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お母さんが死んでから間もない頃、村に知らない人たちがたくさん来た。その人たちは変わった服を着ていて怖いマスクを被り、一つ一つの家を回って何かを調べたあと、私たちに言った。
「皆さんのご両親は、崩壊エネルギーによる病気で亡くなりました。でも心配いりません。我々があなたたちを引き取ります」
私も含めて、多くの子どもたちが連れていかれた。その子たちは、私と同じ孤児だった。その中には、アヴローラ、アガタ、ベラもいた。
車に乗せられてしばらく経った後、大きな塔のような建物に連れていかれた。そこで、手袋を着けた人に注射をされた。
「君たちは幸運にも、生まれつき崩壊エネルギーに耐性がある。人類のために、少しばかり実験に協力してもらいます」
私には、「崩壊エネルギー」というものが何なのか、よく分からなかった。私に注射をした人に訊いても、「あなたのお母さんが亡くなった原因」としか教えてもらえなかった。そして、「実験」については何も教えてくれなかった。
注射が終わると、「しばらくはここで我慢していてほしい」と言われ、牢獄のような場所に連れていかれた。正直、数日で出られると思ってた。でも、違った。というよりも、ここが私たちの死に場所だった。
「げほっ、げほっ!ゴホッ!」
「ど、どうしたの!?大丈夫!?」
翌日、私と同じ牢獄に居た子が、突然吐血し始めた。
「たず、けて...ゲホッゲホッ!痛い...いだい...」
「どうしよう、シーリン。誰か呼んだほうがいいよね?」
「うん。すぐに呼んだほうがいいと思う」
私はベラと相談して、牢獄の外に向かって叫んだ。
「誰か!誰か来て!」
すると、1人の男の人が現れた。
「どうした?」
「あの子が、吐血してるんです!」
「吐血?もう耐えられなくなってきたのか...おい。行くぞ」
「えっ?」
その男の人は、その子の腕を掴んで、どこかに連れて行った。そして、その子が戻ってくることは無かった。
次の日、私は他の部屋に連れていかれた。そこには白や緑色の服を着た人たちと、ちょっと変わった形のベッドと、手術の時に使う機械みたいなものがたくさんあった。
「そこで横になれ」
私は、周りの人たちの指示に従って、ベッドに横になった。そしたら、その人たちは、私の体をベルトで拘束し始めた。
「な、なにするの!?」
「いいから黙ってろ」
私の体を完全にベッドに固定すると、今度は、先端に針が付いた管みたいなものを私の体に何本か刺した。
「痛っ...」
「よし。準備はできたな。じゃあ始めるぞ」
周りにいた男の人のうち1人が、私の体に繋がった管のもとのほうにあった機械を操作してた。そして...
「ああああぁぁぁぁぁーーー!!!痛い痛い痛い痛い!!!」
まるで、体ごとナイフで切り裂かれてるみたいな痛みが、私の体に走った。
「騒がしいな。おい、猿ぐつわを噛ませろ」
私は、口に変なものを巻かれて、うまく声を出せなくなった。
「んんうううゥゥゥゥーーー!!!」
声が声にならない。そんな感じだった。でも、体の痛みはどんどん強くなっていった。目からは涙が溢れてきた。
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どれぐらい時間が経ったか...。私は、声を出す気力も失っていた。
「ううゥ...あ...」
「そろそろいいだろう。外せ」
私の体は、ようやく地獄のような痛みから解放された。そして牢獄に戻され、私と入れ違いに、今度はベラが連れていかれた。
「うっ..うううっ...」
「ベラ...」
私は、戻ってきたベラの体を抱きしめた。そうすることしかできなかった。そのあとも、アヴローラ、アガタ、そして他の子と...。みんなが、毎日毎日「実験」を受けた。そして日を追うごとに、戻ってこない子が増え始めた。戻ってこれても、至るところから出血していたり、大量に吐血してそのまま動かなくなってしまう子もいた。
私の体も血だらけだった。色んなところに、いつの間にか傷口ができていた。実験中に受けていた痛みも、実験が終わっても続くようになってきた。そして今日もまた...
「痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーー!!!!!」
今はもう、実験中に変なものを口に巻かれることはなくなった。でも、実験中に受ける痛みは、以前よりも酷くなっていた。そして、実験が終わってからも、その痛みがしばらく続く。もう死にたいと思った。こんな思いをするぐらいなら、死んでしまったほうがマシだと思った。だけど、死ぬ勇気なんて無かった。
「痛い...お母さん、痛いよ...。お母さん...お母さん...」
牢獄の中で、私はお母さんを呼んだ。私のお母さんはもう死んでる。でも、お母さんを呼んでいると、不思議と、痛みが少し和らぐような気がした。私はなんとか体を起こして、みんなの状態を確認した。
「アヴローラ、アガタ、ベラ...。みんな、大丈夫?」
返事は無かった。ベラの体を触ってみると、硬くて冷たい感触があった。お母さんが死んだ時も、こんな感じだった。
「ベラ...ベラ...。うっ..うううっ...」
次は...私が死ぬ番かもしれない...。いざ、そう考えると、恐怖で体が震えた。その日、私は、アヴローラ、アガタ、ベラの亡骸を、雪の中に埋めさせられた。
「アヴローラ、アガタ、ベラ。ゆっくり休んでね...」
「おい!ごみ捨ては終わったのか?そんな【ごみ】に時間を使っている暇は無い。さっさと実験に戻るぞ!」
「......」
私は、すぐに実験に戻された。痛かった。すごく痛かった。こんな日はいつ終わるのかも分からない。もしかしたら、終わりなんて無いのかもしれない...。そんなことを、夜、骨を刺すような痛みに耐えながら、牢獄の中で考えていたら...
「この実験は、戦乙女の聖痕を作るために欠かせない。天命と戦乙女のために犠牲になるなんて、光栄に思うべきだ」
ふと、実験中に言われたその言葉が、脳裏をよぎった。
「嫌!嫌だ!死にたくない!私を騙して利用した人たちに、その代償を払わせてやる!!!」
私は、牢獄の檻に近づいて、叫んだ。叩いた。
「出して!出してってば!」
そしたら、横にあった扉がゆっくりと開いた。あの嫌な大人たちが、たまさか鍵をかけ忘れたのかもしれない。私は、その扉から飛び出してこの地獄から逃げようとした。
「痛い...痛いよ...。歩くたびに痛みが...」
一歩一歩歩くたびに、叫びたくなるような痛みが体中に走った。だけど、止まっちゃだめだ。自分にそう言い聞かせて、なんとか足を進める。
「おい!実験体が逃げたぞ!」
「警備は何をしてる!彼女を止めろ!」
「痛い!触らないで!この嘘つき!悪魔!...殺す!殺してやる!」
「逃がすな!捕まえろ!」
私に気付いた大人たちは、私を攻撃してきた。私は必死に反撃しようとした。
「どいて!近付かないで!私から離れて!」
「あの実験体を捕まえろ!彼女は貴重な研究材料だ!生きたまま捕えろ!前回捕獲した崩壊獣を全部出せ!」
近くにあった檻のような扉が開いて、中から不気味な化け物が出てきた。私はどうにかして逃げようとしたけど、捕まってしまった。
「後悔させてやる...。みんな、消えてええぇぇーーー!!!ウアアアアァァァーーーーー!!!」
「もうダメか...。しかし、ここまでもっただけでも十分だ。研究する価値がある。彼女をおさえろ!」
結局私は、地獄に戻された。そのあとも、繰り返し実験をさせられた。私は、休まることのない苦しみの中で、泣いて、罵倒して、祈った。
そしてある時、お母さんが読んでくれた絵本のように、「神さま」が現れた。神さまは、私に力をくれた。もう私は、実験体なんかじゃない。殺されたりしない!
「偽りだらけの利己的な人類に、私が受けた苦しみを、その百倍、千倍、数万倍にして返してやる!!!」
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時に、西暦2000年2月1日。天命が建造した研究施設「バビロン実験室」において、322名の研究員が一晩で消失する事件が発生。これは、第二律者シーリンによる「第二次崩壊」の幕開けだった。
天命はまだ、この事実を知らなかった...