この話を書き始めたのが一年前という事実に愕然とした。
怠けてたんだなぁ。
拘束衣というものがある。囚人なんかを移送する時に使う特別な服だ。
両腕と両足を固めて動けなくなるようになっている。
「苦しい」
ニューに捕獲された僕は大きな宴会用の部屋で拘束衣を着せられ、20分近く放置されている。
逃げようと思ったが拘束衣の上から全身を鎖で縛りつけられて動くのが難しい。
逃げようと思えば時間はかかるけど逃げられる。
関節を外したり、やり方は幾らでもあるがやらない。
「いいですよ、別に逃げても。私達の楽しみが増えるだけですから」
ブラックホール状態で言われたので、逃げないで大人しくする事に決めた。
楽しみ...想像もしたくないがきっと僕の尊厳が色々と死んでしまうのは確かだ。
想像しなくても大体分かってしまうのがなお恐ろしい。
そんな恨みを買う様な事は.....いっぱいしたな
「あら、大人しくしてたのね。貴方が逃げた時にはどうするか考えたんだけど、ちゃんと大人しくしてたのね。ちょっと残念」
「まあね、それよりもこれを解いて欲しいな」
待っていると皆とエリザベートとメアリーさん、ユキメと付き人のナツさんとカナさんが入ってきて、続いて大量の紙袋とカメラを持ったミツゴシのお姉さん達が入ってきた。
それと
「シェリーも来てたんだ」
「はい♪来ちゃいました」
「呼んでないのに、勝手に来た」
「ん?何か言いましたか?イータさんが置いていったから来るのに苦労したんですよ?連れていってくれる人を探すのにも苦労しましたし、見つけても逃げられそうになりますし。説得するのも苦労したんですよ、どれだけ言っても皆さん私に実験台にされると思ってるんですよ。そんな事しないのに...誰のせいでしょうね?
忘れたんなら思い出せる様にお注射しときますか?」
「ぴえっ....な、何も言ってない」
イータがシェリーに怯えている。
あの様子だとシェリーに実験台にされそうになったとかかな?実験台にされる気持ちが分かったら人を実験台にするような事は控えてくれるといいんだが。
「私が目の前にいるのに、いい度胸ね?」
おっとしまった。ブラックホールがこっちを見ている。
動けないから倍増しで怖い。
「凄い事するわよ?」
「凄い事って何?」
「許して欲しい?」
「凄い事って何?ねぇ」
「許して欲しいでしょ?」
「無視しないでよ、凄い事って何?」
「凄い事をされたくなかったら私達の用意した衣装を着なさい」
「だから凄い事って何?......えっと、つまりコスプレをしろと」
許して欲しければコスプレをしろと言うのか、別にいいけどさ。
それよりも凄い事とは一体何なのか教えてください。
「ずっと勿体ないと思ってたの。顔もいいし体型もいいんだからもっと似合うはずなのにって。だから....」
そもそも僕が着てるのは君達が用意したやつじゃないか。
目立つと
僕としては目立たない服装はモブっぽくていいんだが。
「今日は一杯着てほしいの」
僕のお着替えがアルファのお願いらしい、ニューの方を見てみると頷いている。
「それはいいとして」
「何かしら?」
「凄い事って何?」
「準備を始めなさい。長くなるから精力剤を大量に用意しなさい、それから....」
「ごめんなさい、やめてください。コスプレしますから凄い事はしないでください。死んでしまいます」
そして始まったのはシャドウのコスプレ大会。
トップバッターはアルファ。
鼻息を荒くしてながら衣装が入った紙袋をシャドウに渡す。
「ほら、速く着替えて」
「はいはい」
紙袋を受け取ると簡易の更衣室に入り、紙袋を開ける。
(やっぱり根に持ってるな)
手早く着替えて着替えて、更衣室の外に出ると
『きゃあ~~~~♡』
黄色い悲鳴が上がる。
アルファが用意したのは黒で統一されたスーツ、カッターシャツもネクタイも靴も真っ黒だ。
「いい、とてもいいわよ」
鼻血を出しながらカメラを構えてパシャパシャとシャッターを切る。
「ポージングもしてくれるかしら?」
「しないと駄目?」
「何かしら?私は今どこかの誰かさんがどこぞの狐が作ったパチモンスーツを着て私の前に敵として現れて、挙句碌な事も教えてくれずにボコボコにされて捨てられそうになったトラウマと寝取られの脳破壊を上書きしてるの。何?何か文句あるの?凄い事するわよ?」
「ないです、ごめんなさい。それと寝てないです」
「は?パチモンスーツを着て敵対関係になるのはもう寝取られなのよ、誰がと言おうと寝取られよ、私は酷い傷を負ったのよ。それを今上書きしてる所なの、これ以上文句言うなら本当に凄い事するわよ」
「凄い事はやめてください、ごめんなさい」
「分かったら黙ってポーズを取りなさい」
「はい」
組織のトップとは思えないあんまりな扱いである。
滅多にお目にかかれない組織のトップが幹部からあんまりな扱いを受けていたら、下部メンバーは衝撃を受けるはずだが
「クッソエロいなぁ」
「は?私よりとし.....した?ドスケベじゃん」
「駄目だ駄目だ、これ以上見たら狂う....狂ってしまう...559みたいになりたくない」
「違う違う違う.....私は年上のお兄さんによしよしされたいのに.....年下イケメンに甘やかされたたくなるなんて...こんなの絶対に違う」
「私もう駄目かもしれない、無理だわ。我慢しろとか拷問でしかないわ」
「お前馬鹿か!殺されるぞ!!」
「ドスケベがドスケベな格好してドスケベなポーズしてる」
「不敬だぞ.....気持ちは分かるけど」
「私のドタイプなイケメンがクッソエロイ格好してるんだけど.....これ夢だよね?夢だよね?うん夢だわこれ。ならなにしてもいいよね」
「誰か縄持って来て!!馬鹿を捕まえないと連帯責任になるわよ!!」
「ふざけんな!至福の時間をぶち壊すじゃねぇ!!」
「離せよぉ!!私はドタイプのイケメンとイチャイチャするんだよぉ!!あの地獄みたいな訓練を切り抜けたんだぞ!!ご褒美ぐらいあってもいいだろう!!」
「お前本当に馬鹿だな...」
年下、中性的、イケメンという墜ちるのが避けられない属性が盛られまくった男子に頭を狂わされていた。そもそもトップ以外女性しかいないシャドウガーデンは男日照り状態、これで墜ちるなと狂うなと言うのは無理がある。
そして狂い過ぎて理性が飛んでいってしまったせいで、その地獄の訓練を施した本人がいる前でうっかり口を滑らせてしまった。
「ほう、地獄の訓練か」
「そうだよ!!あれは本当に地獄と言って差し支え....な....い.....ひぇ」
地獄の訓練を施した
「この馬鹿者がぁ!!」
「んぎぃ」
ラムダの鉄拳が口を滑らせた愚か者の頭にめり込む。
「痛いぃ....頭が割れるぅ....酷いぃ...シャドウ様ぁ酷いパワハラを受けました、助けてくださいぃ」
「ほう、自分の軟弱さ故の鉄拳制裁をパワハラと抜かすか。貴様には特別厳しいしごきが必要なようだな」
「すいません!!調子乗りました!申し訳ございませんでした!!」
「アレクサンドリアに帰ったら私が特別に付きっ切りで地獄の訓練でしごいてやる」
「ひいぃぃぃぃぃ!!シャドウ様助けて下さい!!死んでしまいますぅぅぅぅぅぅ!!」
「シャドウ様に縋るなと言っているだろう!!」
「んぎぃ....痛いぃぃ....シャドウ様助けてぇ」
ラムダの拳骨を2発喰らっても尚シャドウに助けを求める愚か者。
そんな彼女をシャドウは
(何も見てないし聞いてない、ここで反応しようものなら絶対に凄い事される)
意識の外に追いやった。
凄い事の内容は分からないが、今助けを求める声に応えたら即効で凄い事をされるという確信があった。
助けを求める声を無視してアルファの要求するポージングに応える。
「満足した?」
「まだよ」
「まだなんだ」
神妙な顔つきで壁際までアルファは歩くと背中を壁にピッタリと付ける。
「壁ドンを要求するわ」
「壁ドンかぁ」
「何よ!私には壁ドンできないっていうの!?」
「そういう趣味あるんだなって驚いてる」
「私にだってそういう趣味あるわよ!!イチャイチャするのも好きだけどガツガツワイルドに攻められたい時だってあるのよ!さぁ来い!!ハリーハリー!!」
「分かった、じゃ行くよ」
壁ドンを待つアルファにシャドウは仕掛ける。
縮地法で一気に距離を縮め、顔の横に手をつき鼻と鼻が当たりそうになるまで顔を近付ける。
「どう?満足できた?」
ドタイプのイケメン男子が鼻先ギリギリまで顔を近付けている。
しかもスーツによるイケメン度補正がかかって倍増しでカッコよく見えて
「うわ、大丈夫?」
脳破壊によるダメージで大量の鼻血が噴き出た。
鼻血を拭く為に離れようとするが
「離してくれないと鼻血拭けないよ」
その腕をがっちりと掴んで離さない。
「ベッドに行きましょう」
「ふぇ」
「今すぐ行きましょう」
「おいゴラァ!!第一席抜け駆けしてんじゃねぇ!!」
ゼータの飛び蹴りがアルファに炸裂。
ガードもできず吹っ飛ばされて床を転がる。
「第一席だからって何してもいいわけじゃないぞぉ!」
「何よ!!どうせ後でヤル事はヤルんだから今しようが後でしようが変わりないでしょう!!」
「明日の朝まで帰ってこないですよね!?」
「当たり前でしょ!!寝取られの傷を癒すんだから朝までかかるに決まってるでしょう!!」
「僕ユキメと寝てないよ?」
「五月蠅い!あれはもう寝取られよ!寝取られなのよ!!癒しが必要なのぉ!!」
「縄を...やっぱり鎖持って来て!!もう引きちぎり始めてる!!」
「離せぇ!!私はシャドウとイチャイチャエッチするのぉ!!寝取られで傷ついた心を癒すのぉ!!寝取られの傷はイチャイチャエッチでしか癒せないのぉ!心の傷を癒すのよ!!シャドウを寝取り返すの!!離してよ!!」
「だから寝てないから寝取られじゃないって」
「五月蠅いぃ!!誰がなんと言おうとあれは寝取られよ!!
「ええぇ」
「鎖追加で持って来て!!3本じゃ全然足りない!!」
「五月蠅いんだよ!!これでも噛んでろ!!」
「私の口に突っ込んでもいいのはシャドウの....んーーーー!!んんーーーーーー!!んーーーーー!!」
「何これぇ」
「わっちはシャドウはんを寝取っとった?」
「聞いてはいけません」
「そうです、馬鹿が
「寝取りってなんやった?いつわっちはシャドウはんと寝たんや?」
「だから反応したら駄目ですって、馬鹿が
「寝てないから寝取りじゃないです、この話はここで終わりにしましょう」
「.....パチモンスーツ言われた」
「確かに私達のよりも似合ってますね」
「帰ったら品質の見直ししますか?」
「....そうやな、わっちも負けてられへんからな」
文字数が多すぎたら読む人もダレルかなと思ったから複数回に分けました。
という訳で寝取られ?で頭がおかしくなったアルファさんでした