陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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タイトルの話が最後になってます


妻(自称)の誕生

週が明けてブシン祭の予選が始まった。

ヒョロと一緒に試合を見ている、周りにはまばらにしか人がいない。

ブシン祭と言う名前にしては質が酷い。

昨日既に予選の2試合を終えている。

闘技場ではなくそこら辺の草原だ、観客もいないし、対戦相手も弱い。

2試合共に剣を抜くことなくラリアットで終わった、虚しかった。

3回戦からはようやく闘技場になっている、客も多少いるから良しとしよう。

隣ではヒョロが熱心になにかメモを取っている。

 

「何してんの」

「バトルデータを取ってるのさ。俺は確実な戦いをする男だ」

 

確実な戦いをするのならもっといい成績を取れるだろうに、確実に才能の使いどころを間違えている。

そのメモでよくもデータ何て言えたな、書いているのは強い、弱い、分からんしか書いてないじゃないか。

 

「その話興味深いな」

 

振り向かくと金髪キラキラのイケメンがいた。

 

「まさか、不敗神話のゴルドー・キンメッキさんですか!?」

 

知ってる人らしい、しかもいい感じの二つ名だ。

 

「それは恥ずかしいから止めてくれ、常勝金龍と呼んでくれ」

 

僕的には不敗神話の方がいいと思うけど。

意気投合したのか喋り始めた、しかもかなり長引きそうな予感がする。

出番も近づいているので抜け出すのにはいいかもしれない。

 

「トイレ行ってくる」

「おお、行って来い」

 

トイレでジミナに変装して控え室に向かい、待機していると呼ばれたので闘技場に向かった。

舞台に上がると周りの反応はなかなかにいい反応だった。

 

「なんであんなのが出てるんだよ」

「これは楽に稼げそうだな」

 

試合ごとに賭けが開催されていて予選でもかなりの額が動いている。僕は当然ジミナに賭けている。

僕が上がるのと同時に対戦相手が上がってくる。

 

「ゴンザレス・マッチョム対ジミナ・セーネン!」

 

対戦相手は上半身裸でガチムチ、名前通りのマッチョだ。

 

「試合開始!」

 

ゴンザレスさんが動いたが、躓いてこけ失神した。

一瞬の静寂が流れ、審判がゴンザレスに近づいて体を揺するが反応はない。

 

「ゴ、ゴンザレスさん?どうかしましたか?」

 

呼びかけるがピクリともしない。

 

「しょ、勝者ジミナ・セーネン」

 

観客達が爆発し、ブーイングが飛ぶ。

 

「金返せーーーー!!」

「ふざけんなーーーー!」

 

失神しているゴンザレスに背を向け舞台を後にする。

ただこけたように見えるがゴンザレスさんが近づいて来た時に、顎に2発アッパーを叩き込んだ。

ヒョロと喋っているゴルドーは気付いていないが2人程違和感を抱いているようだ。

誰もが雑魚と侮る中、その佇まいに違和感を持つ者達。イイね!

ガンマを泣かせてまで参加したからちゃんと結果を出さないと。

 

4回戦が始まった、相手は不敗神話のゴルドー・キンメッキさんだ。

金ぴかの鎧に金色の剣、名前の通りの見た目だ。目がチカチカする程眩しい。

僕は剣すら構えず突っ立ている。

 

「ゴルドー・キンメッキ対ジミナ・セーネン!試合開始!!」

 

審判の合図と共に突っ込んで来て両手剣で首を狙って来た、躊躇ないな。

そしてそれを棒立ちのまま首を鳴らすことで避けた。

 

「は?」

 

ゴルドーは驚いているし、会場の人達もいい感じだ。

ゴルドーにしてみれば致命的なミスだが僕は亀の如き速度で剣を鞘から抜く。

ゴルドーが飛び乗いて間合いから外れる。

 

「お前舐めてんのか!」

 

苛立ちが混じった視線で睨んでくる。

 

「お前は今勝機を逃したんだぞ、なのになぜ平然としている!!」

 

怒り出したみたいだな。

 

「もっと嘆け、悔しがれ、無様にあがいて這いずり回れ!そうしないのは俺に対する冒涜だ!!」

 

顔に似合わず結構えげつない事言うな、見た目だけでは人は判断できないな。

 

「よくも俺に恥をかかせたな!全力で屠ってやる!!」

 

金色の魔力が集まって可視化する。

 

「冥土の土産に教えてやる、俺のバトルパワーは4330だ!」

 

バトルパワー?レベルみたいなものか、一度でいいから僕も自分のレベルを見てみたいな。

 

「邪神・秒殺・金龍剣!!」

 

魔力で金色の龍が形づくられる、名前にしてはなんか微妙な必殺技だな。

一瞬で間合いを詰めて薙ぎ払おうとする。

そして僕は

 

「くしゅんっ」

 

くしゃみと共に突っ込んで来たゴルドーの目の前に剣を突き出す。

突き出した剣にゴルドーが衝突し

 

「ぶべぇ!!」

 

錐揉み回転しながら宙を舞い、ドサッと地面に落ちて動かなくなる。

 

「しょ、勝者ジミナ・セーネン!」

 

会場の反応もまあ悪くないな、自分達の予想を裏切る結果にザワついている。

いい感じに進んでいる。

 

 

名は体を表すという言葉がある。

ありのままの姿が名前に現れているという意味だ。

分かりやすい例を上げると僕の両親だ、母親のオカン・カゲノーに父親のオトン・カゲノーだ。

僕が戦ったゴルドー・キンメッキさんとかいう頭痛が痛いみたいな名前の人もそうかな、彼は確かにこの世界ではそこそこの強さを持っているがどこかメッキのような、張りぼてのようにつくろった感じが見た目や言動から漏れ出ていた。

なんでこんな事を考えているかというと

 

「あなたの動きは完全に見切った!私に勝てると思わないことね!」

 

目の前に水色の髪の女性、アンネローゼ・フシアナスさんがいるからだ。

今日の試合の対戦相手は僕が予選に登録する時に絡んできたクイ...なんとかさんで敵意をビシバシぶつけてくる感じがかなりよかったのに、試合を終えて選手入場口を歩いていると彼女に絡まれた。

この人も名は体を表すという言葉がピッタリの人だ。

さっきから言っていることが何もかも的外れ、名前の通りに節穴なのだ。

この人はこれから節穴さんと呼ぼう。

 

「ふっ」

 

まるでもう話すことはないと言う様に嗤い節穴さんの横を通り過ぎる。

お願い話しかけて!このままだと只恥ずかしいだけだから!

 

「何がおかしい!!」

 

節穴さんが睨んでくる、反応してくれてありがとう!

首だけで振り返り横目で見据える。

 

「俺も一つ忠告してやろう」

 

片腕のガントレットを外し落とすと床にめり込む。

 

「これを、付けたまま戦っていたっていうの!?」

「これは俺を封じる鎖...」

 

もう一つも外し落とすと床にめり込み石造りの床にヒビが入る。

 

「遊びは終わりだ」

 

決まった!台詞のタイミングもバッチリだ!

もう何も言うことは無いので帰ろうとするがしつこく絡んでくる。

 

「見てなさい、私にだってこれくらできるんだから!」

 

そう言って節穴さんは首を鳴らした、無駄に速い。

 

「....そうか」

 

ドヤ顔をしている節穴さんの横を通り過ぎた、何がしたかったんだろう?

 

 

 

夏の朝と言うのは清々しい、ベッドに寝転がりただぼんやりと過ごす。

最近は捕食者が増えたりしてゆっくり出来ていなかったから非常にいい気分だ。

来週からはブシン祭の本戦も始まるのでこの時間はむだにはできない。

 

「おいシド!いい話があるから開けろ!」

 

扉が殴りつけられて部屋に音が響く。取り敢えず無視する。

 

「おい開けてくれ!頼むから!」

 

絡んでも碌な事にはならない。

 

「頼む、お願い開けて!お願いしますーーーー!」

 

これ以上騒がれても五月蠅いだけなので開けることにした。

部屋に入ってきたヒョロは紙を押しつけてくる。

 

「ローズ生徒会長の手配書だ。俺達で捕まえようぜ」

「何で?」

 

ヒョロの表情は深刻そうだ。

 

「金がない」

「勝てる試合に賭けたんじゃなかったけ?」

「その話はやめろ」

 

ヒョロが賭けたのは全部ジミナの対戦相手だ、つまり大負け。

バトルデータを取っていたのなら賭ける相手は変えるべきだって分からなかったのか。

因みにジミナに賭けていた僕は大勝だ。

 

「理由はわざわざ言わないがとにかく金が必要なんだ」

 

盗賊という無制限にリスポーンする財布を持っている僕、実家からの仕送りしかないヒョロ。

貧乏な男爵家で自分で稼がないと生活が苦しいのは分かるが何か隠している気がする。

 

「本当は?」

「...りたんだ」

「何て?」

「金を借りたんだ」

 

こいつ本物のバカだ、ギャンブルで勝つ為に借金をするとは典型的なギャンブル依存症じゃないか。

しかも借りた所は王都で有名な信頼と実績のある所ではなく聞いたことがないような金貸しだ。このままだと海の底か。肩を揺すられて説得されるがやる気は起きない。

扉がノックされたので見ると寮母さんがいた。

 

「お姉さんが来てるわ」

「姉さん?」

「寮の前で待ってるから、早めに行ってあげてね」

 

それだけ言って寮母さんは帰っていった。

面倒なことになった、夏休みは実家に帰省すると姉さんに言われていたがそれを無視して僕は聖地に向かった。

確実に怒っている筈だ。

先輩と姉さんどちらが面倒くさいかは直ぐに判断できた。

 

「捕獲作戦の開始だ」

「おお、信じてたぞ友よ!!」

 

ヒョロの首を掴み窓を開ける。

 

「な、なあ、何してんだ?」

「ショートカットするよ」

「...う、噓、だよな?」

 

そして窓から飛び降りた。

 

 

 

先輩を探す為に王都を散策しているが特にあてがあると言う訳ではない。

婚約者を刺した理由は聞いておきたい、僕と結婚する為に刺したとか言われたら困るしね。

ついでに時間も潰せればいいし。

怒りは時間とともに薄れていく、姉さんには頭を冷やす時間が必要だ。

もし怒りが薄れなかったらゾッとするけど。

ぼんやりしているとピアノの音色が聞こえてきた。

僕はピアノが得意だ、陰の実力者として練習していた訳ではなく家の教育方針というやつで習わされた。

ピアノの練習よりも陰の実力者としての修行をしたかったが教育方針という大いなる力の前には無力だった。嫌々始めたピアノだが続けていくうちに悪くないと思う様になった。

まず言い訳ができた、ピアノの練習を言い訳に友達づきあいを最小限に抑えることができた。

陰の実力者が月光の下見で奏でるピアノ、かなりイイよね。

脳筋ではなく芸術方面もできるというアピールがより陰の実力者を引き立てることに気づいた。気付けばガチでピアノをやっていた、ピアノを演奏し雰囲気を作ってバトルする演出は捨てられなかった。

自分で言うのもなんだけどピアノがかなり上手いと思う。

 

「なかなかやるな」

 

今ピアノを奏でている人もなかなかである。

 

ベートーヴェン ピアノソナタ14番『月光』

 

陰の実力者としては絶対に外せない曲だから一番練習した。

負けるつもりは全くないが、この奏者にも独特の表現がある。

よく考えたらおかしくないか?なんで異世界にベートーヴェンの曲があるんだ。

ピアノの音が聞こえる方向に向かうと超一流ホテルに辿り着いた。警備が厳重なのに顔パスで入れたので誰が弾いているのか予想ができた。

 

「何してんのアイツ」

 

演奏していたのはイプシロンだった。

夏らしいノースリーブのドレスだが、盛ったスライムが見えないように胸元はしっかりガードしている。脚もタイツを履いてシークレットブーツを隠している。

演奏が終わるとこちらに気づいたようで一礼すると控室に案内される。

 

「主様が聞いていらっしゃったとはお恥ずかしいです」

 

少し頬を染めて上目遣いで見てくるがそんなことで騙されると思うなよ!

 

「さっきの『月光』だよね?」

「主様に教えて頂いた曲の中で、私が一番好きな曲です」

 

自分が好きな物が他の人も好きなのはなんか嬉しいな。

 

「主様のお陰でピアニストして、作曲家として有力者と関係を築いております」

 

は?作曲家?

イプシロンからあげられる様々な名曲達、これらは全て彼女が作曲したことになっているようだ。

しかもそれで賞を貰ったとか。

すまない、偉大な作曲家達。あなた方の作品はイプシロンが作曲したことになっている。本当に申し訳ない。

一応先輩の事も聞いておいたら、王都の地下に逃げ込んだそうだ。

王都の地下迷宮、元々は王族の脱出用の通路だったみたいだが暗号とか鍵が失われたことによって脱出不可能の迷宮になっている。

聞きたいことは聞けたから帰ろうとしたら呼び止められて

 

「今晩は空いておりますので....どうでしょうか?」

 

お誘いがきた。どうでしょうか?だって。

今すぐにその顔をぐちゃぐちゃに蕩かしてやりたいがそれはできない。

今抱いてしまえば彼女のプライドを壊してしまう。

僕は女性に与える快楽を使い分けている。

集団を相手にする時に使う重く深い、一回でも満足できるようなものとサシでする時に使う浅く連続で、長時間楽しむことができる快楽とでスイッチのように切り替えている。

最近はガンマやケルベロスを相手にしたり、寂しくて泣いてしまったベータを慰めたりその直ぐ後に集団を相手にして連続で重く深い快楽を使い続けたことによってスイッチがバグっているので切り替えができない。

なので今の状態でイプシロンを抱くと与えられた快楽によってスライムの制御が失われその幼児体型が露になり彼女の積み上げたプライドが粉々になってしまう。

できるだけ傷つけないようにやんわりと断らないと。

 

「今日はちょっと予定があるから、また時間を合わせるね」

「そうですか」

 

しょんぼりしている。失敗したみたいだ。

修正が必要みたいだから頬にキスした後耳元で囁く。

 

「今のイプシロンは凄く綺麗だから壊しちゃうかもしれないんだ、だからごめんね」

「綺麗?私、綺麗なんですか?」

「うん、綺麗だよ」

「....えへ、えへへへへへへ」

 

体がクネクネし始めたので、大丈夫だと思い部屋から出た。

先輩が逃げ込んだ地下迷宮を捜索するのは流石に手間がかかる。

ふとさっきイプシロンが使っていたグランドピアノが見える。

 

「使えるな」

 

見つからないのなら見つけてもらえばいい。

 

 

地下迷宮に来てみると迷宮と言うよりも遺跡に近い感じがした。

遺跡を歩き回ってピアノを置くのに相応しい場所を探していた、そして見つけた。

教会のような造りで天井には3人の英雄と八つ裂きにされた魔人が描かれたステンドグラスがあり、地上の光を取り込んで幻想的な光景を作り出している。

部屋の中央に盗ん...拝借してきたグランドピアノを設置する。

舞台は整った、後は見つけて貰うだけ。演奏するのは勿論『月光』だ。

『月光』とステンドグラスから発される光が本物の月の光を連想させる。

待っていると血塗れの先輩が入ってきた。

演奏を終えると拍手が響く。

 

「力が欲しいか」

 

なにか喋ろうとしていたがそれを遮り、片手に魔力を集める。

 

「戦う意思があるのなら力を与えよう」

「力があれば未来を変えられるのですか?」

「お前次第だ」

 

来るか、来るのか?

 

「戦う為の...守る為の力が欲しい!!」

 

集めていた魔力を先輩に向けて放出する、悪魔憑きを発症していたのでついでに治療する。

 

「忘れるな、真の強さとは力ではなくその在り方だ」

 

それだけ言い残して立ち去る。

地上に出ると日も暮れていたので寮に帰ることにした。

正体がバレないかヒヤヒヤしたけど気付かれずに終わらせることが出来た。

紡がれる陰の実力者の言葉、そして覚醒する勇者。

ブシン祭もそうだが順調に進んでいるからこのまま上手く進んでくれるとうれ....

 

「随分楽しそうね」

 

寮に着くと、そこには笑顔の姉さんがいた。金縛りにあったように体が動かない。

 

「部屋に入りましょうか」

「...はい」

 

反射で従いそのまま寮に入る。

 

 

感情は基本長続きしない、どんなに悲しくてもいずれ風化していく。

時間が経てばどんな感情でも薄れていく、つまり感情が起こす人の衝突は時間が解決する説を提唱している。

だが姉さんには1日では足りなかったようだ。

 

「寮の前でアンタを待っているとき、何を考えていたか分かる?」

「分かりません」

 

部屋に入るとベッドに押し倒され、馬乗りになると首に手をかけてきた。

犬は上下関係を示す為に上に乗るらしい、だから僕は犬じゃない。

 

「頭の中でアンタをボコボコにしてやったのよ、何度も何度も繰り返しね。でも1秒待つごとに私の怒りは倍増したわ」

 

時間が経つほど増加する怒りがあることも知った。

 

「お姉ちゃんとの約束をどうでもいいとか思ってない?」

「思って...ぐぁ」

 

いつもよりも締める力が強い、そうとう怒っている。

 

「今度約束を破ったら許さないから」

「分かりました」

 

分かったって言ったのにどいてくれない。

顔の前に紙切れが差し出される、そこにはブシン祭、特別席と書かれている。

 

「あげるから試合を見て勉強しなさい、見込みはあるんだから」

 

そんなことよりも

 

「降りてくれない?」

「ダメよ」

 

顔を近づけた時に谷間が見えてしまっているし、それに香水をつけているからだろうかいい匂いもする。

しかも座っているのが腰の位置で時折腰を動かして刺激を与えてくるから抑えるのが限界に近づいている。

 

「降りてくれない?」

「ダメよ、試合を見に来るのなら降りるわ」

「降りて欲しいです」

「ダメよ」

「降りていただけないでしょうか」

「えらくしおらしいじゃない、説明できたら降りて上げるわ」

 

説明だと、実の姉に性的に興奮していますと告白しろと言うのか。どんな拷問だよ。

 

「その...」

「何かしら?」

「見えてるし...それにそんな所で動かれると、刺激が....強くて」

 

部屋を風が通り抜ける音だけが聞こえる。

1分程静寂が続き、抑えきれなくってしまい開放してしまうと大量の?が浮かんでいた姉さんでも理解してくれたようで一気に顔が赤くなりベッドから飛び降りる。

顔にチケットが叩きつけられる。

 

「いい!ちゃんと見に来なさいよ!来なかったら承知しないから!!」

 

扉を乱暴に開けドタドタと足音を立てて走り去って行った。

股間を見るとズボンにその形が浮き上がっている、ついに姉さんに欲情してしまった。

 

「これじゃ発情期の犬じゃないか」

 

膝を抱えてベッドに寝転がる、このまま誰も知らない土地に行って消えてしまいたくなった。

 

 

 

ドタドタと足音を立てて寮に駆け込み勢い良く扉を開けて部屋に入り叩きつける様に扉を閉めた。

ベッドに飛び込み枕を抱きしめる。

 

「何よ、何よ....あれ」

 

クレアの顔は耳まで真っ赤でリンゴの様になっている。

まだ幼かった頃に嫌がる弟を引きずって一緒に風呂に入ったことがある、他の人の物を知らなかったが学園に入ってからその手の知識を学んで弟のものが子供にしては大きいことを知った。

その後は見る機会がなかったので分からなかったが知ってしまった。

下着越しに感じてしまった形、そしてズボンを挟んでいても感じる熱した鉄のような熱さ。

股に伸びそうになる手をなんとか抑え込む。

クラスの男達から向けられる視線は不快でしかなく殺してやろうかと思ったほどだ。

入学すれば一緒にいる時間が増えると思っていた矢先に弟は王女に告白し付きあった。憎くて殺したかったが何とか抑えていたが事件が収まった後も付き合っていたのには切れてしまった。

それからも事あるごとに周りに増えていく女、歯を食いしばって耐えていた。

手を出したという話は聞かなかったから鈍いのではないかと思っていたが違った。

弟は自分に欲情していたのだ。

 

「落ち着きなさい、私は姉....姉なのよ」

 

ブツブツと呟いた後静かになる。

 

「妻?そう私は妻じゃない」

 

妻(自称)であることを思い出したのだ。

認めたくはないが弟は顔はいいし、普通の男よりも紳士と言える程女性に対して丁寧な接し方だった。

だからモテルのは仕方ないと思っていた。

 

「私は妻、あの子の妻なのよ」

 

姉である自分から見ても魅力的なのだから女が寄って来るのは仕方ない。そして自分は寛大な妻(自称)なのだからお零れ位許してやるべきなのだ。

 

「側室や妾ぐらい許してやるのが妻の努めよね♡」

 

実家にいた頃から他のメスの匂いがしていたがもうそんなことは関係ない。

なぜなら

 

「正妻は私なんだから♡」

 

自分以外誰も座ることの出来ない席に座っている優越感に浸っている。

 

正妻の座を争う正妻戦争の幕が切って落とされた。

 

 

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