背伸びした奴が本物に分からされる話   作:パレード

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アデク→N→トウコ→アデク→アイリス→シオン→アイリス→メイ→アイリス

 短期間でイッシュのチャンピオン変わりすぎという掲示板に出来そうな事実に気付いてしまった。



ポケモントレーナーのトウコが勝負をしかけてきた!

 

 トウコが帰ってきた。

 

 その報せを聞いたチェレンはいち早く彼女の自宅に駆け付けた。

 

 チャイムを鳴らし、その場で少し待っているとドアが開く。

 

「あら、チェレン君。久しぶりね」

 

 出迎えてくれたのはトウコ本人ではなく、彼女の母親だった。

 

「ウチに来たって事はトウコに何か用があったのかしら?」

「ええ。ある少年から彼女への伝言を預かってまして……」

「そうなのね。……でもゴメンなさい。あの子もう次の旅に出かけてしまったの。今頃は飛行機の中かしら」

「え?」

 

 情報が間違っていなければ昨日帰ったばかりのハズだが、もう次の旅に行ってしまったのか。

 

(これは困ったな。シオンからの伝言が……)

 

 ライブキャスターはイッシュ地方内でしか使えない。今はスマホで連絡が取れるが、普及し始めたのはトウコが旅に出てから。

 

 つまりトウコに連絡をする手段が無い。

 

 ここまで考えるが、今目の前にいる人がトウコの母親である事を思い出す。

 

「あの、トウコの連絡先を教えて頂けませんか?」

「それが私も聞けてないのよ。帰ってからずっと何かの調べ物で忙しそうで、今朝急に家を出ていったの」

「そう……ですか。因みに彼女はどこへ旅を?」

「確かパルデア地方よ。シオン君って子に会いに行くって」

「……!そうですか」

 

 実は、シオンからの伝言というのも「俺がパルデア地方に行ったってことトウコが帰ったら伝えてくれ」という物だった。

 

 しかし、トウコが自分で調べて会いに行ったのなら、この伝言を伝える必要はもう無いだろう。

 

 2人の間にどんな約束があったのかはチェレンは知らない。

 

 だけど、その約束はきっと、いや絶対に良い方向へ進む。

 

 何故なら彼女たちはイッシュ地方最強の称号をいただいた誇り高きポケモントレーナーだから。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

(許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。絶対に許さない。シオン)

 

 まず、チェレンの予想は大きく外れていた。

 

 事の発端は昨日。空港から自宅に帰るため乗車したバスの中。

 

 時刻は9時であったが、すでに飛行機でたっぷり寝てしまったトウコは寝る事が出来ず、そこで彼女は自身と将来を誓った相手であるシオンについて調べる事にした。

 

 ネタバレを避ける為、今まではあえて調べずにいたがもう大丈夫だろう。

 

 さてさて。軽く殿堂入りくらいはしてるんだろうな?と検索をかける。

 

(……は?何コレ?)

 

 Wikiのプロフィールを見ると確かにチャンピオンにはなっていた。しかし短期間で辞退してしまった様でその後の行方は不明と記載されている。最後に発見されたのは空港らしい。

 

 それが意味する事。それはシオンが自分との約束をすっぽかして他の地方に行ってしまった事だ。

 

 この時点で許されない事は火を見るより明らかである。

 

 更に手がかりはないかとスクロールをするが情報は無し。

 

 次にネット掲示板に手掛かりは無いか探してみる。

 

『《速報》イッシュのチャンピオンまた変わる』

 確かに変わりすぎだが、これには載ってない。

 

『《悲報》最強炎サポーターシオン君。行方不明により復刻しないのが確定』

 これにも載ってない。因みにトウコは完凸してる。

 

『シオンとかいう2日でチャンピオンクビになった雑魚www』

 こいつはいつかす。

 

『《速報》シオンらしきトレーナー見つかる』

 ………これだ。

 

 この掲示板に貼られていた動画でバトルをしている少年のポケモントレーナー。黒髪で誤魔化しているがバレバレ。完全にシオンだ。

 

 背景は……城?いやバトルをしている本人たちや観客のほとんどが制服を着ている事を考えると学校か?

 

 これ程デカい学校ならある程度の場所は特定できる……が、まずは動画を最後まで見てみる。

 

 するとバトルの終盤。シオンと対戦相手の少女が黒いモンスターボールを投げるとバトル場のポケモンが光り輝き頭上には巨大な結晶の王冠が出現する。

 

 テラスタルだ。旅先のトレーナーから話で聞いた事がある。ポケモンが宝石の様な輝きを放ち能力が上昇する現象。実際に見た事は無いが、間違いなくこの事だ。

 

 迎えに行くのは思ったより簡単そうだ。

 

 

 あれ程巨大な学校となると全世界でも数は限られる。それに制服も判明しているので特定するのにそう時間はかからなかった。あの場所はパルデア地方のグレープアカデミーという所らしい。

 

 そしてその学校の制服をシオンが着ている。これがトウコの早とちりで、実は旅行中の短い滞在でした。ではなく、完全な移住である事を証明している。

 

 シオンの居場所がパルデア地方だと断定したトウコはすぐさま空港にとんぼ帰りし、今はパルデア行きの飛行機に搭乗中だ。

 

 目的はもちろんシオンに会いに行く為だ。

 

 1人の少女がかつて再会を誓った少年にはるばる会いに行く。なんて情熱的な話だろうか。

 

(まずは僕から逃げた分のポケモンバトル。その次に約束を忘れた分のバトル。その次に髪を染めて誤魔化そうとした分のバトル。最後に言い訳を聞いた後にバトル………)

 

 情熱的ですね!

 

 こんな感じでトウコの機嫌は過去最高に最悪だった。

 

 それでも怒りの発散方法がバトルなのはマシな方だ。

 

「あの、お客様?」

「…………」

「先程からお顔を顰めてらっしゃいますが、ご気分が優れないのかと……」

 

 彼女のただでさえ険しい顔が、眉間にシワが寄ることで更に……

 

 旅を始めた頃、虫取り少年に顔が原因でギャン泣きされてから笑顔を意識するようにしているのだが、この状況では流石の彼女でも微笑みを保つ事は出来なかったようだ。

 

 こういう時は寝るに限る。その間はイラつきを感じる事は無いし、起きた頃には少しは機嫌も良くなる事だろう。

 

 目を瞑り何も考えずにジッとする。それからしばらくしてトウコは深い眠りについた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 ………体が痛い。寝ている間に変な体勢になった様であちこちが痛い。それに機嫌は1ミリも治っていない。

 

 折角パルデアに着いたというのに、これじゃ新天地のワクワクなんてあったものではない。

 

 しかしこんなに機嫌が悪くても彼女には行かなきゃならない場所がある。

 

 それはこのパルデア地方の中心からやや下の位置に建つ巨大な建造物。『グレープアカデミー』だ。

 

 ここからあまり距離は無い。すぐに着くだろう。

 

 長年の旅で鍛えられたトウコは一度も休む事無く走りぬけ、アカデミーの目の前までやって来た。

 

 やはり走るのは良い。自分の足を動かし風を感じる。少しだけ気分が晴れた。

 

 1秒で息を整え、いざグレープアカデミーに突撃しようと1歩踏み出した。

 

「あ!強そうな子発見!」

「………?」

 

 広場に女の子の声が響く。気になって声の方を向けば、声の主と思われる背の高い褐色の女の子。その横にはちょっと顔の怖い男の子と髪色が派手なメガネの女の子がいた。

 

 そして褐色の子が指をさしているのは、自意識過剰でなければトウコに向かってだ。

 

 いや、後ろにいる誰かかもしれない。存在するかも分からない誰かに期待を込め後ろを見る。

 

 ………誰もいない。のでもう一度前を向く。

 

 そこには目と鼻の先まで迫って来た褐色の女の子。びっくりして後ずさるもその分女の子が詰め寄ってくる。

 

「ね!ね!キミ生徒じゃないでしょ!?入学するの!?名前は!?それより私とバトルしよ!!」

 

 あっ………凄い身振り手振りする系の人だ。

 

 トウコの一番苦手なタイプだ。それでも何とか彼女の質問に一つ一つ答えていく。

 

「………………」

「アカデミーには人探しに来たんだ!名前はトウコっていうんだね!バトルは探してる人が見つかってから?……ところで今から私とバトルしない!?」

「いや、無理矢理押し通そうとすんなって」

「てか今この人喋ってなくない?その情報はどこから拾ったん?」

「えーっとね。なんか頭の中に直接響く感じで、何となくこう言ってるんだなって!」

「何それ………コワ。幽霊じゃね」

 

 おい。僕だって人の子だぞ。普通に傷付くんだぞ!

 

「ほら!頭の中に響く感じでしょ!」

「サイキッカー!?すげーちゃんだな、オマエ!」

「コイツ!脳内に直接!?キm……ユニーク!」

 

 マジでそろそろ泣いてもいいんだぜ?

 

「ご、ごめん。……えとうちボタン」

「急に自己紹介かよ?話の転換下手過ぎちゃんだぞ」

「でもこっちもまだ名前言ってなかったからちょうど良いよ!私はネモ!親睦の証にバトルを………」

「あー!俺はペパーってんだ!料理の事なら何でも聞いてくれよな!」

 

 あっ………うす。よろしくっす。

 

「トウコはどこから来たの!?」

 

 イッシュ地方っす………

 

「わー!わたし。イッシュ地方のポケモン見てみたいなー!バトルで!」

「コイツの事は気にすんな。ただのバトルジャンキーだから。で、トウコは人探しにここ来たんだろ?生徒の誰かか?」

 

 実に良い事を聞いてくれた。トウコは件の動画を3人に見せる。

 

「あっ!これあの時の!」

「うげっ!」

「あの時のかー」

「良いバトルだったよね!先輩凄い楽しそうで私も飛び入り参加しちゃうところだったよ!」

「オマエまだそんな事言ってんのかよ………」

「ネモのそーいうとこマジでネモ!」

「なにをー!?」

 

 トウコを置き去りにして言い争う3人。ここに割り込む勇気を持ち合わせている訳も無く、終わるまでじっと見守る事しか出来ない。

 

「で、この中の誰を探してんだ」

 

 言い争いから抜けてきたペパーの質問に答える。

 

 ここでバトルしている黒髪の少年。名前はシオン。この生徒を探している…………ふと横目でペパーを見ると物凄く渋い表情をしていた。

 

「おう、マジか。…マジか。ちょっと待っててなトウコ」

 

 そう言ってペパーは未だネモと言い争うボタンを引き剥がして2人でコソコソ話を始めた。

 

「トウコ。探してる生徒。シオン」

「マジで。シオン。パイセン?」

「マジ。アオイと。接触厳禁」

「了解」

 

 2人は話が見えてきた。

 

 生徒の誰かが撮ってネットに投稿しやがった動画を偶然トウコが発見。

 

 そこに映っていたのは様子がおかしいシオンの姿。

 

 それを心配したトウコが様子を見るためにここに来る。という事だろう。

 

 これは非常にマズイ状況だ。わざわざイッシュからパルデアまで行こうとなるレベルの関係性の相手があんな無惨な状態になっている。

 

 そしてその原因となった者がいる。

 

 何も無ければバレない。だがアオイと会わせてしまえばバレてしまうかもしれない。そうなれば大変な事になるのは確実だ。

 

「へー。シオン先輩を探してるんだ!でも先輩もう学校辞めて他の地方に行っちゃったんだよねー!もっとバトルしたかったのに!」

 

 トウコの眉が僅かに動く。

 

 なんだと。じゃあシオンはどこに行ったんだ。

 

「うーん。そこまでは分からないや!あ、もしかしたらアオイが知ってるかも………」

「「わーーーー!!!」」

 

 ん?アオイ?

 

「空が青いなって言ったんだよ!な、ネモ!?」

「いや、普通にアオイの事……」

「確かに今日の空青いわー。いつもより5割増しで青いわー」

 

 いや、確かに空は青いけどそんな特別感ある青じゃ……

 

 アレ?

 

 あっちから手を振って走って来てる子って、みんなの友達?

 

「「え?」」

「あ!アオ……むぐぅ!?」

 

 ボタンがネモの口を塞ぎ、ペパーは手を振っていた子目掛けて走って行ってしまった。

 

 何事?

 

「むぐー!」

「いやいや、お構いなく!」

 

 ボタンはそのままネモの耳元で何かを囁いた。

 

「えー?なんでー?」

「いいから!絶対駄目!分かった!?」

「ぬー……あ!だったら本人に直接聞いてみようよ!」

「は?いや、どうやって?」

「待ってて。今電話かけるから!」

「いやいやちょい待ちちょい待ち。え?いつ連絡先交換した?あのバトルの後、そーいえば誰も持ってないなって話になったよな?」

「うん!だから空港に行って連絡先聞いたんだ!」

「マジで言ってんのか?」

 

 ボタンはこの場にアオイがいなくて良かったと心の底から思った。いたら間違いなく拗れていただろう。

 

 トウコから引き離すためにアオイを遠ざけたのが思いがけない功を奏した。

 

 これが棚ぼたか………

 

「じゃあかけるよー」

「あーうん」

「……………」

 

 遂にネモが電話をかける。

 

 1コール。2コール。3コール………

 

 なんとも言えない緊張感が張り詰める。

 

 そして4コール目。

 

『もしもし?ネモか?』

 

(かかった!!)

 

 自分は他の3人と比べて関わりは薄いが、それでもあの落ち着く声は強く印象に残っている。間違いなくシオンの声だ。

 

「はい。トウコ」

「……………」

 

 ネモのスマホを受け取ると、トウコはそれを耳の近くまで持っていく。

 

『もしもし?』

「…………」

『おーい!もしもしー』

「…………」

『なんかあったのかー?』

「…………」

 

 なんか、通じてないっぽいんじゃないか?

 

「えーっと、その謎テレパシーって電話越しじゃ通じないんじゃ……」

「…………」

「喋んないとさ……」

「…………」

「私が代わりに話そっか?」

 

 ネモがそう提案するが、トウコは首を横に振った。

 

 でも喋れないんじゃ誰かに代わりに喋って貰うしかないんじゃ……

 

 そう思った直後だった。

 

キミと!!

 

 トウコが叫んだ。

 

(喋れるんだ………)

 

 喋った事が衝撃過ぎてそんな感想しか湧かなかった。

 

 あのネモも、あのネモでさえも、衝撃で固まっている。

 

 固まるボタンとネモを他所にトウコは続ける。

 

キミと勝負がしたい!!!

 

『…………もしかしてトウコか?』

 

 声だけを聞いて、シオンは短い時間で電話の相手がトウコであると気が付いた。

 

『ネモの電話からって事は、チェレンから伝言を聞いたんだな』

 

 トウコの頭にハテナが浮かぶ。チェレンからの伝言?なんの事だ。

 

『トウコの連絡先知らなくてさ。パルデアに行く前にチェレンに頼んだんだよ』

 

 シオンはそう言うが、トウコにそんな物の記憶はない。まさか、でまかせ。か???

 

 いやよく考えたら家に帰った瞬間に空港にUターンしたからチェレンが伝言する時間なんて無かったか。

 

(僕の事、忘れてた訳じゃなかったんだ)

 

 昔からの悪い癖だ。一つの事を考えるあまり、他の事を疎かにしてしまう。

 

『でもゴメンな。今俺、ブルーベリー学園って所にいるんだ。こっちも一応フウロに伝言頼んだんだけど……』

 

 まぁ幼馴染のチェレンならいざ知らず、あんな短期間でフウロから伝言が果たされる訳も無い。

 

 だが、今度こそシオンの居場所は判明した。

 

 待っててね。今から挑戦しに行くよ。

 

『あぁ。来いよ!チャレンジャー!』

 

 でも本当に良かった。てっきりシオンは僕の事を忘れてるって思ってた。

 

『未来でライバルになるって約束した奴の事をそう簡単に忘れるかよ!』

 

 ライバル………うん。僕とシオンはライバルだ!

 

「えーズルい!先輩!私ともライバルになってください!!」

「ちょ、空気読めって!」

『もちろんいいぜ!ネモも俺のライバルだ!』

「やったー!」

「あぁ雰囲気ぶち壊しだし………」

 

 ところでさ。ネモがシオンのライバルって事は、僕とネモはもうライバルって事だよね!

 

「!!確かに!」

「いや、友達の友達は友達みたいな……」

 

 シオンに忘れられたと思って燃え上がってた炎。そこから怒りが抜け、炎は純粋な闘志の炎になった。

 

 今はただ。この炎を糧に誰かとバトルをしたい。

 

「よーし!そうと決まったらバトルだ!!」

「…………!!」

「ちょ、授業どうすんの?」

 

 今日はまだ始まったばかりだ。

 





『トウコ』
ヤンデレかなー。と見せかけてただ約束をすっぽかしたシオンに怒ってただけの女の子。
相棒はエンブオー。シオンとお揃い!
秘める想いには本人すらも気付いていない。

『ネモ』
ライバルが2人も増えたよ!やったね!くらいしか考えてない。
唯一シオンくんの連絡先を知ってた人。しかも元から持ってたとかじゃなく、アオイとのバトルを観戦した後に聞きに行った。

『ボタン』
朝から凄い疲れた人。
なんかシオンパイセンの声音が思ったより明るい?と思ったがこの事は誰にも言わないだろう。

『シオン』
2年以上前の約束をしっかり覚えてた人。
電話がかかってきた時は無言電話かと思ったが相手がトウコだと分かると不思議と何を言ってるか理解出来るようになって「不思議だなー」と思ってる。
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