あの事件の後今までの誤解をとき、今までの時間を取り戻していたアレクシアとアイリスはある場所を訪れていた。
ミツゴシ商会。
幅広い分野で事業展開をしながら全てで成功を納め、
今までになかった商品を売り出し同業者も羨む急成長をとげた商会を訪れていた。
VIPである2人は専用口からセレブ専用売り場に通された。
洗練された接客は王室育ちの2人すら満足させるものだった。
一通り売り場を案内された後、個室に通された2人を出迎えたのは藍色の髪のエルフだった。
「初めまして。私、ミツゴシ商会の会長を務めております。
ルーナと申します。」
そこからは2人にとって驚きの連続だった。
王族の2人ですら見たことのない品々の数々、
1つ1つが値が張るものだったがそれでも満足するものっだった。
そんな2人の目を引くものがあった。
「....これ....下着?」
それは下着にしては面積が少なく、大事な部分がギリギリ隠れる程度でうっすらと透けていた。
「こ、こ、これ...下着なんですか?」
「ティーバックという女性用下着になります。
男性からの人気も高くなっております。」
「男性!?まさかアレクシア!.....アレクシア?」
うろたえているアイリスを無視しアレクシアは別のものを見ていた。そして、それを見てしまったアイリスは絶句した。
「なに.....これ」
アレクシアが見ているのは上下セットになっている下着。
だが、その下着はティーバックよりも異様だった。
まず隠すべき大事な部分に布がなくそのデザインは
確かに綺麗だが、女の色香を引き立てるようなものだった。
「下着.....なんですよね?」
「はい。夫婦関係の改善に非常に役立つと高い評価を頂いており、生産待ちとなっております。」
「夫婦関係??」
意味が分からなかったアイリスの頭の周りには大量の?が浮かんでいたが意味を理解したらしく顔を赤くしている。
「まっ、まさかあなた!?」
アレクシアは焦っていた、仮の関係から本当に付き合い始めたとはいえ男爵と王族はかけ離れている。
功績を立てれば話は変わるが、あの目立つことを嫌う彼がそんなことをするわけがない。
アレクシアが考えた方法は1つだけ、責任を取らせること。
考えたはいいが実行しようにも当然経験はなく、さらに相手があの唐変木となると困難を極める。
そして、その解決策が目の前にある。
下着を掴み握りしめている。
「これなら....これならあの唐変木も私に手を出すはず!」
「ダメ!絶対にダメ!」
横からアイリスが下着を奪い取った。
「邪魔をしないでください、姉さま。」
「何を言ってるんですかあなたは!婚前交渉は絶対にダメ!」
「今時婚前交渉なんて珍しくないですよ?」
「そ、そんなに爛れ.....はっ、惑わされませんよ!」
「ちっ」
「アレクシア!?」
アレクシアにとって姉の抵抗は予想していたがここまで激しくなるとは思わなかった。
だがここで折れれば次のチャンスがいつか分からない。
アレクシアも下着を奪い返そうと必死だ。
「これは私の問題です。」
「何を言っているんですか!?
それにこっここ、子供が出来たらどうするんですか!」
「だから必要なんです。」
「アレクシア!?」
「姉さま、私には王女として......いえ、女として決して逃げてはいけない戦いがあるんです!」
「何を言っているんですか!」
意中の男を落とすことに必死な妹と狂ってしまった?妹を止める姉の下着の奪い合いが始まった。
それをルーナは優しげな笑みで見ているがその目には光がない。
周りの彼女の部下達の顔色が悪くなっていく。
10分ほど争いが続きアレクシアに
「甥っ子や姪っ子を見たくないんですか!?」
と言われ甥っ子や姪っ子ができたことを想像してしまい狼狽えているアイリスの隙をついて下着を奪ったアレクシアは会計を済ませた。
その後もアレクシアは様々な下着を買いあさった。
「アレクシアが....アレクシアが壊れた....」
傍で見ていたアイリスはゲッソリとしていた。
2人を見送った後もルーナ...ガンマは黒い笑みを浮かべていた。
それを見ている彼女の部下達は震えている。
「奪われた....主様の為の下着が.....初めてが....奪われた」
ガンマもシャドウと関係を持っている。
だが、先日の事件で上司であるアルファが主に求められたことを知り嫉妬してしまった。
自分から主を求めれば受け入れてくれるだろう、だがガンマは求めるよりも求められる方が好みだった。
以前から考えていたガンマはこの下着を作り主との行為で使おうとした。
だが主に引かれてしまうことを考えてしまったため彼女はまず市場の反応を伺うことにした。
結果は想像以上だった。
夫婦関係に悩んでいた奥方からは子供にも恵まれたと感謝され、
最後の1歩を踏み出せない恋人にヤキモキしていた女性からも高い評価を得て下着は品薄となりサンプルを残すのみとなった。
ガンマに配慮した他の七陰達は買おうとしなかったが商会が急成長を遂げたばかりでガンマには在庫を確保する余裕すらなかった。
そしてタイミング悪くアレクシアが購入してしまった。
王族のお墨付きとなったこと、王族と良好な関係を築いていることは今後の商会の成長に必要と考えVIP用のサンプルを渡してしまった。
だが何よりも嫉妬しているのは
「あんな...あんなぽっと出の女が....主様の愛を受けるなんて」
突然現れた女が何年も過ごした自分達と同じ様に愛されていることが彼女の嫉妬を搔き立てた。
ガンマの体からは魔力が漏れ出ている。
「許せない許せない許せない....殺して....それは駄目、主様が悲しんでしまう。
あの女.....お優しい主様につけこんで....憎い妬ましい....
主様の愛を受けるなんて。
今からでも返品を.....駄目、そんなことしたら評判に関わる。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い.....殺したい......でもできない。
ああ、私はどうすれば.....」
顔色を悪くして誰も動けない中、1人の女性が動いた。
「ガ、ガンマ様!」
「何かしら?私は今....」
「すぐにでも生産されている分を回収いたします!」
「いいのいいのよ...私はあの女に....」
「いえ、やはりあの下着はガンマ様に相応しいかと!」
「そっ、そうかしら。」
先程までの黒い笑みではなく頬を赤らめ照れている。
「あの下着に対する思い入れが強いのは知っております。
それにあの下着を着てシャドウ様の愛を受けるのは
ガンマ様が相応しいと思います!」
「じゃ、じゃあお願いできるかしら?」
「お任せください!」
そう言って女性は部屋を出ていく。
「あの子には特別手当が必要ね」
すぐに黒い笑みに戻る。
「私が....あの女から主様の.....初めてを奪う」
ゴクリと喉を鳴らすと笑い出す。
「うふ、うふふふふふふふ.......」
周りのガンマの部下達はいつもと違う様子に引いていた。
シャドウと会ったことのない彼女達にはどうしてここまで
変わってしまうのか分からなかった。
だが彼女達は気づいていない、自分達にもこうなる可能性があることを、そして、1度でもシャドウに会ってしまえばガンマの様になってしまうことが確定することを彼女達は知らない。
僕は今、王都で話題のミツゴシ商会に来ている。
勿論ヒョロとジャガも一緒だ。
なんでも話題のチョコレートを女子に渡して告白するらしい。
自分達がなんて言われてるのか知らないのか、ウ○コ野郎だぞ。
ウ○コ野郎以前に女子にはかなり嫌われているから無理だと思う。
「人斬りもでるから早めに帰りたいんですけどねぇ。」
「何それ?」
「知らないのかよ。なんでも夜になると現れるって話で
結構死人も出てるらしいぞ」
「へーー」
人斬りと聞いてアレクシアの顔が浮かんでいた。
僕に告白してきたときに剣を向けてきたし、嫌いと言おうとしたら斬りかかってきそうだったが、流石にないだろう。
ないと思う....思いたい。
ここまで派手だと教団の可能性は少ないだろうが、一応調べておこう。
「お客様、宜しければアンケートにご協力頂けませんか?」
プラカードを持ったダークブラウンのお姉さんに話かけられた。
僕が見てきた中でも結構美人。
こんな美人に声を掛けられるなんてどんなイケメンだよ?
じっと僕を見つめてくる、後ろを見るがイケメンはいない。
「僕?」
「はい♪」
ヒョロとジャガが僕を押しのけて前にでる。
「おおお、お姉さんこんなパッとしない男よりイケメンはどうでしょう!」
「ぼ、僕の方がイケメンですよ!」
自称イケメンか、本当のイケメンは自分で言ったりしない。
「結構です。」
たった一言で撃沈し膝を着いた、まさにモブの反応だ。
こういうのが自然にできるようにならないとモブとは言えないんだろう。
「行きましょうか。」
腕を組まれて店内に引き込まれた。
胸を当てないで下さいお願いします、反応してしまうんです。
あと行くなんて一言も言ってないです。
「ふんふんふん....」
ご機嫌だけど逃げるべきだったか?
もしかしてこれは連れていかれた所にゴツイオッサンがいて何か高いものを買わされるやつなのか。
前世でクラスメートがそういう話をしていたのを聞いたことがある。
お金が減ることを除けばこれ以上ないモブムーブだ。
今からでも逃げるか?
「こちらです」
そんなことを考えている間に着いたらしい手持ちで足りるかな。
案内されたのはミツゴシ商会の屋上。
目の前には豪邸がある。
建物の上に建物があるのだ。
「面白い構造だね。」
「光栄です。」
そのまま豪華な扉の前に連れていかれる。
扉の両脇には又もや美人が立っている、なんでこんなに美人がいるの。
2人は一礼すると扉を開いた。
建物の中は中世ヨーロッパの聖堂や玉座の間を思わせる造りになっている。
床にはレッドカーペットが敷かれ室内を一望できるほどの高さの階段、
その先にある玉座まで続いている。
その両脇には美女が並んでいる。
そして、玉座の横には腰まで伸びた藍色の髪の
エルフの女性....ガンマがいる。
「ここ、君の店だったんだ。」
「はい、お待ちしておりました。主様。」
アルファ並の頭脳を持つ彼女は作戦立案や資金運用を行う参謀役。
おっとりした女性だが決して油断できない、彼女も捕食者の1人だ、他に比べると控えめだが手口は狡猾だ。
僕の行動を調べて流れを作り退路を断つ、もし逃げようとすれば僕に罪悪感を抱かせることを
言ってくるのでいつも逃げられずに捕食されている。
コツコツとハイヒールを鳴らしながら階段を降りる。
その姿は非常に優雅で美しい。
「ぴぎゃ!」
やっぱりこけたか。
「ぐべぇ、ふみゃ、べじゃ......」
相変わらず運動能力が壊滅している。
「どうぞ、こちらへ」
何事もなかったのように立ち上がるが鼻から血が出ている。
「鼻血出てるよ」
側にいたお姉さんが鼻血を処理し治癒を行う。
何もないところで転び、何かあっても転ぶここまでくると奇跡だ。
「主様に相応しい玉座を用意しております。」
玉座への階段を登り、そこにある玉座に腰掛ける。
タイミングを合わせるようにガンマが跪くと、その背後に並んでいた美女達も跪いた。
こうして見ると美女しかいないな。
王都で必ず話題に上がるミツゴシ商会、その屋上にはシャドウを迎えるためだけの
玉座があり、そこに座る僕そして跪くシャドウガーデンの構成員達。
待ち望んだ光景が目の前に広がっている。
素晴らしい、最高の気分だ!
「ガンマよ、君はよく働いた。
ここまでシャドウガーデンが大きくなったのは君の成果だ。」
「感謝いたします。」
「褒美だ。我の力を与えよう。」
僕に渡せるのなんて魔力ぐらいだ、僕を好きにしていいとか言ったら終わる。
右手を上げ青紫色の魔力を放出する。
天井近くまで打ち上がり、雨のように彼女達に降り注いだ。
ただの魔力なのになんでそこまで喜ぶの?
これ以上の成果を上げられたりすると何を渡せばいいのか分からなくなる。
体なのか、体しかないのか。
一応2日ぐらいなら7人相手にできるくらいの体力はあるが、
人数が増えてしまうと干からびる。
「因みにここの商品って....」
「はい、主様から授けられた陰の叡智を微力ながら再現致しました。」
ガンマが指示を出すと様々な商品が並べられていく。
どれも前世で見たことのあるものばかりだ。
微力?完全再現じゃないか。
頭脳か、これが頭脳の差なのか。
「因みに....資産ってどれくらいあるの?」
「そうですね、即座に動かせるものですと10億程ございます。」
「....10億!?」
「少ないでしょうか?」
「そんなことはない」
僕の脳みそと交換してくれないだろうか。
「それと、主様が来訪された理由は察しております。」
お姉さんについて来ただけなんて言える雰囲気じゃない。
「シャドウガーデンを騙る人斬りの件ですね。」
は?