陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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実力を見せつけよう!

今日はハイパーVIP席でモーニングを楽しんでいる。

近くにいる騎士団長の娘さんとイケメン次男が心配そうに見てくるが、それは気にせずコーヒーを楽しむ。

 

「大丈夫なのかい?」

「何でしょう?」

「いやぁ、だってそれは....」

 

僕の左頬を見て痛そうにしている。

僕の左頬に昨日姉さんに付けられた綺麗な紅葉があるからだろうか。

痛みは遮断しているがヒリヒリとした感じがしている。

 

「大丈夫なのかい?」

「ええ、大丈夫です」

「...大変なんだね」

 

イケメン次男は同情してくれているようだがこの気持ちが分かる訳がない。

試合を見なかっただけでビンタされるなんて思うわけないだろ。

 

「薬、貰ってきましょうか?」

 

騎士団長の娘さんが心配してくれる、この人が姉であって欲しかった。

 

「ご心配ありがとうございます。ですが今日1日付けるのが罰で、消すともう1日伸びてしまうのでお気持ちだけ頂いておきます」

「大変なのね...もし良ければ相談に乗るわ」

「ありがとうございます」

 

気持ちだけ貰っておきます。

もし彼女に相談すれば、アルファによって彼女は消されてしまうだろう。シェリー先輩と仲良くなった事に嫉妬してブラックホールの力を目覚めさせたアルファは少しの嫉妬でも何をしでかすか分からない。適度にガス抜きはしているが何が原因で爆発するか予想つかない。

アルファに相談するのもいいかなと思ったけどそんなことすれば姉さんとの全面戦争が始まる。だからこの気持ちは僕が1人でどうにかしないといけないんだ。

給仕してくれる人とか、通り過ぎる人がぎょっとしているが気にしないようにしている。

コーヒーの匂いが心地良い。

 

「おは、よう....大丈夫ですか?」

「大丈夫です、ご心配なく」

 

隣に座ったアイリス王女にも心配される。

 

「仲が良いと聞いていますが....」

「仲はいいですよ。ただ怒りっぽいだけです」

「怒りっぽい?」

 

不思議そうにしている、僕も自分で言って何を言っているんだろうと思う。

仲が良ければまずビンタはしないだろう。

 

「アレクシアは同じ事をしたりしていませんよね?」

「されたことないですよ」

 

ビンタはされた事はない、R17.5みたいな事は何回かあるけどそれは言わないでおこう。

 

「私が治しましょうか?」

「お気持ちだけ頂いておきます。治すともう1日追加されますのでお気になさらず」

 

なんか凄い憐れまれてる気がする。

 

「私からお姉さんにお話しましょうか?」

「大丈夫ですよ、最近『私という妻がありながら王女に色目を使うなんて実家に閉じ込められたいのかしら?』って言われただけで特にアイリス様が気にするようなことは....」

「お姉さんと結婚するのですか?」

 

地雷踏んだかも。

 

「姉さんが勝手に言っているだけですし、この前初めて聞いたので僕も困ってるんです」

「では遊びではないんですね?」

 

この人かなりのシスコンだな、妹の事になるとアホになるタイプだ。

姉さんも僕の事になるとアホになるから、姉という点ではよく似てると思う。

 

「遊びではないですよ。一緒にいて楽しいですし、それに....」

「それに?」

「結構好きですよ。可愛いですし」

「遊びではないのなら構いません、私にもあなたのような....」

「アイリス様も綺麗ですから、きっといい人が見つかると思いますよ」

 

キョトンとしている所はアレクシアに似ているな。

 

「わ、私ですか?」

「そうですよ」

「そ、そうですか。ありがとう、ございます」

 

決して口説いているとかではない、ただ元気づけただけだ。

だからチラチラとこちらを見ないでほしい、コーヒーで気を紛らわすか。

うんやっぱり美味しい。アレクシアには邪道と言われたがミルクと砂糖を大量に入れてコーヒー牛乳にするのがいい。ブラックなんて何が美味しいのか分からない、あんなの苦い水だ。

コーヒーを飲んでいると、セレブ達の世間話という名の社交が始まる。

男爵家の僕は当然取り残される、別に興味ないですし。

コーヒーを飲んでいるとハイパーVIP席の入り口が騒がしくなってきた。

見て見るとベアトリクスがいた、セレブ達の目は厳しい。僕でさえ余りいい目で見られていていないのだから彼女の格好でははじかれるのは当然だ。アイリス王女が出迎えた事で事なきをえた。

ベアトリクスは僕の隣に座った、気まずかったので移動しようとしたが

 

「どうして離れるんだ?」

 

袖を掴んで見上げてくる。その顔で見るな、アルファに似た顔でそんなこと言われると罪悪感が凄いんだよ。

罪悪感に負けて席に戻った。

いつの間にか恋人繋ぎになっている、何してんのこの人。

 

「お知合いなんですか?」

「そう、シドとは知合い。気に入っている」

 

今すぐに逃げ出したい、周りが微妙な表情になっている。

 

「大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

「治そうか?」

「治したら怒られるからいいよ」

 

左頬を撫でられる、止めて欲しい。

このことがアルファに知られたらあんたヤバイからな、アイツ血縁でも容赦なさそうだから。

また匂いを嗅いでくる。

 

「ここまで濃い匂いがするとやっぱりエルフの血が混ざっていると思うんだが」

「だから違うって」

 

まだ言ってる、姉さんにビンタされた後イータ特製の匂い消しを使ったのにまだ匂うらしい。

というかエルフの匂いって何?

 

「シドさんはハーフなんですか?」

 

ほらアイリス王女もおかしくなったじゃん。

 

「違いますよ」

「ですがベアトリクス様もこう仰っていますし...」

「血が混ざっていないのなら、エルフの伴侶がいるのか?」

 

こいつも天然か、とんでもない爆弾ぶち込みやがった。

変な空気になってるし、アイリス王女が僕を睨んでるじゃないか。

 

「伴侶じゃないですし、知り合いが何人かいるだけですよ」

 

近くにケルベロスやシャドウガーデンのメンバーがいないのは確認済みだ。

こんな事知ったらアルファがまたブラックホールの力を発動してしまう。

話が変わって誰に注目してるか聞かれたら僕の方を見てきた。

 

「シド」

「何?」

「シドに注目してる」

 

また爆弾ぶち込みやがった。

 

「ですが彼は...」

「私の剣見えてた」

 

また変な空気になった。

 

「本当ですか?」

 

アイリス王女も怪訝な顔つきになっている。

 

「見えてませんよ」

「見えてた」

「斬るわけがないって思っただけだよ」

「シドは噓が下手」

 

顔が似てるだけじゃないのか、アルファ並みの勘の良さまで持っているとはなかなかの強敵だな。

何とか皆の意識から僕を消し去ることに成功した、恋人繋ぎはそのままだったけど。

 

姉さんの試合が終わった、結果は圧勝。

姉さんはそこそこ優秀なので今回のブシン祭では勝てるのは僕と節穴さん、アイリス王女くらいだろう。

試合をちゃんと見たんだから席を離れてもビンタはされない筈だ。

女の勘というやつなんだろうか、さっきまでいなかったのに今はいるから早く席を離れないといけない。

僕の視線の先には女性のエルフがいる。顔や髪型が違うがブラックホールの様に吸い込まれそうになる目は知っている範囲ではエルフだと1人だけだ。

僕とベアトリクスを見比べ、繋がれている手を凝視している。予想通りアルファは血縁でも嫉妬するようだ。

次はジミナとアイリス王女の試合だ。試合が始まるまでの間にブラックホールから引きずり出さないといけない。

席から立ち上がりトイレに行くふりでハイパーVIP席から出ようとするが

 

「どこに行くんだ?」

 

隣のエルフが離してくれない。

 

「トイレだよ」

「そうか」

「離してくれない?」

「我慢してくれないか」

 

天然って怖い。

 

「我慢できないから行くんだけど」

「我慢して欲しい」

 

別に漏れそうじゃないけど、我慢の限界を迎えた奴に我慢して欲しいとか言わないだろ。

あんたの姪が闇の力に目覚めそうになってるから行かないといけないんだ。

 

「離して」

「嫌だ」

「離して」

「....寂しい」

 

別人だって分かってるのに同じ顔だから罪悪感が凄い。胃に穴が空きそう。

僕の周りの年上はこんなんばっかりだ。

その捨てられた子犬みたいな顔を止めて欲しい、似てるから見てるこっちも辛いんだ。

 

「トイレだけだから」

「本当か?」

「本当だよ」

「...分かった」

 

手は離してくれたが、肩を落としてしょんぼりしている。

メチャクチャ胃が痛い、顔が似てるだけで凄い精神的ダメージを受けた。

部屋を出てダッシュでアルファの元へ向かう。

正気に戻す為の方法は開発済みだ。

それは壁ドンからの顎クイそしてディープキスだ!効果は実証済みなので問題ないだろう。

実験したのはカイだ。いわゆるイケメン系であるカイの女の子としての顔が見たくなった僕はこれを試した。

壁際に追い詰めて勢い良く壁ドンし、顎に指を添え狼狽えている所に有無を言わさずディープキスをかます。結果は良好、顔を離すとそこにいたのはイケメン系女子ではなく、照れて顔を隠している恥ずかしがり屋の可愛い女の子だった。

自分でやったことだが理性がはじけ飛んでしまいそのまま部屋に連れ込んで数時間攻め立てた、最中もいつも以上に可愛いかった。部屋から出たらオメガが待っていたのでこちらもしてやった、可愛いかった。

ともかく効果は確認済みなのでアルファにも効くはずだ。

僕の秘技『壁ドン顎クイディープキス』がさく裂する時だ!

 

 

アルファを闇の力に目覚める前に戻す事はできたが、少しダメージを負った。

人気のない所に連れ込み、秘技『壁ドン顎クイディープキス』を使用した。僅か数秒で効果は現れ抱きついてきた。顔を離すとブラックホールのような目ではなくベッドの上でよく見る女の目になっていた。

最近大人しかったから忘れていたがアルファは捕食者だ。

背中に回していた腕を解くと僕の右手を掴んで

 

「いただきます♪」

 

嚙みついてきたのだ。

右手の母指球と小指球の部分に嚙みつかれくっきりと歯形が付いてしまった。

ただ噛むのではなくしっかりと歯を突き立てられ、舐め回されたのでヒリヒリする。

右手に嚙みついたのはベアトリクスと手を繋いでいたからだろう、僕から繋いだんじゃないんだけど。

 

「あの人と手を繋いだらまた付けるから♡」

 

歯形の部分に頬ずりしながら言われた、不覚にもドキッとしてしまった。吸血鬼に血を吸われる人はこんな気分なのかと思った。

後アルファに嚙みつかれた事でベアトリクスの言っていたエルフの匂いが分かった気がする。多分ベアトリクスはエルフ特有の魔力の波長を匂いとして感じとっているんだと思う。濃いエルフの匂いがするのは魔力を渡すのに一番効率のいい性行為を複数のエルフとヤリまくっているから色んなエルフの魔力が体についているからだろう。

解決策はエルフの魔力を消す事だが、分かった上でやっているかもしれないので消すことはできない。もし消えたのに気づかれたら拉致監禁は避けられず、再び匂いがつくまで開放されることはないだろう。

消すことが出来ないので別の方法を取ることにした、魔力の層を作り蓋をすることでエルフの魔力が漏れ出ないようにした。これなら消すことなく誤魔化すことができる。ジミナの姿で会ってもベアトリクスには気づかれない筈だ。もう直ぐ試合が始まるのでジミナに変装して入場口に向かった。

 

試合場に入ると大きな歓声が響いた、僕じゃなくてアイリス王女だけど。

こうして向き合って見ると表の世界ではなかなかの強者だ。

この世界はあらゆる事が教団に支配されて、文明のレベルが制御されている。剣術の流派、科学技術、芸術に至るまでコントロールされ、少しでも教団の支配を超える物があれば取り込むか始末されるしかない。

そんな世界での高めの強者。

僕よりは弱いが、努力すればその分強くなれるとかチートじみた肉体を持つアレクシアの姉だけはある。

彼女からは強い意志、絶対に勝つ!という意志を感じる。

ならば僕もそれに応えようではないか。

ゆっくりと剣を抜いてだらりと下げて立つ。

 

「アイリス・ミドガル対ジミナ・セーネン!試合開始!!」

 

試合開始の合図と共に突っ込んできた。

節穴さんと同じくスピードを潰し僕の優位性を奪いにきたのだ。

普通の騎士では反応できないような突きが飛んできたので僕もそれに合わせた。

 

「へぇ?」

 

鋒と鋒を突き合わせる形で込められた魔力を相殺し押し戻す。

驚いたのも束の間、直ぐに崩れた体勢を直し斬りかかってくるが、カーンという心地よい音が鳴り弾き弾かれる。

アイリスは諦めずに連撃を打ち込んでくるがその全てを弾く。

歓声が響いていた会場は何時の間にか静まり返っていた、

これは『あいつは一体何者なんだ!』が期待出来そうだ。

ガンマを泣かせたのは辛かったが、泣かせた分の結果は出せそうだ。

アイリスは諦めずに打ち込んでくるが全ての攻撃を魔力を相殺して弾く。

認めたくはないだろう。彼女が使っているのはミスリルの剣、対して僕の使っているのは使い古された鉄の剣。

魔力伝導率が遥かに上のはずなのに、鉄の剣を使って魔力を相殺されているなんて受け入られることではないだろう。

彼女の性格は良く言えば真っすぐで清純な性格、悪く言えば猪のような性格だ。

自分の目には見たいものしか映らず、見たくない物が映れば目を背けるか、消し去って無かった事にする。

その証拠に異物を見る目で見られている。

 

「ああああああああ!」

 

絶叫し、血のように赤い魔力を全身に纏って斬りかかってくる。

僕の存在が認められないようで叩き潰すつもりのようだ、殺意は感じないが直撃すれば普通の騎士なら死んでもおかしくないような魔力を放っている。

さあ、来い!実力の差を見せてやろう!!

彼女の剣が振り下ろされるのに合わせて僕も剣を振るう。

アイリスの剣が空を斬り、カランと音を立てて剣の半分から先が地面に落ちた。

振り下ろされるのに合わせて彼女の剣を切ったのだ、切断面にはズレやヒビはなく綺麗な直線になっている。

ガシャン!と彼女は持っていた剣を地面に落としてしまった。

彼女からゆっくりと歩いて距離を取り振り返る。

こんな時の為に用意していた剣を腰に差していた鞘から抜きアイリスの足元に投げると、地面に突き刺さる。

用意していたのは彼女が使っていた物と同じミスリルの剣で細工も何もされていない。

 

「抜け」

 

刺さった剣を指差して呟く。

彼女はビクつきながら剣に手を伸ばす。

 

「抜かないのか?」

 

歯を食いしばって剣を引き抜き構えて向き合うが、動こうとしない。

 

「どうした?」

 

喋りかけるとビクついて剣が垂れ鋒が下を向き、手から滑り抜けてガシャン!と音を立てて地面に落ちた。

 

「まさかもう終わりなのか?」

 

そしてドサッと膝を付いてうなだれている。

 

「余りに下らんぞ。アイリス・ミドガル」

 

決まった!雨が降ってきて雰囲気もどんよりとした物に変わって、強者の敗北とマッチしている。

さあ、来る。来るぞ!『あいつは一体何者なんだ!』が来るぞ。

....1分位経った筈なんだけど、会場は静まり返っている。『あいつは一体何者なんだ!』が来ないんだけど?

もしかして雨の音にかき消されて聞こえなかったとか?もう少し待つか。

....3分位立ちっぱなしだけど、誰も一言も発さない。

こっちはガンマを泣かせたんだぞ、『あいつは一体何者なんだ!』が聞こえないと割に合わない。

マジで誰も喋らないんだけど、ここまでジミナのキャラを頑張って観客に刷り込んで『あいつは一体何者なんだ!』が出てくる状況を整えたのに失敗しただと?

終わったわ。『あいつは一体何者なんだ!』を聞くために、参加したのだからそれが聞けないのならブシン祭での陰の実力者プレイは失敗だ。

後でガンマに土下座しよう、そしたらきっと許してくれるはずだ。

許してくれなかったら最終兵器『何でもいう事聞く券』を渡して納得して貰おう。

 

もう帰ろう、優勝も正直どうでも良くなった。

入場口に向かっているとVIP席にローズ先輩が入って来て、お父さんのオリアナ国王に跪いた後婚約者に斬りかかった。

確か婚約者の名前はドエム・ケツハット。性癖を詰め込んだ様な名前に笑いそうになったが教団の幹部という事で笑いが...収まらなかった。

ネームドキャラが名は体を表すこの世界で家名がケツハットという事は、家系の皆様はそういう性癖をお持ちということだ。

唇を噛んで笑いを堪えていたらドエム君がオリアナ国王を盾にして防ぎ、先輩の剣が貫通してしまった。

お父さんを殺してしまったショックで自殺しようとする先輩に潜んでいた教団員が襲い掛かったのでVIP席の窓ガラスを割って飛び込む。

シド=スタイリッシュ盗賊スレイヤーが先輩にはバレていて剣が使えないので念力擬きで教団員を倒し、華麗に着地。

 

「偽りの時は終いだ」

 

全身をスライムで包んで、ジミナの顔を剝がし鉄の剣を捨てシャドウに変身する。

顔に付いた紅葉はスライムで作った皮膚で隠す。

 

「我が名はシャドウ」

『シャドウ!』

 

セーフ!ちょっと先輩は疑っているがバレていないのでセーフ。

 

「行くといい、ここは私が受け持とう」

「でも....」

「お前の戦いはまだ終わっていないだろう」

「はい!」

 

割れた窓ガラスから先輩が飛び出すと教団の刺客が追いかけようとしたので

 

「どこへ行くというんだ?」

 

始末する。

 

「増援は、増援はどうした!何故誰も来ないんだ!」

 

増援は来ないと思う。あのアルファがあそこにいたということは敵は既に掃除し終わった後だ。

という事でドエム君を始末して終わりなんだが

 

「お相手しようか?武神よ」

 

戦闘態勢に入っていたベアトリクスが襲い掛かってきたので

 

「ッ!」

 

剣を親指と人差し指でつまんで止め、割れた窓ガラスに向かって投げ飛ばす。

思いっきり投げたので試合会場まで飛んだが、魔力で強化し受け身を取って立ち上がる。

僕もVIP席から飛び降りて華麗に着地。

着地すると突きが飛んできたので防ぐ。

ジミナの剣の長さに合わせているので上手く戦えないので、長さを戻す。

僕の境地を見せよう。

 

「力を見せてみろ。武神よ」

 

一瞬で間合いを潰して剣を振るう、ギリギリの所で防がれたが驚いているようだ。

極限まで無駄を削ぎ落とした、自然のままに振るわれる意識することのできない剣。

防がれたのは単に勘が良かっただけだろう。

 

「果たして次を避けられるかな?」

 

悪役みたいになってるけど、楽しいからどうでもいいかな。

打ち合いをして分ったが剣技だけなら僕らに並ぶ、魔力の使い方はダメだけど。

それにもう直ぐ諦めの悪い人が来るしね。

 

「私も混ぜてもらいます。見ているだけなんて耐えられない!」

 

振り向くとそこには僕が渡した剣を持ったアイリスがいた。

その目には抑えきれない憎悪と怒りが浮かんでいる。

僕が渡した剣を持っているのは当てつけのつもりなんだろうか?

どれだけ崇高な理念を持とうと、彼女からすれば僕らはテロリストだ。怒るのは仕方ない。

 

「いいだろう。まあ、お前が加わった所でどうという事ではないが」

「黙れぇぇぇぇぇ!!」

 

2対1だが何も問題はない。

片方は剣は上手いが魔力の使い方が成っていないエルフ、もう片方は感情に振り回されて力任せになっている狂犬。最小限の動きで戦う事ができ観客もいるので実力の差を見せつけられる。

数分程打ち合うと、2人が距離を取って今までと違う表情で構えている。

勝負を決めに来るのだろう。

 

「いいだろう。では....抗ってみろ」

 

雷鳴が響くと同時にアイリスが低姿勢で突っ込んで来た。

払いのけようとすると剣を投げ捨て僕の胴に抱きつこうとするが

 

「愚か」

 

横っ面に拳を叩き込んで、吹き飛ばす。

アイリスを吹き飛ばすとその体に隠れるように接近していたベアトリクスが限界まで高めていた魔力を開放して神速の突きが放たれる、狙いは僕の首だ。

 

「何が.....」

「何かおかしな物でも見えたか?」

 

驚くのも無理はないだろう、何せ僕は彼女の長剣の上に立っているから。

鳥の羽の様に重さを感じさせず乗っていればそれは驚くだろう、固まってしまった彼女の顎に蹴りを入れ吹き飛ばし地面を転がす。

動かなくなったのを確認するとゆっくりと浮かび上がる。

ジミナとしては失敗したと思ったが、シャドウとしては陰の実力者プレイは成功だ、後は立ち去るだけ。

観客席の屋根まで浮かび上がると

 

「待てっ!!」

 

下を見ると口の端から血を流したアイリスが剣を支えにして立ち上がろうとしている。

離れた所にいるベアトリクスも立ち上がろうとしている。この2人は諦めが悪い。

選手入場口からは騎士がなだれ込み、観客席の入り口からも銃を構えた騎士達が入って来て銃口が向けられる。全員がこちらを見上げている。

 

「こんな事してただで済むと思っているのか!!」

 

それって捕まらなければいいだけだし、君らじゃそもそも僕には勝てないし、強欲の瞳を使われただけでまともに戦えなくなる程度にレベルが低いのにどうやって僕を殺すんだ?

 

「王国はお前を許さない!!どこに逃げたって必ず....」

「逃げる?」

 

呟くと叫んでいたアイリスが黙る。

ただ逃げるだけではいけない、僕はアルファ達にとってカッコイイシャドウじゃないといけないんだ。

ちょっと演出を加えるか。

 

「逃げる?...私が?どこに?」

 

ドエム君の事もあって堪えていた笑いが出てしまった。

一通り笑うと会場は静まり返っていた、突然笑ったら不気味だろうし。

 

「見せてやろう....これが私だ!」

 

魔力を開放する。学園の時とは違って王都を覆う程巨大にする。

観客も騎士も、全員が僕を見上げている。祈っている人すらいる。

 

「どうして...どうして殺さない?」

 

ベアトリクスが呟く。

あなたアルファの血縁でしょ。それに

 

「何故お前達は自分に殺される価値があると思っているんだ?」

 

今まで僕が戦った相手に何人かいた。

自分は特別だから殺される価値がある、殺さない方がいいとか抜かすナルシストにはウンザリしていたが彼女もそうとはちょっと残念。

 

「お前達など蟻の如く踏み潰すことができるというのに」

 

王国の全戦力ならアトミックを何発かブッパする事で終わらせる事ができる。

銃を構えていた騎士は銃を下し、剣を構えていた騎士はダラリと腕を下げている。

アイリスはまた剣を落としてしまった。

 

「アイリス・ミドガルよ、今のお前では何も為すことはできない。自分で未来を掴み取りたいのであれば変わることだ、それができないのならお前は一生そのままだ」

 

アイリスからベアトリクスに視線を移す。

 

「ベアトリクスよ、お前は武神を名乗るのに値しない。余りにも力が足りていない、その名に相応しい力を付けることだ」

 

これ位すればもう帰っても問題ないだろう。

 

「では....また会おう」

 

小アトミックを撃って、王都を覆っていた雨雲を吹き飛ばして立ち去った。

 

 

ブシン祭は楽しめた!

誰もが認める強者達を圧倒し、去り際に力の差を見せつけて意味深な台詞を言う。

それにアイリス王女は主人公ポジションにいる人だから、主人公の前に立ちふさがる陰の実力者が出来て気分がいい。

ジミナとしては失敗していた分、大変満足している。

姉さんに見つかってもビンタされなかったし、試合の感想を言って持ち上げまくったから暫くは大丈夫だろう。紅葉もちゃんと直してくれたし。

 

気分は絶好調!さあこれからも陰の実力者として.....

 

 

 

そういえばローズ先輩どうなったんだろ?

 

 

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