陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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核を目指した男

最近クラスメートが何かと話かけてくるし何か優しい。

クラスだけではなく学年全体で何か優しい視線を感じる。

少し前に、

 

「辛いことあったら...相談に乗るから...頑張れよ」

 

初めて会った人に言われて一緒にいた人にも励まされた。

仲が良くなったわけではないのに色々と気を使われている。

腫れ物を扱うような感じではないが変な接し方をされている。

この間は上級生とぶつかってしまった時にも励まされた。

食堂に向かっていると上級生とぶつかってしまった。

相手はヒョロをボコボコにしたレスラー先輩だ。

怒っていた先輩に名前を聞かれたので名乗ると途端に静かになり周りの人も優しげな目で見てくる。

 

「そうか君が....まぁ、なんだ...色々あるが頑張れよ」

 

優しく肩を叩かれて、一緒に食堂に行くことになり1番高いコースをご馳走してくれた。

食べている間先輩達に家庭事情を話されたり婚約者との思い出とか上手く関係を保つ方法とか教えて貰った。

食べ終わると、

 

「男として....応援してるからな」

 

と言い残して帰っていた、その背中には後光が差しているようだった。

あれが漢ってやつなのかと思った。

なんかカッコ良かった。

 

時間が経っても皆から変わらず優しく扱われている。

なんでか聞いたら答えてくれなかったとにかく頑張れと言われた。

それと、ヒョロとジャガだが最近はちゃんと話すようになった。

何でも2人が僕に嫉妬してあることないこと吹き込んでいることを聞いたレスラー先輩と仲間達が2人を説教したようで、前と同じ様に話している。

 

最近は授業と並行して筋トレも行っている。

中の下を維持しておくにはある程度聞いておけばいいので筋トレの時間が確保できる。

今はスライムで作ったグリップを魔力なしで握っている。

3日前に150㎏の破壊に成功したので今は200㎏に挑戦している。

何時かはあれをやってみたい。

握力だけで相手の頭を潰して「潰れた果実のようだ」って言うあれ。

悪役にしか見えないがあれは外せない。

授業が終わると生徒会が入ってくる。

僕を見つけたローズ先輩が熱の籠った目で見てくる、見んな。

よく見ると生徒会の人達は何か吹っ切れたような感じがする。

そして、僕に優しい目を向けてくる。

本当に何なんだ。

生徒会選挙の話をしているが全く頭に入らない。

何せずっとこっちを見てくる。

グリップを握って気分を紛らわす....スライムで作ったグリップが溶けた。

魔力を練ろうとするが上手く練れない。

これはあれか...進行イベント来たか!

教室の扉が破壊されて黒ずくめの男達が入って来る。

 

「動くな!我々はシャドウガーデン、この学園を占拠する!」

 

こいつらか今すぐにぶち殺して....おっと危なかった。

今の僕はシド・カゲノー、本気を出すわけにはいかない。

ローズ先輩が男に剣を向けるが魔力を練れないことに驚いている。

隙をついて男が斬りかかる。

僕は先輩に向かって走り出した。

今回のイベントはネームドや主人公キャラが退場するようなイベントじゃない。

なら誰が斬られるべきか、それはモブしかいない!

 

「やめろぉぉぉぉぉ!」

 

僕はローズ先輩の前に飛び出して斬られた。

そして、心臓を止めた。

 

床に血が広がりその中心には少年が力なく横たわっている。

 

「そんな....」

 

よろよろと近づいていきローズは血だまりにへたり込んだ。

 

「シド君....シド君」

 

弱々しく体を揺さぶりながら消え入るような声で呼びかける、

だがそれに応えることはない。

動かなくなった体を抱き抱えて胸に耳を当てる。

聞こえるべき音が聞こえない。

体を揺らすが頭がグラグラと力なく揺れるだけ。

 

「嫌....ああああああああ!」

 

動かない少年を抱きしめて泣き叫ぶ。

抱きしめて離さないローズを見て生徒達も苦い顔をしている。

泣き叫ぶローズを引き剝がし生徒達が黒ずくめの男達と共に教室から出ていく。

少しすると動かない筈の少年の腕が動きその胸を叩く。

何度も何度も、そして

 

「ゲホゲホ、はぁはぁ...ふっ」

 

成功したぞ、一番やりたかった「バカな!あいつは死んだはず!」の為に考えた奥義が成功した!

 

モブ式奥義 10分間の臨死体験

 

心臓を魔力で止めた後、微細な魔力で脳と神経系を保護し、通常では有り得ない程の長時間の心停止を行えるという、一歩間違えればあの世行きという危険な奥義だ。

実際結構危なかった、前世で飼っていたペットの犬の鳴き声が聞こえた気もした。

 

「ちょっとやりすぎたかな?」

 

最後のローズ先輩の悲壮感溢れる叫びは罪悪感を感じた。

相変わらず魔力は練りにくいが、それは奪われないように細く圧縮して加工すればいいだけ。

とりあえず傷を血が出ないほどに治療する。

完治してはいけない、あくまで奇跡的に命を取り留めたモブでなくてはいけない。

さて、アルファ達の努力を汚した汚物共の掃除に行こうか。

 

屋上に上がった僕は学園を見下ろしている、高い所から見下ろすのは気分がいい。

学園の外には騎士団が集まっているが一定の距離からは近づいてこない。

たしか強欲の瞳?だったかな如何にもキーアイテムって感じの名前だね、

転生して数少ないネーミングセンスのある名前だ。

ただ1つ言いたい、

 

「だっせぇ!あり得ないだろう!」

 

奴ら真っ昼間に黒ずくめの格好でいるのだ。

あれじゃただの勘違いファッションだ、夜だからこそあの黒のロングコートが映えるのだ。

美的センスに欠ける悪党に容赦なんて必要ない!

ダサい悪党なんて誰も求めてないんだよ!

指先にスライムを集めて銃のように撃ち出す。

頭を撃ち抜かれた彼らは何が起こったか分からずに死んだことだろう。

暗殺者の訓練もしていたのでどこを撃ち抜けば即死するか分かっているので呻き声すら上げずに死んでいく。

たぶん100人くらい消したかな、2人抜きとかできて楽しかった。

 

「何してんのあの人?」

 

シェリー先輩がいた、ただ隠れ方がバレバレなのだ。

アホ毛ははみ出ているし、隠れるときに声を出すしスリッパで歩くのでパタパタと音が鳴っている。

取り敢えず先輩に気づいた奴は排除した。

その後は先輩の手助けをして強欲の瞳の制御装置の調整を手伝う事になった。

だがイベント中だというのに僕の腹は不調を訴えた。

制御装置の調整に必要な物のメモをもらっているのでついでに回収する。

トイレに向かっているとバンダナを巻いた男がいた。

 

「まだ生徒がいたのかよ。まあいい、俺は叛逆....」

「五月蠅い」

 

僕はバンダナ男の両腕を斬り飛ばした。

叛逆と言われたとき胸が痛んだ。

前に検査した時には何も問題がなかったのに。

 

「ぎゃあああああああ」

 

うーん、やっぱり弱いな。

丁度いいし聞きたい事を聞いておこう。

 

「ねえ、首謀者は誰?」

「言うわけ....ねぇだろ」

 

口の堅さはいっちょ前なのが教団の面倒くさいところだ。

新しく思いついた拷問を試してみるか。

 

「喋る気はない?」

「ガキが舐めて....」

「僕も君が喋れるように頑張るよ」

 

不思議そうな顔をしているが直ぐに分かってくれるだろう。

バンダナ男をスライムで拘束する。

 

「喋りたくなったら言ってね」

 

そしてバンダナ男は涙を流しながら悶えている。

スライムで全身を拘束されているので叫び声も上げられず暴れることもできない。

何をしているかというと腕の切断面をスライムで覆って神経を魔力で刺激して痛みを与え続けている。

勿論、廃人にならないように精神を保護している。

廃人にもなれないから、ただ痛みを味わい続けるしかない。

 

「喋る気になった?」

 

頭を縦に振っている、喋る気になってくれたようだ。

口の部分のスライムを外す。

 

「や、やせ、瘦せ騎士だ!」

「そっちじゃない、本名を言え」

「い、い、言えない」

「じゃあ続けるね」

「待って!」

 

さっさと喋ってくれないかな、僕も我慢の限界なんだよ。

 

「....」

「喋ってよ」

「....」

「続けるね」

「分かったから!あいつは――」

 

予想はしていたが改めて聞くと殺すべきか迷ってしまう。

取り敢えず目の前の汚物の片付けからだ。

 

「教えてくれてありがとう、じゃ死んでね」

「ま、待って、待ってくれ!なん....」

「自分が何したか分かってないのか?」

「そ、それは、命令で....」

「楽しんでただろ?」

「....」

 

やっぱりな、こいつは僕を拷問していた2人に似ている。

 

「じゃあね」

「頼む!待って....」

「お前は俺が愛する者達の名を騙り、貶めた。」

「お、お前まさか....」

「じゃあな」

 

バンダナ男をミンチに変えた。

魔力制御の練度が上がったので念力擬きも威力が上がった。

色々と考えないといけない事があるが、取り敢えず今は、

 

「漏れる、漏れる」

 

トイレに行こう。

 

何とかトイレに間に合いウ○コ野郎にならずに済んだ。

先輩の研究室に行くとおっさんの魔剣士と若い魔剣士が倒れていた。

おっさんは死んでるけど若い方は生きている、どうでもいいかな。

 

「何してるの、ニュー」

 

部屋に入るとニューが若い方の魔剣士の首に剣を当てていた。

 

「シャドウ様」

「知り合い?」

「許嫁だったんです」

「恨みがあるの?」

「特にはありません」

「そっか」

 

棚を探ってメモに書かれた材料を探す、こういうのは得意じゃないんだよね。

 

「手伝ってくれない?こういうのは苦手だからさ」

「はあ、分かりました」

 

何その反応、ちょっと傷つくんだけど。

ニューのお陰で早く探すことが出来た。

 

「遅れましたが報告します。現在シャドウガーデンは学園の周囲に潜伏し待機しています。

 ご指示があればいつでも....」

「いいよ、僕1人でやる。」

 

今回は1人の方がいい、周りに気を使うほど余裕がある訳じゃない。

 

「申し訳ありません!」

「へ?」

「私達が足手まといなばかりに....」

「違うから、聞いてくれる?」

 

やっぱり、説明不足だったか。

 

「呆れないで欲しいんだけど、怒ってるんだ」

「申し訳ありません」

「違うって、あいつらだよ」

「教団ですか?」

「うん。皆のことを侮辱されて怒ってるんだ、手加減できないから周りにいられると困るんだ」

 

未だに怒りは収まらない。

今回の件に関わった奴は全員殺さないと収まらない、同じことが起きないように見せしめもやるつもりだ。

 

「...畏まりました、監視は続けます」

「ありがとう」

 

不安そうだったから部屋から出る時に頬にキスした。

アルファ達もこうすれば喜んでくれるから大丈夫だろう。

先輩の所に戻るか。

 

結局調整は夜までかかった。

今僕はシャドウに変身して生徒達が集められている講堂を見下ろしている。

もうすぐシェリー先輩が強欲の瞳を無効化するはずだから気長に待とう。

今回は圧倒的な実力を見せつける魅せ技を使うつもりだ。

....まだかな?結構待ったんだけど。

ローズ先輩が動いて攻撃した、ということはもうすぐ僕の出番か。

それまでは観戦しておくか。

魔力が使えるようになったと言っても奪われた分が戻ってくるわけではないから押されている。

よく見たらレスラー先輩がいる、戦い方もレスラーか。

殴ったり投げ飛ばしたりして剣を一切使っていない、これからもレスラー先輩と呼ぼう。

あ、ローズ先輩が弾き飛ばされた、よし行くか!

登場の仕方は屋根をぶち抜いて襲い掛かる敵を踏みつぶして名乗りを上げる。

屋根に突っ込んでぶち破り、先輩を襲おうとしていた敵を踏み潰す。

完璧な登場シーンだ!

 

「我が名はシャドウ、我らの名を騙る愚者共よその罪を償え」

 

決まった、後は蹂躙するだけだ。

 

 

ローズの前に黒ずくめの男が現れた。

 

「我が名はシャドウ、我らの名を騙る愚者共よその罪を償え」

 

自分達を襲った組織の長が自分達を助けに来た。

意味が分からなかった。

だが攻撃してきた男達が一斉にシャドウに斬りかかった。

悠然と構えているシャドウが剣を払うそれだけで男達の体が両断された。

 

「魔力の斬撃?」

 

あり得ないことだ。

全ての魔剣士が1度は目指し直ぐに挫折してしまう難行だ。

それをシャドウは出来て当然と言うように行う。

男達は次々にシャドウに襲い掛かるが近づく前に両断されてしまう。

そして、1分にも満たないうちに全滅した。

全滅したのを確認するとシャドウは講堂を出ていく。

安全を確認した生徒達が次々と講堂を出ていくただアレクシアだけは最後まで逃げようとしなかった。

 

「絶対に、追いついてやる!」

 

 

瘦せ騎士と呼ばれた男は副学園長室にいた。

本棚から本を抜き取ると床に投げ捨て火をつける。

小さな火だったがゆっくりと部屋中に広がっていく。

そして、それを眺める少年がいた。

 

「変装が下手ですね、ルスラン・バーネット副学園長」

 

少年、シドは窓辺で本を読みながら睨みつけている。

 

「どうして分かったのかな?シド・カゲノー君」

 

瘦せ騎士は仮面を取る。

そこいるのは白髪交じりの髪をオールバックで纏めた初老の男性、ルスラン・バーネットだ。

 

「貴方のことを知っているからです」

「どういう事かね?」

「これから死ぬ人に教える必要ありますか?」

「随分傲慢だね、高みを知らない子供らしい」

 

その視線には殺気が乗っているが全然怖くない。

アルファの真っ黒な目のほうが100倍怖い。

 

「高み?ブシン祭のことですか」

「あんなものは所詮お遊びだ、高みはもっと先にある」

「元ナイトオブラウンズは言うことが違いますね」

「ほう、只の子供ではないようだ」

 

ルスランは驚きを隠せなかった。

年端もいかぬ子供が世界の闇に触れている。

 

「1つ聞いていいですか」

「質問次第だな」

「....どうしてシェリー先輩の母親を殺したんですか」

「....何故それを」

 

途端にルスランの顔に怒りと憎悪が現れる。

 

「強欲の瞳には私の病を治す可能性があった。

 だから優秀な研究者に託し支援することで完成を待った」

「それが先輩の母親」

「そうだ、なのにあの女は危険だからと言う理由で国に預けると言い出した!

 だから殺したのだ。

 体の先から中心へ突いていき最後に心臓を突き刺し捻じった。

 実に楽しかったよ」

「あんたクズだな」

「なんとでも言いたまえ。

 感情に任せて愚かなことをしたが代わりもいたから大したことではなかった。」

 

これがルスランの本性、父親としての顔の裏に隠した悪性。

 

「彼女も母親と同じで天才だった、だから養子として引き取った。

 しかし母娘揃ってなんと愚かなことだろう! 娘は私が仇だと知らず真摯に私に尽くしてくれるとは、あの女の歪み切った顔が浮かぶようだよ!」

 

その時、扉が開いた。

そこには青い顔をしたシェリーがいた。

 

「噓、噓ですよね....お義父様」

 

嘲笑うようにルスランは喋る。

 

「今までよく働いてくれたね、ありがとう。

 もう用済みだから、消えたまえ」

 

その言葉に彼女は崩れ落ちた。

ルスランは剣を抜き近づいていくがシドが立ちふさがった。

 

「私と戦う気かい?」

「それ以外にありますか」

 

シドも剣を抜きルスランに向ける。

ルスランは斬りかかるがシドに軽く弾かれる。

 

「驚いたな、やはり子供ではないようだ」

「使った方がいいですよ、強欲の瞳」

「君に使うには過ぎた物だ」

「使え、お前の....全てを叩き潰す」

 

シドを黒いスライムが包むと、その姿はシャドウに変わった。

 

「貴様がシャドウだと!?」

「待ってやるから使うといい」

「舐められたものだ!そこまで言うのなら使ってやろう!」

 

強欲の瞳と制御装置が胸に埋め込まれる。

 

「素晴らしい!力が溢れる、病が癒える!

 これこそ最強の力!私に時間を与えたこと後悔するといい!」

 

シャドウに向かって斬りかかるが全てが弾かれていく。

正面からだけではなく背後からかも斬りかかるが全て弾かれ、ルスランの腕が斬り飛ばされた。

そして、シャドウは突き刺し始める。

両手足の先から体の中心に向かって突き刺していく。

そして逃げられないように頭を掴み心臓を突き刺そうとする。

 

「シェリーーーー!」

 

命乞いをしたのだ、しかも利用していた相手に。

 

「この期に及んで彼女に助けを乞うのか」

 

ルスランの体が床に叩き付けられた。

 

「気が変わった....お前に真の最強を見せてやろう」

 

シャドウの体から光が放たれた。

 

 

「何なんだ....これは」

 

それは余りにも現実離れした美しい光景だった。

解き放たれた魔力は無数の極細の線となりシャドウを取り巻き美しい模様を描いていた。

 

「綺麗...」

 

シェリーはその光景に見惚れていた。

今までに見たことのないほど緻密な魔力。

 

「かつて核に挑んだ男がいた」

 

懐かしむようにシャドウは語りだす。

 

「男は肉体を鍛え、精神を鍛え、技を鍛えた....だがそれでも届かぬ高みがあった。

 しかし僕は諦めなかった、そして....辿り着いた。」

 

シャドウが剣を掲げると剣に無数の魔力の線が集まり光を放つ。

 

「これこそが我が最強!」

「ま、待て、待ってくれ!」

 

ルスランは命乞いを始める。

 

「アイ....」

「私と、私と組め!そうすれば私がお前を....」

「アム....」

「本物の神に....」

 

 

「アトミック」

 

剣を振るうと広がっていた光が1箇所に集まる。

そして、天に向かって青紫色の光の柱が伸びていった。

誰もがその光景を見た。

ある者は恐怖し、ある者は崇拝し、ある者は希望を抱いた。

そして、

 

「あれが私の目指す道」

 

1人の女は挑むことを決めた。

 

 

 

今回の事件はシャドウガーデンが起こしたことになった。

教団によって作られた証言によって偽物が起こしたことも僕らがしたことになった。

僕が想像していたよりも教団はこの国の深くに根を這っているようだ。

これからはもっと情報収集に力を入れないと。

 

あの後シェリー先輩はシャドウガーデンに来る事になった。

恩を返したいと言われた、その必要はないと言ったが先輩は聞かなかった。

実際彼女を守るには一番いいかもしれない。

僕が不安なのは先輩がイータの助手になるということだ。

イータはマッドサイエンティストだ。

僕が教えた陰の叡智の為なら犠牲を出すことを躊躇わない。

そこに善悪はなく、ただ結果を求めている。

だからか僕のことも実験台にしてくる、普通は組織のボスを実験台にしない。

かなりの実験を受けさせられた。

一番記憶に残っているのは僕の初めてが無くなった時のことだ。

紅茶の中に媚薬を混ぜられたのだ。

100倍希釈で常人が飲めば精力が5倍近くになる媚薬を原液で使ってきたのだ。

動けなくなった僕を見て、

 

「成功♪」

 

鼠を追い詰めた猫のような目だった。

成功じゃねえよ、と思っていたが抵抗虚しく僕の童貞は奪われた。

恐ろしいのが最中に僕の体液を採取すると言って尻を狙ってきたのだ。

何とか優位に立つことで回避できたが、もし主導権を奪えなかったらと思うとゾッとする。

最近だと大量の線が繋がった椅子に座らされた後、形の変なヘルメットを被せられた。

気になったので聞いてみた。

 

「脳みそちゅーちゅー君」

「脳みそちゅーちゅー君?」

「相手の、記憶を、奪う」

 

激しく抵抗した。

普通ここまでするわけがないだろう。

脳みそちゅーちゅー君は魔力と一緒に記憶を奪う機能だったので勝負は僕が勝った。

ついでに脳みそちゅーちゅー君も破壊しておいた。

不貞腐れた彼女は液体の入った瓶を取り出した。

 

「自白剤、これなら、マスターも」

 

当然逃げた。

彼女の僕に対する執着は他と比べるとかなり怖い。

だからイータのマッドサイエンティストの部分に影響を受けてシェリー先輩が

おかしくならないか、天才と天災....天才と天才が化学反応を起こしてとんでもないことをしでかしたり、僕に媚薬を盛るようにならないか色々と心配だ。

見送りをした時に抱き着かれてキスされたから余計に心配だ。

 

シェリー先輩を見送る時も色々とあった。

いきなりアレクサンドリアに送るのではなく中継地を挟んで行くことになっていて

その見送りの時に、

 

「あ、あの、シ、シド君!」

「はい?」

「好きです、受け取ってください!」

 

と言われて抱きつかれ、そのままキスされた。

どういうことか聞こうとしたがそのまま馬車に乗り込んだので聞くことが出来なかった。

中継地からは僕が送る予定だったが、

 

「私が送るから何も気にしないで♪」

 

アルファにそう言われた。

とても綺麗な笑顔だった、だがその目はブラックホールの様に吸い込まれるような感じだった。

周りにいた女性達の顔色は悪かった。

シェリー先輩が僕にキスしたことを知ったんだろう、アレクシアの時と似ている。

このままだとシェリー先輩が危なかったので正気に戻すことにした。

キスしたことに嫉妬したのなら嫉妬が起きない位に激しいのをすればいい。

皆の前だったが僕はした、いつもより強く抱きしめて顔を逸らされないように片手で顔を優しく押さえて、舌も入れ息ができなくなる位のをやってやった。

5分位した後、顔を離すと正気を取り戻したようで顔を赤くし目を潤めて恥ずかしがっていた。

 

「皆の前でなんて....」

「でも嬉しかったでしょ?」

「....バカ」

 

胸をコツンと殴られた。

アルファが正気に戻ったのを確認すると直ぐに逃げた。

なんで逃げたかって?

周りにいたシャドウガーデンのメンバーが息を荒げながら気づかれないように距離を詰めていたからだ。

あのままあそこに居たら飢えた獣達に貪られていただろう。

あの3人はもう確定しているようなものだが、一気に20人も増えると死んでしまう。

逃げなければ20人近い獣に喰われて干からびて死んでいただろう。

アルファが悪化したことを除けば何も問題はなかった。

シェリー先輩もきっと大丈夫イータの影響を受けたり....

僕はシェリー先輩にキスされた、そして好きと言われた。

僕を実験台にしているがイータも僕に好意がある。

僕に好意を持つ2人の天才、片方はマッドサイエンティストで片方は透き通るような純粋さ。

先輩は良くも悪くも影響を受けやすい。

これイータの影響を受けたらまずくないか?

 

 

大丈夫だよね?

僕、尻を狙われたりしないよね?

 

 

シドの心配は当たった。

イータの影響を受けたシェリーは捕らえた教団員で様々な実験を行い、

シドの持つ薬物耐性を打ち破るような媚薬を開発しさらに確実に彼の子供を残すために

妊娠促進剤を開発し捕食者へと変貌した。

 

「私達で世界を変えましょう、そしてあなたの子を.....ふへへへへへ♡」

 

マッドサイエンティストに進化したようだ、

彼の尻は近い内に散ってしまうかもしれない。

 

 




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