「よし……」
一毅と一旦別れたキンジは部屋に戻ってきていた。リサがスヤスヤ寝ているのを起こさないようにコソコソと血だらけボロボロの制服を脱いで新しいYシャツと替えの制服を着る……
「つ……」
その際に傷が痛みキンジは思わず顔を顰めた。胸の傷が熱い……だがそれを一回静かに深呼吸をして誤魔化すとネクタイを締めて着替えを完了させた。
それからペンと紙を取り奨学金を自由に使ってほしいとかこれから帰ってこれる保証はないけど心配するなとかリサ宛てに幾つかの遺言みたいなのを書き寮の入り口に手をかける……
「行くか……」
気合いを充電。キンジは外へと足を進めた……
その後キンジはまっすぐ一毅に言っておいた女子寮の近くのビニールハウスに来た。
前回も言ったが別に確信はない。ただ……何となくここにアリアがいる気がした。そんな気がするだけだ。そんなことを思いながら行くと……そこにはいた。
お馴染みのピンクの髪に幼児体系……カメリア色の瞳の少女……それが立っていたのだ。
「よう、アリア」
「待っていたわ……キンジ。良くここが分かったわね」
「何となくな……」
キンジはビニールハウスで栽培されてる花を見てからアリアと視線を合わせる。するとアリアは笑っていた。
「流石キンジね。それもヒステリアモードの勘って奴?」
「どっちもだな」
キンジは頬を掻きつつ答えた。だが同時に何となくなく違和感を覚えた。アリアのやつ……何かを言い出そうとしてタイミングを計っているのだと……
「それでねキンジ……私考えたの」
「ん?」
来たか……とキンジは目を細めた。それにアリアは気後れすることなくキンジをまっすぐ見つめ口を開いた。
「あんたも一毅も……これ以上巻き込めない。鬼って言うのは予想以上だったわ……だから別れましょう」
「何いってんだ……お前一人になんて……」
「じゃあ!何でそんな怪我してんのよ!」
ギクッとキンジは表情を凍らせた……
「見れば分かるわよ……あんた自分の顔色見た?そんな真っ青な顔して……必死に痛みに耐えたような顔をして……」
そんなひどい顔だったのかとキンジは苦笑いした……それがアリアの癪に触ったのは言うまでもない。
「何が……可笑しいのよ……」
「いや……良く見てるなって思ってな……」
「パートナーなんだから……当たり前でしょ……」
と、アリアは言う。それを見てキンジは口を開いた。
「あのなアリア……お前はようは俺に今すぐ降りろって言ってるんだろ?」
「そうよ……それ以外に何があるの……」
アリアがキッと睨み付けてくる……いつもより力の無い睨みだ。
「これ以上ね……アタシの事情にあんた達は巻き込めない……これ以上巻き込んだら……死んじゃうかもしんない……それだけは嫌なのよ!」
キンジを見て言うアリア……真っ直ぐと……真っ直ぐと……キンジを見つめて言う。そこにあるのは……なんなのかキンジにはわからない。だが何かがあるのはキンジには分かった。だからこそ……キンジも言う。
「死なねぇよ」
アリアは目を見開く。キンジは畳み掛けるように言う。
「俺は不死身の
「そんなの通称じゃない!」
「それにな!」
キンジはアリアの言葉を遮る。
「ここでケツ捲るようなことすれば俺は一生後悔する……そんな……寂しそうな顔した女を一人で行かせるようなカッコ悪い真似できるか!」
「っ!」
今度はアリアが表情を凍らせる番だった……それを見つつキンジは更に捲し立てる。
「俺は……チームバスカービルのリーダーとしても……お前のパートナーとしても……一人の男としても……背は向けるつもりはねぇよ……例えヒステリアモードじゃなくたって……それは変わらねぇ……お前を一人にはしない!」
「……………………」
アリアはキンジを見つめる。
「だから……お前の本心を聞かせろ……お前は俺にどうしてほしいんだ?言えよ……アリア!」
言葉を少し乱暴にして言う……1拍の間があった……静けさがその場を包んだ……ゆっくりと……アリアは口を開いた。
「キンジ……あたしは……」
「………………」
キンジは口を閉じて続きを促した。
「一人は……嫌よ……でも……今度はホントに危ないわ……だけど……私は……キンジに……一緒にいてほしい……」
ポロポロと涙を流し……何度も言葉を止めながらも必死に言葉を紡いだアリア……それを見たキンジは優しげな表情を浮かべた。
「なら一緒に居ろよ……これからも……ずっと一緒に居るぞ……」
特に他意はなく言った言葉……しかし端から聞けばプロポーズにも聞こえそうな言葉にアリアは堪らずキンジに抱きついた。無論……どうせ意味なんかわかってないのはアリアは百も承知だ。それでも……キンジの温もりが欲しかった。
「そもそも最初に俺を巻き込んだのはお前だぞアリア……今さら引き下がれるかよ」
と、ドキマギしながら言うキンジ……アリアは自分の顔をキンジの腹に擦り付け頷いた……
さてと……
「さて……覗き見はいい趣味とは言えないぞ……玉藻」
「え?」
キンジが振り返りながら言うとアリアが顔をあげた……その視線の先には一個の鞠……それがドロンっと言うと狐耳と尻尾を持った玉藻が現れた……しかも……何か刀持ってるしヤバイ感じだ……
「想像以上じゃった……まさかアリアがここまで緋緋色金に適合するとはな」
そう言いながら玉藻は刀の鯉口を切る……咄嗟にキンジはアリアを庇う姿勢をとった。
「遠山……こっちへこい。今ならば……儂とお前で討ち取れる」
「ふざけんな、今の聞いてたろ……俺は……アリアの味方だ」
キンジはベレッタに手を掛けていう。
「そもそもまだ大丈夫なはずだ。鬼からの殻金を奪い返す……それじゃ駄目なのか!」
「だから言ったはずじゃぞ……想像以上にアリアが緋緋色金に適合しつつある……その影響は桐生にも出ていた」
「一毅に……?」
「このままでは緋緋神が戻る方がはやいやも知れぬ……」
「だが絶対じゃない……違うか……?」
「遠山……」
玉藻とキンジの視線がぶつかる……その時だった。
「無駄だぜ玉藻……そういうときのキンジは馬鹿みたいに頑固だからな」
「……桐生か」
少し肩を上下させた一毅がビニールハウスに入ってきながら言うと玉藻は一毅の方にも視線を送る。
「言っとくが……俺はもちろんキンジの味方なんでね……キンジと事を構えるつもりなら……俺もお前さんと戦わなきゃならん……」
一毅も鯉口を切りつつ言う……玉藻は……どれくらい強いのかわからん……だがここで引くわけに行かない。絶対にだ……
そう思いつつ静けさがその場を包む……数十秒ほどだったが永遠に感じられる中……玉藻は刀を戻した。
「全く……昔から遠山侍も桐生も自由すぎるんじゃ……」
ホゥっと一毅とキンジは緊張を解く。
「好きにせい……但し、期限をつける」
その期限は3月30日まで……と玉藻は着けてきた。それ以上は絶対に待たないらしい。それを過ぎれば……まぁご察しというやつだ。
「悪いな」
と、キンジが言うと玉藻はため息をつく。
「全くじゃ……」
そう言い残し玉藻は夜闇の中に消えていく……それを見送ってから一毅はキンジたちの方に来た。
「とりあえずセーフか?」
「ま、そんなところだな」
そう言いつつキンジはアリアを見た。
「これからどうする?」
「そうね……下手な場所に身を隠せないし……」
そうアリアが言うとキンジは顎に手を添えた。
「なら……俺の実家に来るか?」
「…………え?」
アリアはカチン!っと固まった。それを見変な人でもいるのかと思われたのかと思ったキンジは弁護しておく。
「安心しろよ。実家には爺ちゃんと婆ちゃんしかいないはずだし二人ともまともだ」
あ、爺ちゃんはとんだスケベ爺だが……まぁいいさ……沈黙は金だ。
「それにじいちゃんの腕っぷしは信用していい。並みの相手なんか歯牙にもかけないだろうさ」
流石に年は喰ったけどさ……とキンジは付け加えておく……そうしている間にアリアも正気に帰った。
「そ、そそ!そうね!ソウシマショ!」
何故に片言?とキンジは首をかしげ一毅は肩をすくめる。
まぁそんなことがあったものの、とりあえずその日は男女で別れ次の日にキンジの実家の最寄り駅で待ち合わせようという話になっったのだった……
そんなことがあった次の日……
「アリアのやつ遅いな……」
「そうだな……」
ポチポチとスマホを弄りつつキンジと一毅の二人が待ってると……
「マ,マタセタワネ……」
「あ、ああ……」
キンジはアリアの声を聞いて振り替えると眉を寄せた。
「お前どうした?」
そう聞くのもわからなくもない。何せアリアの格好はそういうのに鈍いキンジでも分かるほど気合いの入ったものだった。
「べ、ベツニ!」
見てみれば何か薄くだが化粧までしている……どうしたんだ?アリアはそういった類いのものを持っているのは知っている。それに顔だけは美少女だ。似合うのだが……
「サ、サァイキマショウ!」
「アリア緊張しすぎだイデェ!」
と、からかい口調で言う一毅にアリアの強烈なローキックが炸裂した……何でこいつ緊張しているんだろう……と思いながらキンジはアリアを自分の実家に案内し始めたのだった……