ラ・リッサの午後の部……それは五時から始まり二つの競技しか存在しない。
ひとつは男子競技【実弾サバゲー】……
そしてもうひとつは女子競技【水中騎馬戦】……
まあチーム単位で動く訳じゃないし男女一緒な訳でもないので一毅とキンジは普通実弾サバゲーに行く筈なのだが……
「帰りたい……」
「俺だって帰りたいよ……」
一毅とキンジは前回も言った通り何故か女子の方で沈痛な面持ちで座っていた。
本来男子の二人はここにいるはずはない……だが何故ここにいるのか……それは今朝に遡る。
一毅とキンジは当たり前のように実弾サバゲーの方にいこうとしていた。朝までは……
すると、
「おい桐生、遠山」
「ん?」
何故か蘭豹に声をかけられた。
「お前ら実弾サバゲー出禁やからな」
『……はい?』
何て言った今……と一毅とキンジは首をかしげた。
「お前ら出たら戦力バランス崩すやろうが。つうわけでお前ら水中騎馬戦の軍師でもやれ」
『えええええええええ!?』
と、言うわけで男子なのに競技から出禁喰らった一毅とキンジは別に強制でも何でもない上に普通は一人の白組の指示役として鎮座してうつ向いている。
居心地は最悪だ。するとそこに、
「あ、先輩方何でここに?」
『…………誰だ?』
目の前に現れたのは顔に包帯をグルグル巻きにした引き締まった体の声からして男……
「俺ですよ!俺!!!」
そう言って包帯を外すと出てきたのは辰正の顔……
「何だって包帯グルグル巻きにしてたんだ?」
「先輩に置いていかれたお陰でしてね」
一毅が聞くと辰正はジトーッと言う目でキンジを見た。
「……」
キンジは眼を逸らすしか出来なかった。
「まあ今回は俺も実弾サバゲーにそんな怪我で出るなって言われましてね」
「そんなひどいのか?」
「いや、競技前から殴られてるような奴が出たって邪魔だと言うわけですよ」
「成程ね」
「それにしても……」
居心地が悪いですねぇ……と辰正は言う。
だが良いじゃないかと一毅とキンジは思った。自分達は比較的避けられるタイプだ。
一毅は顔が怖いし人間離れしすぎだし背も高くガタイも良い……
そしてキンジは目付きが悪いしやらかした人間離れ技【
それに反して辰正は人当たりがよく優しげな顔立ちで寧ろイケメンの部類である。無論一毅とキンジだって充分見れる顔立ちだが前項の理由で若干引かれ気味の二人とは違いかなりモテるのだ。
そんな男が来れば女子達が浮き足立つのも無理はない。
所詮は顔なのかチクショー!と一毅とキンジは内心思っていると、
「ちゃんとスコアつけてなさいよ」
「キ、キンちゃん!どどどどどうかな!?」
「どうキー君達~」
「………」
「あれ?辰正何でこっちにいるの?」
「そういえばさっき保健室にいましたね(ちっ!邪魔な奴が……)」
「何だ辰正。その殴られ後」
「むむ……師匠顔色が優れぬようでござるが大丈夫でござるか?」
「
「ねぇねぇ
上から順にちっこくて可愛いフリルのセパレート水着のアリア……
高校生離れしたスタイル上にマイクロビキニと言う白雪……
今時どこで売ってるんだと聞きたくなるような古い型の水着ご丁寧に胸の部分の【みね りこ】と平仮名で書いた物を着用する理子……
青と緑の中間くらいの色の等身大女子といった感じのスタイルによく似合うビキニのレキ……
水玉のワンピースと言う少し子供っぽいがよく似合うあかり……
何故かスタイルは良いがスクール水着と言うこれはこれで新しい趣を感じさせる志乃……
日本人離れした身長とスタイルの良さを存分に活かしたビキニを着用するライカ……
何故かさらしと褌の陽菜……
理子のとは違い現在のスクール水着を着たかなめ……
最後に白雪に匹敵しそうなスタイルを誇るロキはパレオと呼ばれる水着だ。
さてそんな残念きわまりない性格を除けば桁外れの美女に囲まれた男子三人は慌てて視線を逸らす。
辰正に至っては鼻の根本を抑えて後ろ首をトントン叩いている。
(不味いヒスる……)
キンジも必死に内なる自分と戦っていた。
「と、取り合えずお前ら……死なない程度にやってこい」
「もうちょっと気合い入る指示しなさいよ」
アリアに怒られた……仕方ない。
「よしお前ら……殺って殺って殺りまくってこい!赤組の赤い鉢巻きを相手の血で更に赤く染めてやれ!」
『おー!』
気合いのいれ方女子としてどうなんだよとキンジは自分で叫びながら思ったのは秘密である……
さて、女子のキャットファイトを楽しみにしていた方々には大変申し訳ないがリポーターのキンジ、一毅、辰正の三名が戦いの最中ずっと念仏を唱えて現実逃避すると言う荒業を行ったため殆んど見ていないと言う役立たずっぷりを発揮したため割愛させてもらおう。
まあ結果だけ言えばアリア達の勝利である。
水中騎馬戦では鉢巻きを取られるか水に騎手役の人間が落ちたら失格だ。
そのためあかりが意外と活躍し片っ端から鳶穿で奪っていって更にアリアがキンジを練習台にして培った2丁拳銃乱射でどんどん沈めていき殆んど一方的に且つ圧倒的な戦力をもって潰した。あまりの圧倒的な差に敵が少し憐れになるほどだ。
しかし妙に二年生達と一年生ではあかりと志乃以外の一年生が凄まじい殺気を放って突進していったため赤組が腰抜かした奴もいた……
「何か腹立つことでもあったのか?」
『さぁ?』
キンジの問いにスコアボードを係りの先生に渡しながら一毅とキンジも首をかしげた。
無論一毅とキンジを貶すような人物をアリア達が生かしておくわけがないのだがそんなことは三人とも知らない。実は一毅達が気づかないうちに白組二人を貶した連中もこっそり同士討ちされていたのだがそれは秘密だ。
「だけど腹へったな……」
ラ・リッサ最中は食事が全面的に禁止である。何でも蘭豹が戦時中に食事するのはイタリア軍くらいだとかどうとか言うからだ……いつからこの学校は軍人養成所になったんだよ。
「アリア達が場所とってくれてるはずだぜ?」
「あ~今日は長かった……」
男子三人でその場所に向かう。
場所は廃車置き場……この学校ではよく車が壊れるためだ。その中の一つの元キャンピングカーらしき車の前にハイマキがお座りしていた。
「ちゃんと待ってたんだな?」
「わふ」
ご主人である一毅に頭を撫でられご満悦のハイマキの横を通り中にはいると既にいつものメンバーが弁当を広げていた。
「遅かったじゃない」
「仕方ねえだろ。スコアボードを渡す担当の先生が見つかんなかったんだから……」
下座のついた白雪のとなりにキンジは座りつつアリアに反論する。
「一毅さんお疲れさまです」
「精神的にゴリゴリ削られたぜ……」
特に最後のはな……ため息ひとつ吐いて一毅も適当に座る。
「辰正もう怪我は大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫だよあかりちゃん」
あかりに礼を言いつつ辰正も座る。
「しかし良いところ見つけたな」
「かなめが見つけたんだよ~」
理子が言うとキンジがかなめを見る。
「お前が?」
「うん。ちゃんと話さなきゃって思っていたから……私のこと」
かなめはキャラメルマフィンを膝の上に置く。
「私はアメリカにあるロスアラモスって言う研究機関で作られた【
『…………』
全員が黙って聞いた。
「私は……戦いのために作られた兵器なの」
『…………』
かなめの言葉は真剣そのものだった。嘘偽りがないのは簡単に想像ついた……
「私は……人間じゃない……」
そうかなめが言った次の瞬間、
『それは違う(だろ)(わ)(よ)(と思うよ)(な)(でしょう)(んじゃないかな)(でござろう)』
キンジ達二年生だけじゃない……一年生達ですらそこだけは否定した。
「え?」
「あなた今日すごく楽しそうだったわよ……そんなあなたが人間じゃないなんてあり得ないわ」
「そんなに楽しそうだったのか?」
「キンジ……あんた見えなかったの?」
「水中騎馬戦では念仏唱えていて見てなかった……」
「あんたねぇ……」
「でもさすがキー君だよねぇ」
「いや一毅と辰正も同じだったぞ!」
その場に笑いが起きる。
それをかなめが呆然と見ていた。
「何で?」
そんなあっさりとされたのかかなめには分からない……
「かなめちゃんがどんな風に生まれてどんな風に育ったのか分からないけどさ……」
あかりがかなめを見る。
「もう私たち友達でしょ?」
「まあキンジ先輩の妹なんだし少し変わってても全然普通だと思うよ?」
辰正の言葉に全員うなずいた。
「お前らさっきから俺に喧嘩うってんのか?」
キンジが青筋を浮かばせながらキレる。
「何度も言わせんなよ?俺は普通の武偵になって普通のバウンサーとかそういうのになるんだよ!」
『…………』
全員で何言ってんのこいつは……見ないな眼で見た……
「キンジ……適材適所でしょ?あんたが普通とか有り得ないわ」
「なぬ!」
キンジがガーン!と言う顔になる。
「ま、こんな感じだからな。皆普通じゃないと言うか変わってるって言うかそんな感じだからさ。お前が変わってても目立ちやしない。よく言うだろ?【竹を隠すなら森の中】って」
一毅が自信満々に言う。
「一毅先輩……多分言いたいのは【木を隠すなら森の中】ですよね?」
「しかもお兄ちゃんに変わってるって言われたくなーい」
だがライカとロキに言われて一毅がガックシと肩を落とした。
すると、
【グーギュルギュー!!!】
『………』
一毅の腹が盛大に鳴った……
「……腹ぁへったよ……飯にしようぜ?」
『………ぷ』
今度はかなめも一緒に全員で笑った……
ラ・リッサの次の日……
一毅はエプロンを着けて今夜の夕飯である。今夜はおでんだ。
とは言えライカとロキの……と言うか本当は他の一年生メンバー含めてラ・リッサの後片付けと言う名の証拠隠滅をやらされてるので二人は今日は遅い。
レキはアリア達と買い物に行ってまだ帰ってこない。少し心配だし連絡してみるか?
すると電話が鳴る。
「はいもしもし?」
【なにがもしもしじゃ桐生!何をしておる!】
この声は玉藻かと一毅は眉を寄せる。
「何って夕飯作ってるんだが?」
【く!遠山は一緒か!?】
「いや……でも隣の部屋にいると思うが?」
【ならば急げ!GⅢ攻めてきたぞ!!!】
「っ!」
一毅は血の気が凍りつく。
【吉岡達とも連絡は取れぬし何かが起きておる!急ぐのじゃ!】
「分かった!」
一毅はエプロンをはずして制服と背中に王龍の刺繍が施された多機能ロングコート・龍桜を着ると刀を持つ。
そして急いで隣の部屋に行くとドアを叩く……返事はない。
「くそ!」
すると鍵が開きっぱなしだ。まさか何かあったのかと慌てて入ると……
「ぐ~……」
キンジはソファで寝ていた……気持ち良さそうだ……
「ふん!」
「おご!」
無性に苛ついたため一毅は迷わず拳をキンジの腹に落として叩き起こすと言うか殴り起こした……
「つまりヤバイんだな?」
キンジは腹を抑えつつ背中に桜の刺繍が施された龍桜をハタメカせ走る。
戦闘が起きてるのは品川の発電所でだ。車で行きたいがあちこちで渋滞が起きているらしく走った方が早い。
だが運が良いと言うかタイミングが良すぎる。狙っていたのか……運が良いのか分からない。
「ああ、清寡さん達にも連絡が取れないらしいしどうし……ん?」
すると品川に入り発電所が近づきコンテナ等が多くなってきたところで人影が見える。
「清寡さん?」
刀を腰に差した吉岡 清寡が立っていた。
一毅が驚きつつも清寡に近づく。
「どこ行っていたんですか?ずっと連絡が取れなくて心配してい……――っ!」
突然の抜刀……あまりの速さ……いや、速くはない。刀を抜くのがうまいのだ。
だがどちらにせよ反応を許さないと言う点においては同じで一毅に白刃が迫る。
「一毅!」
「くっ!」
だが一毅も咄嗟に
「な!いきなりなにするんですか!清寡さん!!!」
「すまない。だが桐生……君にはここで死んでもらう」
「ちっ!」
一毅は刀を抜ききって弾き返すと構える。
「キンジ先に行け!俺は少し遅れていく!」
「……分かった!」
キンジは別ルートで向かうため走り去る。
「……何で」
「俺に刃を向けるのか……か?」
清寡も刀を構える。
「悪いが言えない……だが言っておく……すまない」
そう言って清寡は一毅に向けて刀を振り上げた……