ブルーベリー学園には黒幕がいる   作:インマラホテプニキ

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タ〜ロタロタロタロ。書きながら思ったんだけどドーム内のメテノってどっから来てるタロ?


何がまずい? 言ってみるタロ

 ネムちゃんのかわいい寝顔を見ていると、初めて会った日のことを思い出す。

 確かあれは……そうだ。入学してすぐに、父に恨みを持っていたとある先生が、私にだけ「寝ているメテノを撮影せよ」とかいうめちゃくちゃな特別課題を出して……そのためにコーストエリアを探索していた時のことだった。

 わたしは相手を眠らせる技を覚えたポケモンをまだ持っていなかったから、気づかれないように遠距離で撮影しなければならなかった。けれど、岩場と似た色の小さなメテノを遠くから見つけるのはなかなかに大変で、どうしたものかと途方に暮れていた。

 立ち尽くして、ドームの透明な天井をぼんやり見上げていると、もっと広い世界に飛び出したかったはずの自分が、何か見えない檻に閉じ込められているような……そんな息苦しさを覚える。

 当時のわたしには煩わしいものがたくさんあって、ちょうど将来の目的も見失っていた時期だったから、目の前に映る景色が何だか()()()()()()()()みたいに、どこか遠いものに見えていた。

 

 ──ふと、なつかしい歌が聴こえる。

 

 あたたかい風が草木を揺らす。そんな何てことない昼下がりに、私たちは出会った。

 

 

 

 眠りから覚めて、瞼を開いたすぐ目の前に『黒幕』の顔があった時の私の気持ちを想像してほしい。

 多分寿命が3年くらい縮んだ。

「こ、ここはどこ……?」

「どこって……ネムちゃんの部屋ですよ。寝ぼけてるんですか?」

 言われて体を起こし周囲を見渡せば、確かに自分の部屋で自分のベッドだった。しかし、記憶している部屋の内装とはまるで違う。

「ああ。あの怪しい缶……テラス缶、でしたっけ? あれとか、他にも色々怪しいグッズがあったので、先生に事情を説明して、全部持っていってもらいました」

「そ、そんな……」

「捨てるのはなんだかやりすぎかもと思ったので、預かってもらっているだけです。中身を調査してくれるそうですよ。持ち運ぶの大変だったんですからね?」

 タロは困ったような顔のまま言った。多分、テラス缶の効能を信用していないのだ。だから中身を確認だなんて──中身を確認!?

「やばい! 譲ってくれた人は中を開けたら効果が無くなるって言ってた!」

「絶対騙されてますよねそれ。そういう詐欺まがいの商売、よくないと思います。そのナントカ研究部も廃部になるでしょうから、ネムちゃんは大人しくしててください」

「でも……」

「負けたら言うことを聞く。そういう勝負でしたよね?」

 ぐうの音も出ない。怒ってはいないようだが、今のタロからは言いしれぬ迫力を感じる。微笑みが怖い。あれは自分が圧倒的優位に立っていることを確信している眼だ。

 けれど、こうやって口答えができるということは、私はまだ洗脳されていないのだろう。タロは私を泳がせて何がしたいのだろうか? お前なんていつでも支配できるんだぞ、という自信の表れだろうか?

 あるいは、毒の鎖による支配には何か条件があるのかもしれない。事実、タロはアルミホイルやテラス缶を毛嫌いし、私から遠ざけようとしている。少なくとも、金属やTFE(テラスタル・フォース・エナジーのこと)によって毒を阻害できることは確かだ。

 この対策を学園のみんなに広めたい……! もっと頭にシルバー巻くとかさ!

「……絶対また変なことを考えてますよね」

「し、思考盗聴……!」

「いい加減にしないと怒りますよ?」

 何にせよ、私はまだ我を失ってはいない。つまり、反撃の芽は残されているのだ。

 ──逃げなければ、この女から。

「ふふふっ」

 そう思っていたところに、タロがいきなり楽しそうに笑い声を上げた。

 ──まずい。思考を盗聴されているんだった。

「あ、ごめんなさい。初めて会った時のことを思い出しちゃって。あの時も、こんな感じでしたよね」

「え?」

「あの時も……ネムちゃんは起き抜けに変なことを言っていました。『私は君の敵じゃない。私は鬼の仲間じゃない』って」

 

 

 

「私は君の敵じゃない。私は鬼の仲間じゃない」

 眠りから覚めて、瞼を開いたすぐ目の前に『黒幕』の顔があった時の私の気持ちを想像してほしい。

 多分寿命が3年くらい縮んだし、とっさに命乞いをしてしまっても仕方がないと思う。まだ見ぬオーガポンやスグリ君に心の中で謝罪しつつ、私は自分の無害さをアピールしようと必死に媚を売った。

「君も隣においでよ。一緒に昼寝をしよう」

「昼寝って……ここで、ですか?」

「うん。あったかいし、風も気持ちいいよ」

 精一杯にこにこへらへらしつつ彼女に手招きする。のんびりした口調で、あくび混じりに声をかける。実際には思いっきり目が覚めていたし、何なら緊張で吐きそうになっていた。

「──わいい」

「ん、何か言った?」

 こっちに聞こえない程度の小声でピーチドンを呼んだのかな? だとしたら終わりなんだが?

 誰か助けてくれ、マジで。

「えっと……そ、それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 彼女はおずおずと私の隣に腰を下ろして、そのまま横たわる。それから、寝ぼけ面を演じている私の顔をじいっと見つめた。

「……寝ないの?」

 頼むから早く寝てください。君が寝たら私は逃げるから。

「寝てしまう前に、あなたのことを知りたくて」

「私のこと?」

「はい。名前を教えてくれますか?」

「名乗るほどの者では──「いいから、教えて?」──ネムです」

 いや至近距離で詰め寄って来るの怖すぎ。

「ネムちゃんは、よくここでお昼寝してるんですか?」

「う、うん」

「そうなんですね。そういえば、歌が聴こえた気がしてここに来たんですけど、ネムちゃんは何か知りませんか?」

「う、ううう歌なんて知らない私は何も聞いてない空耳じゃないですかタロさんあなた疲れてるのよあはははは」

「あれ、わたし自己紹介しましたっけ?」

 あ、やらかした。私たち一応初対面じゃん。

「いや、えっと、タロ……さんは有名だから」

 何だこの女めっちゃ質問してくるんだが。おかげでボロを出してしまったじゃないか。しかも有名だとか言ってしまった。今の四天王は別の人のはずだから多分まだそこまで有名じゃないのに。

「そっか、有名……」

 タロは寝そべった姿勢のまま一瞬だけ表情を暗くしたが、それからすぐににっこりと微笑んだ。

「それじゃあ、これからよろしくお願いしますね? ネムちゃん」

「え、『よろしく』って……」

「『お昼寝友達』」として! 一緒に寝ようって、言ってくれましたよね?」

 

 私はこの日、二度と屋外で昼寝などしまいと心に誓ったのだった。




ポケモンの二次創作ですからそろそろポケモンを出したいです。
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