陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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デルタがヤンデレ?になります


良い子は真似しちゃダメだよ!!

シェリーとイータは凄かった。

イータは放置されていた事もあってかねちっこく攻めてきたし、いつものように始めから全力でくるのではなくセーブしながらだったので長い時間をかけて楽しんだ。

シェリーはウサギ....いや、蛇だな。

多分イータが教えたと思われるテクニックを使い翻弄してきたが経験値の高い僕と初めて尽くしのシェリーでは早々に軍配が上がった。

一番驚いたのは、僕の聖剣が全部入ってしまった事だ。

これには僕も中断しようとしたのだが蛇の様に絡みついて離れることができなかったのでそのまま3回してしまった。

あれにはイータも引いていたな、下手すれば骨盤がずれるかもしれないからな。

そんな事にはならなかったが。

2人は満足して終わったが僕は不完全燃焼で6.5割といった所で3.5割はまだ残っているからムズムズして落ち着かないし、ユキメとの打ち合わせを明日に控えたというのに、僕は未だ何のプランも立てられずにいた。

 

「これではスーパーエリートエージェントとしては失敗だ」

 

プランの1つも立てられず、自身を律する事のできない者をエージェントと呼べるだろうか?

呼べない。

 

「取り敢えずストレス発散しよう」

 

ここ数日ジョン・スミスの姿で暴れながらガーター商会の私兵を狩り続けている。

ジョン・スミスの名前を広げる為に敢えて数人の生き残りを出して僕の情報を持ち帰らせると共にいずれ邪魔になるであろう者達を処理していく。一般人からすればただの大量殺人に見えるかもしれないがガーターベルト....ガーターの私兵は質が悪い。

連合に加わっていない小さな商会を襲って金品を巻き上げたり、女性に暴力を働いたり殺人を犯したりしているただの犯罪者だ。

ガーターが裏金でも渡しているのか通報しても騎士団は碌に取り合わないし、現場に来ても調査もしないし、被害者の救済をするわけでもない。というか今もその犯罪者とつるんでるし。

ここまで騎士団が堕ちているとは思わなかった。

 

「俺たちを誰だと思ってる!!騎士団に....」

「聞き飽きた」

 

ジョン・スミスとしての基本武装は鋼糸。

限界まで細く加工した鋼糸を使用し、感知できない攻撃を放つ。

エージェントといえば、普通の人が使わないようなマニアックな武器を使う事が多いからこれにした。他にも魔力制御の訓練になったりといいことが多い。

 

「何が起こっ....」

 

戸惑っている間に首を落とす。

勘がいい人か、感知能力の高い人しか気づけないので切られた事にすら気づけないから

 

『お前はもう死んでいる』

 

ができる。

罠を張って拘束もできるから、動かなくても倒せるから楽でいい。

糸とはいえ金属だから光を反射するけど今のとこ気づかれてはいない。

 

「お前イカレてんのか!騎士団を殺してタダで済むと思ってるのか!?」

「聞き飽きたと言っただろう」

 

他にもいいことがある。

鋼糸を使えば射程内にいる雑魚に体力を使う必要が無くなるのだ。

 

「俺達はガーター商会の私兵だ!!あの方に逆らって.....」

「ゴミがゴミを集めただけだろう?鬱陶しい」

 

ガーター商会の私兵はそれこそゴキブリみたいに湧いてくる。

どこから引っ張ってきているのか知らないが数日で150人はやったのにまだ湧いてくる。これだけ掃除しても月丹配下の傭兵には出会えていない。

楽観視しているだけなのか、数が少ないのか慎重なのかは分からないが出てこない。

そろそろ出てきてもらわないと非常に困る、明日ユキメに会うから少しでも情報を集めておきたい。

 

「お前がジョン・スミスか、最近粋がってるらしいな」

 

顔に傷の入った如何にもという感じのオッサンが出てきた。

 

「俺は月丹様の...」

「やっと会えたな」

「うぎゃあああああああああ」

 

ようやく月担君の雇った傭兵に会えた。

さてと色々と聞きたいことがあるからお話しよう。

 

「君は月丹の配下の様だが、聞きたい事があるんだが答えてくれるかな?」

「てめぇ...今なに...」

「おや?腕と足を落とされてまだ話せるとはそこの根性無しとは違うようだな。君には聞きたい事があるんだが教えてくれないか?」

「喋るわけ...ねぇだろ」

「そうか....では仕方ない」

 

喋ってくれないなら仕方ない。僕もちょっと残酷な方法を取るしかない。

 

「ここで合ってるな?」

「はい....ここです」

 

喋ってくれなかったからごうも.....OHANASIする事になった。10分くらいしたら流石に教えてくれた。

 

「じゃあ、お疲れ様。お休み」

 

ここまで案内してくれた彼には僕の提供する極上の睡眠をプレゼントした。

 

「いいね、こういうのを待ってたんだよ」

 

古ぼけた酒屋。

外観はボロボロで人が寄り付かない様に見えて中からは血生臭い匂いがする。映画とかなら傭兵の溜まり場になっていそうな酒屋だ

この中にもさっきの人みたいな本物の傭兵が沢山いるんだ。

 

「ふぅ、一旦落ち着こう」

 

スーツの皺を伸ばして、緩んだネクタイをしっかり締めて気持ちをリセットする。

ああ、楽しみだ。

ここにいる人達はどれだけ僕を楽しませてくれるんだろうか?

うん、扉もいい感じに軋んでいる。

 

「誰だお前?ここはお前みたいなのが来る所じゃないんだ」

 

雑魚。

 

「おい、マスターが帰れって言ってんだろ帰れよ。こっちもガキの顔は見たくねえんだよ」

 

こいつも雑魚。

あれも雑魚、それも雑魚.....期待外れだ。

 

「はぁ期待外れもいいところだ」

「舐めてんのかガキ....」

「ここには『剣鬼』月丹が集めた本物の傭兵....それも精鋭が集まっていると聞いたんだが期待外れだ」

「ガキが!調子こいてんじゃねぇ!!」

 

素人だな所詮は1対1じゃなくて集団リンチしかしてこなかった雑魚だ。

 

「ジョン・スミスだ、覚えておけ」

「え、おま...」

 

糸を操作し、傭兵達をバラバラに切り刻む。

糸使いならではの戦いが出来て非常に満足だ。

 

「お掃除完了!!...さてと、地下室があると思うんだけど」

 

テンプレだとこういう酒場には地下室がある。

バーカウンターの棚の裏側とか、床板の一部が扉になっていたり

 

「あった」

 

キャビネットが扉の代わりになっていたりする。

テンプレ通りだ。

キャビネット自体に不自然な所はない、どこにでもあるような普通の家具だ。

不自然なのは床と壁だ。

床には何かを引きずった後が残っている、古い物もあればここ最近ついた傷もある。それに埃が残っているところとそうでないところで綺麗に分かれている。

次に壁、こっちはもっと分かりやすい。壁に出来ている日焼けと家具の位置が合っていない、はっきりと分かる程にずれている。

つまり最近誰かがこれを動かした....傷の後からすると数時間以内に動かしたかもしれない。

 

「ビンゴ」

 

動かせば、地下に向かう階段が現れる。テンプレ通りだ。

ここを守っていた人達は期待外れだったが地下にいる人達は僕を満足させてくれる事を祈ろう。

 

期待外れだった。

地下室にいた人達は世間一般からすれば強い方だが、僕からすれば雑魚だ。

そして問題が発生した。

 

「また教団か」

 

置いてあった資料を調べて見ると見慣れたマークがあった。

 

「これだと月丹も期待できそうにないな」

 

月丹も幹部ほどではないが教団関係者だった。

修行時代に二つ名を持っている教団員と戦ったのだが信じられないほど弱かった。

『豪炎』だとか名乗ったから楽しめると思ったら、まさかの二太刀で終わった。復活してパワーアップするのかと思っていたがそんな事もなかった。

教団の二つ名持ちは基本名前負けしている。『剣鬼』もどこまで期待できるかどうか分からない。

 

「スーパーエリートエージェントなんて言っている場合じゃないな」

 

大商会連合は教団と癒着して長い間甘い汁をすすってきた。

そこに突然現れたミツゴシ商会というイレギュラー、どれだけ邪魔しても成長し続けついには商会と連合が肩を並べるまでになった。

ミツゴシに危機感を抱いた、教団は連合を捨て駒にしてミツゴシを潰しまっさらになった王国の経済活動に踏み込み覇権を握る計画を立てている。

 

「信用崩壊はマズイぞ」

 

前世であれば国が紙幣を発行して、それぞれの銀行に預け入れをしていた。

紙幣の発行も国が集めた税金や国債なんかを資金にして発行していたが、今回はそうもいかない。

今でこそ普及しているが元はミツゴシが自主的に始めた事で国の事業ではない。

紙幣の発行にかかる資金も、何もかも預かった預金が元になっている。

今も紙幣の発行は続いていてその価値はドンドンと上がっている。

しかもその価値を成り立たせているのは市民の信用だ、それが崩れた時市民は一斉に換金に訪れるだろう。それに対応できるほどの金貨があるかと聞かれればそれは否だ。市民だけならまだしも他の商会にも貸し出しているのだからその金額はバカにできない。

教団の計画は操り人形である連合の偽札を流して信用を崩壊させること、その主導は月丹が行っているが月丹を消せばいいと言う訳ではない。

代わりが来て同じ事をするだけだ。

 

「あれ?僕ならなんとかできるんじゃね?」

 

偽札騒動にシャドウガーデンが関与すれば、連合側はミツゴシとシャドウガーデンの関与を追及するだろうし、教団は勢いを失ったミツゴシを潰し連合を通して覇権を握るだけ。

なら今の僕はどうだ?

シャドウではなくジョン・スミスだ、しかもまだアルファには知られていない。

この状況で動く事ができるのは第3勢力である僕とユキメだけ。

 

「くくくく.....くははははははは!!」

 

忘れていた、あいつらは僕にとって大事な人達が作り上げた物を自分達に従わないという理由で潰そうとしているんだ。これが許せる訳がない。

徹底的にやる。今後この国での教団の活動が出来なくなる程にやってやる。

 

 

「偽札....でありんすか」

 

早速僕はユキメに計画を提案した。

でも1つ言いたい、なんで前よりも布面積が少なくなっているんだ?脚とか殆ど見えてるし、その...パンスト?とか見せすぎじゃない。

 

「ああ、今の我々が介入する手っ取り早い方法はそれが一番効率的だ」

「偽札....紙幣の偽造でありんすか」

 

日本で紙幣の偽造なんてやれば、悪質だと無期懲役が課されるほどの重大な犯罪だ。

 

「紙幣についてはどこまで?」

「最近使われる様になったばかりで詳しい事はまだ」

「紙幣というのは銀行側が発行する預り証だ。民衆は通貨と同じと思っているが通貨ではなくあくまでも預り証だ。銀行に1万ゼニーを預ければ1万ゼニーの預り証..紙幣を渡されそれで買い物ができるという訳だ」

「....それはおかしくありんせん?」

「気づいたか。預けた1万ゼニーと紙幣の1万ゼニー、合わせて2万ゼニーになる。預けた金貨が金庫にあるのなら問題はない。だがミツゴシは預かった金貨を元に更に紙幣を貸し出す」

「成程。ミツゴシの成長と共に始まった好景気、この機会を逃すまいと商人は資金の借り入れを望み銀行は紙幣を発行する。それが急速に紙幣が普及した理由」

「それだけではない。重く嵩張る金貨よりも利便性に優れた紙幣の方を選ぶのも理由の1つだ。問題があるとすれば価値がうやむやのまま普及しているところだ、そこをついて我々は大商会連合の偽札を....」

「あの....ジョンはん?」

 

いまちょっといい所だったんだから邪魔しないでよ。

 

「ミツゴシはともかく連合側の紙幣はまだ王都でしか流通していんせん。出所は直ぐに突き止められんす」

「それが?」

「小規模であればやることもできんしょうがそれでは小遣い稼ぎ程度...」

「本気で言っているのか?」

「....ですがこれでは本当に小遣い程度で」

「君と組んだのは間違いのようだ」

 

ここで突き放すのは何も気が狂ったからではない。ミツゴシを救うには彼女が最後まで協力してくれる確証が必要だ。

 

「ではご説明をジョンはん」

 

そう来ると思ったよ。君は仮にも白の塔の支配者だ、その椅子を狙うものも多いはずだ。ここで何もせずに帰るなんてないだろう?

 

「偽札など最初からバラすことを目的として作るのだから突き止められる事など当然だろう」

「理解ができんのですが」

「1つづつ話そう。まず偽札を流す前に噂を流しておく『偽札が流れている』という噂だ」

「ですがそれを黙って見ている程悠長ではありんせん」

「民衆は噂が好きなのさ、それが真実であろうとなかろうと。君の言う通り黙っていないだろうが動いた時には既に王都中に広まった後、火消しには時間がかかる。そして我々は偽札を流し発見させる。それも噂の払拭をしている最中にな、そうするとどうなる?」

「噂が事実であったと証明される」

「そうだ、ここで話を戻すが紙幣が使われているのは便利だからという理由だけでなくその信用も理由になっている」

「信用でありんすか」

「大商会連合であれば長年の経済活動、ミツゴシであれば質の良い商品と商会自体の成長性が信用の元に成り立っている」

「もし偽札が見つかれば、その信用は崩れ去る。市民は紙幣の価値に疑問を抱き換金を求めて銀行に押し寄せる」

「そこに我々は一手先んじれば儲けは全て我々のものだ」

 

自分で言っておいてあれだけど、とんでもない詐欺師だ。

回収した金貨はミツゴシが信用崩壊を乗り越える為に使うつもりだ。問題はどう渡すか決まっていない事とタイミングを間違えれば本当にミツゴシが崩壊してしまうところなんだがそれは後で考えよう。

 

「納得のいく話でありんすが、ミツゴシではなく連合の紙幣を使う理由はなんなんでありんしょう?」

「見ればわかるさ」

 

昨日急いで交換して来たミツゴシと連合の紙幣を渡す。

 

「はっきりと違いがあるのが分かるだろう」

「透かしの有無と....この番号....後は印刷の粗さでありんしょうか?」

「ミツゴシの紙幣には製造番号が振られていて同じ物が1つもない、加えて透かし等の高度な技術が必要になる。利益を考えるなら作りの荒い連合の紙幣を使うべきだ、ミツゴシの紙幣だと費用に対して得られる利益が少なすぎる」

「そこまでお考えとは御見それしんした...先程の無礼な態度をどうかお許しください」

「気にすることではない、場所はこちらで用意しておくそちらは」

「わっちは人と機材を集めておきんす」

 

これでエージェントらしくなってきた。

作戦名はそうだな....ミツゴシを救おう大作戦!!

....ダメだ、ネーミングセンスの欠片もない。

こんな事なら美的センスをもっと磨いておくべきだった。

明日からアルファ達と距離を置かないといけないけど自殺したりしないよね?

大丈夫だよね?

 

 

ユキメと別れて寮へ帰っていると巨大な魔力がこちらに向かって走ってきているのに気付いた。このスピードはデルタだな。

幾ら夜とはいえ人の目がある、ここで見つかるのはモブとして非常によろしくない。

路地裏に向かって走っているとデルタも追いかけてくる。

 

「ボス~~~~」

 

路地裏に入った瞬間に抱きつかれた。

首から変な音がなったんだが。

 

「降りて」

「イヤ!」

 

背中にコアラみたいに抱きついているから、柔らかい感触が広がっている。

 

「臭い」

 

僕は傷つかない訳じゃないからな。

 

「ボス狐臭い」

 

さっきまでユキメといたからかな。

 

「狐.....狐狩りをしていたんだ」

「狩り!デルタもする!!」

「残念、もう終わっちゃった」

「え~~~~」

 

ユキメを狩られると非常に困る。

スーパーエリートエージェントが出来なくなっちゃうじゃないか。

 

「...じゃあ盗賊!!盗賊狩りしよ!!」

「盗賊かー、盗賊は僕も好きだよ」

「狩りしよ!一緒にしよう!!」

「でも今は立て込んでるから」

「イ~~~~~ヤ~~~~~ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!するの!!絶対するの!!」

 

首が色んな方向に動かされるからグキグキなっている。

折れそう。

 

「もう怒った!デルタ降りない!!」

 

困った、非常に困った。

こうなると本当に降りない、僕が折れるまで絶対に降りない。

 

「明日ならいいよ」

「イヤ!!今なの!!」

「今は無理だって」

「ガウ!!」

 

頭に嚙み付かれた。

痛い、齧るな。固いかもしれないが僕はペット用の骨の代わりじゃないんだぞ。

 

「デルタは用事があって王都に来たんじゃないの?」

「用事?」

「アルファに呼ばれてたりしない?」

「ひゅ」

 

ガタガタ震えると飛び降りてお座りした。

 

「アルファ様に怒られる?」

 

デルタが1番怖いのはアルファに怒られる事だ。

その気持ちは良く分かる、アルファに睨まれると蛇に睨まれた蛙の様になる。逆らえないオーラが出ているのを感じる。

 

「早く帰った方がいいよ」

「でも狩りが....」

 

デルタを見ていると前世で飼っていたグレートピレニーズのジョンを思い出す。

学校に行くのを毎朝見送ってくれるのだが玄関の扉に手を掛けると揺れていた尻尾から力が抜けて垂れて、扉を開けたら「キューン」と鳴いて引き留めようとする。

良く似ているな。

 

「分かった、明日なら付き合うから」

「でもボス噓つきだもん」

 

まだ言うのか君は。

 

「分かった迎えに行くから、早く帰りな」

「ホント?」

「ホント」

「分かった!!ボス明日ね!!」

 

屋根の上を走って帰っていく。

あの紐みたいな服装は改めさせないといけない。

 

デルタと一緒だと狩りではなく虐殺に変わってしまう。

 

「うぅぅぅぅぅあああああああああ!!」

 

デルタの二つ名は『暴君』、戦い方はその二つ名に相応しく目に付く獲物を手当たり次第に狩りまくる。そのせいかデルタの攻撃を受けて死んだら基本体の一部が無くなっている。

敵がどんどん消えていくから宝探しをする分には楽でいいんだが戦いの楽しみがなくなる。

こうやって生首が飛んできたり.....

 

「デルタ!?」

「ボス呼んだ?」

「あれ?」

 

今デルタの生首が飛んで....これ男だ。

でもデルタと似てるな。顔立ちや毛の色なんかもかなり似てる。

 

「デルタこの人知ってる?」

「うん?....ああ、思い出したのです!!デルタの兄なのです!!」

「え」

 

聞き間違いだよね?

兄って言った?

 

「デルタのお兄さん?」

「そうなのです!!兄なのです!!」

 

前からぶっ飛んでいるとは思っていたが流れで自分の兄をやりやがった。

 

「ダメでしょデルタ、お兄さんなら殺しちゃ駄目じゃないか」

「弱い奴は部族の恥なのです!こんな奴いらないのです!」

 

流石は獣人、ぶっ飛んだ考え方だな。力こそパワーだ。

 

「弱い奴は死ぬ!!死んだら増やす!!部族の掟なのです!!」

 

成程な、デルタがやたら僕にハーレムを作らせようとする理由が分かった気がする。もう既にハーレムの様なものが出来ていない事もないが大半がサキュバスだからな。

これ以上話してると絶対に僕のハーレムの話になるからとっとと帰ろう。

 

「狩りは終わったから帰るよ」

「え~~~」

 

背中に飛び乗っていつものようにしがみつくと頬擦りを始める。

 

「ボス、デルタに構ってくれない」

「僕にもやる事があるからね」

「ヤ~~~~ダ~~~~もっと構って!」

「時間ができたらね」

「デルタイイ子にしてるのにボス遊んでくれない!!イイ子にしたら遊んでくれるって言ったのに!!噓つき!!」

 

全然イイ子じゃないでしょ?

アルファから散々愚痴を聞かされてるから知ってるよ。カーペットを血で汚したり、カーテンを引き裂いたり、風呂に入らなかったり、アレクサンドリアの施設を破壊したり色々やっているようだけどこれでもイイ子だと言えるのかな?

 

「ボス、デルタの事嫌いなの?」

「どうしてそう思うの?」

「だってボス交尾してくれない」

 

それは本当にごめん。

でもデルタを抱くとベッドが破壊されたり、シーツがズタズタになったり後処理が大変なんだ。

 

「ボス」

「ん」

「デルタ寂しい」

 

はい、始まりました。デルタの寂しい大作戦が始まりました。

他の皆は僕が罪悪感を感じるのを分かってやっているが、デルタは噓偽りない本心で言っているから断るのが難しい。

 

「キューーーーン」

 

止めろ、胃が痛い。

でもこれ以上放置していると僕が性的ではなく別の意味で捕食されかねない。

僕が折れるべきだな。

 

「デルタ、イイ子にできる?」

「できる!!イイ子にする!!」

「ベッドを壊したりしない?」

 

僕が隠れ家に用意したベッドは250万ゼニーの高級ベッド。

あれを破壊されたらたまったもんじゃない。

 

「しない!ちゃんとする!!」

「シーツ破かない?」

「破かない!!」

「分かったいいよ」

「ボス大好き!!好き好き好き好き好き好き好き!!大好き!!スキ~~~~~~♡」

「そ、そう、か」

 

イイ子にすると言って直ぐに首を絞めているが突っ込まないでおこう。

癇癪を起こされたくないからな。

 

ベッドが破壊されずに済ませた僕を褒めてやりたい。

シーツは皺やら何やらで汚れているが洗えば済む話だ。

250万ゼニーが守られた事に比べればシーツの汚れなんて.....このシーツ30万ぐらいしなかったけ?

 

「ボススキ~~~~~~♡」

「ありがとう」

 

時計を見ると針は朝の6時ちょうどを指している。

始まったのが10時位だったと思うから8時間...2時間は寝ていたと思うから6時間もやり続けたのか。いつもならこんな事どうってことないが溜め込み続けたデルタは数人を相手にしているのと変わらない程に激しかった。

本当に僕を褒めてやりたい。

 

「ほらもう帰りな、朝ご飯用意してくれてるはずだから」

「え~~~~ヤダ~~~まだナデナデして欲しいのです」

「じゃあ後30分だけね」

「えへへへへ」

 

体を擦り付けないでくれ、折角落ち着いた僕の聖剣が暴走してしまうじゃないか。

よく考えればイータとシェリーの時に不完全燃焼で終わっていたのは良かったのかもしれない。もし6時間持たなかったらと思うとゾッとする。

 

「ほらもう30分経ったよ」

「ま~~~だ~~~」

「まったく」

 

ほんの少し触れる程度のキスをする。

 

「大好き♡」

「うん、僕もだよ」

「えへへへ♡ボスバイバ~~イ」

 

窓を開けて屋根に上がり、日が上り始めた街に消えていく。

ベッドから立ち上がって鏡の前に立つと悲惨な体が鏡に映る。

 

「デルタも随分嫉妬深くなった」

 

鏡に映る僕の上半身には無数の歯型と引っ搔き傷が残っている。

消したいけど消したら今度は本気で歯を突き立ててきそうだからこれは残しておこう。

多分これはデルタなりのマーキングだ、他の人に既に手を付けた獲物であるという意思表示なんだと思う。

 

「せめて見えない所だけにして欲しかった」

 

首筋は服では隠せないし、胸元はボタンを1つか2つ外せば見えてしまう。

腕は袖をまくったりすれば見えるだろうがそれはしなければいいだけだが、首筋は消すしかないが怒らないのを祈るしかない。

だがこれよりも酷い物がある。

 

「これは治したら確実に暴れるだろうな」

 

鏡に背中を向けて顔を後ろに向けて見ると、背中には無事な所がない程に傷が付いている。

猫が爪とぎしたみたいだな。

背中は服で隠れるが、ムズムズして気持ち悪い。

慣れるしかないんだろうが時間がかかるだろうな。

 

「残りの9割は落ち着くまでの間にしっかりと熟成させてその時にぶつけるから♪」

 

何故かアルファの言葉を思い出してしまった。

全身から汗が止まらない、それこそ脱水症状を起こすレベルで流れている。

これは詰んだか?

僕がジョン・スミスでしかもユキメと会っていたなんて知られたら、熟成された怒りにプラスαされて本当にミイラになるかもしれない。

し、死ぬ。

 

 

 

 

 

オマケ

 

「おはようなのです!」

 

勢い良く扉を開くといつもなら遅いからもっと速く来なさいや、朝から五月蠅い等言われるはずなのに今日はそれがないのだ。

 

「どうしたのです?皆変なのです」

 

静まり返った部屋の中で不自然そうに首を傾げている。

 

「おはよう、デルタ」

「お、おはようなのですアルファ様」

「今日も元気ね」

「ひゃ、ひゃい。今日もデルタは元気なのです」

 

部屋の空気は異様な程静かだった。

 

(なんか皆、怖いのです)

 

そして全員が異常なまでに落ち着いているのだ。

普段からかったりするゼータは何も言わない。

そしてデルタもおかしく感じているのが普段なら怖いとも思わないベータやガンマを怖いと感じてしまっているのだ。

感じているのも本能的な恐怖ではなく生理的な恐怖だ。

 

「デルタも来たから食事にしましょうか」

「は、はい、なのです」

 

デルタは幸せなのかもしれない。

何せ脳を破壊されずに済んだのだから。

 

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