飢えた犬と優しい鳥   作:上条@そぉい!

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初の主人公目線ですが、日記から分かる通りめちゃくちゃ能天気になるので今まで避けてました。が、やるしかなくなったのでやむ終えずこうなりました。
 


第17話

『生者を縛る鎖』

 

 悲報、私人間じゃなかった。いやまあ薄々そうなんじゃないかなぁ〜、くらいには考えてたんだけどさ?機械ムシャムシャ食えてラッキーとしか思わなかったんだよね。じゃなかったら今頃飢えて死んでただろうし。

 なんかざーこざーこって煽ってきそうな子供3人組に自分の出自を事細かく教えられた私の感想はそれだけ。

 そんな訳で現在脱出目指して逃走中。後ろからロボット達が追いかけてきてるけど無視無視。

 

「……なんで私も……」

 

 耳元で背負った少女、いやホシノちゃんの声が聞こえる。なんで、なんでかぁ……。

 正直、大層な理由なんてない。このままは嫌だと思ったからだ。私の事情に巻き込んでしまったのだからホシノちゃんだけは逃さないと、と思ったから。

 うーん。でもそれだけじゃないかも。このモヤモヤとした気持ちはそれだけじゃない。

 呆然としながら、涙を流すホシノちゃんを見てほっとけないと思ったんだ。きっと私の中にいる人もそう思ったんじゃないかな?会話できたら良いんだけど。

 

『聞こえるー?』

 

 ブラジルの人聞こえてますかーッ!って感じで内側に話しかけてみたら、返事が返ってきて私はビックリした。

 随分とほんわかした声だと思った。いや容姿がわかる訳ではないんだけども!

 

『あはは、よく言われる。ホシノちゃんにもよく怒られたし』

 

 あ、自覚はあるんですね!?というか知り合いですか!?

 

『うん、同じ学校で私の後輩だよ』

 

 なんという偶然。うおっ、後ろのロボット達が遂に撃ってきたぞ!?いてて!

 

『あ、そこ。曲がり角左!多分その先に脱出ポットがある!』

 

 知っているのか雷電!?そう言われれば行くしかないでしょ!ダーイブ!

 背負いながらのハリウッドダイブは中々に厳しい!体の節々が痛い!

 

『私が言うのも何だけど、結構愉快な性格してるよねー?』

 

 外面には全く出ませんけどね!怖いし!

 

『それより、いいの?本当に』

 

 ……どうやら私の考えている事はお見通しだったみたいだ。うん。その通りだよ。

 私はホシノちゃんを逃したらここで自分を終わりにするつもりでいる。

 どうやら私はこの街を壊しかねない危険な存在らしいので、このままにするつもりはない。素直な話をすると、めちゃくちゃ怖い。震えるほど怖い。でも、それ以上に、私の友達達にその怖い思いをして欲しくない。

 不器用で無口な私を根気強く、親身になってくれたサオリちゃん。美味しい弁当をくれていつも一緒に笑ってたカスミさん。暖かい部屋で笑い合う楽しさをくれた便利屋の皆。

 なんだったら、あの怖いメイドさんや、風紀委員長も、美食を探求してたあの人達も。

 私はそれが嫌だ。だからやる。付き合ってもらう中の人には本当に申し訳ないんだけどね。

 

『ううん、私も同意見だから気にしないで』

 

 と、そんなことを言ってたら脱出ポットを発見した。そこで私は背負っていたホシノちゃんを下ろす。

 

「脱出ポット……これで逃げるの?」

 

「うん」

 

 私の意図をホシノちゃんも察したみたい。きっと、これから私がやる事を知ったらすんごく反対するんだろうなぁ……私にその記憶はないんだけど、なんかそんな気がする。

 なので、ホシノちゃんの背中をトン、と押して脱出ポットの中に押し込んだ。

 

「え……?何を……」

 突然の事に驚くホシノちゃん。

 あ、そうだ。中の人はホシノちゃんと知り合いだったんだよね?何か話したい事とか。

 

『いいの?』

 

 もちろん。伝えたい事とか。あ、でもどうやって伝えよう……

 

『あ、それは大丈夫。少し借りるね』

 

 ふわっとした感覚の後、中の人が表に出てきて私は中に収まった。なんか変な感覚だ。

 

「あの頃に比べて大きくなったね、ホシノちゃん。いや身長はあんまり変わってないけど……」

 

「……ユメ先輩……?」

 

「私のいないアビドスだけが気掛かりだったけど、後輩達が増えてホシノちゃんも先輩になったんだなーって感慨深かったし」

 

「でも……うん。後悔してるのは、ホシノちゃんを悲しませちゃった事かな。きっと、私が消えた後荒れてたんだろうなぁって、反応見てて思ったよ」

 

 事情はわからないが、とても大事な話だと思って私は黙っておく。

 

「違う……違うんですユメ先輩。あの時私が居ればユメ先輩は。あの時私が諦めなければユメ先輩は今もアビドスの皆と一緒に──」

 

「そうかもしれないけど……私は恨んでなんかいないよ、だからもう自分の事責めないであげて、ホシノちゃん」

 

 自分を許してあげて、と彼女は言ってそのまま脱出ポットの扉を閉めてロックをかけた。

 

「ユメ先輩!?何のつもりですか!?」

 

 扉を挟んで2人は向き合う。ホシノちゃんは扉をドンドン叩くがびくともしない。

 

「アビドスを、お願いね。ホシノちゃん」

 

 そのまま、彼女は赤く光るボタンを押す。すると脱出ポットはガコンッと音を立てて、分離。そのまま運ばれていく。

 

「待ってください!まだ私は──言えてない!言いたい事が沢山あるのに──!」

 

 運ばれていくポットは、ある程度距離が離れたところで勢いよく射出された

 

「ユメ先輩ぃぃぃぃいいいい!!!」

 

「バイバイ、ホシノちゃん」

 

 ……本当に良かったの?もっと何かあった方が良かったんじゃ。

 

「ううん、いいの。これは神様がちょっぴりだけ許してくれた猶予だから。死んだ人がいつまでも縛る鎖になっちゃダメなの」

 

 ……そっか。じゃあ行こうか。

 

「うん。やろう」

 

 そんなやりとりの間に、遂にロボット達に囲まれる。

 私たちは銃と盾を構えて、突撃した。

 




ホシノちゃんが掴む手は、もう私じゃないって事だよ
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