陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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10歳 ようやく始まる

転生してからかなりの時間が流れた。

10歳になった。それなりに身体も成長し陰の実力者になるための訓練は欠かさず続けている。

魔力に関しては周りが当てにならなかったので独学になっている。

最近は姉さんの剣の訓練に付き合わされている。

 

「うわー」

 

情けない声を上げながら僕は倒れる。

 

「ほんと弱いのね、あんた。」

 

呆れ顔で見てくるがこれでいい。決してそういう意味で言ってるわけではない。

本気を出せば瞬殺できるが、僕がなりたいのは陰の実力者であって主人公ではない。

なので僕はモブAを演じている。

僕の家での評価は、勉強には真面目に取り組んでいるがそれ以外のことには必要最低限のレベルでしか取り組もうとしない。

凡庸な人間。それが僕の評価だ。

ちなみに貴族としての教育は前世での高校教育の知識でサクッと終らせた。

地理と歴史はそもそも世界が違うのでかなりてこずらされた。

勉強は家庭教師かオカンが見てくれている。

オトンと姉さんはバカなので勉強を教えることなんてできない。

というか、バカ2人のせいで魔力に関しては独学になっしまっている。

 

「あんた今......」

「ナニモカンガエテナイヨー」

 

そして相変わらず姉さんはエスパーだ。光のない真っ黒な目で僕を見てくる。

僕が姉さんに対して良からぬことを考えていると反応してくる。

どうして考えがわかるのか一度気になって姉さんに聞いてみた。

そしたら、

 

「お姉ちゃんだからよ。」

 

そう言い切られた。前世で姉のいなかった僕は姉とはそういう生物なのかと思ってしまった。

そして、前世で姉に困らされていると言っていた

クラスメートもこんな気持ちだったのかと思った。

 

 

一日の大半を貴族としての教育と姉さんの訓練に付き合わされているので、陰の実力者としての修行はみんなが寝静まった深夜に行なう。

睡眠時間を削って行なうが、それは魔力と瞑想を組み合わせた独自の睡眠方法によりショートスリーパーと化している。

むしろ通常の睡眠よりも質がよく、朝もスッキリ起きることが出来る。

これも前世での修行の成果だ。

領内の森でいつもの基礎トレーニングを始める。

トレーニングを終え一息つくと2年前から始めた特別メニューを行うため移動する。特別メニューそれは......

 

「ヒャッハー!盗賊は皆殺しだー!」

 

それは盗賊狩り。目出し帽はないが顔がバレるとまずいので穴を2つ開けた紙袋を被って顔を隠している。

一度盗賊狩りの時に助けた金髪のいかにもお嬢様の女の子に名前を聞かれて

咄嗟に「スタイリッシュ盗賊スレイヤー」と名乗ってしまった。

まだ陰の実力者とは言えなかったので適当に答えてしまった。

このことを僕は後ほど後悔するがそれはべつの話。

 

盗賊狩りの目的は3つある。

1つ目は自分の実力を測ることだ。

盗賊なんて所詮はゴロツキ、抵抗手段のない一般人を殺すことしか出来ない連中が多いがそこそこ場数を踏んだ奴は反撃してきたりもする。

一番ありがたいのは、元騎士団とかナントカ流の免許皆伝の人斬りがいることだ。

一般人にとっては何も嬉しくはないだろうが。

とにかく、騎士団は正規の訓練を受けているので、効率的な戦い方を学んでいる。

格上との戦い方、集団戦法、技術を学ぶにはちょうど良い踏台だ。

次に免許皆伝の人斬りだ。

こいつらは血に飢えているので、殺すことを前提とした攻撃をしてくるので

殺し合いのいい経験になる。

それに、様々な流派の剣士と戦うことで剣に対する理解をより深められ、

それぞれの流派に対する対抗策を立てることが出来る。

だが、問題がある。こいつらはすぐに死ぬのだ。

10歳とオッサンの肉体ではかなり差があるはずなのにほとんど一太刀で死んでしまう。

魔力があるはずなのにこいつらは攻撃しかしてこない。

防御や回避、治療に魔力を使うことをしたりせず攻撃に全力を出している。

魔力の使い方が10歳の僕よりレベルが低いのだ。

さらに前世含めて20年しか剣を振っていない僕より長い時間剣を振っている彼らの方が僕よりレベルが低いのだ。

 

2つ目は僕の精神力を試すことだ。

前世で僕はバール片手に夜中に騒音をまき散らす地域中の暴走族にカチコミをかけたり、ナイフを持った相手にも冷静にも対処していたが殺人の経験はなかった。

前世では殺人なんて行せば即捕まるのでできなかったがこの世界では違う。

中世ヨーロッパ並の文明のこの世界では倫理観も同じレベルだ。

都市部はともかく地方だとさらに酷い。

都市部だと騎士団が動き、捕縛され然るべき裁きが下されるが、

そんな余裕のない地方では盗賊の類には暗黙の了解として私刑がまかり通っている。

なので僕の盗賊狩りも黙認される。

実際に盗賊狩りをやった感想は特に何も感じなかった。

相手が如何にもゴロツキのむさいオッサン、尚且つ一般人を襲って殺し金品を奪い

人身売買までするような悪人が相手だったから何も感じなかったのかもしれない。

僕は100人助けるのに50人の悪人を殺す必要があるのならそれを実行するつもりでいる。

僕は異常なのかもしれない。

 

3つ目は資金稼ぎだ。

陰の実力者はとにかく金がかかるのだ。必要なものがとにかく多いのだ。

まずはセーフハウス、モブA用の住居とは別に陰の実力者用のセーフハウスが

必要になるしその維持費もバカにならない。

次に陰の実力者を彩る高級品の数々。

安物のワインを飲む陰の実力者とかダサすぎる。

決して安物ではいけない。家具はアンティークで統一し、絵画や彫刻と言った美術品、

そして、ワイン等の嗜好品、最低でも1つ1つが数10万はくだらないのでとにかく金を集めなければならない。

金に意地汚いように見えるが陰の実力者になるためには手を抜けない。

盗賊は基本的に溜め込まずすぐに使い切るタイプが多いが当たりを引けば、

男爵家並みに貯めこんでいるのでかなり簡単に稼げる。

そして、今日も今日とて紙袋を被り僕は盗賊狩りに精を出している。

 

「ヒャッハー!!」

 

今日の盗賊はいつもと違う格好だった。いつもの盗賊なら服装もバラバラでチンピラみたいな感じが滲み出ているのに、今日の盗賊は服装が統一されていた。

全員が黒のローブで全身を覆い、如何にも盗賊感が出ていた。なんかカッコよかった。

そこそこの実力をもっていたし、集団戦のいい経験になった。

そして今回のはかなりの当たりだった。かなり貯めこんでいた、

家と同じぐらいだろうか。

それに美術品も手に入れることもできた。よくわからない絵画が数点と壺?、

とにかく美術品を手に入れることができた。

そして、宝石もいくつか手に入れた、詳しくはないが高そうな感じはした。

 

「お、ラッキー」

 

そして、桐箱に入ったワイングラス。このブランドのワイングラスは最低でも40万はくだらないので今回は大当たりと言えるだろう。だが、

 

「何でグラスがあるのに、ワインがないんだよ...」

 

この盗賊はグラスを持っているのにワインを持っていなかった。

空き瓶が見当たらなかたので盗賊が飲み干したような感じもなかったし、

もしコレクターや商人から盗んだのなら一緒にワインも保管しているはずなのに、

こいつらは盗まなかったようだ。バカなのだろうか?

そして、今回の盗賊狩りであることを決めた。それは、僕の服装だ。

今は紙袋を被って顔を隠している。とても陰の実力者とは言えない。

他の方法を考えなくてはならない。

彼らの黒ローブも参考にさせてもらう。

明日から服作りと訓練を同時に行なう必要がある。

 

「もう少し睡眠時間削るか。」

 

 




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