大人の責任(ガチ)(notエロ)   作:教頭

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被害確認(手遅れ)

 

 

 土下座、土下座、土下座。

 

 雨が降っている今日は絶好の謝罪行脚日和である。

 

 誠意を込め、尊厳と恥を捨て、赦しを請わねばならない。

 

 謝罪を受け取ってもらえれば御の字で、そうで無い場合はただ相手の憎しみを受け入れる。

 

 謝る、という行為を許される為に行うのは子供までだ。

 

 大人にとっては罪を背負うという決意表明であり、責任の所在を明確化する手順であるのだ。

 

 ヴァルキューレにて被害確認の後、本件に関する超法規権限を放棄し、法に則った処理を任せて、謝罪。

 

 その足でミレニアムにすっ飛んでいき、セミナー、ヴェリタス、エンジニア部、そしてゲーム開発部に謝罪。

 

 尤も、ゲーム開発部からは面会拒否されたので心の傷を考慮し深くは追わず、慰謝料を払い次はアビドスへ。

 

 無論、銃弾によって面会拒否されたので、その足でカイザーコーポレーションへ行き、超法規権限を用いて、アビドスの借金をシャーレに移し、彼女らの口座に慰謝料を放り込んで、サンクトゥムタワーへヘリで移動。

 

 道中、便利屋68により狙撃を受け、ヘリは墜落。

 

 私の身柄は彼女らに拘束されて、現在に至る。

 

「……成る程、事情は分かりました。ケジメが必要なら、腕か足、または目を、慰謝料を求めるなら、言い値を払いましょう。ただ、命だけは取らないで頂けると助かります。まだ、罪を償い切っていないので。最後に、ウチの職員が、本当に申し訳ございませんでした」

 

「…………」

 

 眼前には、何処までも冷徹な眼差しを携えた、陸八魔アルがワインレッド・アドマイアーを私の頭に突きつけている。

 

 まさか、この心優しい子の怒りをここまで買うとは。

 

 いや、それも致し方無い。まさか、奴が浅黄さんと伊草さんにもセクハラしていたとは。ゲームと現実の区別がついていなくたってシナリオの進行段階だとか好感度だとかの分別位は付かないのだろうか?

 

 ……前途多難などと言うレベルでは無く正直言ってもう諦めた方が良いとまで思えるが、苦しみから逃れる為に生を手放すというのは些か無責任が過ぎる。

 

「───あの子達、アビドスの子達へのケジメもキチンとつけたのでしょうね」

 

「謝罪は、銃弾にて拒絶されてしまいましたが、見える様に頭を下げました。慰謝料の方は彼女らの借金を全て肩代わりする事と、当面の活動には困らない程の資金を慰謝料としてお支払い致しました」

 

 諸々の責任の為にシャーレのビルごと売っぱらい金を用立てたのだ。

 

 無論、未知の遺物であるクラフトチェンバーはカイザーなどに渡らないよう慰謝料代わりにミレニアムに譲渡する契約をし、一応の安全確保も欠かさない。調月さんに渡る可能性も考慮したが……ぶっちゃけ、AL-1S(アリス)が「アリス」に成れていない可能性を考慮したらそれはそれで、良い方向に働く可能性もあるから致し方無く許容した。

 

「アル、彼、血が」

 

 鬼方さんが小声でそう告げると目の前の雰囲気が少し揺らぐ。

 

「えっ、えっと大丈夫?持病とかだったら頭上げて良いわよ?」

 

「……ご心配ありがとうございます。ですが大丈夫です。この傷もケジメの一つなので」

 

 まぁ、小鳥遊さんから殺意の籠った一発(ショットガンをほんの僅か脇腹に掠らせただけ、多分加減されてる)を貰っただけだ。正直、アビドスの人らとマトモに話し合う為には、銃弾の一発位耐えなければお話にもならないだろう。まぁ、一般日本人が耐えられる訳もなく裏で2時間程絶叫したのは内緒だが。今は鎮痛剤で無理矢理何とかしているだけである。

 

「そ、そう。……おっほん。概ね事情は分かったわ。では、シャーレへの要求だけれどもうちの社員が受けた諸々の被害を考慮して慰謝料として20万円を請求するわ」

 

「わーい。柴関ラーメン大体400杯分だ!」

 

「こ、これからは、ちゃんと一人一杯食べられるんですか!」

 

 後ろから浅黄さんと伊草さんの歓声が上がる。

 

 しかし、これは……。

 

「…………安すぎでは?」

 

「えっ」

 

 陸八魔さんの顔が、見覚えのあるものに変化する

 

「……特に法律とかに詳しい訳でも、裏社会に精通している訳でも無い私でも分かります。せめてその十倍の200万位は払わせて下さい」

 

「にひゃ、200万!」

 

「ええっと、柴関ラーメン……4000杯?!」

 

 ……何というか、なんか何とかなりそうな流れになってきた。

 

「わ、私なんかがセクハラされるだけで、こんな大金を貰えるなんて。……アル社長の為に、私、脱ぎます!」

 

「ま、待ちなさい!ハルカ!早まったら……」

 

「……脱ぐだけで4000杯、脱ぐだけで4000杯」

 

 いや、違う!この流れ、爆破オチ一歩手前だ。

 

「はぁ……。えっと、その、『先生』は目を……閉じてますね」

 

「カヨコ!ムツキ!何でもいいからハルカを止めて!」

 

「アル社長、止めないで下さい。いつも迷惑をかけっぱなしな私が、会社に報いる為にはもうこれくらいしか……」

 

「あっ、ピンを抜いた手榴弾を服の中に……」

 

 恐らく爆風で衣服を内側から吹っ飛ばして、脱ぐつもりなのだろう。発想が怖過ぎる。

 

 死なないように努力はするが、まぁ、これで死んでも地獄での茶飲み話には困らないか。最後が笑い話というのは、今の状況的には上等過ぎる死に方である。

 

 私は背中に伝わる爆風を感じながら、そう思ってしまった。

 

 

 ▲

 

 

 まぁ、話の顛末だけ話すと、伊草さんの服の方が安物の手榴弾の威力より優っていて、事務所だけが綺麗に吹き飛ぶという何とも言えないものだった。

 

 私が支払った慰謝料の200万は、そのまま借りていたビルへの弁償代へとスライドしていき彼女らの財政状況は結局改善しなかったという。

 

 なんか勘違いの原因を作ったみたいで申し訳なかったので、彼女らに依頼という方でアビドスとの取り次ぎを頼み、私と便利屋の一幕は終わりを告げた。まぁ、暫くは本件の依頼料で何とかなる筈だ。

 

 そんなこんなで、私は取り次ぎ役の鬼方さんと共にやっとこさ、アビドス高等学校の敷居を跨いだ。

 

 無論、道中にメインヒロイン且つアプリアイコンの砂狼さんに出くわすような事は無論、無かった。

 

 最終章の諸々が大丈夫か少し不安になるが、最終章以前に詰む確率の方が高いので今はそんな贅沢を言っている場合では無い。

 

 私は、対策委員会の部室では無く、長らく使われていない空き教室の一室に通されて、彼女らと初めて相対する。

 

 黒見セリカ、奥空アヤネ、十六夜ノノミ、砂狼シロコ

 

 ───そして、小鳥遊ホシノ

 

 皆、誰も欠ける事なく踏み揃っている。

 

 ……ん?てっきりホシノは黒服の手に落ちているものかと、時系列的にも恐らく間に合わないと踏んでいたためソレをどうにかする話し合いの筈だったのだが。あっ、借金を私が慰謝料として返したから黒服の契約がおじゃんになったのか。

 

「───もう謝罪とかいいから、まず、借金の件に関する納得の行く説明をしてね」

 

 開口一番、ホシノがそう冷たく言い放つ。

 

「……慰謝料代わりです。シャーレの超法規権限を使い、借金をシャーレ名義にして完済しました」

 

「分からないなぁ。シロコちゃんやアヤネちゃんへのセクハラはお金をいくら積んでも絶対に許される事じゃないんだけど、それでも9億は度が過ぎてるよ。何か裏があるんじゃ無いの?」

 

 彼女のオッドアイが油断無く、こちらを見定めている。下手な嘘は吐けないだろう。

 

「裏は"あります"。そしてそれを今君たちに言う事はどうしても叶わないのです。ただ、私は私なりに自分の犯した過ちに対して責任を取ろうとしているだけ、君たちが思う様な信用出来ない大人です。許しを請うような真似はしません。ただ、────いえ、何でもありません」

 

 "────ああ、本当に、君たちが無事で良かった。"

 

 喉まで出かかった安堵の息を理性で引っ込め、表情筋を固める。ここでこんな事言ったら私も彼らと同じセクハラ野郎に成り果ててしまうだろう。

 

「はぁ、もういいよ。一応、お陰様で借金は無くなったし。じゃあ、帰った帰った。一応、事務的な連絡くらいなら受けてあげるから、そんなに気負わないで」

 

「すみません、本当にありがとうございます。……最後に、答えなくても良いですが、幾つか質問する事をお赦しください。あの男はどうやってヘルメット団やカイザーと戦っていましたか?……貴方方を指揮するというのも、報告書を見た感じかなり無理があると思いますが」

 

「───ん、何だかよく分からないカードをその度に使っていた。たしか、『先生』に詫びながら」

 

「『ちょっとだけ、ちょっとだけだから───』って何回もあなt、いえ『先生』の名前を言いながら」

 

 砂狼さんと奥空さんが特に気負うこと無くそう答えてくれる。

 

 しかし……これは、

 

「使ったらなんか六人位、女の子が召喚されて。あっ、そうそう!その中には何故かゲヘナの風紀委員長もいたんだよ!」

 

「他にもトリニティのティーパーティの子や狐面を被った子もいました。あっそうそう。ミレニアムの制服を来たちっちゃい子が何やら大きな砲からレーザーを打った時は驚きましたよー!」

 

 黒見さんと十六夜さんがそう補足する。

 

 急に心臓が鷲掴みされたように感じた。

 

 まさか、他人のソレを?いや彼らがここから巻き返す可能性よりは高い。

 

「何度もすいません。……彼はそれを何回位使ったのですか?」

 

 

 

「───ん、戦闘の度に使っていたから、大体二十から三十回くらい?」

 

 

 

 あっ、私の寿命、終わった。

 

 

 

 

 

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