「無法都市最高ー!!」
グールと一通り戦闘をして紅の塔に入って家さが....探検したら大当たり。
入る時に狐のお姉さんとガチガチのオッサンと会ったけどどうでもいいか、そういえば財宝を探す時に誰かとぶつかった気がするけど....まいっか。
無法都市には来てよかった。
ぶつかっただけで慰謝料くれるし、お宝は沢山あるし、来てよかったわ。
「どれを持って帰ろう」
宝物庫にはお宝が山積みになっている。
宝石に美術品、作家の名前を調べたら後悔しそうな絵画まである。
「やっぱりここは金貨だな」
美術品や宝石は嵩張るが金貨なら携帯性もありそのまま使える。
イプシロンが胸にスライムを仕込む様に僕はスライムに金貨を仕込む。
1000枚の金貨でざっと一億、今の僕は一億の男だ!
....何言ってんだ。
「この後のボス戦をどうするか」
最近は後から出るのが多くてマンネリ化してたし、観客は一般の大衆ばかりで物足りなかった。
どうせなら勇者ポジションにいるキャラより前にボス戦を始めて
『なんて凄い戦いなんだ!とてもついていけない!素敵!』
をやってみたいんだよ。
....最後の素敵はいらないな。
それに今回は期待できそうだ。
「何せ最強の吸血鬼だしね」
人間の遥か上の能力を持つ吸血鬼、その最強。
実に期待できそうだ、どうせなら登場も派手にしてみよう。
そういえば姉さんもいたけど....自己責任って事で。
死にはしないでしょう、頑丈だししぶといし。
「覚醒の時は近い暴走が....始.....まる」
登場を派手にする為に小アトミックを放ってみたんだがボスがいない。
「.....あの~誰かいませんか~」
誰も返事をしない。
「最強の吸血鬼さん出てきてくれませんか~~」
周りは砂埃が舞う音だけが聞こえる。
一応周りを確認する。
「これは違う」
小アトミックに吹き飛ばされて上半身だけになった赤髪の吸血鬼。
最強の吸血鬼ならあの程度の攻撃で死ぬ訳がない、だからこいつは違う。
「あれも違う」
僕に似た顔立ちの黒髪の生首が転がっているが僕が来る前から死んでたし。
「.....もしかしてボス不在?そんなイベントあり得るのか?」
荒廃した塔の頂上、ボス戦をするにはこれ以上ない場所のはずだ。
塔の淵に立って見下ろしてみるとまだグールは暴れている。
もしかして今回は無限ウェーブのフィールドイベントがメインでボスがいないのか?
無限ウェーブは大抵条件が設定されているから一先ずクリアしておくか。
ボスについては後で調べよう。
グールはウィルスみたいに感染していくのでいくらでも増える。
「そろそろ飽きたな」
最初こそ世紀末感があって楽しめたがもう飽きた。
「ありがとうございます」
色街に湧いたグールを処理して感謝されたが別に感謝される様な事じゃない。
「気にするな、私が勝手にやっただけだ」
基本的に僕は性格がひん曲がってたり悪人じゃないのなら女性の味方だ。
子供を産むのは常に女性、命を産むのはとても大変な事だ。
その苦しさに耐えて子供を産む彼女達を尊敬している。
娼婦がいなかったら性犯罪が増えて世界中の犯罪率が上がるのだから彼女達を助けるのは当たり前なんだが
「早く行け、逃げられなくなるぞ」
服装がヤバい。
何あれ?
ここに来る前にアルファ達と戦ったから発散されているができれば視界に入らないで欲しい。
「この魔力は」
ふと気づくと都市をドーム状の魔力が包んでいた。
展開できたのは凄いけど多分肉体の方が耐えられない。
数秒もしないうちに消えてしまった。
魔力の発生源は紅の塔の頂上、何か見逃してたかな?
ボスいたわ。
ただ一つ言いたい、その格好をどうにかしてくれないか?
赤い血のドレス、但し胸の部分はギリギリ隠れている程度で下は履いていないのか風でスカートが捲れると見えてしまっている。
血の槍が降ってくるのでスライムで打ち落とす。
相手が飛んでいるのだから僕も空中戦をしたいのだが、金貨を仕込みすぎたせいで重くて飛べない。
何が一億の男だ。
重さが一億の間違いだろ。
「かばっておられるのですか?...動けない私達を....」
ベータの過度な期待が痛い。
かばってはいるけど本当の所は動けない。
ここに来るのは壁に足を突き立て歩いて登ってきたから良かったけど飛び続けるのは今の状態だと厳しい。
パキン、パキン
金貨がどんどんと割れていって心が痛い。
既に100万が消えた。
「これ以上.....失う訳には.....いかない」
せっかく集めた金貨が砕けていくのは辛い。
頭の中で計算されていく損失が上昇するたびに胸が痛くなる。
200万、300万、500万....1500万。止めてくれ。
パキン
漸く飛べるようになった。
飛べる事は飛べるけどやっぱり重い。浮かせるのがしんどいから早めに終わらせよう。
この人かなり強い、アウロラさん程ではないけど今までに会った人の中なら上位に入る。
でもこの人やる気がないんだよな。
むしろ終わらせて欲しいみたいな感じがする。
「いいよ、終わらせよう」
ついでだから新技も披露しておくか。
「アイ・アム」
「リカバリーアトミック」
グールも悪魔憑き吸血鬼の吸血衝動も呼び方が違うだけでただの魔力暴走だ。
直すのは簡単、バグの原因を処理してコマンドを打ち込みバグが起こらない様にする。専門的な勉強をしたわけじゃないからこんな感じだと思う。
僕のモブムーブを邪魔したセンスの塊のお姉さん、メアリーさんは女王様、エリザベートさんの知り合いらしい。これから無法都市を離れて旅をするらしい。
「ねえ、シド。お姉ちゃんの事どう思う?」
「ん?姉さんは姉さんでしょ」
昨晩、僕は見てしまったのだ。
腕に刺青の様な物が刻まれていて、その上から包帯を巻くところを見てしまったのだ。
「腕が疼く....私には特別な力が」
ついにきたかと思ってしまった。
真面目に生きてきた人程何かのきっかけでそれが目覚めてしまう事が良くあるのだ。
だがしかし否定してはいけない、否定すればかつての僕のようになり孤立してしまうからだ。
必要なのは寄り添って話し合い、理解を示し、共感して少しづつ改善へと向けていくのだ。
そう絶対に否定してはいけない、だって誰もが通る道なのだから。
そんな事よりも問題がある。
追加で回収したのを含めて3000枚はあったはずの金貨はたったの500枚しか回収できず残りは全て消えてしまった。
でも何も問題はないだって無法都市は変わらずそこにあるし塔もまだ2本ある。
歩いているだけでお金が貰えるし、いざとなればチンピラを殲滅すればいい。
無法都市は僕の貯金箱だ。しかも盗賊狩りより効率がいい。
お金に困ったらまたこよう。
数日後のとある宿場町。
見た目からも分かる高級ホテルの前に一目で貴族が乗っていると分かる馬車が止まっていた。
ホテルから出てきた上下漆黒の衣装に身を包んだ赤髮の女性が乗り込むと馬車は走り出す。
「本当によろしかったのですか?」
女性は隣に座る主に話かける。
人とは違う彼女達にとって時間は有り余っているが彼女は再会したばかりの主が男に感情を寄せているのに喜び半分、苛立ち半分といった所だ。
「ずっと眠ってたのだからまずは世界を見てみたいの」
幼い少女にも見える赤い長髪の彼女の主は期待するように呟く。
「分かりました....ですが!ちゃんと朝は起きるようにしてください」
「吸血鬼なんだから朝が弱いのは仕方ないじゃない」
「私はそんな事ありません、もし起きられないのであれば明日からの朝食は全てガーリックトーストにいたしますが?」
「相変わらずイジワルね」
主従は無くした時間を取り戻す様に笑顔で話し合う。
「まずはミドガルに行きましょう、気になる事もあるし」
世界を見て回ると言ってはいるが目的が叶えば動くつもりはない。
「今会いに行きます、紳士様♡」
長い眠りから目覚めた吸血鬼の女王は未来を与えてくれた少年への思いのままストーキングを始める。
一話に纏めておけば良かった