大人の責任(ガチ)(notエロ)   作:教頭

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完全体ティーパーティ

 

 

「────いいだろう。かかって来い!聖園ミカ!私が相手だ!」

 

「ぷっ、あははっ、面白い冗談だね!ジョークのセンスは一級品だよ」

 

 ひとしきり笑った後、少しだけ彼女の足先の方向が変わる。

 

 瞬間、聖園さんとの距離が0になって───

 

 かと思ったら、私は壁に叩きつけられていた。

 

「あっ、ごめんね!……デコピンって意外に力加減難しいんだなぁ。今度セイアちゃんのおでこで練習しよーっと。おっと、いけないいけない、まずナギちゃんを助けなきゃね。そのうち正実の人たちが来ると思うから出来たら大人しくお縄についてね。じゃあ、またねー⭐︎」

 

 そう言い残し、聖園さんは天井を突き破って、夜空に消えていった。……うん?桐藤さんを助けに行く?確か補習授業部は……桐藤さんを拉致しに……マズイ、補習授業部が絶好調の聖園さんに鏖殺される。

 

 しかし、不幸は続く。

 

 どう救援するか考えてきた所に、聖園さんがぶち抜いた天井から誰かが入れ替わるかのように降ってきたのだ。

 

 あっ、あの特徴的なライオットシールドは――

 

「ミネ!『先生』を!」

 

「無論です、直ちに救護します」

 

 そう、百合園セイアを抱えた、蒼森ミネが夜天より降臨したのだ。

 

 ……一難去ってまた一難なんてレベルじゃない。クソっ、アリウスの救援はまだか。加えて、デコピンが効いてるな。脳震盪で上手く立ち上がれない。まったく、加減が下手だなんてなんの冗談だ。

 

「待て、百合園セイア、蒼森ミネ。はなs」

 

「ミネ、『先生』の話に耳を傾けてはならない。その不可解な言葉の全てに、未来を彼の望む方向へ誘導する力がある」

 

 こっちの手の内は全て割れているか。やっぱり、本物の未来視相手だと私のような似非預言者では太刀打ち出来ないな。……本当に最後まで全て見えているのならば、私を妨害しない筈なのだが、そのあたりも私の星回りが悪い故、か。

 

 百合園さんの未来視に一体全体何が映っているのかは興味は無いが、未来というものはそれを知った時点であり得たかもしれない可能性に変わってしまう。未来を知っている自分、を含めた未来視で無い限りだ。しかし後者の未来視能力者に自由意思があるとは言い難い上、様々な点で論理的な破綻が生じる。即ち、本質的には未来視などという能力はこの世に存在しない、というのが私の解釈であるのだ。

 

 そう、未来は読むものでは無く、誘導するものであり、それ故に似非預言者でも自身の努力で無理矢理、適当に預言した未来へ持っていけば本物の預言者たりえるのだ。

 

 ……と、いう訳でまだまだ足掻かせて貰おう。今、私が囚われると条約会場にミサイルが叩き込まれるのが確定する。

 

「そのカード、……ああ、アビドスで使われていた。成る程、奥の手かい?」

 

「観ていたなら知っていると思うが、早めに引いておく事をお勧めする。特に百合園さんは病み上がりだろう」

 

 大人のカードを切る、フリをする。

 

「セイアさんからある程度、事情は聞きました。……何故、貴方は他人からの助けを諦め、自身を顧みないのですか?」

 

 蒼森ミネは、厳格に、穏やかにそう私を問いただす。

 

「私が救われると、その間に全員死ぬからだ」

 

 単純明快、ただ、それだけの話である。自身の功績を誇示し、多くの人から認められ、一時の幸せを得ることはそこまで難しい話じゃない。しかし、幸せは私から罪を忘れさせ、最初の歪みからくる破綻により更なる罪を上塗りし、最終的に私は罪悪感に押しつぶされてしまうだろう。

 

「それは、『先生』の責任では無い筈だ。君の同業者2人が、君と同質の神秘を持っている事。その二人がこの世界において何か致命的な禁忌を犯してしまったことは、理解している。そして、その歪みを知覚し、修正する事が出来るのはやはり同質の神秘を携えている『先生』しかいないという事も論理的には正しい。しかし、禁忌とは取り返しがつかないが故に、禁忌なのだ。『先生』が立ち向かった所で何が変わるというのだ。───貴方の旅路は、あまりに多くの苦痛を伴い過ぎていて、見ていられない」

 

「つまり、あれか。百合園さんは私に『諦めろ』と言う為に、自身が諦めた世界に再び目覚めた訳か。まぁ、夢の中に不快な三文芝居が流れ続ける事については謝罪するが、生憎こちらも『仕事』なんでね。諦める諦めない以前にやるしかないのだよ」

 

「自身の展望に、何の希望も無いとしてもかい?」

 

「希望なんてものは、相対的な物だ。何だったら無から産み出す事も出来る。要は気の持ちようというだけだ。───例えばほら、紙切れ一枚翳すだけで自分より遥かに強い相手の足止めに成功したりだとかな」

 

「───っ!ミネ!今すぐ『先生』を!」

 

 百合園さんがいい終わる前に、蒼森さんがこちらに跳ぶが、その瞬間、四方から攻撃が飛んできて彼女を押し留める。

 

「───目標、確保した。アツコ、目標を連れ離脱しろ。残り三人で百合園セイア、及び蒼森ミネのヘイローを破壊する」

 

 青みがかった黒髪、黒いスポーツキャップ、冷徹な眼差しを携えて錠前サオリは我々の間に立ち塞がる。

 

「───くっ!貴方達にも、救護が必要なようですね」

 

 ……さて、スクワッドが来た以上、私の安全は保証されたようなものだが、次はトリニティ側の負傷者を減らす誘導に取り掛からねばならない。それに絶好調の聖園さんがいる以上、スクワッドが敗北する可能性もあり得るのだ。油断は禁物である。

 

「錠前さん。未来視の関係上、このタイミングでの百合園セイアの殺害は不可能だ。……厳密には可能ではあるのだが、実行した場合、我々は怒り狂った聖園さんに殲滅される。マダムに伝えろ、作戦の優先順位を見失うなと」

 

 未来視が無くとも予想できる結末を告げ、ベアトリーチェを制御する。悪辣な彼女が、それでも殺害を指示した場合は殺人に対する抵抗感と仲間の死の可能性を示唆してアリウススクワッドに対する説得を試みる必要があるが……さて、どう出る。

 

「……マダムから、連絡が来た。上位の未来視が手に入った以上、最早百合園セイアは脅威足り得ない。『爆弾』を温存しろ、との事だ」

 

 よし!彼女が似非預言者と本物の鑑定も出来ない節穴で助かった。今までの私の行動の異質さと、百合園セイア生存の予言が分かりやすい形で実現したのが大きかったな。

 

 聖園さんに守られているであろう桐藤さんの安全は保証されているし、補習授業部は……まぁ、死にはしないだろう。

 

 後は大聖堂地下からカタコンベに逃れるだけだ。

 

 しかし、私は本当に運が悪いようだ。

 

 ────時計塔が宙から降ってきて、大聖堂を押し潰した。

 

 こんな事が出来る子は、一人しかいない。

 

「ミ〜カ〜さ〜ん〜!歴史ある時計塔と大聖堂になんて事を!」

 

「いや〜、私のせいで迷惑かけた彼女達も助けたいなって。多分、あの子達、このまま帰ったら悲惨な事になっちゃうし。あっ、どっちも中に人が残っていないのは確認したよ」

 

「じ、事後処理や修復費用が、というかシスターフッドになんと申し開きをすればいいか……紅茶が飲みたくなってきました」

 

「ガンバ⭐︎ナギちゃん。私は暫く監獄暮らしだから手伝えないかなぁ」

 

 ───聖園ミカ、再臨

 

 それと同時に、これはもう一つの事を意味する。

 

「ミカ!今すぐ彼を止めてくれ!」

 

「───セイアちゃん、本当に無事だった……、その、私」

 

 ティーパーティ、完全復活である。……敵として。

 

「ミカ、諸々は後にして、どうか彼の捕縛を優先してくれ!」

 

「わーお、大人しいセイアちゃんがそこまで言うなんて。でも、うん、りょーかい!」

 

 あっ、詰んだ。

 

 

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