"財団"と"幻想"   作:抹茶!

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最近暑いぃ…皆さんはどうですか…?


第十三話

真円side-

 

「……ぅ」

 

喉が……痛い。まるで、砂漠の風をそのまま呑み込んだような、乾ききった痛み。

目を開けた瞬間に襲ってくる現実感に、思わず小さく呻き声を漏らしてしまう。

 

……いや、生きてる、これ。間違いなく。

だけど、それが良いことか悪いことか、まだ判断がつかないくらい、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

 

(……こ、これは……説教100連……)

 

御師匠様からの雷の如き叱責。マズさんの苦笑交じりの忠告。イルーメンさんの静かな怒り。そしてハッタルクさんの、諦めと哀しみが混じった目――。後数十人からの雷…。

 

それらがまるで反復横跳びのように頭を跳ね回り、思考を締め上げる。

 

(いやほんと……死ぬかと思った……物理的にも精神的にも)

 

喉の奥で苦く笑いそうになるけど、それすら咳き込んでしまいそうでやめておいた。

まさかここまで怒られるとは思ってなかった。いや、軽率だった。自覚はある。あのとき、妖夢さんを庇わなければ、私は平和に帰れたのかもしれない。だけど。

 

(……いや、後悔はない。何というか…まあ、好きだったから。あの人のこと……。というよりは何であれ誰であれ見捨てれなかった。まあ好きというよりは普通に自身を助けようと来てくれた子だし…しかもその子を助けたくなってしまったから。)

 

ぼんやりと、あの一瞬の光景が蘇る。紫の放った攻撃の気配。あの、死の気配。

――そして迷いなく跳び出した自分。

 

(バカだなぁ……私って……)

 

だけど、後悔はない。本当にない。あのとき、あれ以外の選択肢は私にはなかった。

ただし、反省は山ほどある。ありすぎて、今後の人生で使い切れる気がしないくらいに。

…いやまぁ、、元から富士山レベルで既に降り積もっているけど。

 

(……にしても、身体、重い……)

 

ようやく目が慣れてくると、天井がぼんやりと視界に入ってきた。どこか懐かしく、けれども妙に冷たい空気。

ここは――冥界。

幽々子さんの屋敷。妖夢さんと一緒にいたあの空間。いや、正確には、あの後、担ぎ込まれた場所だろうか。

 

(……ん?)

 

違和感。

手が、動かない。

足も、微動だにしない。

まるで意識と身体の間に、何層もの膜が挟まっているかのような、そんな感覚。

 

(……う、うそだろ?)

 

思わず冷や汗をかきそうになった。いや、かけない。肉体の機能がまともに動作していないのだ。

呼吸はできている。でも、喉が焼け付くように痛む。話すのも一苦労だろう。

 

(……ちょっと、ほんとにどうしろってんだ、これ)

 

焦る。でも、動けない。

呼んだら霊が「Hello Hello」してくる世界だぞ、ここ。うっかり声を出したら、本当に「そっち」から誰かが来かねない。いや、来ないで。今の私はその対応が無理だ。

 

結論――。

 

(……待とう。誰か来るだろう、たぶん……)

 

じっとしていれば、誰かが気づく。そう信じるしかない。

その「誰か」が、あの白髪の剣士であれば――。

 

 

妖夢 side -

 

「ふぅ……」

 

鍋を丁寧に洗い終え、棚に戻した頃には、日も暮れ始め、台所には柔らかな橙色の光が差し込んでいた。

 

幽々子様の食事の量は、ここ最近さらに増していた。朝昼晩の区切りなどとっくに崩壊し、今ではほぼ一日十食。いや、もっとかもしれない。

 

「……十食って、もはや“軽い宴会”レベルですよね……」

 

それでも、私は料理を作り続けた。それが誰かのためになるならばと、どこかで思っていたのかもしれない。

 

食費も限界。素材も尽きかけ。けれど、それでも手を動かしていられるのは――心にぽっかり空いた空洞を埋めたかったから。

と言ったところでまあ現実的には…。

…えぇ、まあ。

まあ作れてしまいますから、お出ししていますが…そろそろキツイですからね…幽々子様には申し訳ないですがそろそろ十食は無理ですとお伝えしなくては…。

 

「……」

 

すると、ふわりと、肩に何かが触れた気がした。目を向けると、私の半霊が、くるくると落ち着きなく舞っている。まるで何かを急かすように。

 

「……え? 真円さんが――」

 

目が覚めた、と。半霊が伝えてくる。

 

心臓が跳ねた。次の瞬間、私は飛ぶようにして駆け出していた。襖を滑るように開け、座敷の先の、彼女が横たわる部屋へ。

 

 

 

真円 side - 「来訪者と、詫びのかたち」

 

「……来ない……来ないなぁ……」

 

そんな風に考え始めた刹那、襖の向こうから声が響いた。

尚待っていたら喉は少し慣れてきた。良かった。

 

「す、すみません! 入って大丈夫ですか……?」

 

……あ、来た。やっぱり来た。声の主は……間違いない、あの時の剣士の娘。白と黒の衣、凛とした気配、そして……どこか傷ついた瞳。

 

「……だ、大丈夫だ、……ょ……」

 

喉がひりつき、声は掠れていた。自分でも何を言ったか不安になるほどだったけど……どうやら聞こえたらしい。襖がゆっくりと開いて――

 

「真円さんっ……! 本当に申し訳ありませんでした!」

 

――そのまま、彼女は頭を畳につけて土下座した。流れるように、音を立てて。

 

「え……え、ちょ……何で……?!」

 

訳が分からず、声にならない声を漏らしていると、別の声が背後から続いた。

 

「こらこら、妖夢ちゃ〜ん。ダメよ、そんな唐突に頭を下げたら、真円ちゃんがパチクリしてるじゃないの」

 

扇子を持ち、どこか飄々とした態度で現れたのは……幽々子様。淡い笑みを浮かべながら、妖夢の背中に視線を投げる。

 

「真円ちゃん、目を覚ましたばかりでこれじゃあ混乱するでしょう? ……ごめんなさいね、いきなりだったわね。でも、妖夢ちゃん、貴女の瀕死になったこと、すごく責任を感じてたのよ」

 

「幽々子様……! 私が、私自身の言葉で……!」

 

「……あらあら、ごめんなさい。じゃあ妖夢ちゃん、お願いね。私はここで見守っているわ」

 

「え……ここで、ですか……?」

 

「えぇ、もちろんよ。ほら、頑張って?」

 

 

 

妖夢 side - 「伝えたい想い」

 

目の前の真円さんは、まだ弱々しく横たわっていた。それでも、瞳の奥にはいつもの、あのまっすぐな光があった。

 

私は、深く、息を吸った。

 

「……あの、真円さん。あの時……庇っていただき、本当に、ありがとうございました」

 

言葉にすると、胸の奥がじんと熱くなった。今にも涙がこぼれそうだったけれど、今だけは、しっかりと伝えたかった。

 

「私……貴女を守るはずが、逆に守られてばかりで…その、最初いきなり私から斬りかかって、けど寧ろ峰打ちされて、生かされて…それで紫さんに襲われている貴方を助けるつもりが……怖かった。寧ろ危険な事態に、庇ってもらう事に、、そんなことにさせて…すみませんでした。でも……貴女の行動が、心から……嬉しかった。救われたんです。だから、せめて……謝らせてください。そして、御礼を……」

 

 

 

真円 side -

 

「……え、っと……気に、するな……好きやった、から……」

 

やっとの思いで、声を絞り出す。情けないほどに掠れていて、か細くて。でも、あの時の気持ちは、本物だった。だから、どうしても伝えたかった。

 

妖夢ちゃんが、はっとして顔を上げた。瞳の奥が揺れていた。私の声が、届いたのだろうか。

 

……届いて、いたらいいな。

 

 

妖夢side-

…好きで人を庇った…?…先にその少し前にあの白玉楼前の階段で斬りつけてきた、私を?

迂闊になんとなくで助けようと浅い考えで向かってきた私、を?

 

…なんですかそれ。というか…聞いていた財団とやらの印象と違うじゃないですか…元々真円さんは良い、善すぎる人とは思っていましたよ。けど…

ここまでなんて、、聞いていた財団に似合わない人です。

 

 

「…妖夢ちゃん。よかったわね。真円ちゃん、あまり気にしていないみたいよ?」

「…良いんでしょうか、こんな簡単に赦されて」

 

「良いよ?…というか、そうしてくれいと…困るし」

とバツが悪そうに笑う、真円さん…

 

これは…

 

「真円さん…」




はい、ここまで御読みいただきありがとうございました。

まだ拙い文ですが、楽しんでくだされば嬉しいです。
また次話でお会いしましょう♪では、また
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