"財団"と"幻想"   作:抹茶!

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暑い…あ、今話も見てくださりありがとうございます!


第十四話

「……私が、この幻想郷について、教えさせてもらってもよいでしょうか?」

 

その言葉は、やや躊躇いがちで、しかし確かな決意に裏打ちされていた。

 

「え、いいの?」と真円は目を瞬かせた。

 

「あ、ありがたいけど……なんで?」

 

問い返す声は弱々しいものの、真円の瞳は好奇と警戒の混ざった色をしていた。だが、妖夢の顔に浮かぶ照れのような、しかし芯のある表情に触れて、その疑念も次第に溶けていく。

 

「……恩返しも兼ねて、色々してあげたくて」

 

視線をそらしながら呟く妖夢は、やはりどこか不器用だった。だがその不器用さに、真円はふと安心する。

 

「……じゃあ、頼ませてもらうよ。私、幻想郷のこと、ぜんっぜん知らないし(…少なくとも彼女よりは、だけど)」

 

にっこりと笑うと、妖夢は一つ息を整え、膝を正し、正座で向き直った。

 

 

【幻想郷入門講座 in 白玉楼】

 

「まず、幻想郷っていうのはですね……“境界の外側”にある、幻想の吹き溜まりのような場所なんです」

 

妖夢の語りは真面目で、どこか講義のようだった。真円は弱った喉に優しいお茶を啜りながら、それを聞く。

 

「幻想郷には、人間、妖怪、幽霊、神様、鬼……いろんな存在が住んでいます。でも、みんなが共存できるように“ルール”があるんです」

 

「ルール……?」

 

「ええ。基本的には“人間を食べちゃだめ”とか、“力ずくで支配しちゃだめ”とか。そういう約束ごと。……で、それらを守らせるための一つの仕組みが、“スペルカードルール”なんです」

 

「……おお、聞いたことある。なんか……弾幕バトル、だっけ?」

 

「はい!」妖夢が少し誇らしげに頷いた。「争いごとは弾幕で、芸術性やルールに則って戦う。勝っても負けても命に別状はないように、工夫されています。まぁ……例外も、あるにはあるんですけど」

 

「例外?」

 

「……それはまた後で」

 

妖夢はごまかすように小さく笑った。

 

「幻想郷の外から来た存在は、“外来人”として扱われます。ですが、今、ちょっとした緊張状態にあるんです。とくに……」

 

そこで彼女はふと、視線を落とす。

 

「……貴女のように、SCP財団に関係している方は、少し……警戒されています」

 

真円の笑みが消えた。

 

「それって……どういう意味?」

 

妖夢は言葉を選ぶように沈黙し、しばししてから静かに告げた。

 

 

【訪れる静寂、迫る緊張】

 

「紫様をはじめ、境界の管理者たちは、財団を“抑制の存在”だと見ています。つまり、“自由を奪うもの”だと。……ここ幻想郷では、そういう支配を非常に嫌うんです」

 

「支配、ね……」

 

「それに、以前……貴女たちの職員の方が一人、紅魔館の付近で捕まったんです」

 

真円はわずかに眉をひそめた。

 

「捕まった……って、生きてるの?」

 

「ええ。生きてはいます。ただ、紅魔館の主、レミリア・スカーレットは吸血鬼。彼女の館では、外の人間が“おもちゃ”にされることも、あるそうです」

 

「……最悪だ」

 

「最悪では、ありません。まだ、最悪では。ですが、今、幻想郷全体で“外界の者への対応方針”が見直されつつあります」

 

「それってつまり……?」

 

「もし今後、財団の別部隊が幻想郷へ侵入した場合、妖怪たちに“即座に攻撃しても構わない”という指令が出される可能性があるんです。……いや、むしろ、その方向で動き始めている、と言っても過言ではない」

 

静かな部屋に、重たい空気が落ちる。扇子の音がひらり、と空気を切った。

 

「そうなのよ」

 

声の主は、再び幽々子だった。

 

「幻想郷は、幻想の国。秩序と無秩序、自由と縛りが拮抗している場所なの。そこに外から“管理”という概念が入ってくると……どうしても、拒絶反応が起こるのね」

 

「でも……私、そんなつもりで来たわけじゃ……」

 

「知ってるわ。でも、“そう思ってるか”と“どう見られるか”は、また別問題」

 

幽々子は扇子を閉じ、静かに言った。

 

「あなたは、きっと違う。私たちもそう思う。だけど、それは幻想郷全体の考えじゃないのよ。……もし本当に、この地に残るなら」

 

――扇子をぱたりと膝に置く。

 

「この世界の“流儀”を、知っておくべきよ。さっき妖夢ちゃんが言っていた、“スペルカードルール”。あれは、幻想郷における“唯一の共通言語”なの」

 

「……つまり、あれを知らないと、何もできない?」

 

「逆に言えば――あれを使えれば、幻想郷で“話すこと”ができる」

 

真円は、視線を天井にやった。白い木目。冥界の穏やかな空気が、ひどく現実味を帯びて、今にも崩れそうな幻想をかろうじて支えている。

 

「……私、どうすればいい?」

 

その問いに、幽々子は妖夢の方を向いた。

 

「教えてあげて、妖夢ちゃん。あなたが最初の先生。幻想郷の“言葉”を教えてあげるのよ」

 

妖夢は一瞬たじろぎ、それでもこくりと頷いた。

 

「……はい。私が、教えます。スペルカードルールのことも、幻想郷の歩き方も、貴女に全部……」

 

少し赤くなった頬を隠すように、彼女は目を伏せた。

 

「……だって、真円さんが生きていてくれて、よかったから」

 

静かに、時間が流れる。

 

かつて、境界を越えた者がここにいて。

その者が、幻想と理の間に立とうとしていた。

 

――それが、何を引き起こすのかは、まだ誰も知らない。

 

ただ一つ、確かなことがある。

 

今、幻想郷の“扉”が、音もなく開きつつあるのだった――。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
また次話でお会いしましょう♪
では、また。

追記:よく考えたら主人公の真円…多少は幻想郷の知っていたはず…普通に辻褄が合わないので一部訂正しました。
失礼しました。2025/05/18 作者
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