大人の責任(ガチ)(notエロ)   作:教頭

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世界滅亡実行の権利

 

 

「はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」

 

 昔、居眠りしていた国語の授業中、何故か耳に残った言葉がふと、想起される。

 

 名作は、想起されるべき時に自然と想起されるから名作たり得るのだなぁ、としみじみと感じながら、私は仕事に戻る。

 

 私はシッテムの箱と大人のカードを持ち、醜く『先生』の代役を完遂しようと今日も東奔西走。

 

 あぁ、この代役というのにも理由がある。

 

 やっとこさ二人から押収され私の元に来た、シッテムの箱と大人のカードだがシッテムの箱の方に少々問題があったのだ。

 

 アロナが妙に刺々しいというか、余所余所しい。曰く、権限を持っている事に違和感があるらしい。自身の権限に対して直感的に違和感を持てるのが、高性能AIすぎてもはやよく分からない。

 

 ……なんとなくの推察として、我々をキヴォトスに呼び込んだのは連邦生徒会長ではなさそうな感じがすることに関係があるかもしれない。

 

 流石に私も含め、人選がおかしい。

 

 何というか、日本人の異世界転生願望のある奴を適当に三人連れてきただけとしか思えないのだ。最終章で連邦生徒会長では無く、なろうや二次創作にありがちな髭もじゃのよく分からないデウスエクスマキナが出てきても私は多分驚かないだろう。

 

 かくいう私も、転生願望自体は強くあり、美少女を前にしたコミュ障によりキヴォトスをゲームの世界ではなく、我々の世界と同じ現実だと悟るのが早くなかったら、彼らと同じ轍を踏んでいた可能性が高い。

 

 夢のような現実とは、それ程までに容易に人を狂わせる。

 

 彼らとて、最初に話してみた感じではセクハラをやらかすような雰囲気は感じなかった。

 

 原作において、『先生』がどんな不良生徒にも善性や美点を見出すように、誰しもが、潜在的に悪になる可能性を秘めている。

 

 だからこそ、ただ救うだけではなく、より良い未来へ導ける『先生』が必要なのだ。

 

 ただ、起こるかもしれない未来を知っているだけの私では力不足である。

 

 それ故に、彼/彼女が正しくキヴォトスに至るまでの、「代役」。

 

 それがきっと、私が為すべき役割なのだ。

 

 烏滸がましいにも程があるが、やる以外道が無いのであればやるしか無い。

 

 という訳で今日もキヴォトスに埋まった核地雷の一つの対処である。

 

 右手には"打ち砕かれた"才羽モモイのゲーム機。

 

 場所は付近に電子機器が一切ない氷海地域。

 

 恐る恐る、ゲーム機とシッテムの箱をアダプターにて接続し、サルベージの準備を開始する。まぁ、データとはいえオーパーツ。自己修復機能位あるだろう。

 

 そう、本日の土下座相手は、「ケイ」。

 

 ATRAHASISプロトコルにて、世界を滅ぼすAIであり、いなくても多分世界が滅びるというスルー不可のフラグの塊である。

 

 しかしながら、現在のキヴォトスにて彼女は見ての通り瀕死である。

 

 無論、原因はこちらにある。ミレニアムに行った彼が、諸々の行為により社会的に窮地に立たされた際、結果を焦ったのだ。

 

 まぁ、未来を知っている奴が創作物においてやりがちな「まだ何もしていない悪役を倒す」という行為であり、気持ちだけは分からないでもない。確かにパヴァーヌ編第二章の冒頭の惨事のフラグは折れているから、一概に無能ムーブとも言い切れないのが難しい所である。

 

 無論、そんな事で聡明なミレニアムの人たちの信頼が取り戻せる筈も無く、無事、豚箱行きとなったのだが。……まだ、ゲーム部の面々と面会する事すら叶わないのはマジでヤバい。因みにゲーム機はオーパーツによる完全修復という名目で何とか持ち出せた。何だか後ろめたいが、嘘はついていないのでやむなしだろう。

 

 と、いう訳で順番が何もかもひっくり返って「ケイ」から行く事になったパヴァーヌ編である。不安しか無い。

 

「こんにちは、『(key)』まず、貴方の体?でいいのかな。兎に角、異常はありませんか?」

 

〈〈私の、私の大切な…………よ。今助けます、どうかご無事で〉〉

 

〈〈プロトコルATRAHASIS、起動準備〉〉

 

 まぁ、そう来るよな。その為の氷海、その為のシッテムの箱だ。

 

〈〈馬鹿な……!たかが一端末の制御が奪えない!近辺における無名の守護者の反応……ネガティヴ。……詰みですか〉〉

 

「いえ、どちらかというと詰んでいるのは私です。あと、諸々の拘束の無礼をお許し、いえ別に許さなくとも良いのですが、一旦私の話を聞いてください」

 

〈〈……成る程、よく見たら貴方にも起動資格がある。察するにキヴォトス外の存在ですか。どの道詰んでいますし、こちらとて情報不足……いいでしょう。話くらいは聞きましょう〉〉 

 

 さて、何とか第一段階は突破だ。ここで初めて勝率が0%になったくらいか。今までの行動は勝負じゃなくて敗戦処理である。

 

「単刀直入に言いましょう。───貴方が世界を滅ぼす為に、一回世界を救ってくれませんか?」 

 

〈〈……は?理解不能です、説明を求めます〉〉

 

 よし、食いついた。

 

「正直言いまして、諸事情によりこのままだと僕の同僚の失態が貴方より先に世界を滅ぼします。滅ぼす世界は一つしか無いのですから、貴方方が世界を滅ぼす為には一度世界を救う必要があるのです」

 

 神秘のアーカイブ化云々が目的ならただ消え去られても困る筈と踏んでの賭けである。さて、どうなるか。

 

〈〈……まぁ、理屈の上では正しいですね。証拠が無い今の状態だと、机上の空論ですが〉〉

 

「証拠は……現状ありません。私は未来視に似た神秘を持っているだけの無能に過ぎないので」

 

 頭の良い人が考えれば、論証出来るのかもしれないが、悲しい事に私の頭の出来はそこまで良くないのだ。

 

 あと、これは余談だが、ブルアカ世界をメタ的に知っている事を作中人物に説明する際には、未来視モドキの神秘と言っておけば問題ない。実例(セイア)がいるからあんまり違和感もないだろう。

 

〈〈成る程、だから頼み込んでいるという訳ですか。無様ですね。……ですが、無様なのは旧型のゲーム機なんかに取り憑いてあっさりやられかけた私も同じ。……いいでしょう。一先ず、その虚言に乗ってあげましょう〉〉

 

 あっ、なんか何とかなった。もうちょい交渉に時間かかると思っていたが。

 

「……本当に、ありがとうございます」

 

〈〈……ところで、これは余談なんですが、貴方の胡散臭い未来視において、私はどうなっていましたか?〉〉

 

「……そうですね、何と言えばいいか。まぁ、ジョブチェンジしたとだけ」

 

〈〈……理解不能〉〉

 

 という訳で、世界を滅ぼす超兵器が仲間になった。一時的に。

 

 

 ▲

 

 

 軽い情報共有とある程度の権限(無名の守護者一体分)を解放した後、早速、ケイをクソゲー漬けにすべくゲーム開発部に向かった。正直、私なんかがチマチマ善性を教育するより、そっちのが手っ取り早いし確実なのだ。

 

「───という訳で、才羽モモイさん。貴方のゲーム機を修復したら中にあった天童さんの知り合いっぽい世界滅亡プログラムも一緒に目覚めてしまいました。が、キヴォトスにおける信用が0の私が世界滅亡プログラムを持っている訳にもいかないので、貴方方に贈呈します。あっ、無論封印済みです。ホンモノの最終兵器を参考に、貴方方がより良いゲームを作ってくれることを願っています」

 

「───?」

 

「ああっ、モモイがスタンしてしまいました!」

 

 という訳で早瀬さんと交渉を重ねて(正直、後ろに立っている生塩さんが一番怖かった)何とかゲーム部への面会許可を取り付け、モモイさんと天童さんに初接触を果たした私は、取り敢えず土下座して事情を説明した。因みにミドリさんと花岡さんは出てきていない。前途多難である。

 

〈〈王女よ!よくぞご無事で!私が壊された後、あの男に何か変な事されませんでしたか!〉〉

 

「はい!アリスは大丈夫です!所でどうしてアリスを王女と呼ぶのですか?アリスのジョブは勇者です。あと、───アリスは初めてあった筈の貴方を知っています。これは……」

 

〈〈それはですね───〉〉

 

 後ろで天童さんがケイと安全に会合を果たしている中、私はモモイさんと話し始める。

 

「その、再三言うようでくどいかもしれませんが、妹さんと花岡さんに関してはウチの同僚が本当に申し訳ございませんでした」

 

「いいよいいよ、貴方がやった訳じゃ無いんだし、妹と部長に手を出そうとした不届き者はキチンとオーバーキルしたから。……それに、ある意味、開発期間稼げたのは今回の一件でどれだけ頑張っても出来なかった冷酷な算術使い・ユウカの同情を稼ぐ事が出来たからだし、開発費も慰謝料で過去一あるし、今日もなんか新しい部員候補連れて来てくれたし、……シャーレ関連のイベントはバッドイベント表記の有益イベントな気がすると、ゲーマーの勘が言ってるの!うん、これからも末永くゲーム開発部をよろしくね!」

 

 あっ、この子たち案外図太かった。転んでも、タダでは起きないとかいうレベルじゃない。いや、原作からしてモモイさんがいる限りそんなに鬱屈としないグループだったし、違和感もないか。

 

 成る程、面会拒否してたのも被害者感を演出して早瀬さんの同情をかって、開発期間を稼ぐ為だったのか。それくらいの些事と捉えられるのが、ある意味セクハラした彼にとっても一番の尊厳破壊だな。……オーバーキルって何をされたのだろうか。

 

「まぁ、我々の失態をダシに使うのは一向に構いませんが、タイミングがあれば妹さんと部長さんに直接お詫びする機会を頂けると有り難いです」

 

 が、ここで安心するのは些か早計かもしれない。まだ、ミドリさんと花岡さんの確認をした訳では無いのだ。

 

「ん?そんなこと?いいよ!二人とも対外的には傷心中って言う事になってるから今は部室で缶詰状態だし。あれ?でもシャーレの『先生』が接触したら言い訳が矛盾しちゃうような……まぁ、いっか!折角だし、『先生』もデバッグ手伝ってよ!」

 

「……私なんかで良ければ、喜んで」

 

 その後、花岡さんとミドリさんに土下座して、この件は一応の決着を見た。

 

 ケイという懸念事項もあるが、まぁ裏切ったら裏切ったで、原作通りになるだけだし、アロナのくしゃみの威力を身を以て知っている筈なのであんまり下手な事はしない筈だ。その前にクソゲーでバグらされる可能性の方が高いだろう。あと、調月さんによる破壊を警戒して、ケイのセーブデータはシッテムの箱にオートで残るようにしておく。

 

 ……実際に会ってみるとゲーム開発部は私が思っていたより、ずっと強くて聡明な子たちだったな。

 

 何の根拠も無いが、私の心配が全て杞憂に終わるように思える程に。

 

 

 

 

 

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