常々思っていたことがある。
エルフ。それは宇宙の神秘ではないかと考えていた。
人間なら遺伝で顔の造形とかが変わってくるがエルフは基本美形しかいない、言い方が悪いかもしれないがブサイクなんて一人もいない。
特徴的な形の耳、質感のいい綺麗な髪の毛。
体型も殆どが細身で知る限りでは太っている人なんて見たことがない。
エルフの女性であればそれはより顕著に表れている。
まるで人形のように細い手足、透き通った肌。
神が造った芸術作品のような種族。
クビレなんて見ているだけで気が狂いそうになる。
何より素晴らしいのが下着を外しても形崩れすることなく素晴らしい感触のおっぱ....
「なんかとんでもない夢を見てた気がする」
朧気だが夢の中で何かとんでもない悟りを開きそうになっていた。
忘れよう。悪い事は忘れるに限る。
重たい体を起こして周りを見ると全裸のエルフ達が気持ちよさそうに眠っている。
昨晩のサキュバス共との戦いは苛烈なものになった。
いつもの様に絞り取られたわけではない、その証拠に僕の体内の邪龍は今も暴れまくり聖剣はその存在を主張している。
なんというか昨晩のアルファ達は....一言でいうならエロかった。語彙力がないかもしれないがもうすんごいエロかった。自分達以外のエルフが目に入らないようにするという言葉の本気さが感じられた。
しかし!百戦錬磨の僕が負ける訳もなく見事サキュバス共を打ち取り勝利したのだ!
普段は目立たない男が美女達をベッドの上であられもない姿に変えて悶えさせる....凄くいい!!
さてサキュバス共が起きる前に退散するか。
「おはようございます。シャド...」
扉の向こうにドス黒い笑みを浮かべた人がいたので扉を閉めた。
「おはようございます!シャドウ様」
閉めようとしたが足を挟み込んできて閉められなかった。
「お、おは、よう。ニュー」
「はい。おはようございます」
笑顔だが目は獲物を前にした獣の様になりその背後には般若が浮かんでいるように見える。
「お風呂の準備ができておりますがどうなさいますか?」
「そ、そうだね。じゃあ有難く使わせて貰うかな」
「では行きましょうか♪」
なんで腕組むの?風呂くらい1人で行けるし何回も来てるから場所は知ってるから離して。
自分から振りほどきたい所だけどさっき夢の中で危険な悟りを開きかけてしまった所為で体がその感触を堪能しようとしている。
「シャドウ様はとても酷い方ですね」
「何かしたかな?」
「惚けられるのですか?気づいてましたよね、私が扉の前でずっと待っていた事は。というか気づかないはずがないですよね、シャドウ様の事ですから」
気付いてた、でも昨日はエルフだけって言われたから呼んだら取り返しのつかない事が起きると思ったから呼ばなかったんだ。
「『今日はエルフだけだから』と言われて一晩中警護を命じられ、夜這いにきた愚か者共を叩きのめしていたのですから、お優しいシャドウ様はきっとお慈悲を下さると思っていたのに......くひひひひひひひひひひひひ」
怖い。なんなんだろう凄く怖い。さっきまで猛威を振るっていた邪龍も『こいつコワイ!コワイ!撤退撤退!』と縮こまってしまっている。
「触ってください」
掴んでいた手をスカートの中に引っぱっていき、下着に触ってしまう。
....え?なにこれ、なんか洪水が起こってるんだけど。めっちゃびちょびちょなんですけど。
「シャドウ様、私すっごく我慢したんですよ。頑張った部下には褒美が必要だと思いませんか?」
「ソ、ソダネ」
「思いませんか?」
「ウン、オモウ」
「思いますよね?」
首をコテンと傾げて見てくる、目はカッと見開かれ唇の端に髪の毛がかかっていてより怖い。
「....一緒にいこっか」
「はい♡お供致します」
朝から大変だな。
汗を流す為に風呂に入ったはずだったが色々あって汗をかいては流し、かいては流しと繰り返して2時間程風呂に入っていた。
そして今はデート中である。
腕を組んでいるニューからは大量の♡が飛んできている。今更だがなんでこんな美人が僕みたいなモブに体を許してくれる理由が良く分からない。
「ニューはさ幸せなの?」
「はい♪とーーーっても幸せですよ♡愛しいお方の逞しい腕に抱かれてこれ以上の.....」
「あ、そうじゃなくてその....今の生活に不満とかない?ほらその何て言うか....恋しくない?」
ずっと気にはなっていたし不安だった。
普通は今までの生活を失ったり親しい人から嫌われれば一生消えないような傷を負うはずだ、なのに彼女達はあまりにも順応している。
例えなかった事にしたとしてもしこりが残るはずだ、なのにそう言ったものが一切見られない。
「思い返さないと言えば噓になりますね、時折両親の顔がちらつきます」
当然だよね、僕も同じ立場なら多少は引きずると思う。
「でも...もうどうでも良くなりました♪」
開きなおり早いな。
「だから逃げないで下さいね♪」
「逃げないよ」
「ホントですかーー?」
さっきより抱きしめる力が強くなってる。
「話は変わりますがイータ様と恐れ多くもチョコレートを下賜されたあのピンク髪女が何を研究しているか知っていますか?」
ピンク髪って、せめて名前で呼んであげてよ。
「知らない」
「妊娠促進剤です」
聞き間違いか、途轍もなく不穏な言葉が聞えた。
そして何故か邪龍が暴れまわっている。
「ごめんね、よく聞こえなかった」
「妊娠促進剤です」
聞き間違いではなかった。
「あ、ちなみに完成したら私も貰う事になってます」
逃げよう、学園辞めて実家で引きこもろう。
「逃げても無駄ですよ。というか逃がしませんから。
もう私達はあなた様なしでは生きていきけなくなってしまいましたから、だから逃げようなんて絶っったいに考えないでください。
逃げても無駄ですよ、私達が持つ全ての力を使って必ず探し出して見せますよ、地の果てまでも追いかけますから。だ~か~ら~」
ニューの瞳が切れかけの電灯のようにチカチカと明滅している。
「逃げないで下さいよ」
声がハウリングして呻き声の様なものが聞こえてくる気がする。
「ニゲナイニゲナイ、ボクニゲナイ」
「それは良かったです。私も傷つけたいわけでは...」
「何してるの~ポチ」
底冷えするような声が背中から聞こえてきてくるそして剣先が当たっている。
「や、やあ。ご機嫌いかがかな、アレクシア」
「おはようポチ、私は今最悪の気分よ。そちらはどなたかしら?」
「リニューです、初めまして」
僕を挟んで2人の間で火花が散っている。
「私のポチとどの様な関係でしょうか?」
「切っても切れない関係ですね、そちらこそどの様な関係なのでしょうか?」
「ぐっ、私とポチは恋人なんです。だからもう少し距離を取っていただけませんか。恋人が私以外の女性と一緒にいるのは余り気分が良くないので」
(こいつは私の恋人なんだから邪魔するな!横から割り込んでかすめ取ろうなんて恥ずかしくないのかしら(笑))
「そうなんですか!でもシド君からはそんな事聞いた事はありませんね...あっごめんなさい。貴方の頭の中の妄想の話だったんですか?気づかいが足りませんでした」
(お前みたいな魅力に欠ける女なんかシャドウ様が愛する訳ないわよ、身の程を知りなさい。自分で慰めるので我慢しなさいなこの尻軽。お前にシャドウ様は相応しくない!)
「ぐっ!!」
「ちぃっ!!」
((この女は敵!!絶対に渡すものか!!))
なんだろう、言葉以上のものを感じる。あ、目が合っちゃった。
「ポチ~、ちょ~~っとお話があるの」
首筋を掴み路地裏に連行され壁ドンされた。性別が逆だったらきっとときめいてたと思う。
「誰よ、あの女」
「な、何のことやら」
「ふんっ☆」
躊躇なく首を絞めてきた、姉さんもそうだが一体僕を何だと思ってるんだ。
「ヤッタの?あの女とも?私には手を出さない癖に」
「だか...うげ」
何でこんなに首を絞めるのが上手いんだよ。てかこの首の絞め方って
「クレアに教わっておいて良かったわ、クレアの言う通り首絞めが一番効率的ね」
ふざけんなこのDV女共!首の絞め方を教わるとか意味不明なんだが。
「えいっ☆」
キュッと首が絞められる、息ができないが意識はハッキリとしている。姉さんの十八番だ。
「お助けします」
ドンとニューがアレクシアを突き飛ばし、アレクシアは地面を転がっていく。
「何て酷い!恋人の首を絞めるなんて!私がお守りしますからもう苦しい思いしなくていいんですよ」
台詞だけ聞けば感動しそうだが発情期の獣の様に息が荒い。
「ちょっと邪魔しないでくれますか。今恋人同士の大事な話をしてたところなんです、部外者は下がってくれます」
「まあ、酷い。嫉妬で恋人の首を絞めるなんて!こんなヒステリー女とは別れた方がいいです。
私とかどうですか?」
さりげなくアピールするな。
この2人ある意味似た者同士だな。
「向こうで話しましょうか、ここだと目立ちますし」
「そうね、腹割って話しましょうか。ポチここで大人しくしておくのよ」
路地裏に消えていく2人を見送る、大人しくする理由なんて当然ないので寮までダッシュで帰る。
寮に帰った所で状況は変わらないんだが。
寮の自室に戻りベッドに飛び込もうとしたしかし飛び込みなかった。
何故かベッドのシーツが膨らんでいて金色の猫の尻尾がはみ出してユラユラと揺れている。
誰が入っているかなんて見当はついた、しかしこれは捲るべきなのか?見なかった事にした方がいいのか。
「お帰り主」
「ただいまゼータ」
誰が入っているかなんて分かっていたが言わせて欲しい。
君達気軽に僕の部屋に入ってきすぎなんだよ、ここフリースペースじゃないから。
ベッドから立ち上がったゼータは僕の手を掴むと手の甲の薄皮が裂け血が滲む。
「私達に話すことがあると思うよね?」
「分かった降参。場所変えよう」
「話が早いね」
連行される場所は決まっているミツゴシ以外ない。
会長室に入ると剣を握った皆がいた。ソファーに座ると全員に剣を突き付けられる。デルタはストレス発散のお散歩中だったのが唯一の救いだ。
部屋の隅でカイとオメガが何かを調合している。
「これなんてどうだ」
「これは前に使ったからもう効かないだろう」
匂いからして精力剤みたいだ。
「ねえ主、あの女の方がいいの?」
「そんな事ないよ」
「じゃあなんでイチャついてるのかな?私達よりも胸が小さいし、頭だって良くない。どこに惚れる要素があるのか教えて欲しいな~」
胸が小さいと言った時にツインテールのエルフが反応した気がしたが気にしないふりをして....刺さってる。ちょっと刺さってる。
「昨日のあれじゃ足りなかったみたいね」
「昨日?私を除け者にして楽しんでたの?アルファ様ちょっと酷くない」
「貴方は前につまみ食いしたからいいじゃない」
「それとこれとは違う!」
喧嘩が始まったが逃げる気はない、逃げた所で悪化するだけだし。それに今回は切り札がある。
「ねぇ許してくれない」
「許したら主はまた女を引っかけてくるでしょ」
皆は頷いている、そんなに信用ないのか。しかしこれを見れば皆の考えも変わるはずだ。
「これ上げるから」
僕の手には栞サイズに加工した鉄の板が6枚握られている。
「何こ....まさかこれは!」
対七陰最終兵器 『何でもいう事聞く券』
これを使ったのは過去1度だけであり、使ったのも実家にいた時に姉さんに捕まった事で会えない日が続いたため不貞腐れた彼女達の機嫌を直す為に使った1回だけである。
勿論何でもできるというわけではない。あくまでお金がかからず、可能な範囲での何でもだ。
「....ねぇ、今回はエッチなのもアリよね?」
「ナシだよ」
「ど、どうして。いいじゃないの!」
「アリにしたら君達の理性は吹き飛んじゃうでしょ」
「ソ、ソンナコト、ナイワ」
なんで目逸らすんだよ?誰とも目が合わないんだから理性を保てる自身がないんだろ。
「その代わり一日一緒にいるから」
「ホントなの!?」
「明日から一週間は何もないから問題ないよ」
元々今週は彼女達のガス抜きの為に空けておいたのだ。
「順番決めてくるわ」
『何でもいう事聞く券』を手に取った彼女達は部屋を出ていく。
さてジト目でこっちを見てくるエルフ2人をどうにかしないとな。
自業自得とはいえ明日から大変だな。