大人の責任(ガチ)(notエロ)   作:教頭

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子ウサギ公園撤退戦

 

「おや、次は覆面水着団が来たようだ。……これは100%純粋な善意なんだが、そろそろ手を貸そうか?」

 

「ぜぇ、ぜぇ、ふ、不要だ!相手がなんであれ、私達は……きゃっ!」

 

「Rabbit2、応答して下さい!……なっ、なんですかそのナンセンスな巨大ロボは!」

 

 キャンプの最奥部に拘束されながら、私はRabbit小隊に訪れてしまったデスマーチを眺めていた。なんと私が拘束された次の日の朝の話である。

 

 一応双方が予期していたルートの一つではあるのだが、彼女らもまさか半日も経たない内にこれ程の厄災を呼び寄せる物だとは思っていなかったのだろう。が、警告自体はしたため、申し訳無く思う事はあれどこの状況を利用させて貰う方針に変わりは無い。

 

「こ、こちらRabbit4。カンナさんが再び立ち上がりました!ま、麻酔弾が弾切れですぅ〜」

 

「バカ言わないで、あの麻酔弾は一発で象でも二時間はグッスリの……、なっ、しゅ、手裏剣?ど、ドローンが……。というかいつの間にかセキュリティも、」

 

〈〈ユーザー名・ブラックラビットに管理者権限が付与されました〉〉

 

「こちらRabbit4、動く段ボール箱に位置がバレましたぁ、もうお終いですぅ。でも何故かちょっと親近感が……」

 

「こうなったら、爆撃で……、だ、弾倉が何者かに吹っ飛ばされて予備兵器がスクラップに……一体誰が」

 

「え〜、こちら、───。済まん、また私の顔見知りだ。便利屋68、警察組織に所属していたのなら手配書くらいは見た事があるだろう?」

 

「結構大物の犯罪者じゃないですか!そんなのがなんで貴方の所に」

 

「言われてみれば確かに。……単に金欠なだけかと思っていたが、行動が陸八魔さんの性格といまいち合致しないような気が……、おっ、モニターが回復した。……なんか粗品を持ってるな……なになに『ゲヘナ銘菓・辺獄まんじゅう』」

 

 これは、……大体読めた。お歳暮渡しに来ただけだったのに、何かを勘違いした部下が暴走して爆破オチになったのか。

 

 と、すると前の「明日の食費云々」というのも意味が分かってくる。

 

「(アウトローの同業者のよしみで粗品渡したかったけど、自分たちも食べる物が無いから)明日の(社長の)晩飯の為に……!」

 

 うーん、陸八魔さんが腹を空かせながらもお歳暮を捻出して……それでリーダーを飢えさせる私に……わかんね、第一お歳暮持ってこようとする所から意味不明過ぎる。

 

「……こちら───、陸八魔さんを通してやってくれ。多分、挨拶したら帰るから」

 

「こちらRabbit1。通すも何も、覆面水着団が強すぎて、防衛線が、」

 

「ん?今回はあじ、いやファウストもいるじゃないか。……ああ、そういう。懸賞金狙いというのはブラフか」

 

 期せずして、アビドス組の方の真意も割れる形になったな。

 

 阿慈谷さんが私の正体を探ろうとしていたのか。トリニティ生の身分では、私に手出しは厳禁。加えて、彼女は桐藤さんと親しい事からどちらかというと体制派、自警団みたいな事はし難い、というか周りが全力で止めるだろう。

 

 そこでもう一つの身分である、覆面水着団・ファウストの姿として不完全燃焼に終わった補習授業部の顛末やその裏側を彼女なりの責任感を伴って探りに来たのか。そして2回目は居ても立っても居られなくなって結局、自分も出てきたという事だろう。流石光属性主人公、行動力が段違いだ。

 

 懸賞金狙いというブラフは背後の阿慈谷さんを隠すため。全く、見事にしてやられたな。

 

 とは言え、多くの他勢力がいる中で私のトリニティにおける事情の一端を知っている子に情報が抜かれるのは不味い。

 

「悪いが、どう考えてもこのままじゃ全滅だ。指揮権の委譲とまでは言わないが、最低限の助言は許してくれないか?」

 

「貴方には、この状況をなんとかする力があるとでも?」

 

「いや、なんとかするのは君たちだ。それに私の力は純度100%借り物の力でもあるから、……君たちにちょっとしたバフをかける位の結果になるかな。だが、無いよりはマシだろう?どの道、何もしなかったら結果は火を見るより明らかだ」

 

 シッテムの箱の力を私の力として捉えられるのは毎度の事ながら些か恥ずかしい。……全く、チート主人公万歳だ。どうせなら女の子とスムーズに会話出来るような主人公補正もセットで付けて欲しかった所だが贅沢はいうまい。

 

「……Rabbit1、干渉を許可します」

 

「Rabbit2、ぜぇ、悔しい、が、今は」

 

「Rabbit3、電子系統も最低限は取り戻せる?」

 

「無論だとも」

 

「Rabbit3、同様に許容する。……私の兵器を取り戻して」

 

「あっ、Rabbit4、許可します。えっと、宜しくお願いします?」

 

「済まないな。立場を曲げてでも私の助力を受け入れてくれた事に心の底から感謝する。───この恩は、結果で返そう」

 

 手錠を付けたまま、シッテムの箱と自身を完全同期させ、Rabbit小隊と仮契約。久々の指揮に突入する。

 

 さて、まずは敵戦力把握だ。

 

 防衛線を一瞬で崩壊させた覆面水着団は、真っ直ぐ中央に向かって進撃中。これは私が直接対処するしか無いだろう。……阿慈谷さんには迷惑を掛けてしまったし、一度謝罪しておかないとな。

 

 アヴァンギャルドくんは空井さんが抑えてくれているが、月雪さんや空井さんの損耗具合を考えるとあまりぐだぐだやってはいられない。それに調月さんの事だ。二の矢、三の矢、いや、それ以上の準備があってもおかしく無い。

 

 尾刃さんは、制御を取り戻したドローンで飽和火力を叩き込み続けるしかなさそうだ。これには風倉さんが適任だな。あと彼女の裏には原作通り不知火さんがいる事にも留意しておこうか。

 

 黒崎さんは、指揮開始と同時にBANしたので無力化したと言っても良いだろう。しかし、彼女はありとあらゆるパスワードを抜けるsudoコマンドの神秘を持った存在。万が一、『七つの古則』を抜かれでもしたら私は力の過半数を喪失し、銃弾一発であの世行きのスペランカーに逆戻りする。出来れば物理的に掌握したい所だ。

 

 ゲーム開発部の影がチラついているのも気になる所だ。彼女らが何故私の情報を?……これに関しては情報が不足し過ぎている。アビドスや便利屋68の件もあり、彼女らにも金では無い何かが有るのでは?という疑問を頭に留めて置こう。

 

 忍術研究部は……やはり最初から最後までよく分からない。霞沢さんに狙撃で撃滅して貰うのが良いだろうな。ブルアカ世界の隠密技術は、技術よりも本人の資質に依存している雰囲気がある。その観点で言えば、この戦場では霞沢さんは花岡さん以外には見つからないだろう。

 

 陸八魔さんには、私の朝食を運んできて貰おう。甘い物なんていつぶりだろうか。とりあえず、モモトークを飛ばしておくか。……何気にこのアプリを使うのも初めてだな。無論、友達は初期状態の0人のままである。

 

「現時刻を以て第二次防衛線を放棄、突破してきた戦力に関してはこちらで対処する。Rabbit1及びRabbit2は識別名『アヴァンギャルド』との交戦に集中せよ。Rabbit3は飽和火力を以て尾刃カンナの継戦能力を喪失させてくれ。取り戻したドローンの操作権限を返還する。Rabbit4は、今から指名するターゲット三名を徹甲弾を以て一撃で撃滅せよ。これ以上ドローンを落とされると尾刃さんの無力化に影響が出かねない。あと、段ボール箱は放置で良い。……下手に突いても鬼が出るか蛇がでるか。Rabbit1、私からの助言は以上だ。助力は其方の許容出来る範囲で遂行してくれ」

 

「こちらRabbit1、情報提供ありがとうございます。修正点は一点、アヴァンギャルドの撃破はRabbit2に一任、貴方の遺物の効果が思ったより凄まじいのでそれくらいは何とかなります。わた、いえ、Rabbit1はこれより貴方の援護に向かいます。手錠を付けたままでは戦闘も何もないでしょう」

 

「Rabbit2、了解。こっちも3分、いや2分半で終わらせて援護に向かう」

 

「Rabbit3、了解。うひゃ〜、これは打ち込み甲斐がある相手だね。これより残存兵器を突貫運用、ダメージコンテストを開催する!」

 

「Rabbit4、ターゲットを確認。変な変わり身を使う一名以外は問題なさそうです」

 

「久田さんだな。それは空蝉と呼ばれる特殊技術だ。仕組みは私にも分からんが、身代わり人形さえ尽きれば恐らく使えなくなる。そうだな、……百八発程部位は問わないから銃弾を当ててくれ。それで何とかなる筈だ。最悪、久田さん以外の二名を無力化してくれれば、あとはこちらで何とかする」

 

「Rabbit4、了解です。ひゃ、百八発、頑張らないと」

 

 さて、大方の指示は振り分け終わったのでここからはマルチタスクの時間だ。自身の身で生徒をいなしつつ、4人の戦況を同時に進行させ盤面をひっくり返す必要がある。

 

 幸い、"既に勝利条件の確保は終わっている"。あとは、そこに行き着かせるだけだ。

 

「という訳で撤退戦だ。この公園を退く事に不満はあるだろうが、戦略上これ以上ここに留まるのは不可能だと判断した。一時的なモノであるからどうか耐えて欲しい。引く先のアテは私のツテで責任を以て用意させて貰った。奪還は私を処理し終えた後であれば恐らく容易であろう」 

 

「こちらRabbit2、悔しいがおまえの遺物と同期して色々な情報が入るようになってから、おまえの言葉がかなり厳正な思考・判断を伴っている事は否が応でも思い知らされた。きっと拒絶したら全滅するのは私達の方になるだろうことも分かる。……それで、退避先は?」

 

「───D.U.地区郊外、ありし日の夢の廃棄場、今は亡き遊園地『UTOPIA』。……ちょっとそこの亡霊達の主と知り合いでね。向こうから協力を打診されたよ」

 

「……やっぱり『先生』は幽霊なんじゃないですか?」

 

「困った。これに関してはあんまり否定する材料がない」

 

 ちょっと心配になって、自分の体が透けていないかどうか確認してしまった。

 

 

 

 

 

 

 ▲

 

 

 

 

 

 

 私、阿慈谷ヒフミは、これといった特徴の無い平凡で地味めな学生です。

 

 なのに、最近はやけに色々な事に巻き込まれてしまって、でもその中でかけがえの無い友達を得られて……、ううん、やっぱり私じゃ、最後までうまく思考が纏まらないなぁ。

 

 兎に角、そんな出会いの一つとして『補習授業部』がありました。

 

 アズサちゃん、コハルちゃん、ハナコちゃん

 

 ───そして曰く付きの大人の『先生』

 

 最初こそ、皆すれ違っていましたが、合宿や勉強会を経て少しずつ、少しずつ、互いの事を知っていきました。

 

 その末に私達は友情で苦難を乗り越えて、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、友達と慰めあって、最後は皆が笑顔になれるようなハッピーエンドへ至りました。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 ……私に見えていたのは、ここまででした。

 

 暗くて憂鬱なコトは、この物語には不要だと言うかのように覆い隠され、行き場を無くした殺意や憎しみはただ一人が背負い、その末に彼は悪役として舞台を去りました。

 

「学生の最大の敵は、赤点くらいで丁度いい。それ以上はやり過ぎだ」

 

 今思えば、合宿中にふと先生が呟いたこの言葉に全てが込められていました。

 

 私達は優しく、守られていたのです。

 

 そう、『先生』が行ったお仕事は大きく分けて二つ。

 

 絶望の縁にいる誰かを救う事と、"新たに誰かが巻き込まれる事を防ぐ事"

 

 この事をアズサちゃんから聞いた瞬間、『先生』の痛みは他人事では無くなりました。

 

 私達は彼の苦しみの上で、幸せを享受していたのです。

 

 確かに暗くて憂鬱な話は嫌いですが、誰かの痛みを全く無かった事にしたい訳ではありません。

 

 知らないと、───『先生』には何が見えていて、何を背負っているのか。

 

「お久しぶりです、『先生』。少し、お時間よろしいでしょうか」

 

 

 

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