ブルーベリー学園には黒幕がいる   作:インマラホテプニキ

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 タ〜ロタロタロタロ。タロ黒幕説が好きすぎて初投稿タロ〜。


出しな……てめーの『ピーチドン』を

 この世界には『黒幕』が存在する。

 ある時は悪の組織の首領として、またある時は強大な資産を持つ権力者として。

 自らの理想を遂げるために暗躍し、時が来れば、今ここにある秩序を破壊する大事件を引き起こす。

 世界中どの地方にも存在する巨悪。カントーでもジョウトでも、ホウエンでもシンオウでも、そしてこのイッシュでもそうだった。

 いいかい、君。『黒幕』は確かに存在するんだ。

 そして、とうとうこのブルーベリー学園にも現れたのさ。

 毒を以て狂わせ、鎖を以て支配する。

 人もポケモンも例外じゃない。あれの手にかかれば、誰もが瞬く間におのれを失うだろう。

 

 その『黒幕』の名は──タロ。

 

 この世界に蔓延る大いなる『悪』の一つだ。

 

 だからこそ、アカマツ君。心に留めておいてくれ。

 

 ──彼女を決して信用してはいけない。

 

 

 

「ネムちゃん、ちょっとお話いいですか?」

「そろそろ来る頃だと思っていたよ」

 うっすらとした笑みを貼り付けて、タロが私の部屋を訪ねて来る。丁寧な物腰、温和な表情。しかし、今の私には彼女の心の内が手に取るように分かる。

「怒り。そして焦りを覚えているね、タロ」

「当たり前です! アカマツくんから聞きました。ネムちゃんが妙な噂を流してるって。そういうの、よくないと思い……なんですか、それ?」

 タロは唖然とした表情で私の頭部に巻かれているモノを指差した。動揺しているのだろう。フフフ、やはりこの対策は間違っていなかったと見える。

「アルミホイルだよ」

「どうしてアルミホイルを頭に巻いているんですか?」

「毒の鎖から脳を守るために決まっているだろう?」

「はい???」

「鋼は毒を無効化する。タイプ相性の基本じゃないか。私は君が訪ねてくることを見越して、きちんと対策していたのさ」

「絶望的にかわいくないので早く外してください」

「嫌だね」

 絶対に外してなるものか。タロは毒の鎖を使って人やポケモンを支配している。先程「アカマツくんから聞いた」と言っていたのがその証拠だ。私はアカマツ君に真実を話した。その結果彼がタロに告げ口をしたとするなら……きっともう、アカマツ君は毒に侵され、傀儡となってしまったのだ。

「よくもアカマツ君を……!」

「はあ……また何か妙な思い込みをしているんですね。捨てるように言った怪しい缶もそのままですし……」

「テラス缶は捨てないぞ! 高かったんだから!」

「え、それいくらするんですか?」

「フォースエナジー研究部から1000BPで譲ってもらった」

「一刻も早く潰しましょうその部活」

 バカめ、今更テラス缶に危機感を覚えたようだがもう遅い。テラスタル・フォース・エナジーはあらゆる淀みを跳ね除ける。スイッチのオンオフも電源もないからこそ、テラス缶は不意の邪気に強い。つまり、タロにとって天敵というわけだ。

 対策が功を奏した喜びを噛み締めつつ、私はポーチからモンスターボールを取り出した。

「もはや言葉はいらない。正義と悪が対峙したならば、やるべきことは一つだ。そうだろう、タロ?」

「……まあ、いいです。いつものようにわからせてあげます。コーストエリアでいいですね?」

「構わない。私が勝ったら、学園のみんなを毒の鎖から解放しろ」

「わたしが勝ったら、その絶望的にかわいくないアルミホイルを外してください。あと、その怪しい缶も捨ててください。それから……お願いですから、少しはわたしの話を聞いてください」

 互いに真剣な眼差しで見つめ合う。張り詰めた緊張とともに覚悟を決める。胸の内に火が灯る。

 私は、今この瞬間のために生きてきたのだ。

「さあ、やろう。この学園を、世界を守るために、私は絶対に負けられない。主人公でなくても、正義を成せることを証明してみせる。だから……出せよ、伝説のポケモン『ピーチドン』を!」

「いや、そんなポケモン知らないけど……」

 

 

 

 私だって、何の根拠もなくタロを黒幕認定しているわけではない。

 私には朧げながら前世の記憶がある。この世界に生まれ落ちて、その記憶が蘇った時、私がどれだけ驚き、そして歓喜したことか。

 前世で大好きだった『ポケットモンスター』というゲームに、この世界は酷似していた。いや、そのものだった。

 すぐにポケモンバトルにのめり込み、このブルーベリー学園に入学した。ポケモンに対するある程度の知識があった私は、学園のリーグ部ですぐに一目置かれる存在となった。

 そして、彼女と出会った。

 前世でプレイした最後の記憶、その『碧の仮面』において全ての黒幕と目される少女。

 桃の色や形を模した特徴的な髪型。桃太郎を連想させ、謎の多い人物だったオモダカと同じ分類の植物を示唆する名前。

 いずれブルーベリー学園四天王となる少女、タロ。

 

「それじゃあ、約束通りわたしの話を聞いてください」

 私の最後のポケモンが力なく横たわっている。全力を尽くした。だが、及ばなかった。ピーチドンを出させることすら叶わなかった。

 私は、完膚なきまでに敗北したのだ。

「まずは、頭のアルミホイルを外して……ネムさんはかわいいんですから、そういう変な被りもの、よくないと思います」

 タロは膝をついて項垂れる私に近づき、アルミホイルを剥がす。びくり、と自分の肩が震えるのが分かった。

「や、やめて……」

「そんなに怯えないでくださいよ。別にひどいことはしません。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ひいっ……!」

 せ、洗脳する気なんだ。私をともっこたちみたいにダークサイドに堕とす気なんだ……!

「い、いやだ。ごめんなさい。謝ります。何でもしますから、それだけは」

「ダメです。言うことを聞いてもらいますからね。そういう勝負だったじゃないですか」

 ああ、もう終わりだ。私も、この学園も。私が弱かったから。ポケモンバトルが下手だったから。目の前の『黒幕』を止められなかったから。主人公じゃなかったから。

 私の、せいで。

「そんなこの世の終わりみたいな顔、しないで。安心してください。あんな怪しいのに頼らなくたって大丈夫ですから。ほら、わたしの目を見てください」

 不気味に微笑んだタロと目が合う。

 胸が痛い。息が苦しい。

 誰か、たすけて。

「ああ、やっぱりネムちゃんはかわいいですね」

 タロのうっとりとした顔を最後に、私の意識は途絶えた。

 




主人公のネムちゃんはタロちゃんと同級生ですが、飛び級的なアレで入学したため年下です。シングルバトルは得意ですがダブルバトルは苦手です。あと、思い込みの激しいタイプです。
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