下手な内容ですみませんが、楽しんでくだされば幸いです。
妖夢side-
……あれから、どれほどの時が流れたのでしょうか。
縁側の柱時計が一日に何度も微かな鐘を鳴らしても、私はそれに気づかないほど、自分の内面に沈んでいました。
彼女――いいえ、あの人。名を真円(まえん)さんとおっしゃる方は、いまだ深い眠りに就いたまま。気配を絶やすこともなく、しかし一切の意識を見せずに、あの襖の向こうで静かに呼吸を繰り返しています。
「……本当に、生きていてくれて良かった……」
そんな独り言を、私はもう何度も口にしてきました。まるで呪文のように。そうしなければ、自分の罪悪感が崩れ落ちてしまいそうで。
幽々子様は、あの人の師匠――Atlassiaさんと名乗る大妖怪?大神格?の方が、意図的に何かしているのだろうと、呑気に笑いながら言っていました。
「まあ、一度放っておきなさいな〜。あの子の師匠でしょ? 癒やさないわけないじゃない。だから、時が来れば目覚めるのよ」と。
でも、私はそう簡単に納得できなかった。……できるわけがありません。
だって――死にかけたんです。
私のせいで。私があの時、迷いと混乱のままに刀を抜いて、無用な交戦を招いて、けど手加減されて生かしてくれて…そして目覚めたら紫さんが真円さんと戦っていて、迂闊に近づいて…それで紫様の攻撃の射線に飛び込んでしまった私を庇って……。身を盾にして………。
命を懸けて私を守ってくれた。
その重みは、言葉では到底言い表せません。
……Atlassiaさんには、その後正式な契約を結んで赦されました。
その契約の中には、厳しい項目も、奇妙な言い回しもありましたが、何よりもAtlassia さんが自ら「気にするな」と微笑んでくれたことで、私の心は少しだけ軽くなったのです。
――けれど、記憶に焼き付いて離れないのです。
仄暗い空の下、鮮烈な光の中で、自分の意思でなくとも、私が引き起こした悲劇の瞬間を。
その後、幽々子様は紫様と話し合いに出向かれました。私は留守番を言い渡され、いつも通り庭師としての作業に従事していました。
──日差しも風も、どこか遠く、胸に染み渡るような虚しさがあった午後のこと。
縁側で庭の手入れをしていると、不意に声がかかりました。
男……?いや、女にも見えるような、そんな曖昧な印象を持つ人で、見た目は優しそうなのに、底知れぬ何かを感じさせる雰囲気でした。
「やあ、こんにちは。君が妖夢ちゃんだね?」
最初は警戒しました。ですが、彼はにこやかに、名を「マズ」と名乗り、Atlassiaさんの盟友であり、最も信頼する側近の一人だと語ってくれました。
「実はね〜、主(Atlassiaさん)は最初から皆殺しとか処すとか、そういうのは考えてなかったんだよ。ただね、会って話してみたら、思ってたより腹が立って、“よし、処そう”って思っちゃったらしいんだよね〜」と、飄々とした口調で語るマズさん。
……正直、寒気がしました。
幻想郷の実力者が処されるかどうかの基準が、そんな気分で左右されるようなものなのか、と。
でも同時に、だからこそその“気まぐれ”を鎮めた私の行動に、ある種の意味があったのだと……少しだけ救われた気もしました。
マズさんは続けます。
「主は、君のことを気に入ったらしいよ。真円ちゃんがね、大事な娘であり弟子なんだけど、だからこそ“安心できる存在”を傍につけたいと思ったんじゃないかな〜。ま、主はそういうことあんまり言わないけどね?」
……重いです。期待が。責任が。
あんな、優しくて、まっすぐで、しかも何のためらいもなく他人のために命を投げ出すような人を、支えるだなんて。
……そんな器、私にあるんでしょうか?
でも、なぜでしょう。
真円さんには――不思議と、近づきたくなる。もっと知りたくなる。
あの人が持つ無垢でまっすぐな気配に、強く惹かれる自分がいるのです。
だから、目覚めたら真っ先に謝ろう。心から、謝って、礼を言おう。
あの人に、恥じない私であるために。
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幽々子side-
最近の妖夢ちゃん、少し変わったわね。
それも悪い意味じゃない、むしろ……とても良い方向に。
前よりも剣の稽古に真剣だし、仕事にも文句を言わずに取り組んでいるし、あの子なりに“誰かのために何かをしたい”という気持ちが、確かに芽生えてきているのを感じるの。
しかも最近じゃ、医術なんかも本で読み始めたりして。
お料理の腕も、ね?味付けが格段に良くなってきたし、なんだか母性のようなものすら感じさせるわ。
……これは、やっぱり真円ちゃんの影響かしら。
あの一件以来、妖夢はあの子のことで頭がいっぱいみたいだものね。
まあ、本当のことを言えば、紫の警戒はまだ解けてないし、財団に対する敵意も継続中。私としても財団には微妙な立場だけれど、少なくとも真円ちゃん個人には……敵意なんて、あるはずないわ。
だって、我が家の大切な庭師を――妖夢ちゃんを――命をかけて守ってくれたんですもの。
その恩は、いくら私でも忘れたりしないわ。必ず、ちゃんと起きたら礼を言わなきゃ。
妖夢はきっと、「すべて自分の責任だ」と思い込んでいる。
でも、それは違うのよ。誰よりも悪いのは……ええ、紫。次いで私。傍観していただけの主としての責任、私は果たさなきゃ。
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???side-
吹雪が唸る音の中、雪混じりの風が獄の扉を叩きつける。
その鉄牢の内側には、薄汚れた服をまとい、手足を縛られた一人の少年の姿。
背中を丸め、寒さに震えながら、ただじっと……黙って、外を見つめていた。
外には二人の男。
一人は眼鏡をかけ、冷静な目をした理知的な風貌の男。もう一人は乱れた髪、日焼けした肌の角刈り男。どちらも、一見して只者ではないことがわかる雰囲気をまとっていた。
「それで……どうでしたか。あの化け物神格は?」
眼鏡の男が低く問う。
「……来たさ。変わらずだったな。ま、お前には嬉しい報せだろ、F」
角刈りの男が笑う。乾いた、情のない笑いだった。
「……そうですか。ご苦労様でした、Q」
Fと呼ばれた男は静かに頭を下げた。
「気にすんな。さて、コイツ……どうするつもりだ?」
Qが顎で牢の少年を指す。
「……しばらくは“飼う”ことになります。来るべき時まで、ね」
Fはそう言って、獄の鍵を確かめるように撫でる。
「ほぉ。ま、俺は部屋に戻って酒でも呑んでるわ。何かあれば呼べ」
Qは肩を竦めて背を向ける。
「ええ。良い夜を、Q」
「お前もな、F」
……そんな会話を、少年は見ていた。
声を上げることもなく、ただじっと。
その瞳には――凍てつくような、憎しみが宿っていた。
烈火にも似た、静かなる怒り。
まだ名前も、目的も明かされぬ彼の中で、何かが確かに燃え始めていた
読んでいただきありがとうございます。
最近5月?本当に?と思うくらい暑いので、皆さんも熱中症には充分お気を付けください。
また次話でお会いしましょう。では