どんな曇らせがくるのかと恐れおののいています。
『ヒーロー見参』
大きな爆発音が響き渡る。既に何度もミサイルを凌ぎ続ける事数十分が経過していた。
そんな時に響き渡る爆発音は、生徒達にとって福音のようだった。
「──内部からの爆発、やったのね、アリス」
爆発を受けて、動きが止まるフェンリルを前に、構えていた銃を下げるヒナ。
「流石に連続稼働は難しいですが……終わりが見えてきただけマシ、でしょうか」
流石に息切れし始めたトキは、船に着々し、プスプスと煙を上げて火花を散らすアビ・エシェフの装備を外す。
だが、そんな安堵も束の間。すぐに稼働を再開するフェンリル。
──再演算開始
受けたダメージと、捕食によるデータ回収。総合して組み直す。それがフェンリルの権能。導き出された答えは。
──演算終了。機能『グングニル』を作成。起動開始。
ガシャガシャと機械の肉体が変形を開始。大きな筒が生成。そこから電気がバチバチとこちらを威嚇するように迸る。
「……あれはやばいんじゃないかな?」
汗が背筋を伝う。ホシノの直感があれはヤバいと告げていた。頑丈なキヴォトスの人間からしても、タダで済むとは思えない。
「全力で回避!聞こえてる!?」
ヒナが船の中にいるであろうヒマリ達に叫ぶ。
「もうやってます!ですが……!」
間に合わない。向こうの展開が早すぎる。こちらは船、すぐに動くことは難しい。それでも全速力で舵を切る。
すぐに筒から迸る電気は臨界に達した。もう発射される。船からは、それが花火の様な眩しい光にしか見えなかった。
「まだです!」
発射寸前で、アバンギャルドくんXが船とフェンリルの間に割り込む。操作していたのはユズだ。本来アバンギャルドくんXには内部に侵入したメンバーの脱出艇としての役割がまだ残っていたが、異変を察知したユズが独断で動かしたのだ。ユズの僅かな変化を見逃さない観察眼と、直感が船の命運を分けた。
放たれたのは電磁砲。巨体に見合うだけの巨大なサイズは、計り知れない威力を齎す。発射された弾丸は、その熱だけで海を割り、氷を溶かした。
アバンギャルドくんXがその身を盾に食い止める事で、数秒時間を稼げた。その隙になんとか射程外に逃げられた船の横を、弾丸が通過する。
「ユズナイスゥー!死ぬかと思ったーっ!」
思わず隣にいたモモイがユズに抱きつく。船内にいる誰もが安堵の息を吐く。避けられなければどうなっていたか……
「で、でも。次来たらもう……」
泣きそうな顔でユズが呟く。今のでアバンギャルドくんXは融解し跡形もない。次同じものが来たなら、今度こそ避けられない。
そしてその予想は正しい。電気をチャージを再開するフェンリル。次の一射で終わらせるつもりだ。
「はっはっは!やはり現れたか怪獣!」
しかし、それに待ったをかける者達がいた。氷海を割りながら突き進むロボット。その名は──
「回り続けるルーレットはやがて……正義の未来へと繋がる!無限回転寿司戦隊!カイテンジャー!参上!」
「ここ寒すぎる!リーダー、後で特別手当下さいよ!」
「勿論だ!この日の為に故障していたコイツを直していたのだ!その分活躍すれば弾む!」
KAITEN FX Mk.∞。かつてキヴォトスを救う一手となったロボット。フェンリルの巨大な体に比べて豆粒ほどでしかない。
「先生!分かっているだろう!?」
カイテンジャーのリーダーは、船内にいるであろう先生に問う。その内容を先生は理解していた。前にも同じことがあった。あの時は、色彩による虚構のサンクトゥムタワーのエネルギーを使った。今この場でそんなものは用意できない。
先生がポケットから取り出すのは、大人のカード。何かを代償に、時間を、未来を。そして過去すら前借りする『規格外』
「もちろん!いくよカイテンジャー!受け取って!」
先生に躊躇いはない。生徒の為になら喜んで代償など差し出そう。何より──ピンチに現れる戦隊ロボが先生の浪漫心に刺さっている。いつもよりノリノリであった。
かつて色彩によって巨大化したペロロジラを相手に奮闘した、巨大ロボの登場だ。
巨大化したKAITEN FX Mk.∞は剣を抜き放ち、フェンリルに突貫。発射態勢に入っていた砲台を真横から真っ二つに切り裂いた。
「ニチアサヒーロータイムだーっ!」
テンションの高い先生と置いてけぼりの生徒達で随分と温度差があった、と後に先生は影のある背中で語った。
勇者ときたらヒーローですよね?