陰の実力者になりたくて!addition   作:読者0

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幕間→本編の進行状況によって飛ばした話
小話→ただのネタ話

この認識でお願いします

アイリスの時には構想を立ててはいたんですけど、本編を優先させたので小話になりました
特に関係のない話だからアクセル全開でいきます


外伝1 お前が○になるんだよっ!!
姉(偽)


状況を整理しよう。

玉座の間でいつもの様に僕の頭では理解できない報告を受け、雑談に移った時に突然ニューが土下座してきて

 

「私の弟になって下さい!!」

 

と言って来たんだ。

思い返してみても全く理解できない。

理解不能な事を言い出したニューは正座し、周りを囲まれて剣を突き付けられている。

 

「それが最後の言葉でいいのかしら?」

「待て待て待て待て、話を聞こう」

 

処刑人の様に剣を振り上げたので止める。

 

「羨ましかったんです」

「何が?」

 

僕の周りの人は主語を飛ばす人が多い。

 

「クレア・カゲノーが羨ましいんです!!」

「何で」

「お姉ちゃんなんて呼ばれて羨ましかったんです!!」

「そっか」

 

僕だって嫌だよ。

あんなDVお姉ちゃんなんて望んでなかった。

できるのならチェンジしたいが無理だ。

 

「シャドウ様!」

「なに?」

「私も年上です!」

「そうだね」

「なんなら人間です!」

「だから?」

「私にもお姉ちゃんになる権利があります!」

 

ないよ。

どっかで頭でもぶつけたのか?

 

「どうしても呼ばれたいの?」

「はい!!!」

 

力強く言い切った。

 

「シャドウ、ニューを甘やかさないでちょうだい」

「そうですよ、直ぐ調子に乗るんですからもう少し厳しくしてください」

 

そんな事言われても厳しくしすぎたらガスが溜まって爆発するかもしれないからガス抜きの為なら別に甘やかしてもいいじゃないか。

 

「今日だけなら別にいいよ」

「本当ですか!!」

 

凄い食いつきだな。

 

「ならデルタはボスの妹になるのです!!」

『はぁ?』

「きゃいん!」

 

睨まれたデルタは椅子の後ろに隠れて尻尾を抱きしめて丸まっている。

 

「なら私の事もお姉ちゃんと呼んでくれるのよね?」

「え?呼ばないよ」

「な、な、んでよ」

「だって同い年だし、それになんか怖いし」

「な、なんか怖い」

 

ガックリと膝をついて崩れ落ちる。

 

「シャドウ様!ベータも年は同じですが素質はあります!」

「素質ってなに?ベータも後が怖いから呼ばない」

 

ベータも膝から崩れ落ちた。

 

「イプシロンも年上ですよ」

「そうだね、一番まともかもね」

「そ、そうですよね」

 

この中なら一番僕の姉になって欲しいと言える。

 

「でも呼ばない」

「そんな!!何故ですか!納得のいく説明を!!」

「だって作曲家シロンの弟子とか言って回りそうだし」

「い、嫌ですわ、そ、そそそそんな事するわけありませんわ。ほほほほ」

 

なら僕と目を合わせられるよね。あっちにいったりこっちにいったりしてるよ。

 

「ガンマも、ガンマも年上です!」

「そだね、でも嫌だ」

「ど、どうして」

「だって僕の事をミツゴシの後継者とか言い出しそうだし」

「い、嫌ですわシャドウ様。ガンマはそ、そんな事は致しませんわ」

 

僕と目が合わないんだから自信ないんだろ。

 

「主、私も年上だし姉としての条件は満たしてると思うよ」

「ゼータは監禁とかしそうだから却下」

「........ソンナコトシナイヨ」

 

今の間はなに?

自分でも自信がないんだよね?

こっちを見ろよ、それに凄い片言だったよね。

 

「マスター、私も、年上」

「イータが一番危険、却下」

「なぜ」

「洗脳したり記憶をいじったりしそうだからだよ」

「そんな、わけ.........ない」

 

今の間はなに。こっち見ろ。

その注射器はなんだ、中のピンク色の液体は何だ。

垂れた所の絨毯の色が変色してるんだが。

何それ?

 

「シャドウ様!不肖オメガ、充分条件は満たしているかと思います!」

「だから条件ってなに?」

「シャドウ様!」

 

条件が何なのかは知らないけど、姉にするのならいいと思う。

...自分でもちょっとわけわからんが。

 

「いいと思うよ」

「では!私をどうぞお姉ちゃんとお呼びください!」

「でもいやだ」

「そ、そんな...」

 

言い方は悪いかも知れないがニューが言い出した時にヘドロの様なドロドロとした何かをオメガから感じた。そのヘドロの正体が分かるまではちょっと距離をおこう。

あとはこっちを見てくるイケメンエルフだけだ。

 

「.....あの」

「まぁ......いいんじゃない」

「で、では!!」

「別日にね」

 

カイには不安要素がないわけではないが他に比べるとましだろう。

ましだと思う。

.....思いたい。

 

「もっと良識的だったら僕も別にいいんだけど」

「良識的?今良識的って言ったの?」

「シャドウ様、今から辞書を持ってきますので良識という言葉の意味を調べて下さい」

「そこまで言う事なくない?」

「騙されてはいけません、ニューの腹黒さは私達の中でも1番です」

 

それって自分で腹黒って言ってるようなものだけど気づいてる?

 

「腹黒というかもうヤク....」

「わーわーわー!!」

「必死だね」

「それだけは勘弁してください」

 

そこまで隠そうとすると気になるんだが、女性の秘密には触れない方がいいだろう。

 

今日だけと言っても、門限まで残り7時間といったところだ。

ご機嫌なニューとは違い、拒否された人達は血の涙を流しそうになっている。

 

「■■■■■■■■■■」

 

オメガからは言葉で表現できない呪詛が飛んできている。真顔なのが余計に怖い。

 

「落ち着かないか、こういう時こそ冷静になるべきだろう」

「自慢か?自慢なのか?私を痛めつけて楽しいか?」

「そんなつもりはない、ただ落ち着けと......」

「■■■■■■■■■■」

「何と言ったんだ?」

「■■■■■■■■■■」

「だから何て....」

「■■■■■■■■■■」

「おい、何故近づく...近づくな!怖いんだ!理解できる言葉で話せ!」

 

僕は何も見なかった、見なかったんだ。

だからオメガの全身が真っ黒なオーラで覆われている様に見えるのも見ていないんだ。

 

「どうかしたの、シド」

「何でもないよ、ニュ...」

「ん?」

 

やっべ、間違えた。

 

「....お姉ちゃん」

「くうっ」

 

今日だけは本物の姉弟みたいに振舞わないといけない。

ニューには仕事があるから、僕はそれにひっつく形になる。

事務処理を隣でずっと見ているけど飽きてきた。

 

「お姉ちゃん、僕紅茶淹れてくるね」

「ふぐっ、お願いするわ」

 

胸を抑える程苦しいのか。

 

給湯室でお湯を沸かす。

インスタントの紅茶と違って茶葉から淹れる時は温度管理が重要になる。温度次第で味にも違いが出る、僕は拘りが強いからこの作業は雑にできない。

 

「シャ、シャドウ様!!」

「お忙しいところ申し訳ありません!!」

 

見たことはあるけど名前を知らない人達に喋りかけられた。

 

「えっと、ごめんね。誰だっけ?」

「気にしないでください、私達の事はただの従業員で構いません」

「名前を名乗った事を知られたらガンマ様に何をされるか分かりませんから」

 

やはりミツゴシはブラック企業のようだ。パワハラのレベルも高い。

僕に名乗っただけで何かしらが起こるってどこまで嫉妬深いんだ。

 

「さっきのあのニュー様をお姉ちゃんと呼んでいたことなんですけど」

「あれには一体どのような意味が!!」

 

そんなキラキラした目で見られても、あれはニューの我儘だし。

 

「あれは...」

『ゴクリ』

「....ご褒美...かな?」

『ご、ご褒美』

 

涎出てるから拭いた方がいいよ。女の子が涎なんて垂らしたらはしたないよ。

 

「ご褒美ってことは」

「私達にもチャンスはある?」

 

なんでそうなるのかな?

ここで働いている人の正確な数は知らないけど、無理だから。

 

「頑張れば私達にも」

「シャドウ様の寵愛が」

『.....ゴクリ』

「聞いてる?無理だよ、そんな事したら僕も君達もただじゃすまないよ?聞いてる?」

 

聞いてないな。

 

「失礼しました!」

「お邪魔しました!」

 

これも自業自得か。

 

一時的とはいえお姉ちゃんになったニューは僕が戻ってくるのが遅かったのが他の人と話していたからだというのに気付いたようでむすっとしている。

 

「あーあ、お姉ちゃんを放っておいて別の女と話すなんてお姉ちゃん傷ついたわー」

 

お姉ちゃんになったせいか感知能力が上がっている。

言っていることも姉さん(クレア)とそっくりだ。

 

「お姉ちゃん以外の女の事考えなかった?」

「考えてない、考えてない」

 

エスパー怖い。

 

「お姉ちゃん傷ついたわ、弟がもう少し気遣いできたら良かったのに」

 

何を求めているのか分かりやすい。

ソファと僕の足、主にふともも辺りを見ている。

アルファ達にもあんまりしたことがないからあとが怖い。

 

「■■■■■■■■■■」

 

言葉で表現できない呪詛が飛んできた。

おっとブラックホール(アルファ)がこっちを見てる。見ない振りしよ。

 

「膝枕しようか?」

「はい!」

 

お姉ちゃんじゃなくてニューに戻った。

 

「ふへ....ぐへへへへへへへ」

 

頬が緩んでだらしない顔になっている。

 

「■■■■■■■■■■」

 

言っておくけど僕は君の安全を保証できないからね。

 

顔立ちが中性的なお陰で同性に人気のあるカイだがちゃんと女の子だ。

恥じらう姿は女の子らしかった。

 

「やはり私には似合わない」

「似合ってるよお姉ちゃん」

「くぅっ」

 

普段のピシッとしたスーツ姿も悪くないが白のワンピース姿も悪くない。

何より顔を赤くして恥じらっている姿がそそられる。

 

「行こうよ、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん...ふふっ」

 

王都から少し離れた街でデート中である。

ここなら誰にも見つかることはない。

昨晩なんてそれは大変だった。

2人きりで邪魔がないと分かると襲いかかってきて

 

「宿が壊れるかと思った」

 

と支配人に言われたくらいだ。

防音しようとしたのにカイが言う事聞いてくれないから落ち着かせる為に説得(意味深)をしたのだが丸聞こえだったみたいだった。

それもあって顔が赤い。

 

「恥ずかしい」

「似合ってるよ」

「ううっ」

 

背中に隠れてしまった。

知っている人が見たら別人だと思うだろう。

 

「ほら、ちゃんと歩かないとこけるよ」

「恥ずかしい」

「手繋ぐ?」

「.....繋ぐ」

 

もじもじしながらも手を掴む。

そういえばラムダも初めて一緒に風呂に入って抱いた時もこんな感じだったな。

僕の知っているエルフでも数少ない恥じらいのあるエルフだ。他のエルフは凶暴(アルファ)だったり胸部装甲(イプシロン)を盛ったり腹黒(ベータ)だったりドジ(ガンマ)だったりマッド(イータ)だったりドロドロしていたり(オメガ)とまともなのがいない。

 

「お、お姉ちゃん以外の女の事を考えるのは酷いぞ」

「ごめんね、お姉ちゃん」

「きゅぅ」

 

恥ずかしがりながらもお姉ちゃんをやるのが面白くてからかったら気絶した。

結局起きないカイをベンチに寝かせて膝枕して終わった。

 

数日経ったある日ガンマの前には書類が置かれていた。

 

「何かしらこれ?」

「嘆願書です」

 

オメガが持って来た書類には番号とミツゴシで働く女性達の表向きの名前が書かれている。

 

「これは私共の要望です」

「何の?」

「シャドウ様とお話したい、触れ合いたいと願う者達の嘆願書です」

「全員、新店舗の要員と交代。それと帝国での開発に....」

「全員です」

「だから、引継ぎ....」

「本店で働く者全員の署名です」

 

ガンマは手元の書類に目を通し、数を数えていく。

書かれていたのは本店で働く者の人数と一致していた。

 

「我らの総意です。受け入れてくれますよねガンマ様?」

 

これは一種の脅しだった。

ミツゴシで働く者は一部の例外があるが基本戦闘、教養共に優れた者が選ばれている。

本店で働く者は精鋭中の精鋭。

入れ替わっても向上心が高いので実力が低くても直ぐに追いつく。

だがそれには時間がかかる。

その間に事故が起きて営業に支障がでれば目も当てられない。

 

「この話は預かります」

 

席を立ったガンマはブラックホール(アルファ)の元に向かう。

 

 

「なにこれ?」

「貴方とお話したい子のリストよ」

 

ブラックホールの様に渦巻いた目のアルファから渡された書類には名前と番号が書かれている。

20、いや30人以上は書かれている。

 

「盟主様は随分とおモテになるのね」

「そんな事はないよ」

「は?」

「何も言ってません」

 

これって本店で働く人、全員な気がするんだけど気のせいだよね?

 

「ちなみに本店で働く全員が貴方と戯れたいそうよ、よかったわね」

 

何故だ、何故こうなる。

 

「頑張ってね」

「手伝ってよ」

「嫌よ」

「....お姉ちゃん」

「っ」

 

ちょっと反応した。

 

「手伝ってお姉ちゃん」

「自分で...なんとか、しなさい」

「でもこれだとお姉ちゃんとの時間が減っちゃうよ」

「それをどうにかするのよ」

 

少しずつではあるがブラックホールから引きずり出せている。

アルファ達への対処法はベータ作の少女マンガ擬きから得ている。

今のアルファなら後ろに回り込んで耳元で囁くのが一番効果的だな。

 

「お姉ちゃんは疲れてボロボロの僕と遊びたいの?」

「やめ、て」

「お姉ちゃんが手伝ってくれたら僕もお姉ちゃんを大事にするよ」

「耳が....耳が」

「お姉ちゃん」

「もう....やめ」

「お姉ちゃん」

「分かったからぁ....離してぇ」

 

勝った!

これで僕の平穏は守ら...れ......た。

 

「シャドウ様~~~~~今のはどういう事ですか~~~~~?」

 

やっべぇ。

龍の逆鱗に触れた。

扉は塞がれている、逃げるのなら窓しかない。

 

「さらば」

 

窓を破って中庭に飛び降りるとダッシュで夜の王都に逃げ出す。

僕は逃げ切る、必ず逃げ切ってやる。

 

『お姉ちゃんから逃げたらダメでしょ~~』

 

捕まったら洗脳されて姉が増える。

1人でも持て余しているのに増えるなんてシャレにならない。

逃げ切ってやる。

 

一晩中追いかけっこをして疲れた体を引き摺って部屋の扉を開ける。

 

「え、なに」

 

部屋に引きずり込まれてベッドに叩きつけられた。

 

「お帰り、シド」

「ただいま姉さん」

 

本物のお姉ちゃんだ。

 

「お姉ちゃん悲しいわ」

「何ぐぉお」

「弟が他所でお姉ちゃんを作ってくるなんて」

 

な、何故だ。

誰にも見られていないのに、どうやって気付いた。

 

「シドのお姉ちゃんはこの世でただ1人私だけなのに、他所でお姉ちゃんを作るなんて」

「なんで知ってるの?」

「そんな予感はしてたけど、本当なのね」

 

カマかけられた。

首から手が離されると今度は抱きついて匂いを嗅いでいる。

 

「覚えた」

 

ベッドから飛び降りると走って部屋から出ていく。

 

「覚えた?...まさか」

 

廊下に出て、窓から走る姉さんの向かう先を見るとそこにはミツゴシがある。

僕は姉さんの嗅覚を舐めていた。

獣人並みだなんて思わなかった。

寮から飛び出して姉さんの後を追う。

モブとしての立場を守りながら走って追いかけると遂にミツゴシについてしまった。

 

「お前かぁぁぁぁぁぁ!!」

 

姉さんの視線の先にはプラカードを持って列の整理をするニューがいる。

 

「天誅ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

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