『私の友人』
私には昔、友達がいた。いや、別に今は居ない訳ではないのだけれど……今の私を形作るきっかけをくれた友人。中等部卒業前、私は高等部進学に向けて進路に悩んでいた。周りの人は私を真面目だとか、そんな風に言う。だけど私は面倒が嫌いだ。けど、目の前の仕事を手放すほど無責任にもなれない。そんな私が高等部に入って、何がしたいのか。それが分からずにいた。
私はそれを、友人の前で吐露した。本当は話すつもりなんてなかった。でも、周りの将来に向けられた様々な目標の話を聞くうちに、こうして悩む私に息苦しさを感じるようになって、漏れてしまったのだ。
──責任感が強いし、風紀委員なんてどう?
ヒナちゃん強いし、きっと今より凄くなるよ。なんて明るく言う彼女に、私は目を瞬かせた。考えたこともなかった。風紀委員……そうかな。でも、悪くはないかもしれない。
何もしたい事が思いつかないなら、その指針になるかもしれない役職を目指すのはアリだと感じた。
私は友人に感謝を告げ、その道に進んだ。風紀委員として働き始めた時は大変で、鳴り止まない騒音と共に起こる事件の数に辟易する事もあったけど、そんな忙しさに奔走する時間は好きだった。考えるより先に体を動かす方が私には性に合ってたみたい。
そんな日常にも慣れて軌道に乗り始めたある日の事だった。一つの凶報が私の元に届いた。
その友人が亡くなった。衰弱した状態で見つかり、その後治療も効果がなく亡くなったのだ。
当時はそれを受けて荒れに荒れた。そのせいで委員長となった今、ゲヘナで恐れられる原因になったけど、仕方がなかった。吐き出したくても吐き出せなかった、この胸のモヤモヤを晴らしたくて、がむしゃらに取り締まったから。でも、今では割り切った。ちゃんと折り合いをつけて私の中で思い出の一つになっている。
だから、予想外の出来事に思考が止まった。ある意味いつも通りに、温泉開発部が暴れていると報告を受けて出撃した私の前に現れたのは、亡くなったはずの友人だったから。
「この先には進ませない」
そう言って、立ち塞がる彼女。私に向けられていたあの笑顔はなく、今は氷のように固い無表情が向けられていた。
言葉が出ない。生きていたのか、何故今現れたのか。言いたいことは山ほどある。
しかし、状況はそれを許さなかった。戦闘が始まる。かつての彼女とは違う戦い方。荒々しく、強烈な弾丸がこちらを肉薄する。手加減が出来る相手ではなかった。結果、彼女の脇腹を私の弾丸が貫き、吹き飛んでいった。
その瞬間、フラッシュバックするエデン条約のあの時の光景。先生と、同じ──
そこまで考え、私は自分の呼吸が上手く出来ていない事に気がついた。*1ひゅ、ひゅ、と空気の抜けた音しか出てこない。
その場で蹲り、胸に手を当てるが呼吸は戻らない。そのせいで、彼女は逃げてしまった。
ホシノ以外が曇らないとは言ってないので……