緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金と西洋の忍者

一毅とロキが戦い始めた頃……キンジはスカイツリーに到着していた……現在まだ作りかけのこのタワーは一応階段もあるがどうせバレているだろうとキンジはエレベーターに乗る。

数秒でチーン!っと言う音と共に業務用のエレベーターが開くとキンジは外に出た……

 

「………」

 

キンジは広場みたいになっているところに着くとゆっくりと視線を動かす。

 

「……おい。出てこいよ」

 

キンジは右手にだけオロチを嵌めながら言うと柱の影からワトソンが出てきた……

 

「まさか本当に来るとはね」

「で?アリアはどこだ?とっとと返せ」

「返せ……とはおかしな言い方だね。彼女は僕の婚約者でパートナーだ。寧ろ僕の方が返してもらったと言うべきだよ」

「あいつは望んでなかったようだが?しかも母親のことまで引き合いに出しやがって……」

「事実をありのままにいっただけさ」

「そうかよ」

 

キンジは蹴りを放つ構えを取る。

 

「俺はこれでも見逃してやってたんだぜ?だけどお前はどうも俺にぶっとばされたいみたいだからな……その思いに答えてやるよ」

「返り討ち……と言う可能性は考えないのかい?」

「できると思ってんのかよ」

「やって見せてあげるよ!」

 

次の瞬間キンジの胸に向かってナイフの切っ先があと数センチの所まで飛んでいた。

この技は相手に悟られないように予備動作を極限にまで切り詰めどうしても起こす予備動作高速で行うことで攻撃を相手に悟られないようにする暗殺技術……イギリスでは武偵の独断で自らの利を害する物の殺害が認められている……これで普通なら何をされたか分からず終わる……そう、普通なら……

 

「あ?」

 

キィン!っとキンジはナイフを抜いて弾いた。

 

「そんな程度で当たると思ってんのかよ」

 

だがキンジの万象の目は極限化された観察眼……一毅と違い元々持っていた感覚器官を用いた力である万象の目はキンジの怒りに呼応するように発動する。例え無拍子の動きから投げられたナイフであってもキンジには投げる前からワトソンがナイフを投げることが見えていた。

 

「そんな曲芸じゃ俺に傷をつけるなんて無理だぜ?」

 

キンジはネクタイを緩めるとボタンを2、3と外して腰を落とす……

 

「なら……こうするさ!」

 

体の中心を敢えて振らしながらワトソンが近づいてくる……移動に緩急をつけながら一見ゆっくりと……だがそれでいて実際はかなりの速度だ。間合いを図りにくい。

 

「シュ!」

 

無拍子からの肘打ち……だが筋肉の動きまでは誤魔化せない。キンジはそれを見切って上半身を逸らして躱すと、

 

「ウッシャア!」

 

地面に手を付いてワトソンの脇腹に後ろ回し蹴り叩き込む。

 

「ぐっ!」

「ん?」

 

キンジは自らの胸をさわる。

 

「おい、銃返せ」

「そうはいかないな」

 

ワトソンは蹴られながらもキンジからくすねたベレッタとデザートイーグルを後方に捨てる。

 

「さぁ今度はそのナイフを貰うよ!」

 

コートを思いきり翻しワトソンがナイフを突き出す。

 

「っ!」

 

それをキンジはスウェイで躱し蹴り上げる。

 

「くっ!」

 

ワトソンはそれを危なげながらも躱しナイフを一閃……だがキンジには当たらない。キンジはお返しとばかりにナイフで切り上げる。

ワトソンは躱すがギリギリで頬に掠る……筈がワトソンは怯えるように大きく躱した。

 

「ん?」

 

キンジは首をかしげる。ワトソンの戦い方を考えれば今のは頬に掠ったとしても攻撃に繋げたはずだ。それを態々……まあいい。

 

「その程度か?」

「そんなわけないだろう!」

 

ワトソンは再度疾走。

キンジはそれを受けながら蹴りを放つ。ワトソンは受けながらも後ろに飛んで衝撃を和らげた。中々器用なやつだ。

 

「大したことないな」

 

キンジは軽くその場で跳ぶ。

 

「…………流石と言うべきだ……」

 

ワトソンは不遜な態度を取り続けたが遠山 キンジを侮っていた訳じゃない。寧ろその強さ事態は一毅に次ぐバスカービルの主力として警戒していたくらいだ。

特に固有技とも呼べるエアストライク……あれは嵌められたら確実に自分でも沈めれられるだろう。無論自らの身軽さを持ってすれば嵌め切られる前に脱出可能かもしれないがそんな賭けはしたくなかった。更に不可解な見切り能力にエアストライク以外の我流の蹴り技も相当なものだ……

 

「……はぁ!」

 

ワトソンのナイフの突き……

 

「しゅ!」

 

それを躱すが更に追撃、

 

「だぁ!」

「ちぃ!」

 

ワトソンの(チン)を狙った肘鉄……それを体を逸らして回避……

 

「ウォオオオオ!!!!!」

 

ワトソンは腹に突き刺す気なのかナイフを腰の近くにくっ付けるようにして突進……しかしそれも、

 

「ヨッシャ!」

 

キンジは後ろに跳びながら体を回転……そのままワトソンの手を思いきり蹴ってナイフを吹っ飛ばした。

 

「くっ!」

「シャ!」

 

更におまけとばかりにワトソンの頬にキンジのハイキックを叩き込んだ……

「もうおしまいか?」

「く……貴様ぁ……未婚の女性の顔にあろうことか蹴りを……」

「は?」

 

ぶつぶつなにか言ってるが聞こえない。

 

「まあいい……いや、良い事はないがそれは置いておこう……君は強いよ遠山……流石その年でSAD……日本だったら超人ランキングって言うんだけどそれの100位以内に入るだけはあるね。流石だ」

「マジかよ……」

「マジだよ……因みに一毅も入ってる。しかも君より上だ」

「それは納得だ。あいつの方が喧嘩は強いからな」

「実際戦ってみて分かった。だがその上で言わせてもらおう。僕の勝ちは揺るがない!」

「何言って……――っ!」

 

突然キンジの世界が傾く。

 

「これ……は……」

「無味無臭無色の揮発性の毒さ……平衡感覚やあらゆる感覚を狂わせ奪う薬でもある。一種の麻酔に近いね」

 

ワトソンはキンジの近くにいくとナイフを遠くに蹴り跳ばす。

 

「君の弱点を教えよう。君は搦め手に弱い。傾向的に強襲武偵(アサルトDA)に多く見られることであるがこうやって毒を使えば面白いように嵌まる」

 

昔から忍者と武士に見られる力関係と似ていた……武士は飯をたっぷり食って修行もして良い武器も持って戦える。正面からであればそれは強いだろう。

だが忍者は反対に毒だろうが鉄砲だろうが不意打ちだろうがなんだって行う。汚いと言ったらそこまでだがそれが忍者だ。

 

「殴り合いは君の方が断然強い……だが、殴り合いと戦いは違うよ。戦いとは前もって準備して考えておくんだ。必ず勝つ方法をね。それが頭の良い戦いかたさ」

「へ……そんなめんどくさいこと逐一考えていたら頭パンクするぜ……」

「だがそれで君は敗北し……死ぬんだ」

ワトソンはナイフを抜く。

 

「さよなら遠山 キンジ……アリアは僕がいただく……」

「っ!」

 

キンジの体が更に熱くなる。

 

「なぁに、心配するな。僕が幸せにするよ……」

 

そう言ってナイフを振り下ろす……が、

 

「え?」

「ふざけんな……」

 

キンジはワトソンを見上げる……指でナイフを止めながら……睨み付ける。

 

二指真剣白羽取り(エッジキャッチングピーク)……って言ってな。なに、大したもんじゃない」

「な……な……」

 

ワトソンはキンジの言葉等耳に入らない。

なぜ立てるのか……遅効性であるが一度効けば巨像ですら半日は感覚を狂わせる薬だ。何故……

 

「悪いがよ……元々毒とか薬の利きが俺は悪いんだ。お陰で風邪引いたとき何か悲劇だぜ……」

 

更にキンジは気づいていないが自らの体に変化があった……

脳はブラックボックス……とよく言われる。医学が進歩した昨今でも脳については未知の部分が多い。つまり脳がもたらす力もだ。

そして脳のもたらす力と言えばやはり脳内麻薬……アドレナリンとかβーエンドロフィンとかドーパミンとか挙げていけばキリはなく判明してるのだけで20種類もある。

だが飽く迄20種類である。脳が危機的状況時にだす脳内麻薬はそれを遥かに上回ると言われており走馬灯や時間がゆっくり流れる言うに感じたときなどはそのせいだと言う。

そのような多種多様な麻薬とは言え薬を性的な興奮で脳から半強制的に出させているのがヒステリアモード……その状態で毒を盛られれば毒と脳内麻薬が混じり合い現代化学から考えられない未知の物質となり……一種の血清と同種の物が作られる。

つまり……キンジには毒で死ぬことがない。元々毒や薬にたいして高い耐性を持つキンジはこうした力も強いと言うこと……更に怒りによって奪う力のヒステリア・ベルゼは過剰なまでに脳内麻薬を促進しているだろう。言わばワトソンは態々キンジのベルゼを強化して脳内麻薬を出させ自らの毒を無効化させた状態だ……

 

「教えてやるよワトソン……てめぇは油断しすぎなんだよ!」

「はぅ!」

 

妙に男っぽくない声でワトソンはキンジの頭突きにより後ずさる。

 

「あぐ……」

「てめえはそんなに俺を怒らせて楽しいのかよ。ああ!?」

「くっ!」

 

ワトソンはキンジから距離を取ると銃を抜く。

 

「SIG SAUER P226か……いい銃だな……」

 

だがそれがどうしたとキンジは体を大きく捻りながらワトソンを睨む。

 

「撃てるなら撃てよ。どうせ俺には当たらない」

「この距離で外すわけがないだろ!」

 

ワトソンは迷わず発砲……確かに外さないだろう。だが一言もお前が外すとは言っていない……当たらないと言ったのだ!

 

螺旋(トルネード)!!!!!」

 

白雪の奥義、緋緋星伽神にも似た動きはオロチのつけた右手の指で弾丸を挟むと弾丸をあらぬ方向に弾く。

 

「ウソ……だろぅ?」

 

あり得ない……そんなの普通は無理だと言う目で見る。

 

「イヨッシャア!!!!!」

 

キンジはワトソンの懐に突っ込むと逆立ちしながらワトソンの銃を蹴り上げる。

 

「ううっ!」

「スラッシュキック……α!!!!!」

 

脚が分裂しているように錯覚しそうなほどの速さを持った連続蹴り……カナに放って全て躱されたがそれは進化を遂げ蹴りの数も速さも威力も上がった蹴りの刃へとなっていた。

 

「ぶふっ!」

その蹴りにワトソンは体を曲げる……

 

「フィニッシュキック!!!!!」

 

大きく体を捻った渾身の蹴りでワトソンは吹っ飛ぶ……

 

「それで終わりか?」

「が……はぁ……」

 

ワトソンは恐怖していた。キンジは全てにおいてワトソンの想像の遥か上をいっていた。

 

「おら……来いよ!」

「く……アアアアアア!!!!!」

 

ワトソンは大きく振りかぶると体の捻りを利用した突きを放つ。

 

「勝機……」

 

混乱した状態では良く出したと言うべき一撃だ。だが、

 

「なっ……」

 

次の瞬間キンジが消えたのだ……横や下を瞬時に見るがいない……じゃあどこに……

 

「教えてやるよワトソン……」

「え?」

 

ワトソンは空を見る……そこには大きく跳躍しまるで獲物を狙う鷹が羽ばたくようにキンジはいた……

 

「アリアのパートナーってのはなぁ!無理とか疲れたとか不可能とか言わねえし言っちゃいけないんだ!俺の技見て少しでも無理とか思っちまうようなやつはなれないんだよ!」

 

キンジの体を深紅のオーラ(レッドヒート)包みキンジは新たな新技を繰り出す……これは奇しくもワトソンに当たれば良いと思ったものと同じ名前を頂いた技……相手よりも遥か高く跳躍して高空から蹴りつけるキンジ二つ目の絶技……その名も、

 

「メテオストライク!!!!!!!!!」

「がふっ!」

 

キンジはワトソンの顔を踏みつけそのまま地面に叩きつけた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

キンジはワトソンが飛ばした自分の銃とナイフを取る。

 

「さて、おいアリアはどこだ?」

 

キンジはワトソンの胸ぐらを掴んで引き上げる。

 

「っ!」

 

ズイッとキンジが睨みながらワトソンに顔を近づけるとワトソンは……

 

「は?」

 

顔を赤くした……赤面とも言う。いや、何で照れるんだよとキンジは突っ込む……男に顔を近付けられただけだけだぞ……お前はホモか……お前は男だ……ろ?

 

「いや……」

 

シナモンの香りを捲きながらワトソンは顔を真っ赤にして逸らす……

 

「お前……」

 

キンジは眉を寄せた……それから見る……今までは怒りで落ち着いてみれなかったが今は落ち着いているから殆どヒステリア・ノルマーレだ。戦うなら良いが相手を検分するときはノルマーレが一番万象の目と相性が良い。

体脂肪率は20%ちょい……身長は160もない……他に身体的な特徴としては……撫で肩で潰してるが胸が不自然膨らんで……あれ?

 

「え?」

 

キンジは驚きで目をひん剥いた……

 

「お、お前女……って言うか転装生(チェンジ)だったのか!?」

 

ワトソンはカァっと顔を赤くした。酷く女性らしい表情だ……

 

「おいおい……お前レズだったのか?」

 

レズは一年の志乃だけで十分だと思う……

 

「ち、違う!色々問題があるんだよ!」

「ふぅん」

 

キンジはワトソンの胸ぐらから手を離す。

 

「まあ良いさ。で?アリアはどこだよ」

「アリアは……この上に――っ!危ない遠山!」

「っ!」

 

突然の雷撃……キンジはとっさに跳んで転がって躱す。この雷撃には覚えがあった……

 

「どう言うことだ?」

「この上にはヒルダもいる……」

「あいつが?」

 

キンジは眉を寄せる。

 

「契約だ……僕はアリアを眷属(グレナダ)にしたかった。アリアの殻金は殆ど向こうにある。アリアの身を考えれば眷属(グレナダ)に着かなければならないんだ。だから僕はヒルダに協力を申し入れた……僕達リバティーメイソン及びアリアの眷属(グレナダ)の帰属を代償に彼女には定期的な血液の提出及びイギリスでの自由な行動だ」

「そうか……じゃあアリアはヒルダの所に居るんだな」

 

キンジは上に向かう階段を探す。

 

「お、おい!行く気か!?」

「そこにアリアが居るんだろ?」

 

キンジは散歩にいくような足取りだ。

 

「し、死ぬぞ。彼女は吸血鬼の力だけじゃない!今のような雷撃に加え古流の催眠術も使うし何より僕は信用されなかったから知らないが協力者が一人いるんだぞ……」

「死ぬかよ。俺は死ぬときは子供や孫やひ孫に玄孫達に囲まれて大往生って決めてんだ」

「いや、玄孫は長生きしすぎだろう……」

 

ワトソンが突っ込むとキンジはニヤリと笑う。

 

「まあどちらにせよついでだついで……お前はそこにいろよ。先頭に立って戦うのはお前みたいなかわいい女の子じゃない。男の仕事だ」

「っ!」

 

キュン!っとワトソンはときめいたような顔になる。

 

「さて、行ってくるよ」

 

キンジは階段を上がっていった……

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