オルコット夫妻を助けた神鉄であったが亡国企業との取引でブランケット姉妹を助ける予定だったため助ける責任が生じた。
重度の心臓病のブランケット姉妹を助ける為に廃人に成る事も厭わず人工心臓を実用化した。
その輝きがローティーンのチェルシーを廃人にした。
「因みに神鉄さん、とりあえず俺の零落白夜白死はリミッターをつけた現在でも仕合で使用可能な単純な熱量で敵を両断する近接兵装としては最高峰の熱量のはずなんですが、どうやったんです。
少なくともヒルコを含めて両断されたあと、ぷかぷか飛んでましたよね。気絶していた俺の首を撥ねるくらいは手刀で簡単に出来た筈です」
吐いてしまった分の補給を点滴で受けている一夏が気になっていたことを神鉄に聞いた。
ISのシミュレーターは戦闘訓練時は実際に実戦でも熟せる機動以外は出来ないようになっている。無論、苦痛のフィードバックや危険域のG等データ上の処理も噛ませているのだが。
シミュレーションを使った国際的な実験の為再度ISを整備している神鉄は作業の手すら止めず返答した。
「なんだそんなことか、簡単な事さ、我が親愛なる一夏よ、自分でそっちの斬撃を予測して刃先が丁度通る分分離した。
厳密には刃が通る体組織を丸ごと耐零落白夜白死の熱量を軽減する物質に変換した。
脳髄以外は全部ナノメタルで置換してあるからな。
流石に千冬の居合に合わせるのは無理だが、君の斬撃ならリミッターをかかってる今の体でも可能だ」
ハートのエースをさらっと出すイカサマ、それを語るような気安さで神鉄は語った。
「それって内臓やら脊髄やら全部いっぺんに変換するわけで」
絶句する一夏。自分で自分の体を麻酔なしでぶった切るのにも等しい作業の後体内の物質を違う物に置換する、それはバカみたいな難易度だ。
これが常人の到達点か、武者震いした自分を良い顔だなと見ている箒の視線にすら気が付かず、一夏は腹を括った。これから自分はそういう化け物をデータ上とはいえ両断しに行くのだ。
体内にそれなりにナノマシンを使っているチェルシーは自分で同じことをやったらどうなるか理解し、ISスーツに着替えかけてる途中でめまいを起こし転びかかった。
「よっと、いや気にするな、男の身でISを駆る苦痛に比べたら何の痛みにもならない。ちょっと痒い程度さ。
それよりそろそろクロッシング・アクセスを開始する。キメラ・クロッシング・アビリティ実証実験をやる。因みにこれ通称性交実験とかいわれてるからむらっときたら申し出る事。未成年の避妊なき性交だめ絶対。クロッシング・アクセスを用いた発散法はあるから」
チェルシーを優しく受け止めた神鉄が皆に告げた。
「説明しますわ!」
がらがらとセシリアが控室にホワイトボードを押して入ってきた。赤飯を握った握り飯が入ったお櫃を器用に片手で持ちながらである。
「まあぶっちゃけると生涯を共にすると誓った関係。
かつワンオフアビリティや第三世代兵装を使いこなしているIS乗り同士が使う合体必殺技ですわ」
とても仲良し同士のパイロット、機体のエネルギーも跳ね上がる、すごいパワー!とホワイトボードに書きなぐっていくセシリアだった。
ダメだ舞い上がってやがると神鉄が空いている左腕の人差し指で自分の眉間を抑えた。某がチェルシー嬢と仮想空間で致しちまったからってこうも喜ばなくても良くないかぁ、と現実逃避を開始した。
あー真耶の体の温かさと束の独創性と神楽の細い体が恋しい、あと虚をもっとまともな精神状態に戻してやらんとな。
「以上ですわ!」
めちゃくちゃルンルンのセシリアは軽食として二重底になっているお櫃の底からたくあんも一緒に同室の皆に配っていた。
その喜色満面の声に神鉄は現実逃避を早々に切り上げ、大人としての立場に切り替える。たくさんお嫁さんが居るなら、親類縁者迄全部面倒を見るのは大前提で、そのためには稼ぎが必要なのだ。
「篠ノ之先進技術博物館、通称ミュージアムから出向していて自衛隊でも一尉相当の技術技官として迎えられている某が補足しよう、とはいえ細かな理論までは束も把握しきってない分野なので、あくまで経験則として聞いて欲しい」
右腕で抱きかかえていた軽い貧血を起こしていたチェルシーをヒルコのバススロットから整備用のマニュピレータを使って敷いたマットに優しく横たえ、もう少し抱きしめていていただけませんか、という目で見てくる彼女に苦笑しながら頭を撫でた神鉄が場の空気を引き締めた。
失敗しましたわ、と舌を出した後、はしたないでしょうかと一夏から見えないように慌てて一夏からの視線を切ったセシリア。
それを彼女を目でちらちら追っていたがゆえに一部始終を把握していたため、ばれないように赤面する一夏。
それを見ながら、うむ、いい第二夫人が見つかった、と頷く箒。
それら四人も次の瞬間には最強兵器たるインフィニット・ストラトスを操る最精鋭の若武者の顔に戻っていた。
ISコアからの補助でめまいから回復し、すっと立ち上がってISスーツを着終えたチェルシーがメモを取る姿勢を取ったのをきっかけに神鉄は話し出した。
「そもそもISが何故有人仕様が主流なのか。無人自律稼働ISより遠隔操作方式のISFの様なコアとリンクした操縦方式を持つISが多いのか。
単純に出力が無人仕様だとがくっと下がるからなんだ。
ISコアはダークマターからエネルギーを吸い上げそれを某たちが知っている世界のエネルギーに変換する力が有る。
その時に必要な触媒が人間の生命反応だ。もっというと想いの力だ。
つよい欲望、渇望、愛情、それらがないとISコア達も力を貸してくれない。
というか、一種の無機生命体に近いんだ。ISコアってのは。そう思って命を預ける。それが一番大事ってのは教本の最初の項目に書いてあるはずだ」
同時に神鉄の脳裏によぎる可能性は、タイムクリスタル自体が文明を持っていた可能性だ。もしくは現在進行形で侵攻を開始している自分たちを侵略しようとする一波がこの宇宙にいるかもしれない。
タイムクリスタルというものを発見し、それを開発してしまったなら、そういう国防ならぬ世界防衛を成し遂げる、というのはIS開発初期メンバーの合言葉だった。
まあそのための準備こそがモンド・グロッソでありアラスカ条約の裏項目だったりするのだが、というのはまだ若い世代は知らないで良い。
「んで話を続けよう。ぶっちゃけた話、相思相愛な感情をISコアは好む。
強い感情、自分だけの思い込みとか狂気みたいなのはあんまりISコアは好まない。他人との関わりの積み重ねがISコアの好む感情だ。」
そこで神鉄はパンと手を合わせた。
「そこでまあ石破ラブラブ天驚拳、合体必殺ファンクションしちまおうってわけだな。
というわけでシミュレーション上で最大出力の零落白夜白死を絢爛豪華で充填してぶっ放して、それを某のリミッターを外したヒルコで補助したダイブ・トゥ・ブルーのワームホールで受け流す、そんな話だ」
「つまり、ケーキ入刀ですわ!。チェルシーの方がケーキですけども!あいた。」
流石に神鉄も軽くデコピンをセシリアの額に放った。
「神鉄義兄さんも罪な男ですね。オルコット家の現当主夫妻を亡国企業からの襲撃から助けただけではなく旦那さんを弱気と見て侮っていた裏切者たちを一斉検挙するなんて、映画化されただけはある。
そりゃあチェルシーさんは愚かセシリアさんの脳も焼けますよ」
くすり、と笑いながら篠ノ之箒は山田神鉄に告げた。
痛いの痛いの飛んでけーをチェルシーにやってもらった後、真っ赤になりながら一夏にもせがんだセシリアを見ながら益々いい第二夫人になりそうだ、と考える女傑は格が違う。点滴の終わった一夏の後始末をしながらだ。
だが肩を竦めて某なぞまだまだ、と言った男より生身で強い男なぞ、星の数ほどいるのだ。
「鈴、遅れるぞ。神鉄大人に恩を返して来い」
誰にも気が付かれる事無く、姪っ子を狙った探知不能の核融合爆弾を用いた自爆テロが行われる所を防いだ男は静かに姪っ子に急ぐように告げた。
北斗有情拳を拘束用に威力を落としたその拳を食らったものは地面に横たわったあと気絶する。それを連絡を受けたSP達が音も無く回収していく。
彼の名は朱鷺楽音。
北斗の次兄であり、中国代表候補生筆頭鈴楽音の叔父であり、
神鉄と互いに死の病を救い合った男だ。
山田神鉄は人類の到達点の一つで有って、至高でも最強でもなければ、この世界はナノメタルで無双できるほど狭くも無い。
「因みに某を殺したければ首から上を消滅させれば死ぬぞ。それに我輩は無線操作しない縛りしてるから首を刎ねたら体は動かせん」
「つまり頭をなでなでする行動は極めて有効という事ですわチェルシー。そもそも脳髄は神鉄おじさまに唯一残った生身の部分ですもの。刺激せねば」
「分かりました、チェルシー、参ります」
「甘い、この神楽、おっぱいサンドを入れ知恵いたしまいだっ、神鉄のあにじゃ、手加減抜きのデコピンはおやめくだされ」
因みに楔を見たチェルシーはメイド心が爆発しめちゃくちゃお世話した。
エクシアも妹が出来ましたとどやあしていた。
次回、絢爛白夜とナノメタル・ワームホール
鈴の活躍はもうちょっと待っててね。