そういえば、ジムバッジをまだ6個しか集めていない。二度とパルデアには戻るつもりは無いのでどうせなら全部集めたい。

 

 今の俺達なら、1週間もあれば2個くらい余裕だろう。

 

「……そういえばあったな。立て続けで悪いけど、学校休むから適当に理由付けといてくれ」

「そうか!いつでも取り消せるからな!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ジム戦、よろしくお願いします」

 

 食堂で昼飯を食っていたアオキにとある少年が声をかけた。

 

「……なんの事でしょうか?」

「貴方の事はアオイから聞いてます」

「……はぁ」

 

 誤魔化そうとしたアオキだったが、流石にチャンピオンの名前を出されたら誤魔化す訳にはいかない。アオイ経由でトップにバレたら面倒臭いからだ。

 

「あなたは?」

「シオンです」

「あなたが?」

 

 シオン。その名前には聞き覚えがある。アオイの口から何度も聞いた名前だ。惚気話をウンザリする程聞かされた。

 

「……聞いていた話と全く違いますね」

「貴方は聞いてた話のまんまですね。気が合いそうだ」

 

 耳にたこができる程聞いたシオンの特徴はサーフゴー顔負けの鮮やかな金髪に常ににこやかな表情で、少し胡散臭い喋り方をするが頼りになる少年。

 

 物の見事に全てが相違している。

 

(相手が相手ですし、当然と言えば当然ですね)

 

 天才のライバルになってしまった凡人は高確率で拗らせてしまう。そういうトレーナーはそのまま潰れてしまうのだが、その様子が見られない限り彼も充分天才の部類に入るトレーナーだった事が窺える。

 

 アオイは彼との出会いで変わる事が出来たと言っていたが、彼もアオイと出会って変わり果てたようだ。

 

 大人として何とかしてやりたい気持ちもあるが、ただの部外者でしかないアオキにはどうする事も出来ないだろう。

 

「早く終わらせましょう」

「そうですね。飯の時間が無くなってしまう」

 

 

 

 

 

 ポケモンをボールに戻しバッジを受け取ったシオンは食堂を後にした。

 

 アオキは席に戻り、おにぎりを数十個注文する。

 

 ジム戦用のポケモンとはいえ、アオキのポケモンはたった1体のポケモンに全てやられてしまった。

 

 あれが才能が無くて悩んでいるトレーナー?悪い冗談だ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 チャンプルジムを突破して、最後のジムがあるナッペ山ジムに向かっている俺だったが、とある問題に直面していた。

 

 その問題とはズバリ、雪山を登らなければいけない事だ。

 

 リフトなんてものは存在しないので、ポケモンの背に乗るか歩くかの二択になるのだが、俺の手持ちにそんなポケモンはいないので必然的に歩きでジムまで向かわなきゃいけない。何故こんな場所に建てたのかはパルデア七不思議に入るとか入らないとか。

 

 大きめのコートを買ったので多少の寒さは防げる算段だったが普通に寒い。

 

 それとこれは大事だし、もしかしたら本当に取り返しがつかない事なのかもしれないけど、遭難してしまった。別に寒さでおかしくなった訳じゃない。おかしくなったのはスマホロトムだけだ。電源すら入らない。雪で視界が遮られたのも良くなかった。

 

 こんな事になるんだったらエンブオー達を連れてくれば良かった。どうせバトルには出さないんだしバッグが重くなるのでポケセンに預けた過去の自分を殴りつけてやりたい。

 

 そもそもなんで交通手段が皆無なんだ。バトル強いのと雪山登れるかは別問題でしょーが。

 

 今度からは皆のボールをちゃんと持ち歩くことにしようと心に決めた。

 

 俺に今度があればの話だが……………

 

 

 

 

「死ぬ程疲れた」

 

 気合いでジムまで辿り着いた俺はジムリーダーに勝利して見事全てのバッジを集める事に成功し、グレープアカデミーに帰ってきた。

 

 バッジが揃い晴れて四天王への切符を手にしたが、5日間ナッペ山をさ迷っていたせいでそんな時間が無い。オレナッペヤマユルサナイ。

 

 主にナッペ山のせいで寝不足なのでイライラする。早く寝ないとコノヨザルになってまう。

 

「シオン!!」

 

 寮に戻ると入口の前に見覚えのある人影が。アオイだ。

 

「今までどこに行ってたの?どこを探しても見つからないし、クラベル先生に聞いたら転校するって、どういう事なの!!」

 

 俺の素早さを下げてきそうな顔でまくし立てるアオイ。思い返すとアオイにその話をした記憶がない。

 

「俺が居なくなっても変わらないだろ」

「変わるよ、ずっと一緒がいいよ!こんな気持ちじゃなくて、学校の事とかバトルの事をもっと教えてほしかった!!」

「もう教える事ないだろ、お前充分強いし、学校の事はペパーとかに聞きな」

「…………分かった」

 

 そう言いながらボールを構えるアオイ。

 

 いやそれ絶対分かってないやつだって。もう帰らせてくれ。

 

 早く温かいお風呂に浸かってフカフカのベッドで寝たい。なのに何故だろう。とてもワクワクする。

 

 客観的に見ても、パルデア地方で一番強いのはアオイだと思う。もしかしたらメイの奴より強いかもしれない。

 

 バトルの味を知った俺の前に、そんな奴がいる。

 

 俺は思ったよりずっとポケモンバトルが好きだった事を自覚した。

 

 疲れは吹き飛び、俺もボールを構える。

 

「ちょうどいい。俺も今、自分がどこまで行ったのか試してみたい」

「無理矢理にでも目を覚まさせるから。本気でやるよ」

「本気………か」

 

 アオイの本気宣言を聞いて、持っていたボールを別のボールに持ち変える。ナッペ山での反省を活かして持ち歩いていたイッシュ地方で捕まえたポケモンだ。

 

 パルデアメンバーには悪いがこの勝負、俺も本気で勝ちに行く。

 

「叩き潰して、ラウドボーン」

「サザンドラ!!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ラティオス戦闘不能!!」

 

 俺のポケモンが倒され、ギャラリーが沸き立つ。

 

 最初は俺とアオイの2人で始まったバトル。いつの間にか周りは観客で埋め尽くされ審判までついている。

 

 さて、俺の手持ちは残り1体な訳だが、アオイは残り2体。

 

 その時その時で最良のポケモンを選択し、イッシュを制した知識とパルデアで手に入れた情熱を以てしても俺は追い詰められている。

 

 それが堪らなく楽しくてバトルが始まってからずっと手が震えている。

 

「エンブオー!!」

 

 力いっぱいボールを投げ最後のポケモンを繰り出す。

 

「全部ぶつけるぞ!全てを!!エンブオー!!」

 

 テラスオーブを起動してエンブオーの頭上に投げテラスタルする。

 

「『かえんほうしゃ』!」

「避けてガブリアス!」

 

 指示通り避けようとするが従来の物とは速度も威力も段違いに上昇した『かえんほうしゃ』を避けきれずに喰らう。

 

「ガブリアス戦闘不能!!」

 

 目を回すガブリアスをボールに戻し、アオイは特別なモンスターボールを取り出した。

 

「あと一息だよ、ミライドン!」

「アギャャャッ!!」

 

 通常のポケモンより一回り大きな巨体のポケモンが地面を揺らす。それと同時にフィールドを黄色の霧が覆い、静電気が肌を突き刺した。

 

 相性は不利だが、だからこそ面白い。

 

 やっぱり俺、めっちゃバトルが好きだ。

 

「アオイ!お前に勝つ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 世界と()()()()は鶏と卵の関係に似ている。

 

 世界があってソイツ等が生まれたのか、ソイツ等の為に世界が生まれたのか。そりゃ先に生まれたのは世界だろうけどそう思ってしまう程の天才は確かに存在している。

 

 少なくとも俺はそんな奴を2人見た事がある。

 

 その内の1人のアオイとの勝負が今終わった。

 

 本気で勝ちに行ったが、この結果には納得している。

 

 バトルが終わり、疲労を思い出した身体が膝から崩れ落ちた。

 

 騒がしかった周囲がしんと静まり返った。何とか立ち上がりアオイの健闘を称える。

 

「いい勝負だった。ありがとう。俺はまだまだ先に行ける。今までのお遊びじゃない。本気で上を目指す」

「シオン!お願い待って!」

 

 後ろから声が聞こえるが、流石に眠い。話は明日聞いてやるからもう寝かせてもらう。

 

 自室に戻った俺は歯磨きだけ済ませ、眠りに就いた。

 





『シオン』
陽キャっぽい振る舞いに思考を囚われていた。それを辞めたら世界輝いて見えてて草。
今が一番人生をエンジョイしてる。ポケモンバトルエンジョイ勢からガチエンジョイ勢になった。


『アオイ』
転入初日で不安だった所を優しくされてそれからも沢山自分を助けてくれた大好きな先輩を自分の手で闇堕ちさせた(と思い込んでる)人。しかし昔のシオンの教えで今も青春を楽しんでる。卒業したら必ず見つけ出して元に戻すからな。


『シオン』(プレイヤー視点)
バトルが大好きな2年生だったがポケモンを手にして間もない後輩にこれでもかと格の違いを見せつけられ、自分の在り方に悩んでいた陽キャ。
闇堕ちした挙句、最終戦では手持ちを1体を除いて総入れ替えしてガチったにも関わらず敗北。セリフからも完全に闇堕ちしてしまった。



 次回は闇堕ちしてしまったシオン君を見たプレイヤー達の掲示板回です。多分。
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