知らない天井だ。
寝ている間に服も変えられている、猫衣装から白シャツと半ズボンに変わっている。
そして寝る前には僕の両隣にはベータとイプシロンがいたはずだ。
どっちの胸が好きかで僕に詰め寄ってきたエルフ達がいないと可笑しい。
しかし今隣にいるのは赤い髪の吸血鬼の女王様エリザベート、スケスケのネグリジェ着てる。
エッチだね。
「誘拐された?」
シャドウガーデンとエリザベートの間でどんな取引があったのかは知らないが....知りたくもないけど、同盟関係があるのは確かだ。この同盟に僕は全く関与していない、関与していないがエリザベートがシャドウガーデンとの関係悪化になるような事をする様には思えな....思いたい。
特に居場所に繋がるよな物を渡したわけでもないのに追いかけてきた過去があるからないとも言い切れない。
「となると後は一つだけか」
僕の大した事ない頭で考えに考えなんとかひねり出した僕の答えは
友好の証として引き渡された。
それが僕の大した事ない頭でひねり出した答えだ。
一番ありえそうなのが友好の証として引き渡された事だ。
部屋が無事である時点でエリザベートが誘拐したというのは限りなく低い....低いはず。
もし誘拐したのなら僕はミツゴシの部屋の窓から半壊した王都を見る事になるはずだから。
「お、おはようございます。シド君」
さっきから扉の隙間から覗いていたメアリーが部屋に入ってきた。
「おはよう、メアリー」
「おはようございますぅえへへへへ♡」
「誘拐した?」
念の為に確認しておく。
痴情の縺れで王都半壊とかいい気分はしないし。
「そんな事しないですよ、戦争になるじゃないですか。今日だけ預かってくれと言われたので」
「そっかぁ」
誘拐ではなかったか。
ていうか預かるって事は僕が寝てる間になんかあったな、誰かが暴走したとかかな?
「それよりもシド君」
「何?」
「お姉ちゃんって呼んでくれませんか?」
「....メアリーお姉ちゃん」
「んおぉぉ....えへへへへへ♡♡」
時間は前日まで遡る。
夜の10時シドに会いたいとか言ってぐずりまくるエリザベートに手を焼いていた頃に、仮住まいのホテルの部屋の扉がノックされた。
こんな時間に誰だよと思って扉を開けてみると、アルファがいた。
「ちょっとこの子を預かって欲しいの」
天使がいた、惚れた男の子の面影のある天使がいた。
まさか実子がいた?
でもそれだととんでもない年齢の時に実子を儲けた事にならないか?
混乱状態を起こしてまともに考える事もできなくなる。
「勘違いしているようだけどシャドウの子どもじゃなくて、シャドウ本人だから」
ちょっと言っている事が理解できなかった。
実子ではなく本人?
何言ってるのこの人?
人生初めての衝撃を受けた。
そもそもメアリーの知るシャドウはというと隔絶した力と一般人のフリしているつもりで全然出来てない中性イケメンショタのシドしか知らない。
こんな風に小さくなる事も出来るのかと衝撃を受けた。
「また勘違いしてるみたいけど自分でなった訳じゃないから」
自分でなったわけじゃないのならどうやってなったのか?
「お、お薬盛ったの」
改めてシャドウガーデンを異常な組織だと感じた。
だって普通は組織のトップに幼児化する薬なんて盛ったりしない。やってる事は昔、主人をストーカーして一服盛った声だけいいのがムカつく吸血鬼と同じ事だ。
「じゃあお願いね」
爆睡中のシャドウを引き渡すとアルファはとっとと帰ってしまった。
爆睡中のショタシャドウの顔を見て見る。
(マジ天使、超絶可愛い♡♡)
シャドウの幼少期はどんなの風だったんだろうかと妄想した事は何回もある。
しかし、現実のショタシャドウは妄想の2.5倍は可愛い。
(ほっぺたもモチモチしてるぅ♡♡)
モチモチのほっぺたもしっかり堪能。
ほっぺた堪能中にふとクレアの事が頭をよぎる。
姉弟関係のクレアはこのショタを堪能しながらイケメンへの成長を共にした、これは血の涙を流す程に羨ましい。
次は会った時は一発殴ってもいいんじゃないかと思うぐらいには羨ましい。
そんな事を考えているとふっと腕から重みが消えた。
頭が真っ白になって状況が理解できないでいると、後ろで扉の閉まる音が聞こえた。
「やられた」
ほんの一瞬、天使に現を抜かしている間に主に天使を奪われてしまった。
天使を奪い返さんと部屋に乗り込んでみれば添い寝をしていた。
奪われたとはいえ流石に添い寝の邪魔をするわけにもいかないので、取り敢えず添い寝しようとしたら
ベッドから叩き落とされた。
意味が分からなかった。
叩き落とされる様な事なんてしただろうかと主の顔を見て見れば、激怒していた。
抜け駆けした癖に、添い寝まですんのか?おおん?と言いたげな表情。
主の激昂もなんのその添い寝に再度挑戦は....やめた。
平手じゃなくて拳を構えてた、喰らったら頭が粉々に粉砕されるような握り拳。
仕方なく、本当に仕方なく部屋を出て扉の隙間から覗く事にした。
そして翌朝。
天はメアリーに味方した。
いつも通りにエリザベートは起こしても全く起きない、言い訳が出来る様に10回程起こそうとしてみた。でも起きなかった、だからこれは仕方ない。
そう仕方ない、シドを半袖半ズボンに着替えさせたのも仕方ない事。
(おおおおおおおお、落ち着くのよメアリー..おち、落ちつ...落ちつ....お膝ぁぁぁぁぁぁぁ♡♡)
半ズボンを着たせいで剝き出しになったお膝。
ショタのお膝、ツルツルぷにぷにのお膝。
ショタスキーのメアリーの心臓にクリティカルヒット.....致命傷レベルの傷を負わせた。
心臓に杭を打ち付けられたレベルの致命傷。
存在消滅3歩手前までいったが、しかしそれを顔に出したりはしない。鍛え上げた精神力で顔に笑顔を貼り付ける。
(お膝....お膝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡しゃぶりたぃぃぃぃ♡あああああぁぁぁあ♡♡)
精神力....精神力....顔に出てはいないから取り敢えず精神力は強靭だと思う。
膝をしゃぶりたいとか思っても行動に移してはいないから強靭だと言えるかもしれない。
「お腹空いた」
きゅーと実に可愛らしい音が鳴る。
胃が空腹を訴えた音。
(きゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡)
勿論メアリーに特大のダメージを与えた。
顔に出ないだけで滅茶苦茶ダメージを喰らっている。
(よしよししたい~~~~可愛がりたい~~~でも鬱陶しがられて嫌われたくない~~~)
寸前の所で踏みとどまって飛び掛からない分だけ分別があるのかもしれない。
しゃぶりたいとかは言っていたけども。
メアリーが腕によりをかけて作り上げたのはフワフワパンケーキ。
バターをたっぷり塗って、その上からチョコソースをかけて苺を乗せる。
「は~~~い出来ましたよ~~~♡♡」
パンケーキを切り分けシドに
「あ~~~」
「はい♡♡」
口をめいいっぱい開いて待つシドの駆逐艦にパンケーキを放り込む。
「あむ」
(うおおおおおおおおおおお可愛いぃぃぃぃ♡)
リスみたいに頬っぺた膨らませるシドに存在消滅2歩手前まで行ってしまう。
リスみたいに頬っぺたがパンパンになるサイズに切り分けたのはメアリーであり、自分でやって悶絶するという自爆。
(なんだか無性にクレアに腹が立ってきましたね)
唐突に向けられるクレアへの怒り。
この天使と共に過ごし、その成長を傍らで見守りながら記憶に収めるとはなんという贅沢なんだろうかと怒りが沸々と湧く。
割と理不尽な怒り。
(一発殴っても許されるんじゃないですか?)
全然許されないし、力加減を間違えば大惨事になる。
「ん?エリザベート何してるの?」
エリザベートにとってメアリーは最後まで自分に付き従ってくれている同族、主従関係はこそあれど姉妹の様な関係だと思っている。
なんだか王都に来てからは呆れだったり憐みを感じてイラッとする事もあるがそれでもいい関係を築けていると思っていた。
だというのに抜け駆けしやがった。
熟睡中のショタシャドウを主人よりも先に堪能していたのだ。
主人よりも先にだ、こんなの裏切りでしかない。
お仕置きとして一発喰らわせてからシャドウを奪い取った。
紳士様のシャドウも大好きだけど、ショタのシャドウもエリザベートは大好きになってしまった。
寝ているのを起こすのは気が引けたので取り敢えず添い寝する事にした。
(可愛い♡♡)
寝顔の可愛さと言ったら堪らなかった。
堪能中に抜け駆けした
叩き落としてやった。
抜け駆けした癖に添い寝もしようとなんて強欲にも程がある。
恨めしそうに見てきたのでもう一度折檻しようとしら逃げて、扉の隙間から覗いてきた。
扉の隙間から覗くのは許してやった。抜け駆けした従者に対して寛大な主人である。
感謝して欲しいくらいだ。
そして朝、目覚める。
横を見ると天使は....いなかった。
それどころか、部屋の外からは甘い匂いと嬉しそうな声もする。
扉に近づき、ほんの少しだけ開けて隙間から外の様子を窺ってみると
昨晩に続き二度目の抜け駆けである。
抜け駆けした罰は既に与えているのにも関わらずまたしても抜け駆けをした。
(再教育が必要ねぇ)
抜け駆けしたメイドへの再教育が決定した。
それはそれとして
(頬っぺた膨らんでて可愛い♡♡)
甘いパンケーキに夢中で頬っぺたがリスみたいに膨らんでいるのが非常に可愛いらしい。
「美味しいですか?」
「美味しいよ」
「えへへへへ♡♡」
(何をデレてるのかしら?貴方は先に私を起こすべきでしょう?)
抜け駆けした挙句デレデレして媚を売る抜け駆けメイドに軽く殺意が湧く。
(仕置きは何がいいかしら?)
お仕置き初心者のエリザベートに考え付くものと言えば
(定番は水責めに火炙りとかよね?)
お仕置きと言いながら出てくるのが水責めと火炙りという拷問レベルの発想、別の女王様の素質がある。
(いい事思いついたわ、メアリーを縛って私と紳士様が交わるのを見せてやればいいのよ♪)
割とえげつないお仕置きを思いついた。
好いた男が他の女と交わっているのを見せつけられるのはエリザベートからすれば屈辱以外の何ものでもない、故にメアリーも屈辱に感じると思ったが
(これはご褒美になりかねないわね、あの子シド様相手だと受け身になるから)
シドが相手になると被虐趣味が見え隠れするメアリーに、こんな事してしまえばご褒美になりかねない。
年下好きとは業の深いものである。
「ん?エリザベート何してるの?」
お仕置き内容を考えていると、扉越しに声を掛けられる。
(流石はシャドウ様と言ったところかしら....あんな見た目でも索敵能力は変わらないのね)
可愛らしいショタに呼ばれた以上、いつまでも覗いているわけにもいかずショタの元へ向かう。
「おはようございます、シド様」
「おはようエリザベート」
(んん....か、可愛い♡♡)
まさしくエンジェルスマイルと呼べる笑顔に胸を撃ち抜かれる。
抱きしめて撫でまわしたくなるが、食事の邪魔をするわけにもいかず我慢する。
「おはよう、メアリー」
「は、はひ....おはよう....ござい....ます」
ガタガタと身を震わせながらメアリーはエリザベートに朝の挨拶をする。
勿論、ちゃんと挨拶ができたからといって抜け駆けを許すわけもない。
「シド様は何を召し上がっておられるのですか?」
「メアリーがパンケーキ作ってくれたんだ、美味しいよ」
「それは良かったですわ、ねぇメアリー?」
「お、お粗末様です」
メアリーは体を震わせているが別に感動で震えている訳でもない。
エリザベートがいなかったら感動で身を震わせる事になっていたが、エリザベートがいるので恐怖に身を震わせる事になっている。
圧が凄まじい、それこそ戦闘時でしか放たないような圧が向けられている。
一瞬でも気を緩めれば意識が遥か彼方に飛んで行ってしまうような圧。
恐ろしい。
「メアリー交代しましょう」
「でもこれ私が作った....」
エリザベートはショタへの餌付けの交代をご所望。
しかし料理したのはメアリー。
餌付けの権利を奪われてたまるかと抵抗するが
「は?」
空気が震えた。
紅い瞳は赤黒く染まり渦巻いている。
最初に感じたのは驚愕、こんな目をする人なんだという驚き。
次に感じたのは恐怖、生命の存続を揺るがすような圧倒的な恐怖。そして覗き込んではいけない深淵を覗き込んでしまった事、覗き返された事への恐怖。
「御心のままに」
素直に従った。
パンケーキの乗った皿をエリザベートに渡す。
恐怖の余りメアリーから女王の従者に変わり、言葉遣いまでおかしくなってしまった。
そんな言動とは裏腹に内心では
(私が....私が作ったのにぃぃぃぃ)
ハンカチ嚙みそうな勢いで悔しがっていた。
「は~~いシド様♡あ~~~ん」
ハンカチ嚙みそうな勢いで悔しがっているメアリーを他所にエリザベートはシドに餌付けを開始する。
「どうですかぁ?」
「美味しいよ」
「まぁ♡それは良ろしかったですわ♡♡」
愛らしい少女の顔を貼り付けているが
(ああああああああああああああかわ、かわわわわわわわわわわ♡♡おへぇぇぇぇぇぇぇぇ♡♡ひぃぃぃぃぃぃぃぃ♡♡)
内心では女王の威厳もクソもへったくれもない程に荒れ狂っていた。
おへぇぇぇぇぇぇぇぇ♡♡とか女王だったら絶対に言ってはいけない。
「は~~い♡♡あ~~~ん♡♡」
「あ~~~ん」
「うふふふ♡♡」
実に微笑ましい光景。
遂に恥も外聞もなくハンカチを噛んで泣き始めた従者はいるが、まぁ微笑ましい光景と言えるだろう。
(可愛いわねぇ♡本当に天使みたい♡♡)
単純にショタシドが種族を問わず、そして癖も問わずノックアウトする程の可愛さを持っているのもある。
更に好きな人の幼少期の姿というのは格別の可愛さがある。
口いっぱいに詰め込んでリスみたいに頬を膨らませているのは凄まじい。
「は~~い♡♡あ~~~ん♡♡」
「んぁ~~」
「うふふふふ♡♡」
「私が作ったのにぃぃぃぃ」
カゲマス新章でアレクシアとシド君のアオハルの裏での七陰の反応が書かれてたけど予想通り過ぎて笑った