ヤンデレってやっぱり難しいね。
ちょっと間違えたらただ頭がおかしいだけになる。
最近疑問に思っている、果たして僕は本当にモブなのだろうか?
周りからの評価は王女2人を誑かしたクズ野郎、
王女2人に挑み見事勝ち取った勇者、恋愛マスターとなっている。
恋愛マスターは偶然だ本当に不本意だ。
余談だが僕らの友情に亀裂が入っている、最近は殺意すら向けられている。
どうしたらモブになれるんだろう。
次の日からローズ先輩の付きまといが始まった。
本気だったらしい。
授業が終わって帰ろうとして、教室の扉を開けると
「一緒に帰りましょう、シド君♡」
ローズ先輩がいた、怖い。
先輩の教室とはかなり離れていて、授業が終わったばかりの筈なのにそこにいるのだ。
何回か断ろうとしたが捨てられた子犬みたいな反応をするので断れずにいる。
生徒会長だから仕事もあるし気にしないで欲しいと言ったら
「今期の決算は全て済ませています♪」
この人は僕と帰る為に生徒会の仕事を全て終わらせたらしい。
とんでもない行動力だ、真っ黒な光のない目で見てくる。
褒めていいものなのか?
褒めたら、犬みたいに喜んでいた。ちょっと可愛い。
いつも教室の後ろの扉を使うから前を使えばいいと思って扉を開くとそこにいる。
僕が教室から出ないと諦めると思っていたが、数分もしないうちに入ってきて
「一緒に帰りましょう、シド君♡」
腕を引っ張られて連れていかれる。
一緒に帰っている時は途轍もなく嬉しそうに腕を絡めてくる。
別に悪いことしているわけではないので怒れない。
2人に助けを求めようとしたが、殺意の籠った目で見てくる。
唇を噛んでいるので血が出ている。
呪詛も飛んでくる。
友情に亀裂が入った、元々あったかどうか疑わしいが。
恋愛マスターと呼ばれるようになったのは未だに理解できない。
きっかけは僕を勇者と思った上級生の先輩が恋愛相談をしてきたことだ。
何でも、気になっている女性がいるがどう話せばいいか分からないと相談された。
正直断りたかったが相手が上級生、実家の爵位が上ということもあって断れなかった。
適当に話を合わせてアドバイスをした、僕のアドバイスなんかで上手くいく訳がないと思っていた。
次の日にアドバイスした先輩が教室に来た、気になる人と話したらしい。
凄い行動力だな。
「ありがとう!君のお陰で付き合うことが出来た!
本当にありがとう!!」
付き合うことが出来たらしい。
感謝を伝えられながら抱きしめられた、男のハグはいらない。
感謝の気持ちと言われ金銭も貰った。
あのアドバイスで付き合えたらしい、何で?
そう思っていると相手の女性が教室に来て感謝された。
元々彼女の方も好意があったらしかったが自分から言うにも恥ずかしく言えなかったそうだ。
そのタイミングで僕のアドバイスをうけた先輩が突撃し見事交際に至ったと言うわけだそうだ。
アドバイスしたタイミングが良くなかったようだ。
その後も何件かの相談を受けた。
男性からは気になる女性と話す方法とか接し方。
女性からは男性の振り向かせ方、どの程度なら男性に引かれないかとか色々聞かれた。
前はタイミングが良くなかっただけでそう何度も上手くいく訳がないと思っていた。
だが全員上手くいった、なんでだよ。
勿論全員が付き合えたというわけではない。
友達から始める人もいるらしいがかなりいい感じでほとんど恋人と言ってもおかしくないようだ。
クラスでの評価はどんどん上がっていた。
最近喋りかけられることも増えたし、皆僕の話をしている。
「結構顔はいいよな」
「クレアさんも美人だからな」
「俺あいつの体見たことあるんだけど凄かったぞ」
「凄い?何が」
「全身バキバキだったんだよ!ありゃやべぇ、鍛えてくれないかな」
「マジかよ!」
「正直惚れたぜ」
男子からの反応はいかにもといった感じだ。
最後の奴はそういう意味で言っているわけじゃないよな?
アルファに頼んでこいつ消してもらうか?
「そこそこ可愛いよね」
「狙い目としてはあり?」
「相手が悪すぎでしょ」
「男子がバキバキって言ってたけど本当?」
「みたいかも」
「あっちはどうなのかしら?」
女子からの反応は何と言っていいか分からない。
これがアルファ達に知られたら彼女達は行方不明になってしまう。
何とかニュー達を黙らせないと。
「裏切者が...」
「許せません....」
後ろには血の涙を流し呪詛を吐き続けているヒョロとジャガが座っている。
最近はずっとこんな感じで、あるかどうか疑わしかった友情に亀裂が入った。
僕に恨みを垂れ流していて気づいていないが2人の評価は急降下している。
「少しはシドを見習ったらどうだ」
「ウ○コ野郎が」
「ジャガの奴、ストーカーしてたらしいぞ」
「最低だな」
男子達はやっぱりストーカーは許せないらしい。
2人は男子から総スカンを食らっている、可哀想だと思うがストーカーはやっぱり引く。
「前に喋ったけど下心丸出しでキモかった」
「私も」
「漏らした奴は流石にねー」
「シド君見た後だとなんか見劣りする」
漏らしたのは僕に原因があるけど色々されているので反省はしていない。
こんな風に2人の評価が下がりまくっているせいで、いつも一緒にいる僕の評価がそこまで上がらなくても美化されて見られていたのが、最底辺の評価で見られているので僕が聖人レベルで見られている。
「どうして...俺頑張ってるのに」
「クレアさんで満足すべきでしょう...」
血の涙を流しながら呪詛を吐く。
そういうことを言うから評価が落ちるんだよ、今もゴミを見るような目で見られているのに気づいていない。
今日も2人に呪詛を吐かれながら1日を過ごし
放課後になったので帰ろうとして教室の扉を開ける。
「一緒に帰りましょう、シド君♡」
当然のようにローズ先輩がいる。
昨日はどうしても用事があるといって断ったのでテンション高めだ。
因みに用事というのは先輩と一緒に帰っているのを報告されると困るのでニュー達とデートをする事になった。
一線は越えていない、頑張って耐えた。
3人とも僕を宿に連れ込もうと必死だった。
デートが終わった後、集まって話し合っていた。
「私達だってかなり大きい筈なのに」
「七陰の皆様はどうやって落としたと?」
「もう媚薬を使うしかないのか」
聞かなかったことにした。
何であそこまで本気なんだ、この間会ったばかりの筈なのに。
3人増えるとかシャレにならない。
クラスメートも最初の方こそ驚いていたが慣れたようで当たり前の景色として見ている。
腕を組んで廊下を歩いているけど皆も同じ様な感じだ、慣れるの早すぎだろ。
今日はできるだけ早く帰らないといけない。
アレクシアがいるからだ、最近は王族としての仕事で学園にいなかったが今日はいるのだ。
だから見つからないうちに....
「何をしているのでしょうか....ローズ先輩」
見つかった、振り向くと笑顔だが目に光のないアレクシアがいた。
周りの人達は離れて行って道ができそこをアレクシアが歩いてくる。
胸に腕を抱きしめるように腕を絡めてくる。
右腕にアレクシア、左腕にローズ先輩。
両手に花だが全然嬉しくない、僕を挟んで争わないで欲しい。
「怪我をさせてしまったので私がサポートしているんです」
「そうですか....ですがそれはコ・イ・ビ・トである私がしますのでお気になさらず」
2人の抱きしめる力がどんどん強くなっていく。
指が食い込んでいる、痛い。
胸を当てないで下さい、お願いします。
「生徒会長としての仕事がありますよね?私が守りますのでお帰りください」
「大丈夫です。決算は全て済ませていますのでシド君との時間はタップリあります」
無自覚な煽りが飛ぶ。
アレクシアの爪が腕に食い込んでいる。
何人か同情しているようだが、助けを求めると目を逸らされる。
「そもそも人の恋人に粉かけるのはどうなんですか?」
「仮の関係とお聞きしていますので問題ないはずでは?」
またも無自覚な煽りが飛ぶ。
右腕から嫌な音が鳴る。
逃げるしかない!
「トイレに行かせてください」
「ダメです♡」
「ダメよ♡」
トイレぐらい行かせてくれ。
後笑顔が怖い、2人とも笑顔だが目に光がないのだ。
そういえば昨日デートした時も笑顔だったが3人とも目に光がなかった。
何か最近会った女性はこんな感じが増えた気がする。
「お願いします、行かせてください」
強めに言うと腕を離してくれた。
直ぐにトイレに駆け込んだ、結構ヤバかった。
トイレを済ませて手を洗う、我慢していたから清々しい気分だ。
だが問題が消えたわけではない。
トイレの扉の前に2人がいるのだ。
正直ローズ先輩にはちょっと引いている、極限までの脱力を行った手を離すことなく握り続ける超人。
アレクシアは最近ベータに似てきた、僕の1日を観察しているようだ。
だからちょっと距離を置きたい。
後ろを見ると窓がある。
この階の高さならモブが飛び降りたとしても不自然ではない高さだ、もう1度扉を見るまだ2人はいる。
1.2人に捕まり胃に穴が開く、ニュー達に脅迫されデート実行。
2.明日の僕に全てを託し窓から脱走。
僕は窓を開けて飛び降りた、明日の僕よ任せたぞ!
「おっと」
綺麗に着地が決まった。
「何とか逃げ切....った」
「誰から逃げていたのかしら?」
僕は全力で逃げた、だが捕まった。
「話があるの」
「ヒョロとジャガが...」
「何もないって言ってたわ」
「....」
「こんな所で話すようなことじゃないから場所を変えるわよ」
「....」
「あんたの部屋とかどうかしら?」
「....」
「いいわよね?」
「はい」
そのまま引きずられていった。
選択肢は3だったようだ。
3.逃げた先で姉さんに捕まり尋問を受ける
すまない明日の僕、生きていられるか保証できない。
「出てこないわね」
シドが窓から脱走した後も2人はトイレの前で待っていた。
「ねぇ、そこのあなた」
「はっ、はいっ」
喋りかけられた男子生徒は震えている。
相手が王女で、笑顔だが目に光がなければ誰でも怖いと思うだろう。
「確認してもらえるかしら?」
「はいっ!お任せください!」
敬礼した後トイレに駆け込んでいく。
周りで見ている生徒達も物音1つ立てない。
少しして青い顔をした生徒がトイレから出てくる。
「あっあの....いっいません」
言い終わった瞬間に2人の足元に蜘蛛の巣状の亀裂が広がった。
そして、
『うふっ♡』
「そう....逃げたのね」
「シド君....私を置いて帰るなんて」
周りの生徒全員の顔色が悪くなった。
その表情は何てことしたんだと言っている。
「ローズ先輩」
「何でしょうか?」
「協力しませんか?」
「....そうですね」
2人は力強く握手する。
全員がシドに対する評価を改めた。
重い愛を抱く王女2人に捕まった哀れな男。
シドに敵意を持っていた者も同情している。
「逃がさないわシ・ド♡」
「逃がしませんわシ・ド・君♡」
これを見ていた生徒達は彼には優しくしようと思ったそうだ。
1人の女は愛がさらに重くなり、命の恩人に会った女は重めの愛を抱くようになった。
姉さんに捕まり寮まで引きずられた。
寮母さんに大事な話があると言ったら許可が出た、くそぅ。
部屋に入るとベッドに押し倒されて上に乗られた。
犬は上下関係を示すために上に乗るらしい、僕は犬じゃない。
「聞いてる?」
「聞いてます」
僕の首には姉さんの手が添えられている。
「あんた最近、私のこと蔑ろにしてるわよね?」
「そんなこ....ぐうぇ」
首を絞められた、この人弟に愛情がないのか。
「別にいいのよ、あんただって男なんだからチヤホヤされたいでしょう」
「嫌、別に....」
「認めたくないけど、あんた顔はいいから女が寄ってくるのは仕方ないわ」
「僕モテな....」
「はぁ?」
「ぐへぇ」
シドは知らないが上級生の女子の間でもそこそこ人気がある。
クレアはクラスメートから何度か紹介して欲しいと言われている。
「別に怒ってる訳じゃないのよ?ただね....
妻を蔑ろにするのはよくないわよね?」
「そうだ....ちょっと待って」
「何?」
「妻ってだ....ぐぁ」
「はぁ?」
僕に婚約者がいるなんて聞いたことない。
実家にいた時にもその手の話は聞かなかったし、王都に来てから手紙が来たこともない。
これがアルファ達に知られたら近いうちに身元不明の遺体が見つかってしまう。
だから確認しないといけない。
「婚約者がいるなんて聞いたことないんだけど」
「....あんたの目の前にいるのは誰?」
「かっこよくて綺麗なお姉様です」
「そのお姉様があんたの妻よ」
は?
何を言ってるんだこの人。
「姉さん、僕達姉弟だよ」
「それがなに?」
「姉弟じゃ結婚....」
「大丈夫よ、あんたは何も気にしないでいいのよ」
「でも....」
「お母様には既に話をつけたわ、
後はあのハゲをボコ....説得すれば何も問題ないわ」
何だと、そんなバカな。
あのオカンを説得したと言うのか。
オトンは反対するだろうが家庭内カースト最底辺の意見なんて潰されるだろう。
もしくは右ストレートを叩き込まれて終わりだ。
「お姉ちゃんと結婚したいって言ったでしょう、だからお姉ちゃん頑張ったの」
頬を赤く染めて頭を撫でてくる、目は真っ黒で光がない。
噓だろ子供の頃の話を本気にしたと言うのか。
「お姉ちゃんあんたの為に純潔を守ってるの、だからあんたも童貞を守るのよ」
言えない。
既に僕の童貞が7人の捕食者達に美味しく頂かれたなんて。
最近3人増えそうになっているなんてとても言えない。
しかも定期的に関係があるなんて言える訳がない、言ったら戦争が始まる。
姉さんではアルファ達に勝てる訳がない。
「まさか女を抱いたとか言わないわよね?」
「ぐうぇ...ま、まだしてません」
「....噓は言ってないわね」
よし!なんとかごまかせた。
姉さんが上から降りる。
「あんたの妻は誰?」
「お姉ちゃんです」
「あんたの童貞は誰のもの?」
「お姉ちゃんのものです」
「よろしい」
扉を開けて出ていく前に振り返って
「お姉ちゃん以外で童貞を捨てたら実家に閉じ込めるから」
ただ頷くしかなかった。
姉さんが出た後は廊下から帰るのを見送った。
部屋に戻ると燃え尽きた様にベッドに座った。
捕食者が増えた。
バレたら国が消えるレベルの戦争が始まる。
何でこんな事になったんだろう。
クレアを考えるのは難しかった。
窓をぶち破ったら流石にモブじゃないのでやめました。