ミツゴシ商会、主に王都で活躍しておりシャドウガーデンのフロント企業として莫大な利益を生み出し王国の経済活動を支える商会の一つである。
そのミツゴシ商会の一室にデルタを除く七陰の全員が集まっていた。
普段部屋から出てこないイータ、諜報で遠方に出ている筈のゼータまでもがいる。
部屋には重苦しい雰囲気が流れている。
そして壁際に立つ3人の女達、3人は直ぐに自分達が呼ばれた理由を察した。
シャドウの補佐としての役目を与えられている自分達に必要な会議が行われるのだと思っていた。
座っていたベータが立ち上がる、その手には紙の束が握られている。
「今回の司会進行は私が務めさせていただきます。では、こちらをご覧ください」
そう言って、握っていた紙の束を配る、その表紙には「危険人物一覧」と書かれている。
3人は今後を左右する重大な会議が始まると思っていた、ベータが喋りだすまでは。
「では、主様に近づくメスぶ...危険人物の報告を致します」
......ん?
3人は顔を見合わせ、頭の上には大量の?が浮かんでいる。
これは重要な会議ではなかったのか?
アイコンタクトで意思疎通するとニューが動いた。
「あの、ベータ様」
「何かしら?」
「この会議は一体どのような....」
「危険人物報告会よ」
ベータはハッキリと言い切った。
呆然とする3人を置き去りにし会議は始まる。
「では、資料をご覧ください」
紙がめくられる音がなる、1ページ目に書かれていたのは
「まず1人目はアレクシア・ミドガルです」
そう確かに危険人物だった、但しそれは危害を加える危険人物ではなくシャドウに近づく女性達。七陰の女としての立場を危うくする危険人物だった。
蠟燭の火に照らされた薄暗い部屋で七陰の私欲にまみれた報告会が始まる。
報告会が始まり、七陰の顔は険しくなる。
「まず1人目はアレクシア・ミドガルです」
3人もその名前を聞いて不機嫌になる。
「では罪状を読み上げます」
罪状とハッキリ言い切った。そしてアレクシアの罪状が読み上げられる。
・シャドウから告白を受け交際し、恋人の振りをさせ弄ぶ
・金貨を投げて犬の様に扱う
・誘拐事件の際には囚われの姫の様に救出される
ベータが握りしめている資料からはメリメリと音がなる。
「あの女....失礼しました」
一瞬鬼の様になるが直ぐに戻り、話を続ける。
・シャドウに告白をし交際を続行、その際に正体を知る
・チョコレートを食べさせるように強要し、事故を装ってシャドウの指にかぶりつき数分なめまわし指を堪能する
・聖地では混浴し体を撫でまわして美しい筋肉を堪能
・列車内で胸板に耳を押しつけて心臓の鼓動に酔いしれる
・就寝中に下着で抱きつく
「以上となります」
何人かは食いしばった歯から嫌な音がなっている。
「私がいない間に色々あったみたいだけど、一体何してたわけ?」
普段シャドウに会えないゼータは他の七陰がシャドウの周りを固めていると思っていたが帰ってきたら女が増えていたことに不満を隠せていない。
「で、どうするわけ?」
ゼータが言うとそれぞれが対応策を口に出す。
「ミツゴシを出禁にいたしましょう」
「新聞社に醜聞を流しましょう」
「貴族達に噂を広げておきます」
「実験」
「前に魔物の巣を見つけたからそこに放り込むのはどう?」
『異議なし!』
アルファを除いて全員の意見が一致した。
そして次の人物に移る。
「では次にローズ・オリアナです」
そして罪状が読み上げられる。
・最初にシャドウに助けられた女
部屋の空気が一気に重苦しい物に変わった。
・学園ではつきまとい積極的に迫る
・学園襲撃の際に庇われる
・聖地に向かう際に積極的に迫り、聖地では同じ部屋で宿泊し抱きつく
・シャドウを女神の試練にエントリーし婚約者にしようとする
・列車内で就寝中に下着で抱きつく
全員が真顔でいるが、目からは光が消えている。
「私達より先に会ったからって調子に乗ってる」
誰かがぼそりと呟いた言葉が全員の気持ちを表していた。
「あの女、消せば、私達が最初」
『異議なし!』
短絡的だが一番確実な方法を選んだ、後悔など微塵も感じていないようだ。
また次に移る。
「次はシェリー・バーネットです」
・シャドウにチョコレートを貰う
・学園内でも親しい間柄になる
・シャドウに告白、キスした
前の2人に比べれば嫉妬するような事もないように見えたが違った。
「彼は何か意図があって渡したのよ、だから嫉妬するような事じゃないのよ」
それはチョコレートを渡した事だ。
ミツゴシの経営に携わるアルファとガンマが特に力を入れたのが婦人下着とチョコレートの開発だ。
男性がチョコを女性に渡すのは好意を持っている相手だけとシャドウから聞いた時に2人は何とかして貰えないか考えた。自分からねだるのは卑しいと思った2人はシャドウから渡す雰囲気を作り始めた。
販売する際にそれとなく噂を広げていき、王都に噂が浸透し始めた時にシャドウはミツゴシを訪れた。
チョコを貰い帰って行ったが2人きりの時に渡して貰えると思っていたが予想は外れた。
普段から好意を伝えているのだから貰える筈と思っていたのにまさかの知らない女。
「イータ」
「何?」
「彼女はどうしてるの?」
シェリーには監視がつくことになったが、わざわざ人員を動かす訳にもいかずイータが監視をすることになった。
「いい子、だと思う」
「大丈夫だと思っていいのね?」
「たまに、暴走する、けど...」
イータは不満気に続ける。
「マスターの、写真、上げれば、落ち着く」
イータがカメラを開発した頃から七陰はシャドウの写真を集めてコレクションしている。
トレーニング中の物から、上半身裸で汗を拭いている物、シャワー中の物、寝顔を撮った物まであり七陰内で交換会が開催されている。
勿論隠し撮りされていることをシャドウは知らない。
「私の、コレクション、渡すの、業腹」
「それは後で補充して上げるわ」
「何が、ある?」
「シャワー中か寝顔なら用意できるわ」
「シャワーで」
「後で渡すわ」
「ブイブイ」
両手にピースサインを作る。
「最近は、一緒に、妊娠促進剤、作ってる」
「幾らでも予算は出すから必ず成功させなさい」
「ラジャー」
いつもなら予算を超えて怒られるが今回は幾らでも出して貰えるのに満足している。
「では次です、ニュー」
「は、はい。何でしょうか?」
「あなたよ」
「え」
・報告の際にシャドウを脅迫し学園デートを実行
・デートの際に積極的に迫る
・その後もデートを重ねる
・襲撃事件の際には頬にキスされる
・ガンマとシャドウの逢瀬に乱入
ニューは隣にいる2人の同僚に目を向けるが2人は勢いよく目を逸らした。
まさか自分が危険人物として扱われているとは思っていなかったので上司達からの視線が痛い。
「こんな事の為にシャドウ様のお傍に付けた訳ではないのよねぇ」
ガンマが一人呟いた言葉がニューの心を抉った。
確かに信頼して任されたことだがあの機会を逃せば次はなかったのだ。
「人の逢瀬に乱入するのもどうなのかしら?」
「ガンマ様の許可は貰って...」
「私達は?」
「え?」
「私達の許可は?」
「え?」
七陰からの視線が突き刺さり、冷や汗が出る。
その後も関係を持っても何も言われなかったから許されていると思っていたが勘違いだったようだ。
「すいませんでした」
45度のブレのない綺麗なお辞儀だった。
「まあ、彼が何も言わないから私からはもう何も言わないわ」
「ありがとうございます」
アルファから許しを貰ったニューの隣では状況を悟った2人が滝のように冷汗を流している。
「次はあなた達よ。カイ、オメガ」
・ニューの真似をしシャドウを脅迫、学園デート実行
・デートの際に積極的に迫る
・その後もデートを重ねる
・ガンマとシャドウの逢瀬に乱入
七陰から鋭い視線が向けられる中、一際強い視線を感じる。
「羨ましいわねぇ」
それはイプシロンだった。
この中ではカイとオメガしか知らない事がある、それはイプシロンが胸を盛っているということ。
聖域に入った時に偶々知ってしまったのだが、聖域から出た後イプシロンの視線が自分達の胸に向いていることに気づいた。七陰でも特に行動を共にする機会が多くその度に憎しみが混じった視線を感じていた。
そして今も顔を見る前に一瞬胸に視線が向いていたのに気づいていた。
「私が上げたシャドウ様の写真を返して貰おうかしら?」
『それだけはご勘弁を』
筋肉フェチに目覚めたカイはシャワー中の写真を、ショタコンに目覚めたオメガは寝顔の写真を携帯用、保管用と分けてイプシロンからスライムの事を黙っている対価として貰っている。
携帯用はハードカバーに入れ傷一つ付かないよう持ち運びしている。
ミツゴシの激務の中で携帯用の写真を日々の癒しにしており、それが無くなれば燃え尽きてしまうのは必然だ。
仲間の筈のミツゴシの従業員に何度か盗まれそうになったこともあるし、なんならナニに使っていたりもしている。
「暫くは私と一緒に動いてもらうわよ」
『はい』
(シャドウ様の胸板が...)
(寝顔が見れないなんて...)
外回りに行くということは体を重ねる機会がなくなってしまうということ。
年下の少年の肉体に魅了された2人からすれば拷問に近い。
2人はシャドウと離れてしまうのに引き裂かれる恋人のようになっているが
「文句あるのかしら?」
『ありません』
上司には屈するしかなかった。
「では次が最後になります」
最後の人物は長年の敵であり、最も困難な相手である。
「クレア・カゲノーには今後も最大級の警戒が必要になります」
たった一人の特別な立場にいる女、そう姉だ。
先程までとは打って変わり全員が真剣な表情に変わる。
・シャドウの姉
・幼少期からシャドウを男として見ている
・いつでもシャドウに迫っている
・王都にシャドウを連れていき、七陰から引き剝がした
・七陰よりも一緒にいる時間が多い
・シャドウを誑かしている
放たれている魔力により机がカタカタと揺れており、いつ爆発してもおかしくない状況だ。
・オカン・カゲノーと話をつけ正妻になるために動き始めている
そして爆発した。
「正妻は私が...私達の誰かでないといけないの」
一瞬アルファの欲望が漏れ出ていたが直ぐに切り替わる。
最初こそシャドウの欲望を受け止めて、自分達も欲望をぶつけていた。
だが最近はギリギリ受け止めきれるのから受け止め切れずに人数を増やさなければいけなくなったが増やしても直ぐに受け止め切れなくなってくる。
あの性格だから1人だけと結婚するのはあり得ないが正妻だけは自分達の誰かでないと納得できないのだ。
「私達に気づいている節があります」
自分達に気づいているかもしれないので下手に動けばシャドウが家に監禁されてしまう。
それもあってクレアには何もできていない。
「どうすれば....」
それぞれが対応案を考え始める。
「よろしいでしょうか」
最初に動いたのはガンマだ。
「私の執事として雇ってしまえば.....」
「却下よ」
私欲しかない提案だ、しかも自分は何も間違っていませんと言いたげだ。
「私のアシスタントとして執筆を....」
「却下よ」
「シロンの弟子として演奏会に....」
「却下よ」
「実験の、手伝い。後、私の世話を....」
「却下よ」
「距離を置かせればいいんでしょ。じゃあ一緒に諜報....」
「却下よ」
私欲100%の提案が出されては即座に却下されていく。
「ではアルファ様にはなにか良案があるのですか?」
全員がアルファをジト目で見ている。
ジト目に一瞬怯んだが無表情に戻し私欲を垂れ流す。
「アレクサンドリアで一緒に子供を...」
『ズルいです!』
一気に立ち上がりアルファを攻め始める。
結局の所同じ穴の狢だったのだ、私欲100%だ。
ぎゃいぎゃいと言い争う声が響ている中、勢い良く扉が開いた。
「ただいまなのです!」
入ってきたのはデルタだ。
入ってきたデルタをみて一気に静かになる。
「ねえ、ワンちゃん」
「デルタ犬じゃないもん!」
「なんで主の匂いがするの?」
赤らんだ頬に、汗を流している肌、嬉しそうに揺れている尻尾。
そして漂う獣臭さ。
「ボスにいっぱい撫で撫でしてもらったのです!」
「そ、そう、なんだ」
羨ましく思うがいつもの事だと思い、深く考えないようにした。
「いっぱいチューして、交尾してデルタの匂いつけたのです♡」
静まり返った部屋にはデルタの尻尾が揺れる音が響いている。
「どうしたのです?」
不思議そうに首をかしげている、自分が爆弾を打ち込んだのに気づいていないのだ。
「デルタ」
「ひゃ、ひゃい」
怒られる時と同じ様に呼ばれたのでびくついている。
「ちょっと話があるの」
危険人物が1人追加された。
無垢でシャドウ大好きな雌犬 デルタ