そしてあけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
能登半島地震の被害に遭われた方に何も支援ができない金欠の自分をお許しください。
一夏視点
俺とセシリアさんが更衣室で上着を脱ぎ捨ててISスーツになってから合流した。
そして早歩きでラボまで到着したあとは俺のグルドリンとの最終調整が待っていた。
「一夏くん、こっちだ。席に座りたまえ」
目の隈の濃い神鉄さんが近くに寄ってくる。自分もフィッティングリングを差し出した。
「よし、良い子だ。あとは俺の仕事だ。初期化はこちらで行う。フィッティングとパーソナライズも補助する」
「神鉄さん?これもしかして新造されたコアではないですよね、俺が訓練で使ってた打鉄ですか?」
「さすが一夏君、素晴らしいな。君が訓練で使っていた打鉄を零世代仕様に拡張してある。単純性能は俺のヒルコより上だ」
神鉄さんの腕にはISがモニターとして展開されていた。そこに神鉄さんが猛烈な勢いでタイピングを行っていた。
「本来ISコアがやる仕事を全部神鉄さんがやってるんですか?近くで見るとめちゃくちゃ凄いですね」
「なーに束とかはもっとやばいさ。最もこういう初期設定から調整なら俺はちょい詳しいがね。ヨシ、完了した。これから一夏くんにはシミュレーション上とはいえセシリアくんと模擬戦を行ってもらう。ネイキッド、素体形態でもこいつは使えるから安心しな」
「確か人型の浮遊装置が何もない形態ですよね。はい、もう使えます」
「良い子だ、では起動しよう。因みに世界に配信されるから気合い入れろよ」
「やあぁってやるぜい!」
俺は千冬姉に教えられた呪文をヤケクソで唱えた。
同時に俺とこのコアとの間でクロッシング・アクセスが始まった。専用機持ちでは大体起こる現象とは聞くがそれはかなり使い込んでからなので珍しいなと思った。
しかしその小学生並みの感想はすぐに吹き飛ぶ事となる。
クロッシング・アクセスとはコアの内面世界とのリンクで平たくいえば白塗りの精神世界だ。とはいえどことなく自分が利用していた訓練所の休憩室に似ていた。
「よう一夏、久しぶりだなあ。俺だよ、コアナンバー51だ」
「あの51か、訓練の時は本当にお世話になったよ。ありがとう。
そしてそのアバターはゴドム・タイナムさんか。似合ってるじゃん」
「がはは、ありがとうよ。さて積もる話は後だ。坊主、特注の葵は用意した。一泡吹かしてやろうぜ。よし、覚醒させる。自衛隊の教導隊の訓練機時代の経験は残ってる。心配するな」
「ああ、やろうぜ」
ガッチリと握手し俺の意識は目覚めた。
ガバッと飛び起きるとストレッチャーに寝かされておりISが戦うアリーナを模した電脳空間へのログインが開始された
((一夏くん、問題はないな))
((はい、いつでもどうぞ))
広域チャットにてにて神鉄さんの声が響く。既に自分の体は鎖帷子に覆われていて脛当てや肘当てがついていた。
この状態をネイキッド、素体状態という。
狭い場所での作業や宇宙服の代替として機能するシステムだが現在はISバトルの序盤の三分間の肉弾戦時に使用される。パイロットの生身と同じ動きができ、五感や力を十全に増幅する能力がある。
「初心者なのにネイキッドに着られている感じが無いのは好印象ですわ。正しく東洋の侍ですわね」
「セシリアさん、刀を握れば実戦だぜ。礼は要らない」
「示現流、宗家の方ですかね。篠ノ之神社は親交があると聞きますわ。分かりました。こちらも本気で参ります」
シミュレーションの床に表示されていた葵を引っこ抜く。頑丈な胴田貫とおなじ拵えを俺は好む。握る所も内側に沿っており鍔も小さい。名のある名工に特別に拵えてもらったものだ。これを俺は葵田貫と呼んでいる。
セシリアさんは短槍を構えた。すっと後ろに引く構えだ。
薩摩の初太刀は外せというがそれはこっちは織り込み済みだ。
背後ではCMが流れていた。
ごきぶり固めてお外にぽん!凝固剤はキンチョール
神鉄さんの発明だな、しかもテレビに映ってるのは真耶先生だし。ごきぶりの成分に反応するから床にはくっつかず窒息させる奴だな。めちゃくちゃがっちり固まって溶かすのには専門の凝固剤が居るやつだ。
もう一本流れていた。
火事には最新鋭の消化剤を、一発消火!
これも以下略。コストはかさむが航空事故の火災すらすぐ止める優れモノだ。本来はISの大気圏再突入用の薬品の改良版と聞く。
ねえ神鉄さん、ちょっと職権乱用しすぎじゃない?いい機会だから真耶の魅力を広める?ああそう(呆れ
なお山田神鉄は5轍目で真耶の笑顔を摂取したことにより心臓発作で廃人となりかけたがさしたる問題ではない。抱っこしていた楔も落とさなったからである。彼は父になったつもりなのだ。
同時に配信がスタートする。男性操縦者の機体であるため一般向けにも配信するそうだ。
((ではスタート、陣内省吾が取り仕切る。口上を述べよ))
IS操縦者が決闘する折は名乗りをあげるのが
事前の打ち合わせの通り自分から語る。
「仁義無くして治世無し」
フルートの様なセシリアさんの声が続く
「兵站無くして安寧なく」
ISは災害救助をはじめインフラも支えている。
「弓矢無くして戦はならず」
最新鋭の遠距離武装は重要だ。ISとはいえミサイルの雨は苦労する。
そして二人声を合わせて腹の底から叫ぶ。
|「「拳無くして修身無し」」
((グッドラック))
ISバトルは見ごたえと特殊兵装に頼らない兵員の錬成の為開始から一分はネイキッドで近接のみ、その後に投げナイフを含める銃器の使用が、三分からISの外装の着装が、その後5分までは大火力火器や第三世代兵装やワンオフアビリティは制限される。
陣内さんの声と共に俺はトンボを取り猿声を放ち突進した
「きぇえぇぇぇぇぇぇええぇぇぇ」
セシリアさんが全力で後ろに飛ぶと同時に自分の胴田貫が戦車砲すら防ぐ地面をたたき斬り深くめり込んだ。
轟く轟音と粉塵にめげずそのままセシリアさんが俺のへそを狙って突いてくる。下にそれたら股関節、上でも胸に当たる為だ。
ぱっと葵田貫をISのバススロットに収納しそのまま受けの形で構えて再展開、危げなく防ぐ俺。
これをラピッドスイッチという。通常2秒かかる展開を数コンマで行う技術だ。俺はこの葵田貫でしかできないのだが、その分速度は神鉄さんの折り紙付きだ。
そのままセシリアさんが壁まで下がり
「さあ踊りなさい一夏さん、インターセプターの奏でる剣の舞ですわ」
そのまま複数のソニックブームが俺の視野を揺らした。
おいおい普通の銃剣仕様のナイフをぶん投げて戦車砲と同じ速度がでるのはルールで禁止すよね。まじでよけるのが精一杯なんだが。
ナイフが回転するところを狙って刀ではじく。マッハ3のナイフであろうと愛機のコアナンバー51の補助により一発を除いて叩き落すか回避に成功した。
いやナイフを立て続けに撒いた後それを目隠しに投げ槍迄とんでくるとは思わなかった。
問題はその一発が肝臓の位置に刺さっていた判定で出血多量で残り三分のみ戦闘が許される判定となったわけだ。さすが代表候補生さんだぜ。
((三分経過、ISの装着を許可します))
無機質な電子音性が響く。
決闘にてISを纏う時は口上を述べるのもIS仁義だ。
「刀は抜くべからずもの、来い、グルドリン」
バク宙しながら俺がグルドリンに乗る。
「高貴なものの責務とは、民草に悲しき涙流させぬこと。私に染み入れ、ブルー・ティアーズ」
青い水晶が覆うようにセシリアさんの体をブルー・ティアーズが包む。
装着速度はあちらがはやく何発かビームを食らった。
しかし宇宙空間で鍛造された簡易ナノメタル装甲特殊弐式鋼がISのスキンバリアを補強し、そもそも機体に纏うビームかく乱幕が威力を減衰させていた。
其れにくじけず向こうから跳んでくる対ISミサイル、こちらも対ミサイルミサイルを全弾発射するが、
「甘いですわね一夏さん、BT粒子を使っている分反応性はピカ一ですわよ」
ミサイルがミサイルをよける、この追従性のミサイルの大群に狙われるという必死の状況
だがその中でも有り得ざることだが俺の顔には笑みが浮かんでいた。
ISコアとのクロッシング・アクセスを介して俺の思考回路は極めて高速化していた、まるで風船のように浮いているミサイルをひょいひょいっとよけて俺はグルドリンを走らせた。
セシリアさんが腰から抜いたインターセプターのリミッターを解除し蒼い炎を噴き上げるその牙がどこをついてくるのさえ簡単に知覚し、どこで受ければいいか容易に思いついた。
そして何よりミサイルを簡単に避けた俺を見てもセシリアさんの目は死んでなかった。猛る闘志にたぎっていた。
装甲の継ぎ目を狙うセシリアさんの突きを装甲の厚い部分で受ける、同時に中空装甲になっていた表面装甲が貫通されるが凝固剤と冷却材が大量に吹き出し、セシリアさんの腕ごと完全に止めた。
CMで宣伝されていた兵器の軍用版だ。防げて30秒。自分の出血死判定まで残り40秒。
構うものかとアテネのような獰猛な顔を浮かべ全力で牙を押し込むセシリアさんをそのまま全速力でアリーナの壁に叩きつける。
最大出力で暴れる最新鋭の第三世代ISを子供のように押しやるパワーをグルドリンは持っていた。
姿勢制御ユニット内のミサイルの安全装置解除、信管をゼロ距離爆発設定、装甲されていない内部を守る為ビームスクレイパーに物理シャッター展開。
そのまま全弾ゼロ距離ミサイル掃射。相手も手持ちの火器を全部ぶつけてきた。
爆炎が絶え間なくセシリアさんと俺を包む。おじけづいたときがやられる時だ。
地獄の業火や米軍の集中砲火もかくや、という爆発が晴れた時に残っていたのは残骸同然のブルー・ティアーズ。
そしてエネルギーが切れたインターセプターを押し出すように完全に鎮火した傷を修復しつつあるグルドリンだけだった。
((勝者、織斑一夏))
グルドリンから降りた俺は力を振り絞って大きく拍手するセシリアさんに肩を貸し手を掲げた。
ああ、やはり彼女は内面こそが美しい。
用語集とかもやっていきます
次回、俺の愛機は打鉄、じゃない!
疲れ切った神鉄はまやまやの胸の中で廃人と化した