織斑一夏視点
「水がうまい、美味いよ、いやしみじみ美味いよ」
「深紅よく頑張ったよ、特殊部隊向けの水のまないストレス訓練をよく初級迄クリアしたな」
「いやIS適性がBどまりだから調整用のデータ取りに時間がかかる。じゃあ補給が枯渇した際の訓練をしようって思っただけだよ一夏」
俺と深紅は下の名前で呼び合う仲になっていた。まあひたすらシミュレーター上とはいえ痛みをそのままフィードバックし延々とあらゆる状況に対応するため訓練を繰り返したのだからそうもなろう。
「ただの塩入麦茶がまるで清香が丁寧に入れてくれた紅茶の味がする、空腹はならぬ渇きは最大のスパイスかな」
「まあISのバイタル管理下だから素人にも出来ただけで本来めちゃくちゃ無茶だからな、怒られてこい」
「うん、清香との面会が今日にあるからちょっと土下座して来るわ。いやうん、体力つけてないのに仮想空間だからって拷問訓練やったのは我ながら後悔した」
「バカだと思うよ、腕どころか返しのある針を粘膜に刺されてんじゃん」
「いやあれ痛かった、すい臓がんも、オット」
「...聞かんかったことにするよ。お互い色々秘密のあるようで」
「君も交際相手との面会を控えてるんだろう、お疲れさん」
「まあ、悪い奴じゃないんだがね」
場面暗転、神鉄専用演算室
「ダメだあ、わからねえ。何がステンレスだよ山田神鉄」
「はいはいてーちゃん、束さんがよしよししてあげますね」
「ああいいにおいする、束からそういうの感じるって事は寝よう」
山田神鉄にとってナノマシンと融合したことは特に問題がない。そもそも山田神鉄の後天的な事故で異常活性した脳細胞を鎮めるナノマシンから発展したのがISのコアからエネルギー供給を前提とする代わりに万物を置換しうるナノメタル、それを人間の生命維持に使えるようにしたように独立したものにしたのがナノマシンなのだ。神鉄の為の金属なのだ。
ただ、ISに山田神鉄は本来起動できない。多大な負荷がかかる、山田神鉄のIS適性はEである。本来であれば起動不可である。それを強引に去勢して脳髄を直結し更に脳内にナノメタルを流し込んで脳幹以外ほぼナノメタルで置換して強引に起動しているに過ぎない。
故に、脳内が常に電子レンジで煮えたぎるようなダメージを負ってそれを強引にナノメタルで治癒して、痛みは片頭痛の一番ひどいようなものが鎮痛剤を効かせても襲ってもだ。
山田真耶が、篠ノ之束が、星を見たいといったから、まだ某だけ先に死ぬわけにはいかない。
例え今苦しんでるのが、彼女ら二人を見捨てて居たら、安楽に暮らせていたとしてもだ。
「鎮痛剤はあんまりつかいたくないが、ってこっそりいれるなよ束」
「てーちゃんのバイタルはやーちゃんと私は常に把握してます。麻酔科医の資格は取ったもんね。なんなら10年進めました」
「ありがたい、某も一児の父だからな」
「やーちゃんも体を再生してる途中だからね。まあ束さんも跡取り欲しかったし」
「で、だ。血染深紅君がなんでISが使えるのか全く分かりませんごめんなさい。なにがISの操縦系を作った男だ。全く分からんぞ。一夏君がコード白死と織斑千冬のパーフェクトクローンだからごり押せる、はまだわかる、現に某がその設定をしたしな。だが分かんねえよ、全然わかんねえぞ血染深紅君よう。構成する分子迄分解するわけにはいかないんだよなあ。だめだ全く分からねえ」
「はいはい寝ましょうねえ、たまにはナノメタルによる圧縮睡眠とかじゃなく束さんの胸で」
「こいつ、別人、ムギュ」
某の意識は暗転した。
篠ノ之束視点
「秒殺、無理もないか、ほとんど一か月常人換算なら三時間睡眠、実際はナノメタルの機能とISの搭乗者保護機能の緊急裏マニュアルを乱用した圧縮睡眠によるもの、むちゃしすぎなんだよ」
すっと山田神鉄の右頬にキスを落とした篠ノ之束は一人ごちる。
「自分の精子をフリー素材にしたときだって怒んないじゃん、束さんだって不満なんだよ。もうちょっと頼ってよ」
銃後の乙女の心が前線の愚かな兵士に届いた試しなど、有史以来ありえないことは知ってても。
「姉様、箒が参りましたぞ」
妹のハッスル爆音がとどろいた。まあんなこと預けていたISコアからの報告で分かって居たから先んじて神鉄の体をシャットダウンしておいた。これで三日は目覚めないだろう。というか三日くらいかけて修復して漸く再起動可能というオーバーワークだったのだ。
まあ男性操縦者のIS二機とそのオークトチュール、その調整とデータ取りの陣頭指揮を取ればそうもなろうと思う。
比較的まともな打鉄真打・飛脚とて規格を通常の量産型の打鉄真打と合わせてあるだけで確実に経験の浅い操縦者が逃走できるように各部は徹底的に変えてある。もはや完全な別機体だ。
暮桜二号機を改修した白式に至っては言うまでもないだろう、あらゆる制御をマニュアルで行う事を前提としたISのテストパイロットとして一番最初から乗り続けてきた織斑千冬でしか扱えない暮桜。それに強引に第三世代兵装としての零落白夜を組み込んだ機体。それを素人の織斑一夏が使える迄デチューンしたのは彼以外なしえない。ただのデチューンでなく、経戦能力をふくめて第三世代機最新鋭の機体にしたのを含めてだ。
「箒、分からぬことが一つ有りまする」
「箒ちゃん、どうしたの」
「なぜそこのベッドで休まれている神鉄の義兄さんの上にオルコットの次期当主とメイドさんがガン飛ばしてるんですか」
「聞かないで上げて箒ちゃん。てーちゃんは廃人になって当然なんだから」
束さんは脳筋な妹に語った。
チェルシー・ブランケットは重度の心臓病を患って生まれてきた。故に心臓をナノメタルで置換してある。むろんその為にエネルギー供給の為ISを支給され猛訓練を貸されることが宿命と化した。しかしそのおかげで妹のエクシアはエネルギー供給を必要としないナノマシン式心臓が間に合ったのでIS操縦者にはならずにすんだ。
そこにナノメタルの生成者であり同じ仕えるものとして神鉄が師匠として付きっきりで教え込んだ。
だがチェルシーからしてみたら山田真耶という義姉兼恋人に腐れ縁という篠ノ之束という高すぎる壁、ゆえにチェルシーは初恋を封じ込める道を選んだ。
例え預けられたISがビットをワームホールを固定することでワープさせるという星の海にはばたくために大事な機体であっても
オルコット家にはBT粒子の特許や先行研究を惜しみなく援助して下さった、セシリアさんを頼んだぞ、と純粋な目で言われても。
封じ込めていたんだって。
「まあ、もう花嫁募集中なので問題は無いんですよオルコットお嬢様。神楽様とは私親交が深いですし」
「そうですわねチェルシー、私も神鉄のおじさまには両親を救って頂いた恩がありますから、お義兄様と呼びたいですわ」
「なーんの問題もありません。というわけで束様に頂いた神鉄様の夢を自由に操作できるボタンでちょっと弄りますね。具体的には悪夢を見てもらった後に私がさっそうと救いますわ」
「妥当ですわね、許します。鈍感系でなく気が付いてましたからね神鉄のおじさま、否お義兄様」
と、フフフフフフフフフフフ、と暗いBT粒子をまき散らしている主従を見なかったふりをするくらいの良識は篠ノ之姉妹にもあったのだ。
「それで、箒ちゃん、君の紅椿はナノメタルの完全模倣バージョンを使える大出力のコアを使ってるから、メンテナンスフリーのはずだよ」
「いや、一夏をものにできる小道具を頂きにまいりましたが、人の振り見て我が振り直せ、ちょっと考えなおしましてな。楔と仲良くなっておこうかと」
「それがいいねえ、ほら楔、箒おばさんだよ」
山田神鉄は廃人になったが残念でもなく当然であると私は思う。
この作品は自己満足小説です。ブラウザバック前提です。千時間書くまでチュートリアルなので。
次回、仮想現実ってひどいことしてもいいよね
山田神鉄があまりに悪夢に耐性がありすぎて、夢の中で目の前で自害するまで追い詰められたチェルシーはマジ説教を位幼児退行した。