宿に帰って部屋の扉を開けると先輩、ベータ、アレクシアがいた。
何かを喋っていた3人は僕が扉を開けると黙ってこちらを見てきた。
このままいれば碌な事にならないと思い逃げようとしたが、彼女達の方が速くそのまま部屋に引きずり込まれた。
今僕は正座している。
別に誰かに正座しろと言われた訳ではないが、した方が良さそうなのでしている。
誠意を見せるのは大事だと思う、何に対しての誠意か分からないけど。
今も3人は何かを喋っている。
「シド君は寝る時に抱き着いてくるんですよ」
捏造するな、抱きついて来たのはあんただ。
「そうですか....私は一緒にお風呂に入って見せ合いっこしましたよ」
張り合うな、思い出させないでくれ。
「へ、へぇー。そ、そう、なんですね」
ベータは引きつった笑みを浮かべている。
握りしめた拳には血管が浮かんでいる、帰った後が怖い。
正座してしまったので逃げようにも、先に捕まってしまう。
「じゃあ皆で出かけましょうか」
何言ってんの?
両脇を抱えられ立たせられ、そのまま引きずられていく。
両手に花だが全く嬉しくない、胃が痛い。
交代で僕が逃げられないように両腕を固められる。
胸が押し付けられるが胃が痛すぎて劣情すらわいてこない。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
今はアレクシアに熱々のラーメンを食べさせられている。
だからラーメンはそういうのにはむか....熱っ!
苦労しながら食べきった、2人はまだまともなのを食べさせてくれたから良かった。
味は全く分からなかったけど。
2人には精の付くものを食べさせられた。
トイレに行くのは苦労した、我慢していたが限界を迎えてしまったのでお願いした。
トイレには行けた、ただし女性用トイレだ。
「だって逃げるでしょう?」
女性用トイレから脱走する訳にもいかず、個室の前で監視されながらする事になった。
耳は塞いでくれたようだ。
夜になるまで色々な所を連れまわされた。
聖地と言っても人が住んでいるのでお土産以外にも一般的な店もある。
僕の服を大量に買うことになり、陰の実力者の為の資金が減った。
どうしても入りたくなかった時は抵抗したが、3対1なので店に引きずり込まれた。
ミツゴシ商会の女性下着専門店に連れ込まれた。
何処を見ても下着ばかり、客も女性しかおらずいたたまれなかった。
3人が持ってくる下着も普段用ではなく、男に抱かれる為の下着だ。
際どくて見ていられなかったが首を固定されたので見るしかなかった。
意見を求められても何を答えればいいのか分からなかったから、適当に答えた。
嬉しそうにして会計に行った。
周りの女性達からは敵意を向けられた、とにかく帰りたかったが2時間近く店にいた。
宿に帰ったら疲れすぎて直ぐに寝たかったが、寝れなかった。
先輩に抱き枕にされた、ただ抱き枕にされたのではなく昼に買った下着で抱き着いて来たのだ。
下着だけで他には何も着ていない、なりふり構わず既成事実を作りに来たのだ。
全身で体温を感じるのを唇を噛むことで何とか耐え、寝ることができた。
朝起きると不満そうな先輩がいたが無視した。
後は帰るだけでようやく開放され....なかった。
「はい♪シド君、あーん」
「あーん」
3人と一緒に帰る事になった。
列車に乗り客室に入ると2人がいた、逃げたかったが腕を掴まれているので逃げられなかった。
今はベータに食べさせられている。
乗る前に確認してから30分たった、頼むから今はやめてくれ。
先輩がもたれかかって来て胸に耳を当ててくる、終わった。
「ちゃんと動いてますね」
2人が固まった、ベータの握り拳には血管が浮かんでいる。
「せ、先輩、な、何を、していらっしゃるのですか?」
アレクシアは何とか笑顔を保とうとしているが口の端がピクピクしている。
「シド君の心音を聞いていると安心するんです」
「そっ、そう、ですか」
ローズ先輩が離れてくれる、良かったベータも元に....
「アレクシアさんもどうですか?」
「します」
何だって?
頼むからやめてくれ、今だけは....
「何、これ...」
「どうですか、安心しますよね?」
「ああ....可笑しくなりそう♡」
蕩けた表情で胸に顔を埋めている。
頬を赤く染めて、目には♡が浮かんでいる。
冷汗が止まらない。
目の前にいるベータの目は血走っているし握っているフォークはグニャグニャに曲がっている。
「羨ましいですねー」
声色は落ち着いているが、握った拳からはメキメキと嫌な音がしている。
帰るまでの間色々とあった。
誰が僕の隣で寝るかジャンケンで決めることになり、ベータだけが負けてしまった。
2人に抱きしめられながら寝ることになった、2人は下着しか着ていなかった。
ベータが血走った目で見てくるので寝れなかった。
何とか耐えきり帰ることができた。
2人は不満そうだったが無視した。
ようやく自由に.....
「今夜、お話があります」
いつになったら自由になれるんだろう。
ミツゴシ商会にあるベータの部屋の前にいる。
入りたくはない、しかし入らないと後悔しそうだから無視できない。
「入ってください」
ノックしようか迷っていると中から呼びかけられる。
入るしかないのか。
部屋の中は蠟燭の明かりで照らされているので薄暗い。
「座ってください」
ベータが使っている机の前に椅子が置かれているので座る。
彼女の事だから嫉妬しているんだろう。
「あんな事では嫉妬しませんよ」
なんだ嫉妬してたのかと思ったけど思い過ごしか。
本を1冊取り出して机に置く。
「新しい作品のアドバイスを頂けませんか?」
「それくらいならいいよ」
本を開いて読み始める。
「ある所に黒髪の少年がいました。
学園に入った少年は恋をし、銀髪のお....銀髪エルフに告白をし付き合うことになりました。」
恋愛ものか、僕がアドバイス出来る所なんてないだろうな。
「しかし2人の間には身分の差があり、周りからは妬まれ祝福されませんでした。
それでも2人は順調に交際を続け、日々を過ごしていました。
そんなある日、可愛さの余り銀髪エルフは攫われてしまいました。」
略奪系の恋愛か、かなり重ためだな。
「銀髪エルフは何とか逃げ出そうとしますが捕まってしまいます。
そんな時に全身に漆黒を纏った人が助けに来てくれました。
その人の正体は黒髪の恋人でした。
恋人は巻き込まれないように正体を隠して助けに来てくれたのです。」
王道の王子様系?話が変わってきたな。
「恋人の少年は正体を明かそうとせずに悪と戦い続けます。
そんな姿に胸を打たれた銀髪エルフは彼を支えることを決め共に戦います」
恋愛系じゃない?バトルもの?
「少年と銀髪エルフは学園の日常を暮らす中で様々な問題に出会います。
いつも少年の周りにいる2匹のネズ....2人の友人が銀髪のエルフを邪魔しました。
そんなことでへこたれなかった銀髪エルフは2人の悪行を晒し排除しました。
ですがここで銀髪エルフに最大の困難が訪れます。」
学園バトルものでヒロインとの関わりがちゃんとあるのか。
「最大の困難。それは少年の姉、そして彼を狙う他の女達です。」
何か聞いたことある気がする。
「少年の姉は子供の頃の話を信じて弟と結婚する為に努力をしていました。
そしてお姉さんは弟を狙う女達を排除しようとしますが誰も倒せませんでした。
銀髪エルフ、そして少年を狙う女達の覚悟は生半可ではありませんでした。」
何でだろう、冷汗が出てきた。
「そして銀髪エルフは嫉妬するようになりました。
気付けば恋人の隣にいる金髪縦ロールの王女様、ピンク髪の先輩。」
冷汗が止まらなくなってきた。
「他にも彼を狙う女達がいます」
「あの、ベータ?」
「何と銀髪エルフの従者達も彼を狙い始めたのです。
金髪ショートカットのエルフ、オッドアイのダークエルフ、茶髪の人間。
主人を差し置き従者達は少年とデートを重ねたのです。
銀髪エルフは嫉妬しましたが従者達を罰するようなことはしませんでした。
優しい少年が女達から好意を向けられるのは当たり前と思い受け入れる様にしました。
ですが恋のライバルが現れました。
恋のライバルそれは.....」
聞いたことがある所じゃなかった。
「銀髪ツインテールの第2王女様です。
彼女は2人の間に割り込もうとし銀髪エルフと度々衝突します。
ですが2人共、一歩も引きません。
少年はそれを知らず今日も優しさを振りまき女達を虜にしていきます。」
パタンッと、本が閉じられた。
「まだ書き進めている途中ですが自信があるんです、どうでしょうか?」
「...いいと思うよ、うん」
ベータは引き出しを開けるとペーパーナイフを取り出す。
ナイフには蠟燭の光が反射している。
「シャドウ様、本当の事を言って下さい」
「....寂しくさせて、ごめんなさい」
ナイフを数回撫でた後、ズダンッと、本の表紙にナイフが突き刺さった。
「シャドウ様が私達を大切にしてくださっているのは知っております。
ですが最近は機会がなく不安になってしまうのです」
ベータの手は震えている。
振りではなく恐怖を感じて震えている。
「他の女達に目が向いて、もう見られなくなる、忘れられてしまうと不安になってしまうんです」
その目からは涙が流れている。
「ですからどうか私を....」
言い終わる前に抱き抱えてベッドに寝かせて上半身裸になり彼女に跨る。
ベータの頬を優しく撫でる。
「寂しくさせて、ごめんね」
「重たくて申し訳あ....」
言い終わるより先に口を塞いだ。
そのまま5分程舌の絡みつく音が鳴っていた。
顔を離すと、息を荒げて蕩けた目で見てくる。
「ベータ」
「はい」
「明日、歩けなくなる位、激しくするけどそれでもいい?」
「...はい、どうか」
彼女に覆いかぶさり服を脱がせ、恋人繋ぎをし翌朝まで抱き続けた。
朝日の光が窓から入って来る。
僕に抱き着き、胸に顔を埋めたベータは息を荒げて快楽に体を震わせている。
「ローズ王女の気持ちが分かります」
胸に耳を当ている。
「こうして聞いていると安心します」
そのまま裸で抱き合っていると、寝息を立てて寝てしまった。
起こさないように抜け出し服を着替えて部屋から出た。
「かなり激しかったわね」
アルファがいた、もしかして怒ってるのか?
「怒ってないわよ、あの子から聞いていたし」
考えてることを読むのはやめてくれ。
首に手を回され抱きつかれる。
「ねぇ、私達も寂しいわ」
とても寂しそうには見えないが、甘えたいことは分かった。
「わかったよ」
嬉しそうなアルファに手を引かれて廊下を歩く。
その後半日彼女達を抱き満足させることが出来た。
やっぱり自分から抱くのも大事だな。