近くのは潰れたし、行こうとしたら30分はかかるし不便でしかない
前半下ネタしかありません。
苦手な人は飛ばしてください。
ユキメによって連れ出されたアルファはVIPルームで一息ついていた。
アルファは落ち着いてドリンクを飲んでいるが、ユキメは未だ現実に帰ってきておらずどこか遠くを見ている。
「落ち着いたかしら?」
「....ええ、なんとか」
ようやく現実に帰還したようでふーっと長い息を吐く。
「それでシャドウはんはどちらに?」
「?さっきいたでしょう?」
「いややわ、アルファはんも冗談がうまいわぁ」
「何を言ってるの?彼がそうよ」
「うそや.....」
シャドウの正体を未だ受け止めて切れていないようだ。
「それで実際に見た意見を聞きたいの」
「.....」
「ユキメ?」
「.....」
「え....まさか貴方」
「.....」
「年下が苦手なの?」
見えている肌全てが真っ赤になり、両手で顔を覆ってしまった。
ユキメは生まれてから今まで年上の男と接する機会が多かった。
ユキメがかつて所属した娼館では成人でありそれなりの蓄えを持っている者でなければ、ユキメの一晩を買うことすらできなかった。
決まってそういった男は豪商や、どこかの跡継ぎなどが多い。
成人した男性に免疫があっても、未だ未熟な少年への耐性が無かったのだ。
「あんなん卑怯やわ」
理由はそれだけではない。
シャドウの顔と体にも理由があった。
少し化粧をすれば女にも見えるような中性的な顔立ち、しかも幼さも残っている。
そして首から下に搭載された、その顔とは似つかない筋肉。
そういった物を見てこなかったわけではない。ただ今まで見てきたどれとも違う息を吞むような美しさを持った筋肉、その顔と顔からは想像もつかない筋肉の差はユキメの情緒をズタズタに破壊した。
「アルファはん.....シャドウはんのお年は?」
「きっと聞かない方がいいわ」
「覚悟はしておりんす」
「....15歳、もうすぐ16になるわ」
「なっ」
空いた口が塞がらなかった。
「ホンマに?」
「本当よ」
「....嘘や、そんな訳あらへん。あれで15なんてあるわけあらへん」
シャドウの話し方や、ジョン・スミスの立振る舞いと強さからユキメは年齢を20歳、もしくは少し上だと思っていた。
しかしまさかの年下。
「噓や、こんなん噓や」
ユキメは娼婦という職業上心を殺して生きるしかなかった。
体や持っている技術は大人の女である、しかし心の方は未だ生娘のようなもの。
恋心を抱き年上だと思っていた相手はまさかの年下、しかも顔と体のギャップが激しすぎる。
ユキメという娼婦が作り出した仮面が剥がされその下の年相応の女が現れた。
そしてユキメの後ろに控えているカナとナツも同じ気持ちだった。
「あれで15って...冗談でしょ」
「どんな育ち方したらあんな色気が出るのよ」
2人も歴戦の娼婦、様々な男を相手にしている。
余りにも異質。年齢と体、そして纏う色気が釣り合っていない。
「シャドウはんはエルフとちゃいますの?」
「その気持ちは分かるわ、だから私は調べたの」
「それで結果は?」
「出産記録も存在していたし、血縁も辿れるだけ過去の物を調べたわ」
「....」
「調べられる範囲では彼は混じりっ気なしの純粋な15歳の人間よ」
「噓や」
またも顔を覆ってしまった。
「前は顔を隠した状態だったけど、顔を見た感想を聞かせて」
「...あれはもう魔性の男なんかじゃありんせん」
「なら貴方にはどう見えているの」
「魔王...化生の類でありんす」
随分な言われようである。
もし本人がいれば言い過ぎじゃないと言い出しそうではあるが実際やっている事は魔王の行いである。
「アルファはん、わっちに協力できるのは閨でだけ。あれは口説く前にこちらが堕ちてしまう、わっちら娼婦の天敵、できる事などありんせん」
「その気持ちよく分かるわ」
「情けない限りでありんす、その分閨の方は協力しんす」
「ありがとう....無理に答えなくてもいいから聞かせて欲しいの」
アルファにとって一番大事な事がある。
「普通の人って何回できるの?」
シャドウ以外に体を許す気はない、だが目の前には経験の豊富な相手がいるのだから聞いておくべき事ではあるが聞かない方がいい事でもあるかもしれない。
「2.3回....多くても5回でありんす」
「...じゅ、獣人ならどの位できるの?」
「多くて9かそこらだと....アルファはん?」
今度は口を開く事になった。
「...この前彼が無法都市に行ったでしょう」
「ええ」
「女を引っ掛けないように行く前に襲ったの、10人がかかりで」
「10人....え、10人?」
「何人かが動けなくなったわ」
「アルファはん、わっちと会った時のシャドウはんえらく....」
「彼ピンピンしてたでしょ」
そして再びユキメ達は口を開いて固まってしまった。
自分達の常識に当てはまらない性欲を前に驚きを通り越してしまった。
「ごく偶に私達が主導権を握ることもあるの、それでも彼を完全に打ち負かした事はないのよ」
「....」
「複数の時は彼の.....そのテクニックが凄くなるし、1人で相手すると本当に一晩中するんだけど.....やっぱり普通じゃないわよね」
3人の顔を見て普通ではない事を察する。
「冗談...でありんしょう?」
「昔はそんな事もなかったのよ、気付いたらこんな事になってて困ってるの」
「だからわっちの力を....」
「お願いできるかしら?」
何10回とできる相手はユキメでも経験はない、まして10人を相手にしてピンピンしている相手などなおさらだ。
「どこまでわっちが力になれるかはやってみないことにはどうも」
「それでもいいわ」
「...その、そうなった心当たりは?」
「幾つかあるわ」
ほっと息をつき胸を撫でおろす。
もしそんな性の怪物が理由もなく誕生したのであれば、娼婦達も商売していられない。
「昔の彼はねどれだけ興奮しても私達に手を出すような事はしなかった。でも私達は抱かれたかった、だから盛ったの。精力剤」
「精力剤....精力剤?」
聞こえてしまった不穏な言葉に頬を引くつかせる。
「飲み物や食べ物に盛ったり、出す料理も精の付く物を出したのにそれでも彼は手を出さなかった」
「....」
「それで色々あって彼を私達に繋ぎ止めるために媚薬を盛って7人がかりで彼を襲ったの」
「7人.....」
「一日中したわ」
「....アルファはん、その一日というのは」
「24時間よ」
3人の目は点になってしまった。
最早彼女達の理解できる領域の話ではなくなった。
「それから色々あって、8人で襲う様になったり。自慰するのが許せなかったから禁止したりもしたわね」
「....」
「それから王都に来て我慢できなかった馬鹿が3人増えたり、学園で女を増やしたのがムカついてお仕置きもしたわね」
「....」
「心当たりがありすぎて分からないわ」
「....アルファはん」
「どれが原因か分かったの?」
「全部に決まってるやないの!あんさんらがあの性の怪物を生み出したんやわ!!」
ユキメついに爆発した。もはや喋り方は崩れ素の状態である。
そしてついに性の怪物呼ばわりである、本人がこの場にいたら全力で否定しながら膝を抱えて丸くなる事は間違いない。
「15の子に禁欲させて挙句精力剤と媚薬て死ね言うとる様なもんやないの!」
「でも私達以外を考えながらしたなんて....」
「気持ちは分かるわ!でもだからて精力剤盛って襲うんは違うとちゃいまんの!」
「うっ」
「7人で襲ったのが一番訳わからんわ!そんなんしたら貞操観念ぶっ壊れるに決まっとるやないの!増やすな?増えるに決まっとるやないの!」
「ううっ」
「アホ!アルファはんの大アホ!!」
「....ごめんなさい」
アルファ、まさかの謝罪である。
「あの....」
「まだ何か?」
ギロリと睨まれた事でアルファは肩を竦める。
「普通の人ってどれくらい大きいの?」
アルファが一番気になっていた事である。
ユキメもその質問は恥ずかしいようで顔を赤らめる。
「ひ、人それぞれでありんすよ。小さかったり、大きかったり」
「普通の状態でへそまで届くのってやっぱり大きいの?」
「へそ!?なかなかお目にかからん.....今なんと?普通?普通っておっしゃったん?」
「...言ったわ」
「アルファはん....」
「違うのよ!これは本当に違うの!昔はその...おっきくなったらへその所に来るぐらいだったのに気付いたら成長してたの!」
「アルファはん」
両肩に優しく手を添えて語りかける。
「アルファはんはなんも....半分は悪いわ」
「そこは何も悪くないって言うところだと思うのだけれど」
「アルファはんはシャドウはんの中で眠っていた性の怪物を目覚めさせ何度も追い詰めた、どうなるかお分かりになりんしょう?」
「うっ」
死を体験して生き延びた者が異常な程強くなる事がある。
それが性欲にもあるとしたらどうなるか?
前世で18年間禁欲し続けた怪物の性欲を目覚めさせ追い詰めたとしたら爆発的に増加するのは誰にも想像はつく。
だがシャドウに前世がある事を知らないアルファはそれをしてしまった。
「これも縁やから、わっちも協力しんしょう。アルファはんらでは荷が重い、わっちが可能な限りお手伝いしんしょう」
「ありがとう、心強いわ」
「それでその....今の大きさはいかほどに?」
アルファもそれは恥ずかしかったのか赤くなって黙り込む。
言葉にするのが恥ずかしかったのか自分の腹に指を当てどこまで届くか見せる。
「噓やろ...こんなとこまで」
「入れられただけでもかなりしんどいわ、慣れてなかった時は入れられただけで気絶した事もある」
「雌殺し....」
ゴクリと唾を飲み込む音が3つなる。
カナとナツは恐怖していた、もし体験すれば女として終わると直感が告げていた。
「わっちの人生最大の強敵やわ」
ユキメだけは少し楽しそうだった。
単純に自身の力が通用するのか興味があるのと自身を屈服させられる可能性を持った雄の出現に心を躍らせている。
「アルファ様!シャドウ様が逃げました!」
そんな空気の中勢い良く扉が開きベータとイプシロンが部屋に入る。
「はぁ?」
さき程まで下品な話をしていた空気と打って変わりブラックホールの力を呼び覚ます。
「どこに逃げたの?」
「完全に気配を消しています、それに一般のエリアに逃げ込んだので動くのが難しく」
「成程、でも私が逃げる場所を予測していないとでも思ったのかしら?彼って本当にこういう時だけ抜けてるわよね」
「分かるんですか!?」
「男湯以外あると思う?」
「...盲点でした」
「私達が絶対に入れないから逃げ込んだんでしょうね。あとは一般人がいるから派手に動けないとでも思ったのでしょう」
「では見張りをつけます」
「それがいいかもね、でも女湯の方には入らないでね」
「何故ですか?」
「逃げ切ったと思って油断しているわ、そのまま油断させて出てきた所で捕まえなさい」
「流石はアルファ様です!!」
「ありがとう、でも気になることがあるの.....どうして彼は逃げたのかしら?」
ベータとイプシロンからサッと血の気が引き、顔色が悪くなる。
「あら、どうしたの?心当たりでもあるのかしら?」
「....」
「ベータ」
「にゃにゃにゃにゃんでもありましぇん!」
イプシロンは視線を向けられると肩をびくりと震わせて、滝の様な汗が流れるとスライム率99%の胸が光沢を持ちツヤツヤと光り始める。
「イプシロン」
「....」
「答えなさい」
「わ、私とベータ....どちらが魅力的かと聞きました」
「私がいない間にそんな事してたのね」
傍らで見ていたユキメはシャドウの性欲が強まった理由の1つを察した。
(やっぱり7割はアルファはんが悪いわ)
受けたストレスをそのまま与えた当人に返している。
それを人数分繰り返せば当然性欲が強くなるし、モノだって大きくなる。
だがユキメはそれを口にしない。
「2人とも少しお話しましょうか?」
『は、はい』
シャドウを堕とすのに口出ししない約束を結んではいるが、彼の心に自分を刻み付ける何かが必要になる。受けたストレスをそのまま返させるのではなく優しくそして甘く蕩かす事ができれば刻み込む事ができる。
(シャドウはんの心はわっちが貰う)
ユキメも獣人らしく獲物に狙いを定める。
だがユキメはシャドウが性の怪物と知っていても体験したわけではない。
それ故にシャドウの性欲の深さ、技量を測り間違ってしまった。
そして最大の要因である女が落ちてしまう理由を理解した気になっていた。
ユキメの未来が決まった瞬間だった。
水着から浴衣に着替えた僕は他のお客様の迷惑にならないように逃走中である。
七陰の中だけでなくシャドウガーデン内で胸の大きさで争っているのは知っている、アルファがイータに豊胸の相談をしていたのを偶然聞いてしまったのだ。
ここで偽物であれど魅力的だと答えればあの天高くそびえ立つプライドの持ち主のイプシロンは誇張した事を言いふらすのは目に見えている。
あの質問には絶対に答えてはいけない。
エリザベートとメアリーさんも自分の胸を気にしているようだった。
だがここはアレクサンドリアではなくミツゴシの施設、一般人もいるからアルファ達も荒事を起こせないはず。
アルファ達も見逃している安全地帯が存在するからそこを目指すだけだ。
「あら、元気そうねシド」
「.....なんで君がいるの」
呼び掛けられた方にはまさかのアレクシア。
「ミツゴシとは個人的に関係があってね招待されてるの」
「そうなんだ」
「私ね昨日、シドを誘うために寮までいったのよ」
「へー」
「でもねシドはいなかった」
「そうなんだ」
「私の誘いを蹴って、一体誰と一緒に来たのかしら?」
どんどん姉さんに似てきたな。
「僕は1人で来たよ」
「噓おっしゃい、女の匂いがプンプンするわ。それに....」
手首を掴まれる。骨が軋んでるから離して。
「この歯型と引っ搔き傷は何かしら?」
「自分で....」
「それは通じないわよ。女の匂いもするし、今さっき付けましたって感じのもあるわよ」
アレクシアの笑顔が怖い。
折れる、手首が折れる。今の僕は一般人のシド・カゲノーの強さになるように調整してあるからアレクシアの握力に勝てない。
手首に顔を近付けて匂いを嗅いでいる。
「エルフが8人.....どっかで会った女のもあるわね」
君は獣人か何かかな。
「獣人が2人.....片方は知ってる気がするけどもう片方は知らないわね」
馬鹿な...こいつは人間なのか?
「人間が1人.....この前の茶髪女ね。忌々しい」
今分かった。
アレクシアはUFOとかUMAと同じ未知の存在だ。
そうでないとこの感知能力の説明がつかない。
「これは誰かしら?エルフでも獣人でも人間でもない....それはどうでもいいわね。女であることに変わりないのだから」
エリザベートの事に気付かなかったのは良かった。
災害級の力を持った人が一般人の中に混じってるなんて知ったら、この脳筋は直ぐに突撃するだろう。
「今とても失礼な事考えなかった?」
「滅相もございません」
「まあいいわ、私も付ければいいだけだし」
「え?....痛いよ」
やると思ったよ。
噛むというよりは吸い付くだな、でもしっかり跡は残りそう。
「ごちそうさまでした」
だから僕は食事じゃないって。
「じゃ行きましょうか」
「どこに?」
「私の部屋」
1.ぜんりょくでたたかう!
2.にげる!
→2.にげる!でいいですか?
シド・カゲノーは逃げ出した!
「どこ行くのよ」
「うごぉ」
しかし捕まった。
「さ、私の部屋で一緒にお風呂入りましょうね」
「落ち着くんだ、君はここで混浴をするのがどういう事か分かっていない」
君はここで混浴なんてしたら死ぬことになるのが分からないのか。
「どういうことよ」
「僕の知り合いに君の事を殺したい程嫌っている人が何人かいるんだ」
「そんな奴がいるのね。是非お会いしたいわ」
「.....今日一緒に来てる」
「....」
「もし混浴したら君は確実に殺される」
「私これでも王族なんだけど」
「彼女達にそんな事は関係ない。彼女達からすれば身分なんてネクタイとか宝石なんかの見栄えを良くする為の飾りでしかないんだ」
「随分過激ね」
「そう。だから混浴は諦めて」
「いくわよ」
今説明したよね?
その上で混浴するって判断したんなら頭おかしいぞ。
「聞いてた?王族とか通用しないよ」
「聞いてたわよ、見せつけてやるのよ」
「だから殺される.....」
「シドの恋人は私なのにどいつもこいつも蠅みたいにブンブンブンブン鬱陶しい。百歩....一万歩譲ってクレアは協力者だから歯を食いしばれば耐えられるわ。でも他の女はダメね、ローズ先輩は協力するって言いながらサラッと抜け駆けするし、シェリー先輩はシドからチョコレートを貰ってるし、リニューとかいう女は随分とボロクソに言ってくれるし......あぁ、もう思い出しただけでイライラするわ」
偽札事件の時に会ってからそんなに経っていない。
だから責任とか既成事実を求めてくるような....
「男女が混浴すれば間違いの1つも起こるわよね♪」
全力で逃げ出す!!
しかし逃げられない!
「あらどこに行こうっての?それに据え膳食わぬは男の恥って言うでしょ。こんな美少女が迫ってるのに断るのは失礼だと思わない?胸も尻も成長中だから貴方の手で育てられるのよ?男はそういうのが好きって聞いたわよ。これだけ魅力的な提案をしているのに断るなんて......し・な・い・わ・よ・ね?」
こんな事なら遠回りせずに安全地帯に直行しておけば良かった。
「断らないわよね?」
「....いや」
「今なんて言ったの?まさか断ったわけじゃないよね?」
「別の機会にお願いしたい」
「.....分からせる必要があるようね」
このままだと既成事実からの婚約、王族入りが確定する。
「お久しぶりです、アイリス様」
「え、噓。姉様....あ」
ちょろすぎる。
手が緩んだ瞬間に抜け出して安全地帯に向かって階段を駆け下りる。
「待ちなさいよ!」
遅いなアレクシア、僕の目の前には安全地帯がある。
後は扉を開くだけ。
「くっ、次会ったら覚えてなさいよ!!」
まるでヤンキーのようだ。
なんとかたどり着けたな、男湯に。
風呂に入る前に体を洗う、これが温泉での作法だ。
皆が気持ちよく風呂に入るには必ず守らなければいけない。
逃走の際に流れた汗も綺麗さっぱり流れた。
これから露天風呂に入って青い空を見ながらここ最近の心労を癒して...
「何してんの?」
露天風呂に繋がる扉を開けると衝立に登っているヒョロとジャガがいた。
「なな、何もしてません!のぞこう....あ、シドか」
「ババ、バレなかったらいいとか思って...シド君ですか」
入ってきたのが僕だと分かると慌てていた2人は落ち着いて衝立から降りる。
「何してんの」
「ノゾキだ」
「ノゾキです」
胸を張って言う事でもないし犯罪だからな。
「てかなんでここにいるの?」
ここのチケット代は万年金欠の2人では到底買える金額ではなかった。
「そりゃ勿論借金....頑張って稼いだからに決まってるからだろ!!」
「そんなの仕送り....ちょっと一山当てましてね」
「2人って温泉とか興味あったけ?」
「なに言ってんだお前、そんなわけねぇだろ」
「そうですよ、やる事なんて1つしかないじゃないですか」
なんかこの先が予想できる。
「訪れた出会いのチャンス!!」
「綺麗なお姉さんと仲良くなる為に僕らは戦いに挑まなければいけません!!」
『男だったらナンパだ!!』
うわー引くわ。
仕送り使いこんでする事でもないし、借金してまでする事でもないだろ。
ガツガツし過ぎで気持ち悪い、ちょっと距離おこ。
「だからシド!一緒に覗こうぜ!!」
「3人いれば怖くありません!!」
そういう事を大声で言うから嫌われるんだよ。
「行かないのか?」
「好きにしたら。僕は知らないよ」
「お前は見ないのか?」
「いいよ、別に」
断るとジャガが笑ってきた、ちょっとイラっときた。
「仕方ないですよヒョロ君。シド君には童貞を卒業する勇気がないんですから」
「哀れな奴だな」
哀れなのはお前らな、それと童貞じゃないし見ようと思えばいつでも見られるし。
またしても2人は衝立に登っていく。
「俺達ならこの壁を乗り越えられる!」
「1人でできなくても2人ならできます!!」
言ってる事は感動的なんだけどやってる事は犯罪なんだよな。
「ドウテイ・ボーイ伯爵曰く!」
「大胆な男を」
『女は待っている!!』
最低だな、犯罪をしているという自覚すらないのか。
別に止めたりはしない。
ここを設計したのはイータだ、自分達も使うことを想定して設計している筈なので防犯についても手を抜いていないはずだ。その証拠に
『ぐあああああああ!』
衝立から生えた複数のパイプから出た紫色の液体が2人に浴びせかけられ、2人は温泉に落下した。
バカだな。覗きなんて犯罪しようとするからだ。
うん?今ちょっとだけ温泉から魔力を感じたな。気のせいか。
最近はゆっくりできる時間なかったから、温泉に浸かっていると疲れが取れて気持ちいい。
腰にタオルを巻いて湯船から出ると立ち上がった2人が近づいてくる。
「1人だけ温泉を楽しむ何てズルくないか、おい」
「そうですね、無性に腹が立ちます」
そうして2人は腰に巻いたタオルに手を伸ばしてきたので、サッと躱す。
「何のつもり?」
「シド君も恥をかけばいいんです」
「そうだ、お前だけ無傷なんて許せない」
八つ当たりかよ。
揉み合っているとタオルを取られてしまった。
「ははは!お前のエクスカリバーを....見て....やる」
「大丈夫ですよシド君!小さくたって笑ったり....しま....せん」
僕のエクスカリバーを見た2人は固まってしまった。
何人もの美女とヤリまくった事と精力剤の実験にされた事によって僕のエクスカリバーは進化を遂げた。
最早聖剣などではなく槍の方が表現としては正しい。
「調子乗ってすいませんでした」
「僕達が悪かったです」
「どこを見て態度を変えた?言ってみてよ?」
2人は土下座している。僕のエクスカリバーを見て土下座するのは余り気分が良くない。
土下座を続ける2人を置き去りにしサウナに向かう。
サウナと外気浴を繰り返すことで体を整える、実に気持ちいい。
「ん?地震か?」
今一瞬だけ地面が揺れた様な気がしたが気のせいか?
「やっぱり揺れてるな」
小さな揺れが連続して発生している。
確か陸で起きる地震は活断層のずれが原因だって習った気がするけど、イータがそんな場所に施設なんて造るわけないし。
「おい、シド!まずいって速く出てこい!!」
「そんなとこいたら死んじゃいますよ!!」
僕としてはこのままサウナを堪能したいが、地震で入口が潰れたのに平然としているのはモブとは言えない。モブだったらこういう時は慌てるのが普通なんだろうけど、サウナで落ち着きすぎて無理そうだ。
「分かった出るよ」
この地震の原因も知りたいし、プールの方から感じる強い魔力にも興味がある。
プールに着くと白いスライムスーツを着た七陰と水でできた龍と戦っていた。
白も結構いいかも、参考にさせて貰おう。
「そういえば昔、龍の涙がどうとか言ってたな」
温泉ランドの案内パンフレットを開いてみると、長ったらしい説明が書かれている。
要約するとお姫様と龍の悲劇だな。
物語ではお姫様の涙が原因と書かれている。
「お姫様か....」
心当たりは2人いる。
1人は僕と混浴して既成事実を作ろうとした現役
もう1人は、同じく腹黒で自称お姫様な
アレクシアが泣く様な事はないだろう、だって図太いし。
だとしたらベータだな、イプシロンかイータに色々言われたんだろう。
イプシロンはベータを目の敵にしているから多分胸関係で色々と言ったんだろ。
イータは僕とアルファ以外には割と毒舌だから、腹黒とか気にしている部分を攻めたんだろうな。
「終わっちゃった」
いつの間にか終わってた。
事故ではなくイベントとして処理するようだ。
その方がいい、原因不明の事故よりも伝説になぞらえたイベントの方が受けもいいし今後の集客に繋がる。
ついでに龍の魔力をちょっと貰っておこう。
「よし!逃げるか」
僕の勘が告げている。今逃げなければきっと後悔すると。
この騒ぎに乗じれば僕がいなくなっても気付きはしない....
「どこに逃げられるのですか?」
振り向けば僕が上げたパーカーを着たニューがいた。
ただしブラックホール発動中である。
「いやだなニュー、聞き間違いだよ」
「そうですよね、シド様が約束を破る様な事するわけありませんよね」
「....」
「....」
「...帰るつもりはなかったんだ、ただこんな事になったから僕がいたら邪魔になると思って...」
「途中で抜けるのは禁止。そういう約束でしたよね、さぁ行きますよ」
腕を組んで引っ張られる。
「私達も色々準備してますから楽しみにしてて下さいね」
君達が僕で楽しむの間違いだろ。